アート関連
本書は「秘密の花壇」というタイトルで日本経済新聞夕刊(2020年1月4日~12月28日)に連載された後、「秘密の花園」に改題され、単行本が2024年1月に刊行された。 朝井まかてさんの小説を読み継いでいるので、近作の本書を事前情報なしに手に取って読み始め…
五木寛之著、小説『親鸞』三部作の読後印象を各部についてご紹介した。 単行本を購入したまま、長い間書架に眠っていた。読もうとエンジンがかかる前に、ひとつのきっかけができていた。 『日本建築集中講義』(共著)で、山口晃という画家を知り、この本か…
初代市川團十郎の歌舞伎役者人生を描くとともに、二代目團十郎が己の芸風を確立するまでを点描風に描き加えるた時代小説である。「オール讀物」の2019年2月号から2020年3・4月合併号に連載され、2020年4月に単行本が刊行された。 この小説の最後の章名が「江…
本書は十返舎一九の伝記小説。歴史年表を見ると、江戸時代享和2年(1802)に「東海道中膝栗毛」と記載されている。 本書のエピローグを読んで目から鱗。というのは、年表記載の作者名・作品名を学生時代に暗記した以外は、弥次さん、喜多さんの名コンビによ…
手許にある高校生向け学習参考書『クリアカラー国語便覧』(数研出版・第4版)を見ると、「樋口一葉」についてまとめた1ページに、樋口一葉が明治19年(1888)14歳で歌塾「萩の舍」に入門したという記述がある。一方、「近現代文学の流れ」というチャート…
「この世は、円と線でできている。」という一行から始まる。絵師が5つの幼い娘を大きな胡座の中に坐らせて、真剣に「画法」を説きながら絵を描いている場面。苛立った娘は父親を見上げて「おやじどの」と呼ぶ。絵師の号は北斎。弟子や版元からは葛飾親爺と…
読み継いでいる作家の一人。読了後に少し関連情報をネット検索していて、遅ればせながら、この作品が2021年上期の直木賞受賞作だったということを知った。奥書を読むと、別冊文藝春秋(2019年7月号~2021年1月号)に連載後、2021年5月に単行本が出版されてい…
平成10年(1998)に「京の絵師は百花繚乱」(京都文化博物館)というタイトルの展覧会があった。京の都はまさに様々な絵師が様々な画風・技法・技巧で競ってきた場である。数多の絵師の中で、江戸時代にあって、個性的な絵を描き続けた若冲は心惹かれる絵師…
最近、仏像鑑賞のための本を数冊読み継いできていたので、たまたまある新聞記事でこの作品名を知り、「仏師・定朝」という副題に関心をもち読んだ。その際、本作が新田次郎文学賞の受賞(2013年)作品だということも知った。この著者の作品を読むのはこれが初…
本作は狩野永徳の伝記小説。 永禄3年(1560)、18歳になった永徳が近衛前久の屋敷に出向くところから始まり、東福寺・法堂の天井に蟠龍の絵を描く業半ばにして没するまで。「極楽の至福をさらに描き尽くそうと、永徳は夢中になって筆を動かしつづけた」極楽…
1996年11月にオリジナル文庫として出版された。それを今、読んだ。なぜオリジナルなのかと言えば、1990年2月に『利休 破調の悲劇』が出版されていて、それに「老い木の花」と「家康と茶屋四郎次郎」「『綺麗さび』への道」という小論が加えられて文庫本化さ…
書名に著者名が冠されていることと、「印象派物語」という標題に惹かれて手に取ってみた。本書は、「とんぼの本」の1冊として、2019年6月に刊行されている。 この本、印象派の全体像を手軽に知るには便利なガイドブックとなる。 見開きの「目次」の上半分に…
著者の『たゆたえども沈まず』という小説を2年余り前に読んだ。その後に、本書が出版されていることを知った。奥書を見ると、本書は2018年5月に幻冬舎新書として刊行され、2020年8月に文庫化されている。 文庫本で169ページという作品。小説『たゆたえども…
1890年7月27日、オーヴェール=シュル=オワーズ村の何処かで、フィンセント・ファン・ゴッホはピストルで腹部を撃ち抜いて自殺を図ったと言われている。腹部を撃ち抜いた後、自分の足で下宿の食堂「ラヴー亭」まで戻り、2日後の7月29日に息絶えた。 ゴッホ…
カバーは展示室の景色。見たことのある絵がシックな図柄の壁に掛けてある。タイトルと併せてみると、アート絡みの小説かなと想像した。壁に掛けられた絵はよく見ると、ヨハネス・フェルメールの「デルフトの眺望」。 奥書を見ると、「小説新潮」(2009年3月…
企業に就職し、最初の1年余の勤務地が関東地方だった。その時、休日に上野の国立西洋美術館に一度だけ訪れたことがある。屋外でロダンの「地獄の門」を間近で見た。「松方コレクション」の一端を間近で眺めたのもその時だった。その後、東京には幾度も出張し…
カバーの表紙と裏表紙には二人の人物の絵(一部)が使われている。読了後に奥書を読むと、共に玉那覇正吉作であり、表紙は「スタンレー・スタインバーグ」(一部)、裏表紙は「自画像」(一部)と記されている。 内表紙の続きに、「私たちは、互いに、巡り合…
著者のアート関連小説に関心があり、読み継いでいる。本書はまずそのタイトルに惹かれた。「ゲルニカ」といえば、ピカソの絵。なぜ「暗幕の」という修飾語が冠されるのか。表紙には、「GUERUNICA UNDERCOVER」と併記されている。読後印象としては、この併記…
冒頭の表紙は2017年1月に出版された単行本のもの。2015年から2016年にかけて「オール讀物」に連載発表された後、戯曲<サロメ>の象徴的場面が単行本の表紙に使われた。聖人殺害にまつわるショッキングな挿画。 こちらは、2020年5月に出版された文庫の表紙。 …
ある美術館に展示されている一つの絵、<あの絵>が、一人の人生に、あるいは家族の人生に、大きく深く関わりを持っていく。<あの絵>との出会いがその人に意味を与えて行く。一つの絵と出会う瞬間にそれが必然的な関わりへと高められていく。<あの絵>のまえに…
文庫本の表紙には、アンリ・ルソーの代表作の一つ、「夢」が装画として使われている。現在はニューヨーク近代美術館(MoMA)が所蔵する。 この小説は、アンリ・ルソーの一枚の絵に関わるアート・ミステリー。時空間が二重の入れ子構造になっている。2000…
アメリカの自動車産業が隆盛を極めた時代の中心地、その象徴としてデトロイト市があった。デトロイト市はアメリカの自動車産業の凋落の中で、債務超過となり財政破綻に陥いる。2013年7月に連邦破産法9条の適用を申請した。負債総額は180億ドルを超えた。そ…
本書はニューヨーク近代美術館の所蔵品及びその組織とそこで勤務する人々を題材に取り込んだ美術関連小説の短編集である。この美術館はMoMAという略称で親しまれている。以下ではこの略称で記す。冒頭の本書カバー絵は、ピカソ作「鏡の前の少女」であり…
1962年7月29日、オーヴエール=シュル=オワーズにあるラヴー食堂の入口で、店の主人らしき男と初老の日本人でゴッホの研究者がもめている場面に、2年前に70歳で機械技師を隠退したフィンセントと名乗る男が偶然に立ち合うことになる。この場面からストーリ…
本書のタイトル「アノニム」は、謎のアート窃盗団<anonyme アノニム>を意味する。コンテンポラリー・アートの画家であるジャクソン・ポロックの初期の大作「ナンバー・ゼロ」をキーワードにした痛快でスリリングなストーリー。 ジャックソン・ポロックは実在した画家。表紙の背</anonyme>…
「風神雷神」というタイトルと表紙の絵を見た時、即座に俵屋宗達を思い浮かべた。タイトルに惹かれた。宗達をどのように描いて行くのだろうかという強い関心。読んでみなきゃ・・・というのがまず最初の思い。 読後印象はまず面白かった。フィクションとしての…
終章の最後のページに著者は次のパラグラフを記している。 「本書は画業評伝にカテゴライズされるかもしれないが、ゴッホの書簡集や評伝を参考にして、著者の想像力を駆使した小説的な手法を多く取り入れ、生きたゴッホを出現させたいと願って書き進めたもの…
この特集号、MIXI で交流を続けている友人がブログ記事に話題として取り上げたことで、ヒルマ・アフ・クリントという画家の存在を初めて知った。抽象画を残した女性画家。ブログ記事を読んだ後、すぐにネット検索をしてみた。 その後で、地元の図書館をチェ…
地元の図書館の新刊書紹介コーナーで目にとまったアート関連本。 X(旧Twitter)のアカウントは使わないので著者名には無知だった。つまり、本書のタイトルと表紙の絵に惹かれて手に取った。愛、官能、名画。人を惹きつけるキーワード。勿論表紙の絵もいわ…
この読後記録を始める前に読んだ『秋月記』から4冊目でこの本を手にした。奥書に「乾山晩愁」で歴史文学賞を平成17年(2005)に受賞と記されていたので、どんな作品か興味が湧いたためだ。手に取る前は勝手に長編だろうと思っていたのだが、本書を開いて、…