- 1 「離職証明書」と「離職票」の関係
- 2 失業手当の受給要件となる「被保険者期間」
- 3 離職理由の最終決定プロセスと「異議あり」の主張方法
- 4 ハローワークによる公正な判定
- 5 事業主が離職証明書に記載する「やむを得ない場合」とは
- 6 離職後の署名と返送について
- 7 特定受給資格者の主な要件
- 8 特定理由離職者の主な要件
- 9 一般の離職者の主な要件
- 10 給付制限期間について
- 11 まとめ

1 「離職証明書」と「離職票」の関係
退職する際に会社から交付される「離職票」は、失業手当(基本手当)の受給手続きに必要となる重要な書類です。
この離職票について、混乱しやすい点や知っておくべきポイントを解説します。
1-1 離職票 とは
会社がハローワークに提出す書類で、正式名称は「雇用保険被保険者離職証明書」といい、これは3枚綴りで、黄緑色の記載がされている、A3の複写式用紙です。
1枚目: 会社が保管する「事業主控え」
2枚目: 会社がハローワークへ提出する書類
3枚目: ハローワークの確認後に、会社から離職者本人へ交付される「雇用保険被保険者離職票-2」(以下、「離職票②」と略。)
これにハローワークで交付される「雇用保険被保険者離職票-1」が加わり、この2枚を合わせて一般的に「離職票」と呼びます。
会社の手続きとして、この「雇用保険被保険者離職証明書」を「雇用保険被保険者資格喪失届」と一緒に、離職日の「翌々日から10日以内」に、事業所を管轄するハローワークへ提出します。
1ー2 離職票の交付は希望しよう
離職票の交付は、原則として59歳未満の離職者は会社に希望を伝える必要があります(59歳以上64歳未満の場合は、希望の有無にかかわらず会社に交付義務があります)。
「今回は失業手当を受給する要件を満たさないから、離職票は不要」と考えてしまう方もいるかもしれません。
しかし、雇用保険の被保険者期間は「通算」することが可能な場合があり、将来的に失業手当の受給資格を得られる可能性があります。
そのため、たとえすぐに失業手当を受給しない場合でも、59歳未満の方は会社に離職票の交付を希望しておくことを強くおすすめします。
また、「離職票の交付には法的な時効はありません」が、退職後時間が経つと会社への依頼がしにくくなったり、実務上対応が難しくなったりするケースもあります。
できるだけスムーズに手続きを進めるためにも、退職時に会社へ交付を希望しておきましょう。
2 失業手当の受給要件となる「被保険者期間」
2-1 雇用保険の被保険者期間とは
失業手当を受給するためには、原則として「離職日以前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算して12か月以上あること」が必要です。
ただし、会社都合による退職などの「特定受給資格者」や、やむを得ない事情による「特定理由離職者」の場合は、「離職日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あること」として、要件が緩和されます。
この「被保険者期間」は、離職日からさかのぼって1か月ごとに区切った期間で、その期間中に賃金支払基礎日数が11日以上(または、11日未満であっても80時間以上)ある月を1か月として計算します。
2-2 雇用保険の被保険者期間は「通算」できる
「転職を繰り返しているから、被保険者期間が足りないかも…」と心配される方もいるかもしれません。
しかし、雇用保険の被保険者期間は通算することが可能です。
たとえば、前職を離職後、ハローワークで失業手当の求職申し込みや受給資格決定の手続きをしたとしても、実際に1円も受給せずに1年以内に雇用保険の対象となる形で再就職した場合は、前職の被保険者期間が新しい職場の期間に通算されます。
これにより、失業手当の受給要件を満たすことができるのです。
3 離職理由の最終決定プロセスと「異議あり」の主張方法

会社を辞める際の離職理由は、失業給付の受給資格や期間に大きく影響する重要な情報です。
この離職理由の最終的な判定は、離職者自身の居住地を管轄するハローワークが行います。
4 ハローワークによる公正な判定
4-1 会社の離職理由に「異議あり」
会社が作成する離職証明書には、会社が主張する離職理由が記載されます。
しかし、もしあなたがその離職理由に異議がある場合は、離職票②の「離職理由について(異議の有無)」の欄で、「異議有り」にチェックを入れ、あなたの住所地を管轄するハローワークに提出しましょう。
ハローワークは、提出された離職票と異議申し立ての内容を受け、会社とあなた双方の主張を確認します。
そして、客観的な資料などを集めて事実関係を調査した上で、最終的な離職理由を中立的に判定します。
4-2 「異議あり」の意思表示と署名についての誤解
会社記載の離職理由があなた自身の認識と異なる場合、雇用保険被保険者離職証明書の3枚目にある⑯欄「離職者本人の判断」で「異議有り」に丸を付けてください。
これは、会社が記載した離職理由に対して異議があることを明確にするためのものです。
一方で、同じく3枚目の⑰欄「⑦欄の自ら記載した事項に間違いがないことを認めます。」には、
≪離職者自身が記載した内容(例えば、異議の申し立てなど)に間違いがないことを確認する意味合いがあるため、署名または記名押印をする必要があります。≫
これは、会社が記載した離職理由には同意しないものの、異議を申し立てたという事実については認めるという理解になります。
4-3 上司の監視下での離職証明書記載は不適切

離職証明書は、会社が作成し、離職者本人に内容を確認してもらうものです。
上司の監視下で記載させることは、離職者の自由な意思表示を阻害する可能性があり、適切ではありません。
例えば、パワハラが離職理由であるにもかかわらず、その加害者である上司の前で離職証明書に記載をすることは、実務上、非常に困難であり、不適切と言わざるを得ません。
このような状況では離職者が不当な圧力を感じ、異議を申し立てること(異議有りと、その理由の記載)を躊躇してしまう可能性が高いでしょう。
このような状況を避けるためには、以下のような対応が考えられます。
・上司のいない場所で、落ち着いて内容を確認したり、記載できる機会を設ける。
・郵送で送付し、記入後に返送してもらう、
・人事担当者など、上司が同席しない状況で確認・記載を行うなど、が考えられます。
もし会社が適切な対応をしない場合、ハローワークに相談してください!
(参考)異議を申し立てる場合は、書面(内容証明郵便など)で会社に送付することも有効な手段です。
これにより、会社側が離職証明書の内容を勝手に変更することを防ぎ、離職者の意思を明確に伝えることができます。
◎重要なのは、離職証明書への署名は、退職の条件ではないということです!
後述のとおり、離職者が署名を希望しない場合、事業主は署名を強制することはできません!
5 事業主が離職証明書に記載する「やむを得ない場合」とは
雇用保険被保険者離職証明書の3枚目(離職票②)の⑯欄への離職者の署名(または記名押印)は、原則として必要です。
しかし、「やむをえない場合」で⑯欄に署名を得ることができなかったときは、事業主がその理由を記載して、本人に代わって事業主がサインして提出することになります。
「やむをえない場合」とは、具体的に以下のケースが考えられます。
・1 離職者が署名を拒否する場合: 最も一般的なケースです。
離職者が会社の提示する離職理由に納得できない、あるいは単に署名したくないという意思表示をした場合です。
この場合、事業主は署名を強制することはできません。
・2離職者と連絡が取れない場合: 離職者が会社を無断欠勤し、そのまま退職してしまい、連絡先も不明であるなど、音信不通になってしまったケースです。
・3離職者が海外にいるなど、物理的に署名が困難な場合: 離職後すぐに海外へ転居してしまった、あるいは遠隔地にいるため、書類のやり取りに時間や労力がかかりすぎる場合などです。
・4離職者が病気や事故などで、署名する能力がない場合: 重度の病気や意識不明の重体など、本人が物理的に署名することが不可能な状態である場合です。
・5署名手続きに関する合意が得られない場合: 会社側が提示した署名方法について、離職者側と合意が得られない場合です。
こうした場合、≪事業主は3枚目⑯欄に「本人拒否」「連絡不能」「所在不明」などの具体的な理由を記載し、事業主が署名(記名押印)して提出する≫ことになります。
6 離職後の署名と返送について
離職者が「離職後に記載して返送することは、実務上、可能です。
法律上、離職証明書をいつまでに離職者が確認・署名しなければならないという明確な期日規定はありません。
しかし、会社は離職日の翌々日から10日以内にハローワークへ離職証明書を提出する義務があるため、現実的には離職日からあまり時間が経ってしまうと会社が手続きに間に合わなくなります。
したがって、会社としては、離職日までに離職証明書の内容を確認してもらい、署名を得ることを推奨しますが、離職者が「後日郵送で返送する」と申し出た場合、会社は離職者に対し、返送期限を伝えるなどして、速やかな返送を依頼することになります。
もし、離職者が期日までに返送しない場合、会社は前述の「やむをえない場合」として「本人未返送」「連絡不能」などの理由を記載して提出することになります。
離職理由の判定は、あなたの今後の生活に影響を与える重要な手続きです。
不明な点があれば、遠慮なく居住地管轄のハローワークに相談しましょう。
7 特定受給資格者の主な要件
雇用保険における特定受給資格者とは、会社の都合などにより離職を余儀なくされた方を指します。
この区分に該当すると、一般の離職者よりも早く失業給付を受給できるだけでなく(給付制限なし)、状況によっては受け取れる失業給付の日数(所定給付日数)が手厚くなるという利点があります。
主な要件は以下の通りです。
① 倒産
会社の倒産(破産、民事再生、会社更生、特別清算など)で離職した場合。
② 解雇・退職勧奨
会社から解雇された場合(ただし、あなたに重大な責任がある解雇は除きます)。
③ 会社から強く退職を勧められた場合(ただし、本人の自由意思に基づき「早期退職優遇制度」等に応募した場合は、特定受給資格者と認められない可能性があります)。
④ リストラ(事業所の閉鎖、事業活動の縮小など)
勤めていた事業所が閉鎖されたり、事業活動が縮小されたりした場合。
⑤ 長時間労働
離職する前の6ヶ月間に、以下のいずれかに該当する時間外労働があった場合。
・3ヶ月連続で月45時間を超える時間外労働があった。
・1ヶ月で月100時間を超える時間外労働があった。
・6ヶ月の平均で月80時間を超える時間外労働があった。
⑥ 労働条件の相違
採用された時の労働条件と、実際に働いたときの労働条件が大きく違ったために離職した場合。
(例:正社員として採用されたが、実際はアルバイト扱いで社会保険が未加入だった場合など。)
⑦ 賃金に関する重大な問題による離職
以下のいずれかに該当する場合。
・賃金不払い(重大な未払額)
離職日以前6か月間に、退職手当を除く賃金の3分の1を超える額が、
支払期日までに支払われなかったことを理由に離職した場合。
・賃金低下(85%未満への低下)
支払われた賃金が、それまでの賃金と比べて 85%未満 に低下した
(またはその見込みがあった)ことを理由に離職した場合。
※ 公式基準に「連続○か月」の要件はない。
・労働条件の相違(賃金に関する重大な相違)
労働契約締結時に明示された労働条件(賃金を含む)と実際の条件が、著しく相違 していたことにより離職した場合。
⑧ 期間の定めのある労働契約の更新拒否(雇止め)
有期雇用契約(例:1年契約)を繰り返し更新し、##通算して3年以上その会社で働いた後##に、本人が引き続き働くことを##希望##したにもかかわらず、会社側の都合で契約を更新してもらえなかった場合。
⑨ パワハラ・セクハラ等
事業主や職場の従業員から、就業環境が著しく害されるような言動(セクシャルハラスメント、パワーハラスメントなど) を受けたことにより離職した場合。
⑩ 事業所の移転による通勤困難
・会社の移転により、往復4時間以上(片道2時間以上)の通勤が必要となり、通常の通勤が著しく困難になったため離職した場合。
ただし、会社から移転の通知が1年以上前に行われ、実際の移転後おおむね3か月以内に離職したときに限る。

8 特定理由離職者の主な要件
特定理由離職者とは、会社都合ではないものの、やむを得ない理由で離職した人を指します。
この区分に該当すると、一般の自己都合退職と異なり給付制限がありません。
※##所定給付日数は原則として一般の離職者と同じ(例外あり)。##
① 雇止め(ただし特定受給資格者に該当しないケース)
期間の定めのある労働契約が満了し、更新されなかったことにより離職した場合。
特定受給資格者となる要件(例:通算契約期間3年以上など)に該当しない雇止めはこちらに分類されます。
※この「雇止め」に限り、2027年3月31日までの時限措置として、所定給付日数が特定受給資格者と同様に手厚くなる場合があります。
② 正当な理由のある自己都合退職
以下のように、業務継続が困難と認められる事情による退職です。
・健康上の理由:疾病・負傷・心身の不調・体力の不足などで勤務継続が困難
・妊娠・出産・育児:母体保護や育児との両立が困難
・親族の介護:父母・配偶者・子などの介護が必要で勤務継続が困難
・結婚による住所変更:住所変更により通勤が困難となった場合
・配偶者の転勤:転居を伴う転勤で通勤が不可能となった場合
・事業所移転・転勤による通勤困難
※ただし、特定受給資格者の「事業所移転による通勤困難」に該当しないケースのみ(例:通勤時間が往復4時間未満 など)
・希望退職制度への応募(人員整理目的でない一般的募集の場合)
③ 教育訓練受講のための離職
専門実践教育訓練(専門学校・大学院等)を受講するため、やむを得ず離職した場合。
9 一般の離職者の主な要件
特定受給資格者・特定理由離職者のいずれにも該当しない場合、一般の離職者として扱われます。
給付制限(待期後1〜3か月)が適用される、所定給付日数が短いなどの特徴があります。
・転職・キャリアアップを目的とした退職
・結婚・転居による退職で、通勤困難と認められない場合
・職場・仕事への不満による退職 (人間関係、仕事内容への不満、労働条件への不満など)
10 給付制限期間について
10-1 雇用保険離職理由の3区分
① 受給資格者(会社都合) → 給付制限なし
② 特定理由離職者(やむを得ず) → 給付制限なし
③ 自己都合退職者(通常の自己都合) → 原則2か月(※令和7年時点の短縮後)
2025年3月31日以前の離職:原則 2か月
2025年4月1日以降の離職:原則 1か月
重大な責めに帰すべき理由での退職(重責退職者) →## 一律 3か月の給付制限##
10-2 給付制限期間が3か月となる場合
・退職日から遡って5年間に、正当な理由なく自己都合退職を2回以上行い、受給資格決定を受けている場合
・重責解雇(重大な理由による解雇)場合
本人に重大な責任がある解雇(懲戒解雇相当)の場合、給付制限は原則3カ月間となります。
重大な責めに帰すべき理由による退職(いわゆる重責解雇)と判断された場合は、他の要件にかかわらず、一律で3か月の給付制限となります。
例:
・会社の金品の横領・盗難
・正当な理由のない無断欠勤の繰り返し
・勤務中の私的行為の常習化により業務に支障
・セクハラ・パワハラなど職場秩序を著しく乱す行為
10―3 重要な実務ポイント
・判断は必ずハローワークが個別具体的に行う
・主張を裏付ける資料(離職票、給与明細、タイムカード、医師の診断書など)があると有利
・同じ事由でも認定される/されないケースが分かれるため、事前相談が重要
11 まとめ
失業手当の制度は一見複雑に感じられますが、基本的な仕組みを押さえておけば理解がぐっと進みます。
今回の Part1 では、失業手当の基礎となる考え方と、失業手当等に関わる前提知識を整理しました。
ただし、具体的な取扱いは個々の離職理由や勤務状況によって異なる場合がありますので、疑問がある場合は 退職前にハローワークへ確認することを強くおすすめします。
最後までお読みいただきありがとうございました。
































