「ロケットリーグ」がeスポーツで成功を収めるかもしれない理由とは
ルールはシンプル、習得するのは簡単で、マスターするのは難しい
子供たちがサッカーをしている様子を見たことがあるなら、なぜサッカーが世界的な人気を誇る遊びなのかわかるはずだ。サッカーを遊ぶための敷居は、ゼロと言って良い程に低い――小さい子供の多くはボールを蹴ってすらおらず、ピッチ上を走り回りながらボールに向かってただ突進していくのだ。初めてのチームスポーツがサッカーだ、という人は世界中に多くおり、これからもそうであり続けるだろう。サッカーのルールのある程度は、誰でも理解ができるものなのだ。突き詰めてしまえば、サッカーは足でボールを蹴る行為が連続しているだけなのだから。
「ロケットリーグ」はこの基本的な考え方を基にして作られ、だからこそ大きな成功を収めることができた――実際の話、サッカーよりアイスホッケーに類似しているのだが。
サッカーとの類似点が表面的であることは、計算されたものである。巨大なボール、芝に覆われたフィールド、そして巨大なゴールはこのゲームの基本的なルールそのものを表している――「ロケットリーグ」ですることはシンプル、ボールに向かって自分の操縦する車をぶつけるだけだ。ゲーム自体の難易度は極めて低い。車の操作方法を一度覚えてしまえば、ボールを動かすことができる。初心者だらけの試合を見ていると、子供たちのサッカーの試合が頭に浮かぶ。ボールがどこに飛ぶかなど全く気にせず、プレイヤーたちは巨大なボールに向かって、楽しそうに疾走する。
最上級のプレイヤーたちは、地上での操作と同じレベルの微調整を空中で行うことが可能だ。また、スキルで劣る敵が対応できないような状況を作り出し、ゴールを奪うこともできる
しかし、スキルレベルが上がるにつれ、ゲームはサッカーよりもアイスホッケーに似たものに変化していく。「ロケットリーグ」において、プレイヤーの数は少ない――最もレベルの高いゲームでは3人のケースが多い――そのため、熟練のプレイヤーはボールだけでなく、敵プレイヤーへの攻撃も積極的に行う。プロプレイヤーは壁もうまく利用する。ディフェンス側のプレイヤーを取り除き、ゴールまでの道を作る。また、一番危険なシュートはゴール一直線に向かうものではなく、ゴールからほんの少し外れてしまったものである。最上級プレイヤーは防御側がゴールを守ったその直後、空中にあるリバウンドボールを拾ってくるためだ。
これらはスキルの幅が広いことを示している――ゲームを理解すること自体は簡単だが、マスターすることは非常に難しい。「ロケットリーグ」はその極端な例の一つだ。低レベル帯ではプレイヤーがボールに向かって突進する光景が見られ、高レベル帯におけるプロプレイヤーは地上にいるのと同じくらいの間空中を舞っている。ロケットブースターを利用した車のジャンプ自体は誰でもできる技術だ。だが、空中で微調整を行える技術は、一朝一夕で得られるものではない。地上でロケットカーを操作することは簡単だが、空中でそれを行うことは全く別の話であるからだ。
最上級のプレイヤーたちは、地上での操作と同じレベルの微調整を空中で行うことが可能だ。また、スキルで劣る敵が対応できないような状況を作り出し、ゴールを奪うこともできる。
このゲームはeスポーツにおける「スラムダンク」だ――ゲームのルールや基本的な操作は誰にでも理解することができ、そのためプロレベルの試合において用いられる戦略やスキルを理解することができる。時間と努力を費やせばハイレベルなプレイができると思わせてくれるため、プレイヤーにとってこれは非常に刺激的だ。これは、他のeスポーツに欠けている要素の一つでもある。(毎年のように)私は「The International 7」を見て、「Fantasy League」では友人を打ち負かし、予想は半分ほどことごとく外れ(「Earth Shaker」より「Sand King」の方が採用されると思っていた)といったように、観客としてトーナメントを心ゆくまで楽しんだ。だが、「私にもできるはずだ」と思いながら「The International」を見ることはありえない。何百時間も「Dota」に費やして初めて、そのような考えを持つことができるだろう。
勘違いしないでほしいのだが、だからといって「Dota 2」がeスポーツとして悪い、というわけではない。それどころか――同じように、ダンクシュートは私にはできないが、NBAリーグのチケットは毎年買っている。「Dota 2」は人々を惹きつけるようにデザインされており、そのため観客を呼び寄せるのだ。しかし「Dota 2」の敷居が高いことはValveも理解しており、そのため初心者や興味がある人向けの動画配信などを開始している。
「Dota 2」を私が引き合いに出したのは、eスポーツというシーン自体が(比較的)若いためだ。「Dota 2」は観客からの応援を後ろ盾とし、成功を収め続けている。「リーグ・オブ・レジェンド」――私がむさぼるように楽しんでいるゲームの別の例だ――も似たような状況だ。これに反し、「ロケットリーグ」は現在の人気を上回り、主流に乗って成功を収めるチャンスがある。スキルの幅が広く、プレイヤーにとって刺激的なゲームであることが、それを可能にしてくれるだろう。
別の大きなポテンシャルが、その観戦性の高さだ。プレーが簡単そうに見えるということは、何が起こっているかを観客が理解できるということでもあり、この点は無視することができない。これは多くのゲームが直面する問題点である――よく用いられる解決策が実況だ。基本的なゲームプレイの詳細や勝利のための戦術等を事細かに解説するため、「オーバーウォッチ・ワールドカップ」では実況役と解説役が用いられ、大きな成功を収めた。敵をすぐに倒さないことに対し観客は疑問を抱くかもしれないが、敵チームのリスポーンのタイミングを調整――それにより防御担当の味方のための時間稼ぎをする――ことを指摘することで、観客が戦術を簡単に理解することができるのだ。
「ロケットリーグ」は伝統的なスポーツの概念を基に作られたため、試合で何が起こっているか、観客は簡単に理解することができるのだ。ゴールを多く決めたチームが勝ち、またボールを多く所持しているチームが優勢。
「ロケットリーグ」にはこのような解決策はいらない――もちろん、世界中には素晴らしい「ロケットリーグ」の実況がたくさんいるが。「ロケットリーグ」は伝統的なスポーツの概念を基に作られたため、試合で何が起こっているか、観客は簡単に理解することができるのだ。ゴールを多く決めたチームが勝ち、またボールを多く所持しているチームが優勢。基本を説明するという作業はいらないため、実況は試合中の素晴らしいプレイングのハイライトに時間を費やせるのだ。プロプレイヤーが可能とする空中の微調整により、そのようなプレイングは定期的に目にすることができる。プレイヤーは空中を滑空し、繊細さと大胆さを組み合わせ、アリウープと呼ばれるゴールを演出する――一分のブレもないパスがフィールドを切り裂き、空中にいるプレイヤーがそのボールをボレーシュートしてゴールに叩き込むプレーだ。Creep Score(CS)とは何なのか、何を示しているのかといったことを説明する必要がなく、実況はゲームの提供する興奮を届けることに集中することができる。もう一度言うが、だからといって「ロケットリーグ」が他のゲームより優れているわけではない。だが、「ロケットリーグ」は、他のゲームには克服することの難しい問題を解決し、主流に乗った成功を可能にすることができる。
新鮮味のなさは、観戦が簡単であることのデメリットの一つにあげられるだろう。「ロケットリーグ」を完璧なゲームに仕立て上げるこれらの要素は、裏を返せばプレイヤーや観客にとって、ただの同じことの繰り返しも意味する。これはeスポーツ固有の問題だ――普通のスポーツは肉体を酷使することで疲労を感じるが、eスポーツにおいては退屈が疲労を生む原因なのだ。またeスポーツは肉体における疲労がほとんどないため、一日に何十試合もすることが可能だ――メタゲームにおける精神と時の部屋のようなものだ。サッカーにおいて主流な戦術は数年かけて変化を遂げていくのに対し、「ロケットリーグ」では一週間で同等数の試合がプロレベルで行われ、そのためゲームは高速で進化を遂げていくのだ。
これはeスポーツに対する、よくある不満の一つである――現在主流のメタが気に入らない場合、流行が変化するまで試合の観戦を楽しむことはできないだろう。「3タンク構成」が流行していた時、私は「オーバーウォッチ」の観戦を楽しむことができなかった。それに比べ、「ダイブ構成」メタは私の好みだ。そして「ロケットリーグ」は明確に、堅く特徴付けられているため、もしメタゲームがつまらないものに変化した場合――もしくはある一定以上にメタゲームが成長しない場合――ゲームの本質に手を加えないよう注意を払いつつ、メタゲームを変化させるような難しいバランス調整をPsyonixは強いられることになるだろう。
しかしながら、「ロケットリーグ」にそのようなことは起きないだろう。メタゲームの変化はわかりやすく、しかも実行可能なアドバンテージが必要とする。「ロケットリーグ」のメタゲームは、車のボディタイプの変更による一時的なアドバンテージを利用したものに限られる――バスケットボールにおける、シューズの変化と似たようなものだ。チームの戦術、結束力、コミュニケーション能力、そして個人個人の能力には違いがあるため、プレイヤーごと、そしてチームごとに「ロケットリーグ」のプレイングは常に異なるものとなっている。
新参プレイヤーに対する敷居の低さと、プロレベルで求められるスキルの高さのおかげで、「ロケットリーグ」は他のeスポーツタイトルに比べ、主流に乗った成功を収める高いポテンシャルを持っている。必ずしも他のゲームより優れているというわけではない。だが、「Team EnVyUs」や「Chiefs Esports Club」など、様々なチームに観客を注目させるには十分だろう。
「ロケットリーグ」のハイレベルな試合を見たい人は、今週(現地時間8月27、28日)に行われる賞金総額10万ドルの、Universal Open Rocket Leagueの決勝戦を是非観戦しよう。
