
最近、就職活動の現場で非常に興味深い動きが出てきているのをご存じでしょうか。「生成AIを使うとエントリーシート(ES)の内容が似通ってしまうため、書類選考を廃止する企業が増えている」というニュースです。
ひとこと
「よい風潮」
このニュースを見て、「AIのせいで人間味がなくなる」「選考が混乱する」とネガティブに捉える声も少なくありません。しかし、長年IT業界に身を置き、多くのベンダーやエンジニアと関わってきた私としては、これはむしろ絶好のチャンスであり、日本社会が良い方向へ向かうためのポジティブな傾向だと感じています。
なぜなら、これまでの「中身よりも見せ方」が重視されていた不公平な構造が崩れ、真の「実力」が評価される時代が来るからです。
今回は、生成AIがもたらすこの変化が、なぜ就活生や日本のビジネスにとって良いことなのか、私自身の経験も交えて解説していきます。
1. 生成AIによる「均質化」がもたらした書類選考の廃止
まず、現状何が起きているのかを整理しましょう。ChatGPTなどの生成AIの普及により、誰もが整った文章でエントリーシートを作成できるようになりました。その結果、企業側からは「ど学生のESも内容が均質化しており、差がつかない」「文章だけで合否を判断するのが難しくなった」という声が上がっています。
これを受けて、一部の企業では思い切って書類選考を廃止し、最初から面接を行ったり、適性検査や実技試験を重視したりする動きが出てきました。
一見すると、企業側の負担が増えるだけのようにも見えますが、これは「書類作成能力」というフィルターが外され、より本質的な人間性や能力を見る選考へとシフトせざるを得なくなったことを意味しています。
2. 「プレゼン力」だけで評価される不公平な社会からの脱却
私がこの変化を歓迎する最大の理由は、これまで社会に蔓延していた「プレゼン力偏重」の弊害が解消される可能性が高いからです。
これまでの就活やビジネスの現場を思い出してみてください。中身は空っぽでも、口がうまく、資料作りが綺麗な人だけが優遇されるシーンが多々ありませんでしたか?
逆に、素晴らしい技術力や独創的なアイデアを持っているのに、文章を書くのが苦手だったり、アピールが下手だったりするだけで、スタートラインにさえ立てない人たちがいました。これは社会全体にとって大きな損失であり、非常に不公平な状態だったと言えます。
今までみてきて、よい技術を持っている企業ほど職人気質故に?アピール下手な業者が多い。
もっと広い目で言うと、ほとんどの日本の技術系企業(メーカー等)
世界的に見て指折りの技術のある企業ばかりなのに、軒並みアピールがそれほどうまくないせいで、もったいないことにビジネスチャンスをことごとく逃しています。
「エントリーシート作成能力」と「仕事の実務能力」は必ずしもイコールではありません。生成AIが文章作成を肩代わりしてくれることで、文章力に自信がなかった「実力者」たちが、ようやく中身で見てもらえる土俵に上がれるようになったのです。
3. 日本のIT業界を停滞させた「資料作り」重視の弊害
この問題は、就活だけでなく、私が身を置くIT業界やビジネスの現場でも深刻でした。
例えば、システム開発のコンペ(業者選定)の場において、技術的に致命的な欠陥がある提案でも、パワーポイントの資料が美しく、プレゼンテーションが流暢な業者が選ばれてしまうことがよくありました。一方で、技術力は確かなのに、資料が地味な業者は見向きもされないこともあります。これを私は常々、苦々しく思っていました。
以前、非常に優秀なシステム開発業者の担当者と話した際のエピソードが強く印象に残っています。私が彼らの技術力を評価しつつ、「どうしてそんなにパワポ資料を丁寧に作るんですか??」と何気なく言ったときのことです。
彼はこう言いました。「弊社は行政(官公庁)中心に仕事をしているのですが、行政によってはパワーポイントの資料に文字をびっちりと書き込まないと仕事が取れないのです。中身よりも、いかにその形式(いわゆる霞が関ポンチ絵)に合わせるかが重視されてしまうのです」
この言葉を聞いて、日本のITが世界から遅れを取っている一因はここにあると確信しました。本質的な技術や中身よりも、資料の体裁やプレゼンの形式美ばかりが重視される文化が、優秀なエンジニアの時間を奪い、成長を阻害していたのです。
4. 生成AIは「スタートライン」を公平にするツール
生成AIの活用は、この「形式」の格差を埋めるための特効薬になります。
文章や資料の体裁を整える作業をAIに任せることができれば、誰もが一定レベルの「見栄え」を手に入れることができます。そうなれば、選ぶ側(採用担当者や発注者)は、もはや表面的な文章力や資料の美しさで判断することができなくなります。
必然的に、「で、結局あなたは何ができるの?」「この提案の技術的な裏付けは?」という、本質的な中身(実力)を問うことになります。
* 口下手だがコードを書かせれば天才的な学生
* 資料作りは苦手だが、革新的なシステムを構築できるベンダー
こういった人たちが、プレゼン力お化けの人たちと同じスタートラインに立ち、純粋な「実力」で勝負できるようになるのです。これは、個人のキャリアにとっても、日本の産業競争力にとっても、間違いなくプラスの方向への変化です。
まとめ
生成AIによってエントリーシートが均質化し、書類選考が廃止されつつある現状は、決して嘆くべきことではありません。
* 書類選考廃止は、表面的な文章力ではなく、人物そのものを見る選考への転換点です。
* これまでの「中身はないがプレゼンだけうまい人」が優遇される不公平が是正されます。
* IT業界やビジネス現場にはびこる「資料作成偏重」の文化を変えるきっかけになります。
* 生成AIは、実力があるのに表現が苦手な人の格差を埋め、公平なスタートラインを提供します。
これからは「見せ方」でごまかすことが通用しない、真の「実力主義」の時代がやってきます。これから就活を迎える方や、ビジネスの第一線で働く方は、資料作成のテクニックを磨くことよりも、自分自身の「中身」や「スキル」を磨くことに注力すべきでしょう。生成AIはそのための頼もしいパートナーとなってくれるはずです。
【生成AIと選考の今後】に関するよくある質問
Q1. 生成AIを使ってエントリーシートを書くのはカンニング(不正)ではないのですか?
A1. 不正ではありません。多くの企業がAIの活用を前提とし始めています。ビジネスの現場でもAI活用は必須スキルとなりつつあるため、むしろ適切に使いこなして効率化する能力として評価される傾向に変わってきています。
Q2. 書類選考がなくなると、面接が苦手な人は不利になりませんか?
A2. 確かに面接の重要度は上がりますが、それは「流暢に話す力」だけが見られるわけではありません。書類というフィルターがなくなる分、技術課題や実務に近いテストなど、口下手でも実力を示せる機会が増える可能性が高いです。
Q3. 文章力に自信がある人にとっては、AIの登場は不利になりますか?
A3. 文章力だけで勝負していた人にとっては、アドバンテージが薄れるため不利になるかもしれません。しかし、AIが作った文章に、自身の独自の経験や感情を加えてブラッシュアップできる人は、AIだけの文章よりもさらに高い評価を得られるでしょう。
Q4. 企業側はAIで書かれた文章かどうかを見抜けるのでしょうか?
A4. 完全に見抜くことは困難です。AI検知ツールもありますが、精度は100%ではありません。だからこそ、企業は「書かれた文章」の真偽を確かめることにリソースを割くよりも、面接や実技で直接本人を評価する方向へシフトしているのです。
Q5. これからの時代、就活生やビジネスマンはどんな力をつけるべきですか?
A5. 「AIへの指示出し力(プロンプトエンジニアリング)」と「実体験に基づいた一次情報を持つこと」です。AIはきれいな文章は作れますが、あなた自身の体験や、現場で培った独自のスキルそのものは作れません。中身そのものを磨くことが重要になります。
これからどうする?
もしあなたが「自分はアピールが下手だ」と感じているなら、今こそ自信を持ってください。生成AIをうまく活用して「見せ方」のハンデを埋め、あなたの本当の実力を世の中に示していきましょう。