東野圭吾
文庫本の表紙には、赤色・水色・紫色の朝顔がデザインされている。ここに描かれていないのが黄色の朝顔。この小説、黄色い朝顔にまつわる謎解きストーリーである。 江戸時代、朝顔は園芸植物として流行したという。何かの本で、江戸の浪人が内職の一つとして…
構想がおもしろいミステリーといえる。ウィキペディアの「東野圭吾」を読むと、第7回中央公論文芸賞受賞作。 2012年3月に単行本が刊行され、2014年11月に文庫本に入っている。 盗んだ車でとある家に窃盗に入った3人組の若者たち-幸平、敦也、翔太-は、逃げ…
かなり異色で特異な状況設定で発生した密室殺人事件の解明。その構成は実に巧妙。 こういう状況設定自体の発現可能性はほとんど無いのではないか。一方で、ここに組み込まれた巨大な情報処理システム自体は近未来において実現する可能性がないとはいえない。…
錦重工業航空機事業本部が管理する第三格納庫に超大型特殊ヘリコプターが格納されている。防衛庁関係者の前で、ヘリコプターに不備がないことをチェックしてもらう領収飛行(=初飛行)の儀式が行われる当日の早朝、事件が起こる。 ヘリコプターが何者かによ…
鞠子の章と双葉の章が2つのストーリーとして交互に進行する。このこと自体がおもしろい。まず、どう関わり合っていくのかと興味を引く。 氏家鞠子は札幌の叔父の家から大学の英文科に通う大学生。 小林双葉は東京の高田馬場にある東和大学国文科に通う大学…
このタイトルを見た時、最初に思い浮かべたのは1977年から琵琶湖で毎夏連綿と行われている鳥人間コンテストだった。それでなんとなく鳥人間コンテストへの出場に絡んだ話なのかなと想像した。実際に読み初めて、この想像は全く外れていたことが即座にわかっ…
手許の文庫本は2002年11月の第22刷。第1刷発行は1996年1月。奥書の記載がないので調べてみると、最初は1992年に講談社ノベルスとして刊行されていた。 だが、このミステリーの構想は色褪せていない。 乗鞍高原にあるペンション『四季』に7人の男女が指示を受…
森崎朋美には子供の頃からの夢があった。父が所有する別荘の近くにあり、花に囲まれた白くて小さな教会で結婚式を挙げることだった。朋美の父は製薬会社の経営者。朋美は小さなビデオ制作会社を経営する樫間高之と結婚することになる。この小さな教会で結婚…
初期の作品にも触れてみようと、江戸川乱歩賞受賞の『放課後』(1985年)に続いて、この小説を手に取った。 1986年8月にカッパ・ノベルスとして出版され、1990年に文庫化されている。 プロローグが2つあるというおもしろい構成で始まる。 その1は、信州白…
著者の作品はたまたま目に止まった『マスカレード・ホテル』から興味を持ち、シリーズ作品を軸にしながら関心の赴くままに読み進めてきた。そして、初期の作品群も対象に加えて読みたくなった。 本書が著者のデビュー作だという。第31回江戸川乱歩賞受賞作。…
スキー場を舞台にした小説。『白銀ジャック』『疾風ロンド』に続いて、書き下ろし作品として2016年12月に文庫本が出版された。 直にシリーズと称されないのは、メインに登場する人物が特定され、その人物を中軸に事件などが延長線上で展開されて行くというも…
スキー場を舞台とし、その一隅に人々を恐怖に陥れる物質を埋設する。それをもとに脅迫し大金を得ようとする犯罪行為ストーリー。この発想の原点は第1作と同じである。ならば、おもしろみがない・・・のでは、とならないところがやはりストーリー・テラーという…
「ハイジャック」と言えば、航空機などを乗っ取ることである。jack という英単語が「・・・を盗む」という意味と英和辞典に出ている。「白銀」と言えば「雪」。雪を盗むとはどういうこと? このストーリーでは、「白銀」が新月高原スキー場を象徴している。スキ…
『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イヴ』に続く第3弾。 本書は、2017年9月、書き下ろしの単行本として刊行され、2020年9月に文庫化された。 ホテル・コルテシア東京が三度目の舞台となる。前2作で印象深かったのはベテランのフロントクラーク山岸…
2014年8月にオリジナル文庫として出版された。「マスカレード」シリーズ第2弾。 「小説すばる」に発表された短編3作、「それぞれの仮面」(2013/2)、「ルーキー登場」(2013/7)、「仮面と覆面」(2014/2)と、文庫本のタイトルになっている中編(145ペーシ…
著者の本を読むのはこれが初めて。名前はかなり以前から知っているものの手にすることはなかった。最初の1冊の出会いが、その後同じ著者の本を読み継ぐ気にさせるかどうかのトリガーになる。 この警察物はホテルを舞台とする捜査活動のメイン・ストーリーの…
ガリレオ・シリーズの第9弾、2018年10月に単行本が刊行され、2021年9月に文庫化された。手許の文庫本は同年10月の第5刷。現在、映画の全国ロードショーが始まっている。 東京都菊野市内にある『なみきや』食堂の長女、並木佐織は、歌の才能を見込まれ、地元…
文庫本の奥書を読み、ネット検索でウィキペディアの情報を得て、出版の流れが理解できた。2012年10月に『禁断の魔術』が書き下ろしの連作推理小説集として刊行された。そして、その「第一章・透視す(みとおす)」「第二章・曲球る(まがる)」「第三章・念…
ガリレオ先生シリーズの第7弾。短編集であり、7編を文庫オリジナル編集にして出版されたという。2015年に刊行。その内4編は「別冊文藝春秋」(第292号・第298号)、「オール讀物」(2011年4月号・7月号)にそれぞれ発表され、3編は書き下ろし。 尚、奥書…
ガリレオ先生シリーズの第6弾! 「週刊文春」2010年1月14日号~11月25日号に連載、翌年6月に単行本が刊行され、2013年5月に文庫化されている。 このストーリーは今までの作品とちょっと異なる点がある。それはガリレオ先生こと、帝都大学物理学科准教授・湯…
この小説の終極に近いセクション32に、「綾音にとっての結婚生活とは、絞首台に立った夫を救済し続ける毎日だったのだ」の一文がある。「聖女の救済」という言葉はここに由来するようだ。聖女は綾音をさすことになる。 本書は2008年に単行本が刊行され、2012…
ガリレオ・シリーズの第4弾。いくつかの雑誌に発表された短編4つと書き下ろしの短編1つを併せて2008年10月に単行本として出版され、2011年に文庫本となった。 各短編のタイトルの付け方は、『予知夢』と同じスタイルである。 本書のタイトルは収録された…
ガリレオ・シリーズとして、この作品も「オール讀物」に2003年から2005年にかけて連載されたもの。2005年8月に単行本が出版された。 2006年に同書で第134回直木賞受賞、併せて第6回本格ミステリ大賞を受賞。さらに2005年度の「週刊文春ミステリーベスト10」…
ガリレオ・シリーズの第2弾。『探偵ガリレオ』の短編連作ミステリーの後半連作集と言うべきかもしれない。短編5作が収録されている。 「オール讀物」の1998年11月号~2000年1月号に断続的に発表されたもの。 2000年6月に単行本として刊行され、2003年8月に…
「オール読物」の1996年11月号に載った短編から連作ミステリーとして新シリーズが始まり5篇発表された。それらが1998年5月に単行本として出版され、2002年9月に文庫本となっている。これがガリレオ・シリーズの始まりである。 本書にまとめられた段階で、タ…
刑事加賀恭一郎のシリーズはこれで完結するのだろうか・・・・。ふと、思った。 この作品の末尾近くで、松宮刑事が加賀宛てに頼まれた手紙を、金森登紀子に託すために喫茶店で会った時に、本庁から練馬署に日本橋署にと異動していた加賀が、遂に警視庁の捜査一課…
「麒麟の翼」というタイトルに興味を覚えて手に取った。麒麟は中国の伝説上の動物で、聖獣だが翼があるとは聞いた事がない。それで、なぜこんなタイトルがつくのか? それがきっかけだった。(2025.1.23 追記:私には、本書が加賀恭一郎シリーズを読み始める…
本書は、2009年に単行本が刊行され、2013年に文庫化された。私は単行本で読んだ。 加賀恭一郎刑事が、日本橋署に異動となる。日本橋署の新参者として所管区域で発生した殺人事件の捜査に取り組む。 この小説は数章を読み始めてわかったのだが、興味深い二重…
この小説が単行本で刊行されたのが2006年7月。文庫化されたのが2009年8月。 直木賞受賞後の第1作になるという。入手した文庫本の奥書を見ると、2014年2月で第29刷となっている。つまり、加賀恭一郎シリーズは継続して愛読されているということだろう。 この…
加賀恭一郎シリーズは、『どちらが彼女を殺した』、『悪意』、『私が彼を殺した』と、斬新な小説の構成手法と読者への推理と解明についての投げかけが続くチャレンジ精神に富むものであった。ここで、ちょっと目先が変わる。読者にストレートに速球を投げ込…