いまだ謎多き「大神」の完全新作プロジェクトについて開発者らに訊く RE ENGINEの採用や開発体制、開発を後押ししたユーザーの声
太陽は昇る
名作『大神』の発売からもうすぐ20年。伝説の大神「アマテラス」がついに、意外性たっぷりの大々的な復活を遂げるときが来る。
昨年のThe Game Awardsで発表された「大神」の完全新作プロジェクトは現在開発中である。プラチナゲームズを退社し、クローバーズという新スタジオを立ち上げたオリジナルのクリエイターである神谷英樹氏が制作の指揮を執り、IPの保持者であるカプコンがパブリッシャーを務めている。カプコンのベテラン開発者から構成されたマシンヘッドワークス、エムツーも開発に関わっている。比較的新しい同チームは、すでに『大神 絶景版』を含む複数のカプコンのプロジェクトのサポートを手がけてきている。新進気鋭のクリエイターからオリジナルスタッフまで、才気あふれるメンバーが揃っているようだ。
しかし、感動的なティーザートレーラーと開発スタッフの情報を除けば、『大神』の続編についてわかっていることはごく限られている。直接的な続編なのか、誰が立案したのか、どのように実現に至ったのか、トレーラーに映っていたのはアマテラス本人なのか。
幸い、IGNではこのような質問の答えを得ることができた。本作はまだ開発が初期段階中の初期段階にあるが、ディレクターの神谷氏とプロデューサーを務めるカプコンの平林良章氏、マシンヘッドワークスのプロデューサーである坂田聖彦氏の3名にインタビューできた。2時間のロングインタビューで『大神』とその続編、それからこの新しいパートナーシップについて詳しく聞いたので、ぜひ読んでほしい。
※回答の一部はわかりやすさのために必要最低限の編集が加えられている。
――神谷さんは以前、プラチナゲームズを退社した理由について話していましたね。神谷さんにとってゲームの開発においてはどのような信念が重要で、それはクローバーズのゲームではどのような形で表現されていくのでしょうか。
神谷:難しい質問ですね。
平林:難しい質問が来ちゃいましたね。
神谷:そんな深刻そうな顔をしないでください(笑)。僕は、2023年9月に約16年間在籍したプラチナゲームズを退社することを発表しました。ずっとやってきたプラチナゲームズに骨を埋めるつもりでやってきたんですけど、会社の方針と自分のクリエイターとしての信念の方向性に違いを感じたことが退社の大きな理由です。僕の信念として、クリエイターの個性をゲーム開発に反映させることが重要であると考えています。僕もひとりのユーザーとしては、クリエイターの個性が反映されたゲームが好きです。現在のプラチナゲームズではそうしたクリエイターの個性を反映させたゲームを作ることができないと考えて、退社を決意しました。
そこからクローバーズという会社を立ち上げましたが、プラチナゲームズを辞めるときはまさか自分が会社を作ることになるとは考えてもいませんでした。僕の退社を発表してから、数多くの人が「神谷さんと同じ信念でゲームを作りたい」と言ってくれました。そうしたありがたい人と僕が一緒に働くことのできる場所が必要だなと思ったんです。いろいろな人の協力を得て、クローバーズを立ち上げてゲーム開発に取り掛かったというところですね。
――「神谷英樹のゲーム」とは、どのように定義されるものでしょうか? ユーザーはそのゲームを見たときに、どのようなところから「ああ、そうだ、神谷英樹がこれを作ったんだ 」と感じるのでしょうか。
神谷:「神谷英樹」というクリエイターの個性が反映されたゲームを作っていきたいとは考えているんですけど、ユーザーにとっては作り手が神谷英樹であることは知らなくてもいいと思っているんですよ。ユーザーに伝えたいのは、僕が作ったゲームの内容です。そのゲームの個性的なところやユニークなところも味わってほしいですね。神谷英樹のゲームならではのおもしろさを実現するために、自分のクリエイターとしての感覚を開発に注ぎ込んでいます。
――クローバーズとクローバースタジオに関係があるとすれば、それはどのようなものでしょうか。
神谷:クローバーズという会社の名前は、数多くのユーザーが僕の以前所属していたクローバースタジオを思い出すでしょう。しかしながら、僕としてはクローバースタジオをやり直したいと思ってつけた会社名というわけではありません。もちろんクローバースタジオは好きでしたし、そこで働いていた誇りはもっています。クローバースタジオの前身はカプコンの第4開発部で、そこで僕は三上真司さんからゲーム作りを学びました。三上さんに教わったことは僕のゲームづくりにかけるスピリットとして、今なお残っています。
クローバースタジオを分解すると、とある「C」を愛する集団でした。このCは「Creativity」で創造性を表しています。クローバースタジオを象徴する言葉としてふさわしいものだったのですが、クローバーという植物には4枚の葉がありますよね。Cが先頭の言葉のなかには、ほかにもポジティブなものがたくさんあるんですよ。そこで新会社のクローバーズでは、4つのポジティブなCを掲げてゲーム作りをしていくことを決めました。第4開発部から脈々と受け継がれてきたゲーム作りのスピリットを掲げたいと思ったので、新会社名をクローバーズにしました。
――『大神』新作プロジェクトの開発について、カプコンとクローバーズの関係性について教えてください。
平林:この質問はカプコン側からお答えします。カプコンは、『大神』のディレクターだった神谷ディレクターによる『大神』の新しいプロジェクトを立ち上げたいという思いをずっともっていました。「大神」というIPは数多くのファンに愛されている存在ですし、私たちカプコンも「大神」を愛しているんです。いつか『大神』の続編を作ろうと、私と竹内潤CS第一開発統括も話していたんですよ。
神谷さんがプラチナゲームズを辞められてしばらくしてからコミュニケーションを取りました。そうしたつながりがあって、『大神』続編のプロジェクトが動き始めていったんです。
――なぜ今『大神』の続編なのでしょうか。
平林:カプコンとしては、つねに『大神』の続編を開発するチャンスを探していました。プロジェクトを立ち上げるとなると、さまざまな準備が必要となります。開発チームはもちろん、開発を統括するディレクターも不可欠です。プラチナゲームズを退社した神谷ディレクターとマシンヘッドワークスが開発チームとして携わることのできる今だからこそ、『大神』の続編は実現可能なプロジェクトなんですよ。
神谷:僕としても『大神』の続編を作りたいと思っていました。2006年に発売された『大神』はもう19年前のゲームになるんですが、同作ではストーリーが完結していないんですよ。『大神』のストーリーを完結させたいという気持ちをずっともち続けていたんですけど、プラチナゲームズに在籍していたのでそちらの仕事に集中するしかなかったんです。僕がプラチナゲームズにいた頃も、カプコンの平林さんや竹内さんとはよくお酒を飲む機会がありました。プライベートな友だちレベルの会話ではありますが、「いつか『大神』の続編を作りたいよね」と話していましたよ。そしてプラチナゲームズを辞めたあとに、『大神』続編を考えてくれていた竹内さんや平林さんによって実現していった感じですね。
坂田:もともとクローバースタジオ出身の人間としては、『大神』はとても重要なIPでした。『大神』の続編を作りたいという気持ちを、カプコンもクローバースタジオから離れていった人たちも抱き続けていたんです。『大神』続編を開発するチャンスを、ずっと待ち望んでいました。ビジネス的に今じゃなきゃだめだということではないんですが、神谷ディレクターと開発チームが揃う今がベストのタイミングなのだろうと思います。
――坂田さんの所属するマシンヘッドワークスは、公式サイトが2024年12月にオープンしたばかりのようでした。あまりよく知らない読者のためにマシンヘッドワークスにを紹介していただけませんか。
坂田:マシンヘッドワークスは、カプコンと密接な関係にある「M-Two」をベースにした会社です。カプコンのさまざまなタイトルの開発に参加してきましたが、ユーザーにもっと私たちを知ってもらう必要があると考えました。そうした観点で生まれたのが、マシンヘッドワークスです。
神谷:僕たちは、カプコン第4開発部というルーツが一緒なんですよ。坂田、平林、神谷の3人は三上さんに教えを受けた「三上チルドレン」といっていいでしょう。
坂田:『大神』の続編の開発はカプコン、クローバーズ、マシンヘッドワークスの3社体制で行うことになりました。カプコンは『大神』のIPホルダーとして新作の基本的な方向性を決定し、開発のクオリティを管理しています。神谷ディレクターの率いるクローバーズは、『大神』の新作プロジェクトでは開発を主導しています。マシンヘッドワークスは、カプコンとクローバーズの間の架け橋のような存在ですね。過去の経験からカプコンが開発現場に求めることがわかりますし、神谷ディレクターのこだわりも知っています。『大神』続編の開発が円滑に進むように、カプコンとクローバーズの橋渡しをするのがマシンヘッドワークスの役割です。
カプコンのゲームエンジンである「RE ENGINE」が、『大神』の続編で採用されました。クローバーズにはRE ENGINEを使用した経験がありませんが、マシンヘッドワークスはRE ENGINEを使用した経験があります。RE ENGINEの技術的なサポートをクローバーズに行うことも、マシンヘッドワークスの役割になりました。マシンヘッドワークスとその協力会社には、前作の『大神』の開発に携わった人が数多くいます。そうした人々が『大神』続編の開発にも協力してくださっていますね。
平林:ちなみに、RE ENGINEを『大神』の続編で使うことは今回のインタビューで初めて発表する情報です。坂田さんたちには、RE ENGINEを用いた『バイオハザード RE:3』や『バイオハザード RE:4』の開発に協力していただきました。実は『大神』のPS4版をはじめとした現行機向けの移植にも、坂田さんたちに協力していただいていたんですよ。そうして培った経験を『大神』の続編に活かしてもらっています。
――なぜ『大神』の続編にRE ENGINEを使うのでしょうか。RE ENGINEでなければ実現できないことが本作に存在するのでしょうか。
平林:はい。ただし、現時点では詳しいことをお伝えすることはできません(笑)。RE ENGINEでなければ、神谷さんのもつクリエイティビティを存分に発揮することができなかったと考えました。それが『大神』の続編でRE ENGINEを使う理由です。
神谷:RE ENGINEの表現力の高さは、既存のタイトルでご存知のとおりです。「大神」の新作がRE ENGINEで動くのを僕自身が楽しみにしていますし、ユーザーのみなさまも同じではないでしょうか。本作ならではの表現に期待していただけるんじゃないかと思っています。
――商業的にはうまくいかなかったタイトルとして挙げられることもありますが、どうして『大神』はこれほど特別な存在であり続けているのでしょうか。
平林:PS2で『大神』が発売されたのはもう20年近く前のことですが、今の『大神』には何百万人というファンがいることを私たちは知っています。挑戦的なグラフィックやゲーム性をもつ『大神』に親しんでもらうのは、時間がかかるかもしれません。しかし、カプコンのIRページでシリーズソフト販売本数を見ていただければ『大神』の人気の高さがわかるでしょう。『大神』の新作を待ってくださっているユーザーは多く存在すると信じていますし、私たちはそうしたユーザーたちのために『大神』の続編を作りたいと思っています。
神谷:『大神』を発売した当時から、幅広いユーザー層にはリーチできなかったのではないかと思うことはありました。そこから長い年月が流れましたが、PS4などへの移植タイトルとなった『大神 絶景版』でユーザーが増えていったと考えています。僕のSNSにも、移植されたバージョンをプレイしたユーザーから『大神』が気に入ったというメッセージをいただくことがあるんですよ。より多くの人々にプレイしていただけるのは、クリエイターとして純粋にうれしいです。
『大神』の完全新作プロジェクトはThe Game Awards 2024で発表させていただいたのですが、ユーザーからの反響はかなり凄かったです。こんなにも多くの人に『大神』が親しまれていて、続編が望まれていたことに驚きました。僕自身の想像以上に受け入れられて、何よりうれしかったです。ユーザーの期待に応えるために、『大神』の続編は本当に良い作品にしようと気持ちを新たにしました。
YouTubeなどで『大神』の完全新作プロジェクト発表に対するユーザーのリアクション動画を僕もチェックしています。泣きながら喜んでくれるユーザーの姿を見ると、僕も一緒に泣いてしまいますね。こんなにも楽しみにしてくださっている人々がいるのは、本当にありがたいことです。
平林:カプコンからすると、「大神」シリーズは珍しいIPなんです。何より驚くのは、安定してユーザーを増やしているところです。ゲームの売上本数というのは、発売後は鈍化して右肩下がりになっていくものです。ときにはなんらかのインパクトによって、急速に上昇することもあるでしょう。しかし、「大神」は発売から長い時間が経ってもつねに安定してファンを伸ばしてきたIPなんですよ。私が見ているカプコンの販売実績からすると、「大神は決して古くならない」ということを実感しています。
神谷:今になって『大神』の続編を開発することができるようになったのは、何よりもユーザーからの応援があってのことだと思いますね。PS2で発売したオリジナル版は大きな成功を収めることはできなかったかもしれませんが、PS3以降のさまざまなプラットフォームに移植された『大神 絶景版』によって数多くのユーザーにプレイしていただけました。ゲームだけでなく関連グッズも作られてきましたし、次第に『大神』がユーザーに親しまれるようになったと感じています。
ユーザーのみなさんが応援してくれたことと僕たち開発陣の作りたいという気持ちが組み合わさったことで、『大神』の新作プロジェクトが実現したと思いますね。ユーザーからの応援がなければ決して実現できませんでした。本当にありがたいことだと思っています。
――『大神』のオリジナル版の開発者が集うドリームチームともいえる本作ですが、元クローバースタジオや元プラチナゲームズのメンバーが本作に携わる可能性はどれくらい存在するのでしょうか。
神谷:坂田さんの所属するマシンヘッドワークスを通じて、オリジナル版の『大神』に関わったメンバーが新作にも携わっています。今ここで個人名を挙げることはしませんが、オリジナル版では開発に深く関わったクリエイターもいますね。今の開発チームは、オリジナル版の開発チーム以上にパワーアップしていると思います。もちろん、オリジナル版の開発チームは『大神』を作ることに魂を込めました。しかし、ゲーム開発も歴史を重ねて近代化されていっているんです。本作の開発に集ったメンバーのなかには、僕とプラチナゲームズで一緒に働いた人もいます。腕利きのスタッフが揃っていますので、今は以前よりもスキルが高くてよりパワフルなチームになっていると思いますね。
――神谷さんは中村育美さんとのインタビュー動画で、オリジナル版ではもっと強い開発チームにしておけばよかったとおっしゃっていました。その点については解決したようですね。
神谷:はい、『大神』の新作プロジェクトではよりパワーアップした開発チームを作ることができました。中村育美さんとのインタビューは盛り上がったので、動画では話さないでおこうと思ったことまで話してしまいました。『大神』を開発していた頃のチームで、僕が不満に感じたことがあったのも事実です。今回のチームが僕の理想とするものであってほしいと思いますが、ゲームの開発というものは計画通りに進むことはありません。さまざまな問題が発生しますし、それを修正して開発を進めていくのは普通のことです。優秀なチームでも成功する保証はありませんが、現時点では開発メンバーは誰もが高い志を持って仕事をしてくれています。ただし、まだまだ人手不足ですので、良いゲームを作るという志のある新たな開発メンバーを募っています。我こそはと思う方は、ぜひ本作の開発チームに来てください。
平林:オリジナル版からは約20年経っていて、リアルタイムでプレイしていた人がクリエイターとして働けるようになっています。そういった人が開発チームに来てくれるかもしれませんよ。
神谷:それは素晴らしいですね。イケてる人はぜひ来てください(笑)。
平林:今回の『大神』の新作に携わることができるルートは3つありますので(笑)。クローバーズ、マシンヘッドワークス、カプコンの3つのルートから自由に選んで開発チームに加わってください。私たちの3社で1つのチームなので。
神谷:カプコンはもういいでしょう(笑)。人材は揃っているでしょうし。
平林:いやいや、カプコンだって優秀な人はもっとほしいですよ。私たちで人材を取り合っていてはいけないかもしれませんが(笑)。
――新作プロジェクトが発表されたあとに、『大神』を再プレイした方は今回のインタビューにいらっしゃいますか。
平林:忙しくて『大神』を再プレイする時間はなかったのですが、「画龍点睛」という関連書籍に付属していたDVDを繰り返し観ています。このDVDには『大神』のストーリーを紹介する映像が収録されているんですよ。そちらで『大神』を振り返っていても、最後のシーンで私は泣いちゃいますね。
神谷:そんなDVDが存在するなんて、僕は知りませんでした。
平林:そうなんですか? 私はてっきり神谷さんは知っているものと思っていました。
神谷:気になりますね。僕もそのDVDを観てみたいです。
坂田:残念ながら私も再プレイはできていません。その代わりとはいってはなんですが、娘が『大神 絶景版』のNintendo Switch版をプレイしていたことを覚えています。娘が『大神 』をプレイしたときは、たしか小学4年生か5年生くらいでした。娘は普段はあまりゲームをプレイしないんですが、『大神』には惹きつけられるものがあったんでしょうね。何より『大神』が優れているのは、プレイヤーに何をすべきかやどこへ行くべきかを上手に教えてくれるところです。本当に素晴らしいゲームだと思います。
平林:私の娘もNintendo Switch版で『大神』に興味を持ってくれました。私の娘は坂田さんの娘さんよりも幼かったのですが、「パパ、あのお花が咲くゲームをやりたい」と言ってくれたんですよ。『大神』は妖怪退治がゲームの大きな目的ですが、主人公がフィールドを走っているだけでも人を惹きつけるものがきっと存在するんです。『大神』の素晴らしさは、大人も子供も同じように受け取ることができることに感銘を受けました。娘が言ってくれたように、私にとって『大神』は「お花が咲く」ゲームなんですよ。
――シリーズ初代作の『大神』を振り返ったとき、もっとも誇りに思うことはなんでしょうか。どのようなことが『大神』を際立たせているのでしょうか。
神谷:僕は自然の多い長野県の出身なんですが、その後は大阪という都会に移り住んでここで仕事をしています。故郷の自然が恋しくなった気持ちをゲームで表現したいと思ったのが、『大神』の着想なんですよね。豊かな自然のなかで育まれるさまざまな命を、ポジティブに描くというのが『大神』で大切なところだと考えています。そのスピリットは、『大神』の新作でも必ず受け継いでいこうと思っていますね。
『大神』の新しいストーリーを待ち望んでいる人々がいることも理解しています。『大神』のストーリーは優しいだけではありません。自分の目的を達成できるキャラクターも存在すれば、道半ばで命を落としてしまうキャラクターも存在します。優しいところだけではなく、厳しいところも描かれるものとして『大神』のストーリーは僕のなかでも特別です。
坂田さんの娘さんと平林さんの娘さんが『大神』をプレイしてくれたように、新作も幅広い年代の人にプレイしてほしいですね。『大神』では美しい自然に癒やされることもできれば、ストーリーのなかで喜怒哀楽を感じることもできます。そうしたところを受け取って、楽しんでもらえればと思います。
――『大神』を作った頃と比較すると、ゲーム開発の技術についてはどのような変化がありましたか。技術的に新作で試みていることはどのようなものでしょうか。
坂田:ビジュアル面での『大神』のコンセプトは、グラフィックの柔らかさや手書きの暖かさでした。そうした味わいを実現するために試行錯誤したのですが、『大神』のオリジナル版を発売したPS2ではハードウェアの制約によって実現を諦めた部分も存在します。あれから長い時間が過ぎて、ハードウェアの性能は格段に向上しました。それは大きな変化と言っていいでしょう。
ゲーム開発の技術も進歩しましたし、知見の培われたRE ENGINEを本作では使うことができます。初代作で諦めざるを得なかった表現を、新作で実現できるのではないかと期待していますね。神谷ディレクターの頭のなかに存在する『大神』の世界を、最新の技術によってリアルに表現したいです。
神谷:素晴らしい回答で、本当にありがとうございます。僕も最新技術によって作られた『大神』の世界を早く見たいです。
――新しい技術といえば、Nintendo Switch 2について何か意見をお持ちの方はいらっしゃいますか。
神谷:僕の個人的な意見としては、バーチャルコンソールを復活させてほしいですね。このことは任天堂に強くお願いしたいと思っています。
――『大神』続編の具体的な内容については、現時点ではあまり語られていません。続編のストーリーについて教えていただけないでしょうか。
神谷:『大神』続編のストーリーは僕の頭の中に入っています。ゲームは開発チーム全体で作り上げるものですのでどのように表現していくかは今後の課題ですが、長年にわたる構想が明確に存在することは間違いありません。具体的なストーリーの内容はまだ話せませんが、開発陣の力を結集した最高のストーリーになるように開発を進めていきます。
平林:現時点で1つだけ言えるのは、本作のストーリーは初代作から時間軸的に連なるストーリーということです。そのことを信じて待っていただければと思います。
神谷:ユーザーが『大神』続編に何を期待しているかについては、僕はいつもSNSをチェックしています(笑)。ただし、僕たちの仕事はユーザーの求めていることだけを提供するわけではありません。ユーザーの想像もしなかったような楽しみを提供するのが、僕たちクリエイターの仕事なんですよ。そのあたりは期待してください。
平林:すでに神谷さんの頭のなかには、『大神』続編で実現したいストーリーがあるということですよね。
神谷:そういうことです。自分のなかで表現したいことがきっかけになっています。もちろん、ユーザーの期待を裏切るつもりはありません。ユーザーの期待に応えつつ、その期待を超えるような作品になることを目指しています。
――The Game Awards 2024で公開されたトレーラーに映っていたのは、初代作の主人公であるアマテラスですよね。
神谷:どうなんでしょうか。
一同:(笑)
平林:そこは隠さなくて大丈夫です(笑)。むしろ言ってください。The Game Awards 2024で公開されたトレーラーに映っていたのは、アマテラスです。
――ニンテンドーDSで発売された『大神伝 〜小さき太陽〜』についてはどのように考えていますか。
平林:『大神伝 〜小さき太陽〜』を楽しんだユーザーも当然います。その一方で、同作に不満を抱いたユーザーがいることも理解しています。ユーザーが『大神』に求める要素と、『大神伝 〜小さき太陽〜』が提供した部分がマッチングしなかったのかもしれません。今回の新規プロジェクトは、『大神』のファンの求める要素が何なのかという点に気を付けていければと思います。また、新作のストーリーが『大神』から”時間軸的に”連なる物語になっているということをあらためてお伝えしておきます。
――『大神』の続編は、開発のごく初期段階という理解で合っていますか。
平林:はい、そうです。本作は2024年末に発表されましたが、開発はまだ始まったばかりです。
――The Game Awards 2024で、こんなに早く発表したのはなぜですか。
平林:ワクワクが止まらなかったからです。ついに『大神』続編のプロジェクトをスタートさせることができるんですよ。弊社の竹内とも話して、「待っていてくれる人がいるから伝えよう」という結論になりました。このタイミングで発表することに、神谷さんと坂田さんは驚いたと思います。
神谷:The Game Awards 2024で『大神』続編を発表できて、実はホッとしているんです。というのも『大神』続編が単に夢では終わらずに、現実のものとして動き始めていることが明らかになったからなんですよ。世界中のユーザーに対して、『大神』続編を作るという約束ができたわけですから。
――完成までに時間はかかりそうですが、ファンはドアのノックをするように完成が待ち遠しい気持ちになることを予想していますか。
平林:そうした気持ちになることがあるかもしれません。開発チームはゴールまで駆け抜けますので、信じてください。ユーザーが待ちくたびれてしまわないようにゲームを発売することを目指します。しかし、もっとも重要なのは『大神』続編をいちばん良い形で届けることです。何よりもクオリティを重視した開発チームであることを、理解していただければと思います。
坂田:がんばります、としか言えませんね。
平林:これはどのタイトルにも言えることですが、リリースが早ければ早いほどいいというわけではありません。『大神』続編を待ち望むファンが満足できるようなクオリティのゲームにすることが、何より優先して目指すところだと考えています。そのことは開発チームの念頭にあって、そこからコミュニケーションを取っています。
神谷:待っていてくださる人をヤキモキさせてしまうとは思うんですけど、クオリティを重視したタイトルに仕上げますので制作に集中させていただければ幸いです。
――初代作をクリアすることでそのプロトタイプを鑑賞できる映像が存在しますが、『大神』続編のティザートレーラーを制作するにあたって意識した部分はありますか。
神谷:その映像と『大神』続編のティザートレーラーを比較する動画がアップロードされているのを、僕も確認しました。
平林:出ていましたね。比較されるということは、今も昔も『大神』が変わっていない証拠といえるかもしれません。
神谷:なるほど。そういう考え方もできますね。
坂田:『大神』の原点といえるイメージが、頭のなかに残っていて自然と似た映像になったということはありそうです。
平林:トレーラーのBGMは、『大神』の影響を受けていますね。初代作のラストバトルで流れる楽曲の『太陽は昇る』が新作のトレーラーに使われていることから、本作が『大神』の続編であることに気づいてもらえたと思います。
神谷:『太陽は昇る』のBGMをトレーラーで流すことによって、『大神』の続編を開発することをダイレクトに伝えられると考えていました。オリジナル版で『太陽は昇る』を制作してくださった作曲家の近藤嶺さんに、本作のトレーラー用のアレンジを作っていただきました。オリジナル版から20年近い時を経て、作曲家の近藤さんの想いも込められたトレーラーでした。
――皆さんが今、刺激を受けているエンターテイメントはなんですか。
神谷:僕がもっとも影響をうけているのは、宝塚歌劇ですね。1つの舞台で約80人の女性が男役も女役も演じるという、世界的にも珍しい演劇になっています。宝塚歌劇には5つの組があるんですけど、僕のお気に入りは花組です。花組の公演は必ず観に行くほど、のめり込んでいますね。
きらびやかな衣装や派手なショーももちろんですが、ぼくがもっとも気に入っているのは演出が工夫されていることです。映画ではCG が多用されており、別のシーンやカメラの切り替えによって思うがままの映像を作り出すことができます。その一方で舞台ではCGは使えませんし、カメラを切り替えることもできません。制約のなかで、やりたい演出を実現している舞台が好きなんですよ。そうした工夫は、ゲーム開発者としての自分にもとても参考になっています。
坂田:神谷さんと同じように、私も舞台が好きです。ほんの数人で登場人物を全員演じるような小さな舞台も観に行きますよ。リアルタイムでストーリーが進んでいくんですけど、クリエイターの伝えたいことがきちんと伝わってくる。舞台では演技のミスが発生することもありますが、それも魅力的に思います。決まりきった表現ではなくて、今まさに進んでいくというライブ感の存在する舞台がおもしろいんですよ。
舞台を観劇したあとに、毎回思うことは自由度の高いゲームを作りたいということです。開発者がこう楽しんでほしいという想いを込めつつも、ユーザーが楽しみ方を選べるような器の大きさを持つゲームを作りたい気持ちが強まっていきます。
神谷:坂田さんのおっしゃることに共感できます。舞台って毎回違うものなんですよね。本当に2回でも3回でも観ていられる。観客同士でライブ感を共有している感覚もたまらないものがあります。
平林:私はほかの2人とは違って、映画から刺激を受けることがおおいですね。最近観て感銘を受けたのが、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』です。ひとりのユーザーとして私は、ファンの期待に応えつつも、その期待を超えるような作り手の意志をこの作品から感じました。クリエイターの熱量が込められた本当に素晴らしい作品です。
神谷:まさに今日、僕も会社の後輩から『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』をオススメされました。
平林:私もオススメしますよ。神谷さんもぜひ観てください。この映画を観ると作り手の情熱が伝わってきて、私は好意的に受け止めました。
神谷:なるほど。観なきゃな。
坂田:『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』はおもしろい?
平林:何も言えないですね(笑)。それは映画を観た人が受け止めてください。私はおもしろかったですよ。確実にいえることは、心のなかにある池に石が投じられたような作品ということです。石が池に落ちたあとの波紋の広がりは、その人ならではのものですよね。
坂田:なるほど。作り手の情熱が伝わってくる映画はいいですよね。まだ見ていないのですが、興味が湧いてきました。
――皆さんにとって『大神』続編の成功とはどのようなものになるのでしょうか。
平林:カプコンからというよりも、個人的に回答させていただきます。初代作より数多くのユーザーの手に取ってもらえたら、『大神』の続編は成功したと考えています。
神谷:これは『大神』の続編に限ったことではないかもしれませんが、作り手の僕が「いいゲームを開発できた」と思うことができればプロジェクトは成功したと感じます。あくまで個人的に成功か失敗かが決まるような基準ですが、こういうふうに考えるのは「僕がいい」と思うことと「ユーザーがいい」と思うことが必ずしもマッチングするわけではないことが根底にあるからです。もちろん僕とユーザーの両方がいいと思えるようなゲームになるといいですけどね。少なくとも作り手としては、自分がいいと思うことのできるようなゲームに到達することを目指していきます。
坂田:クリエイターとしては1人でも多くの人にゲームをプレイしてもらって、楽しかったと言ってもらうことが成功したかどうかの重要な判断に関係すると思います。プレイした人が楽しめることはもちろん、その人がプレイしている様子を眺める家族などの周囲の人も楽しむことのできるようなゲームになれば『大神』の続編は成功したといえるでしょう。
マシンヘッドワークスの観点からすると、神谷ディレクターがプロジェクトに満足して作りたいゲームを作れたと思ってくれたときこそが成功だと思います。
――ゲームの進化は目覚ましいものですが、長期にわたって展開されるシリーズは操作性も変わってきます。操作性の変化については本作でどのように取り組まれたのでしょうか。
神谷:僕もひとりのプレイヤーとして、さまざまなゲームをプレイしています。そのプレイフィールをもとに、『大神』の続編ではアップデートされた操作性になると思いますね。正直なところ、初代作の『大神』ではコントローラーのどのボタンでどのアクションを繰り出せるかも覚えていませんし(笑)。初代作ではもちろん最適な操作性を追求しましたが、最新作では時代に合った新しい操作性が求められると考えています。
ただし、『大神』の新プロジェクトはシリーズの最新作でもあります。したがって、前作を完全に無視するわけではありません。初代作のユーザーも受け入れやすいように、前作をベースにした操作体系にします。その上で時代に沿ったアップデートを施して、最適な操作性を探っていきたいところですね。
――神谷さんのクローバーズと坂田さんのマシンヘッドワークスが、これから10年後に成功したといえるようになるためには、どのようなことが必要になってくるでしょうか。
坂田:マシンヘッドワークスという会社の、10年後についての具体的な目標は今のところありません。会社員としていうと、私も神谷さんも10年後は定年退職してもおかしくない年齢になっています。クリエイターとしては定年はありませんので、私は10年後もゲームを作り続けていることでしょう。会社が10年後も安定して経営できていて、私個人もゲーム開発を継続できていれば、両者にとって成功といえるでしょうね。
神谷:僕は自分のクリエイターとしての信念を叶えるために、クローバーズという新規のゲーム会社を立ち上げました。まだ日が浅いですが、僕と同じ志を持った仲間たちが一緒に働いてくれています。クローバーズで働くクリエイターをもっと増やしていくのが、当面の目標ですね。人が増えたとしても、同じ方を目指してゲームを開発できるような開発にしたいと考えています。
クローバーズは僕のゲームを作ることだけを目的とした会社ではありません。同じ志をもったクリエイターが集う会社だと思っています。たとえば、若手のクリエイターが目覚ましい成長を遂げて会社を代表するようなタイトルを生み出してくれれば最高ですね。
――最後に、ファンに向けてメッセージをお願いします。
平林:2024年12月にお披露目された『大神』新作プロジェクトはクローバーズ、マシンヘッドワークス、カプコンの3社が共同して作り上げていきます。協力することで『大神』の続編がより素晴らしいタイトルになることを目指していきますので、完成までお待ちください。
坂田:ゲームをプレイできるようになるのは、まだしばらく先になるかもしれません。『大神』の続編は、神谷ディレクターをはじめとしたこのシリーズを愛しているスタッフが情熱を込めて作っています。過去作を楽しんでくださったユーザーの期待に応えることはもちろん、その期待を超えていけるような作品になることを信じています。ぜひ、待っていてください。
神谷:『大神』の続編は僕自身が本当に作りたかったタイトルですが、ユーザーの皆さんの応援がなければ絶対に実現できなかったプロジェクトだと思っています。この場を借りて、感謝の気持を伝えさせてください。本当にありがとうございます。本作の開発に際しては、カプコンとマシンヘッドワークスといったさまざまな人からの協力によって進めることができます。人と人の縁というのは本当に大切なものだと、僕自身も感じました。『大神』の続編を素晴らしい作品にしますので、ユーザーのみなさんはこれからも応援してください。
平林:ちょっと完璧すぎるコメントですね。本当に今、神谷さんの言ったコメントですか?
神谷:優等生的なコメントでしたかね(笑)。でも本当に思っていることなんですよ。
平林:ここまでの流れを記事で使ってほしいんですよね(笑)。
神谷:いやいやいや(笑)。本当に、ファンと協力会社のみなさんに感謝しているんでよ。ありがとうございます。
変更(24/02/17)
発言意図に沿うように一部の表現を変更いたしました。
