じゅうのブログ

3度目の引っ越し……こちらでボチボチ更新していく予定です。

『動物好きに捧げる殺人読本』 パトリシア・ハイスミス(著), 榊優子、中村凪子、吉野美恵子、大村美根子(翻訳)

アメリカの作家パトリシア・ハイスミスの短篇ミステリ作品集『動物好きに捧げる殺人読本(原題:The Animal-Lover's Book of Beastly Murder)』を読みました。
パトリシア・ハイスミスの作品は、3年前に読んだ『愛しすぎた男』以来ですね。

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犬、猫、駱駝(らくだ)、象、鼬(いたち)、……。
彼らが人を殺してしまったのには、やはりそこにいたるまでの事情というものがあったのです。
最新式の養鶏場を舞台に悲劇と狂気が描かれる「総決算の日」、滑稽にしてブラックな、少年の日の物語「ハムスター対ウェブスター」など、13種類の動物たちの物語を収録。
毒とユーモアの組み合わせが、ハイスミスならではの独特の妙味を生み出す傑作短編集。
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1975年(昭和50年)に刊行されたパトリシア・ハイスミスにとって6冊目となる長篇作品です。

 ■コーラス・ガールのさよなら公演 (The Chorus Girl's Absolutely Final Performance)
 ■駱駝(らくだ)の復讐 (The Djemal's Revenge)
 ■バブシーと老犬バロン (There I Was, Stuck with Bubsy)
 ■最大の獲物 (Ming's Biggest Prey)
 ■松露(トリュフ)狩りシーズンの終わりに (In the Dead of Truffle Season)
 ■ヴェニスでいちばん勇敢な鼠(ねずみ) (The Bravest Rat in Venice)
 ■機関車馬 (Engine Horse)
 ■総決算の日 (The Day of Reckoning)
 ■ゴキブリ紳士の手記 (Notes from a Respectable Cockroach)
 ■空巣狙いの猿 (Eddie and the Monkey Robberies)
 ■ハムスター対ウェブスター (Hamster vs Websters)
 ■鼬(いたち)のハリー (Harry: A Ferret)
 ■山羊(やぎ)の遊覧車 (Goat Ride)
 ■鼎談 ミステリ好きに捧げるハイスミス読本 菊地千尋、小山正、戸川安宣

動物が主役の異色ミステリ……収録作はいずれも動物が主人公という大胆な趣向で、彼らの視点から人間社会の歪みや暴力が描かれており、パトリシア・ハイスミスらしい不穏さや皮肉は確かに漂っているのですが物語に深く入り込めなかったですね、、、

語り手が動物、という設定が影響したんだと思います……動物の行動や感情を人間的に描くことで寓話性を高める狙いは理解できるものの、感情移入できず、どうしても距離が生まれてしまうんですよね。

実験的な一冊として読むのが正解なのかもしれませんね……物足りなさを感じました。

『影の告発 日本推理作家協会賞受賞作全集 16』 土屋隆夫

土屋隆夫の長篇ミステリ作品『影の告発 日本推理作家協会賞受賞作全集 16』を読みました。
土屋隆夫の作品は4年前に読んだ『天国は遠すぎる [新装版] ―土屋隆夫コレクション』以来ですね。

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不意に、男の体が崩れた。音をたてて、男はそこに転がった。
混雑するデパートで起きた殺人事件―。
千草検事は早速捜査を開始した。
手がかりは現場近くに落ちていた一枚の名刺。
……緻密な謎解きと、強烈なロマンチシズム。土屋隆夫が本格推理の名手として、不動の地位を確立した最高傑作!
日本推理作家協会賞受賞作品。
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宝石社が発行する推理小説雑誌『宝石』の1962年(昭和37年)5月号から12月号に連載され、1963年(昭和38年)に刊行された作品……千草検事シリーズの第1作で、第16回日本推理作家協会賞受賞作です。

 ■第1章 零の目撃
 ■第2章 声の演出
 ■第3章 点の追求
 ■第4章 雨の暗転
 ■第5章 罪の等式
 ■第6章 肌の背信
 ■第7章 屍の経歴
 ■第8章 檻の慟哭
 ■第9章 線の喪失
 ■第10章 夢の証言
 ■第11章 鈴の哀愁
 ■第12章 時の障壁
 ■第13章 雲の論告
 ■第14章 影の告発
 ■解説 山村正夫

デパートの満員のエレベーターの中で殺人事件が発生……被害者は私立光陽学園高校の校長・城崎達也と判明、、、

白昼、しかも衆人環視の中での大胆不敵な犯行の手がかりは、名刺と母娘の古い写真しかない……偶然、事件現場に居合わせた千草検事が、捜査の指揮をとることになった……。

本格派の第一人者の代表作……日本推理作家協会賞受賞作品。

デパートの満員エレベーターという、誰もが一度は経験したことのある日常空間で起きた殺人事件を軸に、被害者の過去と現在の事件が静かに絡み合っていく物語……印象的だったのは、状況設定の巧みさですねー 完全犯罪を目論んだ閉ざされた空間での殺人事件といえば、加害者と被害者だけの存在を想像しますが、本作が描くのはその逆で、人が多すぎる閉ざされた空間なんですよね、、、

誰もが見ているはずなのに、誰も犯行を見ていないという矛盾が、読者を引き込んでいく感じがします……また、名刺と古い写真という、どこか頼りない手がかりが、逆に被害者の過去を掘り下げる入口となり、現在の事件と過去の罪が重なり合う構図を生み出していましたね。

1960年代という昭和の雰囲気が強い舞台設定も好みなんですよね……本格ミステリの技巧と社会派の陰影がほどよく溶け合った佳作でしたねー 愉しめました。

『乳房 新装版』 池波正太郎

池波正太郎の長篇時代小説『乳房 新装版』を読みました。
『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』、『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』、『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 誘拐〈24〉』に続き、池波正太郎の作品です。

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「まるで不作の生大根(なまだいこ)をかじっているようだ」さんざんにもてあそばれた挙句、罵られ捨てられたお松は、偶然出会ったその男、煙管職人の勘蔵を絞殺してしまった。
この言葉を胸に秘めて、数奇な運命を辿るお松を評して、長谷川平蔵は、「男にはない乳房が女を強くするのだ」というが……。
鬼平犯科帳番外篇。
解説・常盤新平
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1987年(昭和62年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの番外篇として位置づけられる作品、、、

平蔵がまだ火付盗賊改方の長官になる前から始まり、平蔵が重要な脇役として登場するので、第0作(エピソード・ゼロ)的な作品ですね。

 ■男の家
 ■阿呆鴉
 ■十一屋語り草
 ■倉ヶ野の旦那
 ■再・十一屋語り草
 ■五年後
 ■〔豆岩〕の岩五郎
 ■回生堂主人
 ■縁
 ■月夜饅頭
 ■雑司ヶ谷鬼子母神境内
 ■解説 常盤新平

“不作の生大根”と罵られ、逆上して男を殺した女の数奇な運命と並行して、平蔵の活躍を描く……“乳房”が女を強くすると平蔵は言うが……。

若い女・お松の数奇な人生と、長谷川平蔵の若き日の姿が交錯する物語……女の弱さと強さ、情念と救いを描いた池波正太郎作品らしい濃密な人間ドラマが愉しめました、、、

お松は、煙管職人・勘蔵に弄ばれた末に「まるで不作の生大根をかじっているようだ」と侮辱され捨てられる……その後、偶然町で勘蔵を見かけたお松は衝動的に後をつけ、勘蔵を絞殺してしまう。

お松は、世間に顔向けの出来ない身となったことを自覚しながら生きていこうとしますが、阿呆鴉(あほうがらす)と呼ばれる売春業者・長次郎に出会ったことをきっかけに運命が変わっていく……お松の心の変化が丁寧に描かれ、無欲な人間へと変貌していく過程が印象的で、女性心理の描写が秀逸だと感じましたね、、、

また、平蔵がまだ若く、火付盗賊改方になる前後の姿が描かれるため、鬼平の人物像がより立体的に浮かび上がる作品でした……暗さと救いのバランスが絶妙で、深みのある余韻が残る作品でした。

お松の周囲を固めるキャラクターも良かったなぁ……長次郎はもちろんですが、隣に住む婆さんのお兼、京で妾としてお松を囲ってくれた倉ヶ野徳兵衛、その後、お松を後妻に娶った回生堂主人の松浦屋庄三郎 等々、魅力ある人物が多かったことも印象的でしたね、面白かったー。

『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 誘拐〈24〉』 池波正太郎

池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 誘拐〈24〉』を読みました。
『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』、『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』に続き、池波正太郎の作品です。

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風が鳴った。
平蔵は愛刀の鯉口を切る。
雪か?闇の中に刃と刃が噛み合って火花が散った―。
表題とした「誘拐」は、著者の長逝によって永遠の未完となったが、三十年をこえる作家としての営みの掉尾を飾る作品でもある。
巻末に著者と長い交遊のあった文芸評論家尾崎秀樹氏の「池波正太郎の文学」を併録する「鬼平」最終巻。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1987年(昭和62年)11月号から1990年(平成2年)4月号に連載された後1994年(平成6年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第24作で最終作です。

 ■女密偵女賊
 ■ふたり五郎蔵
 ■誘拐
  ・相川の虎次郎
  ・お熊の茶店
  ・浪人・神谷勝平
 ■池波正太郎の文学 尾崎秀樹
 ■平蔵の好きな食べもの屋 秋山忠彌

テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! シリーズ最終作は短篇『女密偵女賊』と中篇『ふたり五郎蔵』、5作目の長篇で著者急逝のため未完の『炎の色』が収録されています。

おまさは、昔の仲間・お糸を茶店で見かける(「女密偵女賊」)……火盗改メの役宅にきた新しい「まわり髪結い」、その名は五郎蔵だった(「ふたりの五郎蔵」)、、、

荒神のお夏はおまさへの思いを断ち切れず……未完となった最後の作品「誘拐」。

「ふたり五郎蔵」の池波正太郎による挿画と、尾崎秀樹の「池波正太郎の文学」、秋山忠彌の「平蔵の好きな食べもの屋」を併録する「鬼平」最終巻!

おまさが、かつての仲間・お糸を偶然見かけたことから始まり、女密偵たちの過去と現在が交錯するシリーズらしい人情と緊張の物語『女密偵女賊』、

火付盗賊改方に新しい髪結い・五郎蔵が入るが、その素性に不審が生じる…… 彼の妻が行方不明であり、背後には強矢の伊佐蔵の弟・暮坪の新五郎が関わっており、2人の“五郎蔵”を軸に、鬼平の洞察と密偵たちの動きが光る『ふたり五郎蔵』、

前巻『炎の色』から続く物語で、荒神のお夏が裏切り者・おまさへの復讐を企む……という筋立てで、緊張感の高い展開が推測されるが著者の急逝のため、これから! というところで途切れ、結末は読者の想像に委ねられる『誘拐』、

どの作品も面白かったですねー 『誘拐』は未完なので残念ですが……全篇を通じてシリーズの余韻と喪失感が強く感じられた一冊でしたね。

未完でありながらシリーズの魅力が凝縮された最終巻だと思います……遂にシリーズ全巻を読み終えちゃいましたねー 今は喪失感でいっぱいですね。

『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』 池波正太郎

池波正太郎の連作時代小説『決定版 鬼平犯科帳 特別長篇 炎の色〈23〉』を読みました。
『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』に続き、池波正太郎の作品です。

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夜鴉が無気味に鳴くのを聞いた翌日、おまさは旧知の盗賊・峰山の初蔵に声をかけられた。
「頼みがある。荒神の二代目に力をかしてもらいたい。
 二代目は女だ。先代の隠し子さ」
荒神の先代にかわいがられたおまさの心が騒いだ。
…平蔵の亡父の隠し子と盗賊の隠し子がからんで、事件のいとは段々ほぐれて行く。
期待の長篇。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1984年(昭和59年)12月号から1987年(昭和62年)1月号に連載された後1993年(平成5年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第23作です。

 ■隠し子
 ■炎の色
  ・夜鴉の声
  ・囮
  ・荒神のお夏
  ・おまさとお園
  ・盗みの季節
  ・押し込みの夜

テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! シリーズ23作目は短篇『隠し子』と4作目の長篇『炎の色』が収録されており読み応えがありましたね。

謹厳実直な亡父・長谷川宣雄の隠し子が出現……平蔵は、腹違いの妹・お園を妙に気に入り、お園のためにひと肌脱ぐ(「隠し子」)、、、

夜鴉がしきりに鳴いた翌日、おまさは旧知の盗賊・峰山の初蔵に声をかけられる「新しい荒神のお頭を手伝ってもらいたい。2代目は女だ。先代の隠し子さ」……2代目の首領を継いだ女盗賊・お夏に気に入られた密偵おまさと、平蔵の役宅で働くようになったお園、平蔵の配下の女性2人の活躍がめざましく、ときに妖しい(「炎の色」)、、、

お園の出現に、新たなる物語の始まりの予感。

平蔵の亡父の隠し子・お園、そして女盗賊・荒神のお夏という新しい女性像が物語を揺さぶり、密偵おまさの存在感も際立つ作品でした……この3人の女性キャラクターが物語の中心に据えられていることが特徴で、お園の明るさ、お夏の妖しさ、おまさの揺らぎ、という三者三様の炎の色が重なる展開が印象的でしたね、、、

特にお夏の存在感は強烈で、おまさが彼女に惹かれ、善悪の境界が曖昧になる瞬間があり、そこに人間の感情の複雑さを感じましたね……面白かったです。

平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……残りは最終作の第24作を読もうと思います。

『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』 池波正太郎

池波正太郎の長篇時代小説『新装版 鬼平犯科帳 特別長篇 迷路〈22〉』を読みました。
池波正太郎の作品は先日読んだアンソロジー作品『女城主 戦国時代小説傑作選』に収録されていた『夫婦の城』以来ですね。

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盗賊改方の水も洩らさぬ探索網により、薬種屋を狙った大がかりな押し込みは未遂に終わった。
しかし、安堵の空気もまもないころ、夕闇を切り裂いて疾って来た半弓の矢が、与力・秋本源蔵の頸すじへ突き立った──。
与力暗殺! 同じころ平蔵も襲われ、長男の辰蔵も命を狙われる。
そればかりか、盗賊改方の下僕にまで魔の手がのびる。
生涯の怪事件に苦悩し、追詰められた平蔵の胸に去来するものは……。
〈雲竜剣〉〈鬼火〉につづく感動のシリーズ長篇〈迷路〉。
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文藝春秋が発行する月刊娯楽小説誌『オール讀物』に1983年(昭和58年)5月号から1984年(昭和59年)3月号に連載された後1992年(平成4年)に刊行された作品……実在の人物である火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公とする捕物帳、鬼平犯科帳シリーズの第22作です。

 ■豆甚にいた女
 ■夜鴉
 ■逢魔が時
 ■人相書二枚
 ■法妙寺の九十郎
 ■梅雨の毒
 ■座頭・徳の市
 ■托鉢坊主
 ■麻布・暗闇坂
 ■高潮
 ■引鶴

テレビドラマでもお馴染みの鬼平犯科帳シリーズ……原作となる小説も面白いです! シリーズ22作目は3作目の長篇、読み応えがありましたね、、、

長谷川平蔵のみならず、その周囲の者たちが次々に狙われる……与力、下僕が殺され、平蔵の息子、娘の嫁ぎ先までが標的に、、、

敵は何者か? 盗賊改方への怨みなら、なぜ下僕まで襲うのか? 追い詰められた平蔵は苦悩の果てに、坊主に変装し役宅から姿を消す……渾身の傑作長篇!

平蔵が、自身だけでなく周囲の人々が次々と狙われるという難事件に立ち向かう物語……与力・秋本源蔵が半弓で射殺され、続きて下僕までもが殺される、、、

敵の悪意は止まらず、平蔵の長男・辰蔵、さらには娘の嫁ぎ先である親族にまで手が伸びるという、火盗改方への怨みだけでは説明のつかない、巧妙かつ強烈な悪意による包囲網が平蔵とその身辺に敷かれ、追い詰められた平蔵は苦悩する。

誰が、なぜ、これほどまでに執拗に平蔵を狙うのか? 火盗改方への怨恨であれば、なぜ無関係な下僕まで襲うのか? 謎が謎を呼び、苦悶の末、平蔵はついに坊主姿に変装し、役宅から姿を消すという行動に出ます……行方不明となった平蔵は、この迷路のような状況からどのように活路を見出し、強敵を打ち倒すのか!? 手に汗握る緊迫感のある展開が愉しめました、、、

個人的な悪意と対峙し、精神的にも追い詰められる姿を描くことで、読み応えのある作品に仕上がってましたね……追い詰められた状況の中、平蔵不在の火盗改方同心たちが広く網をかけて敵を殲滅していくアプローチも長篇ならではの展開で見どころになっていたと思います。

平蔵を取巻く登場人物の存在感も幅広く、関係性も濃くなり、それぞれの人間味に深みがでてきて、巻が進むに連れてどんどん面白くなっていきますね……残り少なくなってきましたが、第23作以降も順次、読んでいこうと思います。

『フォックス家の殺人 新訳版』 エラリー・クイーン(著), 越前敏弥(翻訳)

アメリカの作家エラリー・クイーンの長篇ミステリ作品『フォックス家の殺人 新訳版(原題:The Murderer is a Fox)』を読みました。
エラリー・クイーンの作品は、1年半くらい前に読了したアンソロジー作品『贈る物語 Mystery 九つの謎宮』に収録されていた『暗黒の館の冒険』以来ですね。

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綾辻行人 推薦!
名探偵エラリイ・クイーン、12年前の毒殺事件に挑む。

故郷ライツヴィルに帰還した戦争の英雄デイヴィー・フォックス。
激戦による心の傷で病んだ彼は、妻を手に掛ける寸前にまで至ってしまう。
その心理には、過去に父ベイヤードが母を毒殺した事件が影響していると思われた。
彼を救うには、父の無実を証明するほかない。
相談を受けたエラリイは再調査を請け負うも、当時の状況はことごとくベイヤードを犯人だと指し示していた……名探偵エラリイが十二年前の事件に挑む。
新訳決定版。
解説/飯城勇三
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1945年(昭和20年)に刊行された作品で……作者と同名の探偵「エラリー・クイーン(エラリイ・クイーン)」が登場する作品で、ニューヨークの北方(ニューヨークとモントリオールを結ぶ鉄道路線上)に位置しのマホガニー山地・ボールド・マウンテン山麓に位置する架空の町ライツヴィルを舞台にしたライツヴィルシリーズの第2作です。

デイヴィー・フォックス大尉は華々しい戦果をあげライツヴィルに凱旋したにもかかわらず、神経を冒されていた……ある夜、彼は無意識のうちに妻リンダの首を絞めようとまでした、、、

戦争の異常体験が12年前に起こった忌まわしい事件の記憶を呼び覚ましたのか? 思いあまったデイヴィーとリンダはエラリー・クイーンを訪ね、デイヴィーの父ベイヤードが母ジェシカを毒殺したという過去の事件の再調査を依頼した……今は刑に服しているベイヤードが無実となれば、デイヴィーの病も癒えるはずだ。

エラリーは事件を再現し、大胆きわまる推理を展開していったが……名探偵エラリーが導き出した、12年前の毒殺事件の真相とはいったい? 巨匠クイーンの〈ライツヴィル〉ものの秀作、新訳版刊行。

戦争帰りの青年デイヴィー・フォックスが抱える心の闇と、12年前に起きた母殺し事件の真相をめぐる物語……ライツヴィルという閉鎖的な街を舞台にした、心理と社会背景を重視したミステリでしたね、、、

最後の最後に明らかになる哀しい真相等、ミステリとしても面白いのですが、家族の罪と赦し、戦争の影、人間の弱さ等のヒューマンドラマとしての要素も強く読み応えがありました……ライツヴィルシリーズは、独特の世界観があるし、ミステリの部分が凝りすぎていなくて読みやすかったですね。

本シリーズを読むのは2作目……機会があれば、別の作品も読んでみたいですね。

以下、主な登場人物です。

デイヴィッド(デイヴィー)・フォックス
 退役空軍大尉。「空飛ぶきつね」の渾名でライツヴィルの英雄として迎え入れられる。

リンダ・フォックス
 デイヴィーの妻。夜中に、無意識のデイヴィーから首を絞められ、夫婦でエラリーに相談する。

タルボット・フォックス
 リンダの父親。デイヴィーの義父。

エミリー・フォックス
 リンダの母親。デイヴィーの義母。

ベイヤード・フォックス
 デイヴィーの父親。妻ジェシカを毒殺した罪で服役中の懲役囚。

アルヴィン・ケイン
 薬剤師。リンダとの不倫を疑われている。

エラリー・クイーン
 名探偵の推理小説家。フォックス夫妻の依頼で、ライツヴィルを再訪する。