12月17日(水)、さいたま地裁で行われました、第一回期日・阿須山中メガソーラー裁判。
傍聴に駆け付けてくださったみなさま、この日まで一緒に取り組んでくれたみなさま、
誠にありがとうございます。
みなさまの応援の中、原告として意見陳述を行いました。
ここまでの道のりも長かったのですが、この先もまだまだ続いていくと思います。
今後ともこの問題に関心を持っていただければ幸いです。
当日述べた陳述内容を以下に記します。
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裁判官のみなさま
本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。心より感謝申し上げます。原告であり、飯能市住民の長谷川順子です。
この度の提訴に至った一端を述べさせていただきます。
今回の対象地であります、阿須山中の森がどんな森だったのかについて、まず少し知っていただきたいと思います。
私たちが守りたかった森‐その森とは、関東山地から東に突出した加治丘陵に位置し、トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園や阿須運動公園などに続く緩やかな丘陵地にありました。
この森は、長年森林保護に努めている周辺自治体の入間市、青梅市の山林に囲まれた飯能市が所有する森で、広さは約17ヘクタール(東京ドーム3.6個分)あります。起伏に富んでいますが、丘陵地のため急峻な山道とは異なり、尾根に出れば、あとはなだらかな稜線を気持ちよく歩くことができました。
この森は、コナラがとくに多く、ヤマザクラ、ホオノキ、アオハダ、アカマツ、モミ、スギ、ヒノキなど、広葉樹と針葉樹の混交林であり、飯能市の「森林整備計画」の中で60年をかけて作ろうとしている理想と掲げる森が、この阿須山中の森でした。
樹木も多種多様なら、山野草も相当な種類があり、なかには絶滅危惧種に指定されている希少種も多くあり、小さい可憐な花やカラフルでユニークな形のキノコが人びとの心を潤し、豊かな時間と癒しを与えてくれました。
阿須山中は、荒川水系となる唐沢川源流域の中にあります。取り囲むように南と北の両側に小さな川が流れていて、この水脈がこの森に多大な影響をもたらしています。そして、森全体を歩いていて実感したのは、まさに緑のダムである、ということでした。一度くらいの大雨では急激に増水する心配はなく、水源涵養の一端を垣間見ることができました。
阿須山中の森も半世紀前までは、里山として存在していました。山の恵みを求めて暮らしてきた人々にとって、この森はかけがえのない、なくてはならない時代がありました。その後、生活様式が一変し、長く人が入らない時間を経て、阿須山中の森は「ここを選んだ野生動植物たちの楽園」となりました。ここを訪れた各分野の専門家たちが、これほど多種多様な動植物の宝庫はなかなかないと言ってくれました。他の地域の森林を多く歩いてきた方がそう言ってくれたあの森が今はもうないことは、本当にとても残念に思うのです。
いままでこの森の存在を知っている人は限られていました。利用することがなくなった雑木林は、この森の深い谷を覆い隠すかのように、枝を大きく伸ばし、そこに沢山の野鳥たちが集い、さえずりはどこからともなく聞こえてきて、いろいろな声色が森中に響きわたっていました。
いろいろと阿須山中の森について述べましたが、そもそも、この阿須山中の山林は、飯能市が暫定的に自然公園を目的に簿価20億円で土地開発公社から買い戻した土地です。
2017年、市はその土地の利用について公募し(公募といっても広報紙に掲載したのは、公募期間を締め切った後でした)、最優秀提案事業者に旧飯能インターナショナル・スポーツアカデミー(通称旧HISA)を選定しました。旧HISAが提案した事業は、メガソーラーの売電収入でサッカー場の建設と世界に羽ばたくサッカー青少年の育成のための運営費用を賄うという内容でした。市は、土地賃貸借料月額10万円とする事業者の提案を地方創生に資するとして選定したのでした。
2020年9月、埼玉県の林地開発許可も下り、沢山の森林が伐採され、大規模な盛土、切土の造成工事があって、メガソーラー事業がスタートしました。
森の主たちの住処だった阿須山中の真っ只中にソーラーパネルが敷かれ、2022年9月に発電、翌月に売電事業がはじまりました。その売電開始からわずか約1年半後、旧HISAは事業継続が不可能になったと飯能市に申し出ました。その窮境要因の一つとされたのは、売電単価21円から18円と下落したというものでした。しかし、旧HISAの当初の事業提案書の添付資料では、旧HISAは売電単価を15円と想定していたのですから、このことが窮境の原因となるはずがありません。しかし、市は、2024年5月、旧HISAから、協力事業者の大和リース株式会社への事業譲渡を承認し、同年7月5日、市と大和リース株式会社は、土地賃貸借変更契約書を締結したのでした。
次に、メガソーラー事業に関する市の違法についてです。
阿須山中は、飯能駅から直線で約3キロの緩やかな丘陵地にある都市近郊林地です。しかし、この広大な約17haの公有地を貸し出すにあたって市が土地の価格設定の基準としたのは、飯能駅から15キロも離れた、上名栗・炭谷日影という、林業本場林地の地価調査価格でした。
市は、阿須山中の不動産鑑定評価の取得をしませんでした。本来の価値を見出さず、とんでもなく廉価な価格で貸し出すことを、議会の議決なしで決めてしまったことは、地方自治法に反し、違法です。
また、大和リースは、再生可能エネルギー特措法に反し、変更認定申請を未だに完了していません。にもかかわらず、多額な再エネ交付金を取得していることは、認められることがあってはならないと考えます。なぜなら、固定価格買い取り制度のFIT事業は、全国民、全電気利用者から、毎月徴収されている、再エネ賦課金で賄われているからです。法的手続きを踏んでいないのに、毎月交付金を取得していることも違法です。なぜ市は、そのような相手と、賃貸借契約を結ぶのでしょうか。
調査を進めると、他の法令にも反していること、手続的正義の原則が欠如していることが明らかになりました。
さいごに、阿須山中は「緑のダム」と述べました。ただ2019年10月の台風19号の大水では、下流域の住民の方たちを脅かしました。ですので、森林を壊すことについては相当慎重にならなくてはならない、と思うわけです。
そして、森林は多くの生物が存在する、いのちの森です。にもかかわらず、ルールを無視する市によって、森林的機能が破壊され、荒廃していきました。いったん破壊行為がはじまると、市や事業者は、すさまじい勢いで突き進んでいきました。市民への十分な説明責任はどこかに忘れてしまったようでした。
そうだからこそ、2021年7月の市長選では、この事業を見直すことを掲げた新井重治氏が当選しました。このことは、飯能市民もこの事業に疑問を持っている表れだったはずです。
大切な飯能市民の財産を、これ以上、市の好き勝手にはさせられません。
これまでも多くのみなさんとともに、力を合わせてこの問題に取り組んできました。
あの自然豊かだった市民の財産の森を、再び飯能市民の手に取り戻すために
決意をもって、この度、提訴をいたしました。
以上です。





