石川温の「スマホ業界 Watch」

楽天モバイル、2026年は「勝負の年」へ。1000万回線突破で見えた光と影

 楽天モバイルが2025年12月25日に1000万回線を突破した。

 11月13日に開催された2025年度第3四半期決算説明会では、11月7日現在の回線数として950万件と公表されていたので、1カ月半ほどで50万件を稼いだことになる。

 決算資料によれば、この2年でもっとも純増数を稼いだのは2024年度第2四半期で55万1000件だ。四半期ベース、つまり3カ月間の獲得数ということを考えると、この直近の1カ月ちょっとで50万件を獲得したことが、いかにこれまでないほどの「ハイペース」なのかがわかる。

 三木谷浩史会長は、大口の法人契約があったと説明したが、楽天グループ全体的に、2025年中の1000万突破は至上命題であったのは間違いない。

 筆者も記事にしたが、楽天ビジネスカード契約者向けに2年間、無料でデータ通信使い放題となるWi-Fiルーターをばらまいていた。さすがにWi-Fiルーターだけで数十万規模を稼いだとは思えないが、おそらく、同様の施策が楽天グループ内で展開されていたのだろう。

 ちなみに2年間完全無料のWi-Fiルーターは、提供元は「楽天グループ」となっており、楽天モバイルMVNOという体裁になっている。
ちなみに今回達成した1000万回線は、こうしたMVNO契約も含んだ数字だ。

 楽天モバイルが新規参入した当初は「500万回線もいかずにギブアップするのではないか」と業界内では見られていた。

 それだけに1000万回線突破は、まさに偉業と言える。三木谷会長のモバイル事業への執念が伝わってくるし、素直に「1000万回線突破、おめでとう」と言いたい。

 「携帯電話業界の民主化」を掲げ、他社が値上げに踏み切る中、料金水準を維持しているのは、本当に立派だ。

 ただ、やはり気になってくるのが足下の通信品質だ。

 個人的に感じているだけでなく、楽天モバイルユーザーの不満の声をSNS上で本当に多く見かけるのだ。

 仕事柄、各キャリアのXアカウントをチェックしているのだが、特に最近、気になって仕方ないのが、楽天モバイル_お客様サポート(@Rmobile_Support)のアカウントだ。

 X上でユーザーが楽天モバイルの通信品質に対して不満を述べた際、このアカウントはきちんと「回線状況についてご不便をおかけして申し訳ございません」と謝っている。

 ユーザーからすれば「楽天モバイルのアカウントが直接、謝ってくれた」とうれしくなるだろう。

 楽天モバイルもそうした反応を期待しているのは間違いない。ただ、@Rmobile_Supportをフォローしている身からすると、その「ご不便をおかけして申し訳ありません」と謝っている数が尋常でなく、「本当に楽天モバイルのネットワーク品質が落ちているのだな」と改めて実感させられてしまうのだ。

 直近でも、「都内の駅ナカ」「梅田駅」「ちょっと地下」「東京メトロの駅以外」「名古屋駅」「上野駅のホームや品川駅」など、ユーザーが具体的な場所を挙げて「つながらない」と報告している。それに対して、@Rmobile_Supportは日々、律儀に謝っているやりとりが目につくのだ。まさにネットワーク品質の劣化が、楽天モバイルの公式アカウントによって可視化されている。

 一方で、三木谷会長は1000万突破の囲み取材で「都内の地下鉄や山手線はだいぶ改善したと思っている。また、5Gの基地局の設置も急いで取り組んでいる」としている。

 経営幹部と実際のユーザー、サポートを担当しているSNSアカウントでは、ネットワーク品質の認識に対して、あきらかに乖離している様子がうかがえる。

 楽天モバイルとしては、すぐにでも基地局を増設する必要があるだろう。

 2025年中に1万局を増設する計画であったが、一部は来期にずれ込む見込みとなっている。

 2026年9月には、KDDIのネットワークローミング契約を更新するのか、打ち切るかの判断が迫られる。KDDIに打ち切られる可能性を踏まえて、楽天モバイルは自前でネットワークを強化しなければならない。

 5Gにトラフィックをシフトさせなくてはならないが、根本的に、楽天モバイルには周波数が足りていない。

 ミリ波を除くと、NTTドコモには440MHz、KDDIは430MHz、ソフトバンクは320MHzなのに対して、楽天モバイルには186MHzしかない。しかも、KDDIにはUQモバイルに対して50MHz、ソフトバンクはワイヤレスシティプランニングに30MHzが割り当てられている。

 当然のことながら、ユーザー数に大きな差があるため、必ずしも楽天モバイルが不利というわけではない。

 しかし、楽天モバイルのユーザーは使い放題で大量のトラフィックを発生させる。この先、基地局を増やしまくるといった対策を打たないことにはネットワーク品質は落ちる一方だ。

 しかし、仮に楽天モバイルが、これから基地局を大量に打てば、それだけ黒字化は遠のいていく。

 第4のキャリアである楽天モバイルが、既存3キャリアを脅かし続ける存在になるのは、総務省は楽天モバイルに周波数を割り当てるべきだろう。

 とはいえ、三木谷会長は「(総務省は)くれますかね? 我々の周波数帯域は、このまま成長していけば、いろんな議論をさせていただく必要があるかなと思っています」と語る。

 ただ、楽天モバイルに新たな周波数を割り当てたとしても、アンテナを付け替えたり、複数のアンテナをつけても問題のないような構造の基地局に作り替えるなど、新たなコストはかかるだろう。

 ユーザーが爆発的に増えるのは楽天モバイルにとって追い風であるのは間違いない。とはいうものの、ネットワーク品質を上げていくということは、黒字化を先延ばしにすることに直結する。公約した1000万という大台を突破した三木谷会長としては悩ましい判断を迫られることになりそうだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。