遊心逍遥記

遊び心で本の森を逍遥し、その時の思いを残しておこうと始めました。

今村翔吾

『海を破る者』  今村翔吾   文藝春秋

この小説、読後印象は、人とは何か、人のあり様とは何かを問い続けるストーリーだと思った。その根底に、なぜ人は争うのかという問いがある。 序章と終章の間が7つの章で構成されている。第7章の標題が「海を破る者」である。本書のタイトルはここに由来す…

『秋暮の五人 くらまし屋稼業』   今村翔吾   ハルキ文庫

くらまし屋稼業シリーズの第4弾! これまで goo ブログで読後印象を書いていたので、こちらではこれが最初の読後印象記になる。 本書は、文庫版書下ろし作品として、2019年4月に刊行された。 元武士の堤平九郎は、飴細工屋を稼業としながら、行方不明になっ…

『五葉のまつり』    今村翔吾    新潮社

「花を愛でる人は多いが、葉を眺めようとする人は少ない。だが誰が見ずとも葉は生い茂り、やがてひっそりと身を引き、再び花が咲き誇るのだ。人々の笑いを咲かせるため、誰に顧みられずとも働き続ける」(p632)という文が本書の末尾近くに出て来る。 「奉行…

『夏の戻り船 くらまし屋稼業』  今村翔吾   ハルキ文庫

くらまし屋稼業第3弾!! 表稼業は飴細工屋の堤平九郎、居酒屋の「波積屋」で働く七瀬、そして「波積屋」の常連客の赤也。この3人がチームとなり、当人から依頼を受け、誰にも知られずに江戸からくらましてしまうという裏稼業を実行する。痛快なエンターテイ…

『じんかん』    今村翔吾   講談社

この歴史時代小説を読もうと思ったのは、先月(11月)著者の『戦国武将を推理する』(NHK出版新書)を読んだのがきっかけ。『戦国武将を推理する』の読後印象はご紹介済み。この新書の最後に取り上げられていたのが、松永久秀。 本書は、「小説現代」2020…

『戦国武将を推理する』   今村翔吾   NHK出版新書

英雄8人をプロファイリング! 今年、2024年3月に刊行されたエッセイ集。 本書は、1章1武将で、8章構成。 織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、武田信玄、上杉謙信、伊達政宗、松永久秀、石田三成が取り上げられている。「英雄」という言葉から、松永久秀、石…

『春はまだか くらまし屋稼業』   今村翔吾   ハルキ文庫

くらまし屋稼業の第二弾、シリーズ化が始まる。ハルキ文庫(時代小説文庫)の書下ろし作品として、2018年8月に刊行された。エンターテインメント時代小説。 堤平九郎は飴細工屋を生業にしているが、裏稼業が「くらまし屋」である。この裏稼業が始動するとき…

『くらまし屋稼業』  今村翔吾   ハルキ文庫

2018年7月にハルキ文庫(時代小説文庫)刊の新シリーズとして始まった。手元の文庫は2021年12月刊の第10刷。本書は、ハルキ文庫の書き下ろし作品である。 一般的には、内表紙、目次と続き、プロローグや序章という体裁でストーリーが始まる。本書の体裁はち…

『童の神』  今村翔吾  ハルキ文庫

本書は第10回角川春樹小説賞受賞作品で、第160回直木賞候補作にもなった。2018年10月に単行本が刊行された後、2020年6月に文庫化され、時代小説文庫の一冊となっている。余談だが、著者は2022年、『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞した。 本作の核心になる…

『恋大蛇 羽州ぼろ鳶組 幕間』   今村翔吾   祥伝社文庫

本書が現時点では羽州ぼろ鳶組シリーズ、文庫の最新刊。「幕間」という言葉が付いているように、このシリーズの本流からは少し外れている。本流は、前回ご紹介の『襲大鳳 羽州ぼろ鳶組』上・下巻で一区切りを迎えたようである。 その後に本書が令和4年(2023)3…

『襲大鳳 羽州ぼろ鳶組』 上・下  今村翔吾  祥伝社文庫

羽州ぼろ鳶組シリーズの第10弾!! 本書はシリーズの1冊であるが、勿論単体として読むことができる。しかし、本作に関しては、前回ご紹介した『黄金雛 羽州ぼろ鳶組零』を読んでから、本作を読むことをお薦めする。 私は本作を先に読んでしまってから『黄金…

『黄金雛 羽州ぼろ鳶組零』    今村翔吾    祥伝社文庫

羽州ぼろ鳶組シリーズを読み継いでいる。シリーズが第9弾まで続いたところで、この「零」が挿入された。実は第10弾の『襲大鳳』を先に読了し、少しシリーズとしてのつながりが気になるところがあったのだ。読了後にこの『羽州ぼろ鳶組零』が先行しているこ…

『双風神 羽州ぼろ鳶組』   今村翔吾   祥伝社文庫

羽州ぼろ鳶組シリーズを読み継いでいる。書き下ろし文庫第9段! 令和元年(2019)7月に刊行された。 いつもの通り、表紙は火消の後ろ姿。だが、その髪の色を見ただけで、今回はこの男が羽州ぼろ鳶組・風読みの加持星十郎とわかる! さらに、本作を読んでみる…

『玉麒麟 羽州ぼろ鳶組』  今村翔吾    祥伝社文庫

2024年の最初の本ブログへの書き込みとなります。 元旦早々に石川県能登沖を震源とした大地震が発生しました。もう一つのブログへの書き込みのまとめを作成している時に、震度3の揺れを体験。さらに2日の今夕、羽田空港での飛行機の接触による火災発生事故…

『狐花火 羽州ぼろ鳶組』  今村翔吾   祥伝社文庫

序章は、時を遡り、明和の大火の下手人秀助が火消の前から逃走する場面から始まる。 本作はこのシリーズの転機を迎える段階に位置づけられるのではないかという印象を抱いた。 それが第1章から現れてくる。印象を呼び起こした側面を挙げると次のとおり。 1.…

『夢胡蝶 羽州ぼろ鳶組』   今村翔吾   祥伝社文庫

羽州ぼろ鳶組シリーズの第6弾! 比較的ゆっくりとしたペースでこのシリーズを読み継いでいる。本書は平成30年(2018) 8月に文庫本が刊行された。 松永源吾と深雪との間に平志郎が誕生し、すくすく育ちつつある。時折この平志郎の様子が描き込まれていくとこ…

『菩薩花 羽州ぼろ鳶組』   今村翔吾   祥伝社文庫

羽州ぼろ鳶組シリーズを読み継いでいる。本書はその第5弾、書き下ろし作品として、平成30年(2008)に刊行された。 「菩薩花」は仏桑華の別名だという。松永源吾の妻・深雪は道を尋ねられて知り合った久保田藩の絵師曙山から贈られたのだと源吾に言う。琉球を…

『鬼煙管 羽州ぼろ鳶組』   今村翔吾   祥伝社文庫

加持星十郎は、明和の大火後、安永2年(1773)1月末頃に、暦の論争に関して山路連貝軒に協力することと、長谷川平蔵宣雄から、京都西町奉行に着任後怪事件が頻発していることに知恵を借りたいという依頼を受けたことで京都に入った。だが、火消の身内を誘拐…

『九紋龍 羽州ぼろ鳶組』 今村翔吾  祥伝社文庫

羽州ぼろ鳶組シリーズの書き下ろし第3弾。平成29年(2017)11月に文庫が刊行された。 町火消「に」組の頭・辰一は、火消番付で東の関脇に位置づけられている。町火消最強と評される男。身の丈六尺三寸(189cm)で筋骨隆々の巨体の持ち主であり、背中に九頭の龍…

『夜哭烏 羽州ぼろ鳶組』  今村翔吾   祥伝社文庫

羽州ぼろ鳶組シリーズ第2弾。不審火即ち火付けが連続して発生する。火付けの規模は小規模なものが続いていく。その先で大きな規模の火付けに発展していく。その一連の火災に、不思議な共通点があった。 この第2弾は、平成29年(2017)年7月に書下ろし文庫と…

『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』  今村翔吾   祥伝社文庫

4月下旬に著者の『塞王の楯』を読んだのが最初である。著者の作品を読み継ぐ手始めを、この長編時代小説書き下ろし本にした。このシリーズがあることは、U1さんのブログ記事で知っていた。調べてみると結構シリーズ本が出ている。第1作から順次読んでい…

『塞王の楯』  今村翔吾  集英社

著者の作品を読むのはこれが初めて。かなり前に、本書の新聞広告で「矛」と「楯」、つまり「矛盾」という語に触れていたことが読んでみようと思う動機だったのではなかったかと思う。私にとっては初作家なので、地元の図書館で予約、長らく順番待ち待ちして…