2025/1/3,埼玉県川口市のゴミ処理施設で火災が発生した。施設の復旧には半年ほどかかるという。とりあえず2日間のゴミ収集を停止し,翌週からは回収して近隣の自治体に処理の協力を仰ぐことになった。火災の原因が,リチウムイオン充電器の可能性が高いとされている。
筆者も,ゴミを捨てる方法をいつも悩んでいる。特に電池類は悩みの種である。規格化されているボタン電池は,いずれまとめて家電店に持って行こうと思って,セロテープで電極を覆ってビニール袋に溜めている。接触して通電すると発熱する恐れがあるからである。しかし,回収した後,セロテープが邪魔にならないのかどうか,いつも気にしている。さらに,集まったボタン電池が本当に回収されているのか,回収後きちんとリサイクルされているのか,まったく分からない。かつてはボタン電池に水銀が含まれていたので回収が義務づけられたのだが,現在のボタン電池に水銀は基本的に使われていないので,回収しても単に産業廃棄物として埋め立てられているのではないかと思っている。
乾電池も同様である。こちらも電極をセロテープで覆い,燃えないゴミの日に別の袋で出している。しかし,乾電池自身がすでに液漏れしているものもあり,こちらはリサイクルはされていないだろう。大量に廃棄された乾電池が適切に処理されているのか,疑問である。
そして厄介なのがリチウムイオン充電池である。乾電池と同じサイズの電池もあれば,モバイルバッテリーという独自の形状のものもある。日本で使われているモバイルバッテリーのおそらく半分は中国からの輸入品である。家電量販店での引き取りの対象になっていないものが多い。こうしたモバイルバッテリーの廃棄がうまくできないのが,今回のごみ処理施設の火災につながるケースだと思われる。
かつて,日本は乾電池もニッカド充電池も世界一の生産国だった。20世紀後半の高度成長期に高品質の製品を世界中に供給してきた。現在,日本では電池は生産していない。すべての品種について中国製電池に比べて生産コストが合わないためである。2019年のノーベル化学賞を受賞したリチウムイオン電池も,原料の高騰により,産地の1つである中国が圧倒的に生産量が多い。モバイルバッテリーも,大容量だったり太陽電池パネル付きだったり,複数のケーブルが実装されているなど,魅力的な製品が中国から大量にAmazon経由などで日本国内に販売された。その行き先がない状態なのである。
「都市鉱山」と呼ばれるほど,携帯電話やタブレットなどのIT機器は希少原料が使われている。東京オリンピック2020では,メダルの材料として都市鉱山からリサイクルした金属を使うとしていたが,実際に混入したのはわずかである。リチウムイオン電池も適切な処理をすればリサイクル可能なはずだが,圧倒的にコストが合わない。結局は埋め立てられてしまう運命にある。
ただ,埋め立て処理するために持ち運んだり集めたりする工程で,発火や爆発のリスクがあるため,だれも手を出せない。家電量販店も手を挙げないし,資源回収業者も手を挙げない。購入店以外で引き取るとすると,たとえばAmazonの通販で購入したモバイルバッテリーをAmazonに返送することになる。しかしまず,返送で郵送や宅配便を使った際にモバイルバッテリーが発火や爆発をしないという保証はない。さらに,Amazonの場合は,返送受け付けの窓口が別途あるのだが,通常の希望に合わない「即返品」品であっても,基本的には廃棄処分しているというから,モバイルバッテリーをリサイクルを含めて適正に処理できるとは思えない。何しろ,大量の返品品を取り扱っているからである。
モバイルバッテリーだけでなく,液状の中身の残ったゴミを一般消費者が適切に処理して捨てているかどうかを考えると,ほとんど配慮されていないのが現状である。洗剤は一般に最後まで使うが,大掃除に使うような比較的強力なアルカリ洗剤や酸洗剤などは,一度に使い切ることはなく,翌年まで残ってそのまま廃棄するケースも多い。一般に中身を流し切ってから容器をゴミに出すのがルールだが,しかし一般の排水口に中身を流していいのだろうか,と考えると気になる。一軒家なら土を掘って流すことも考えられるが,自宅の庭に危険物を流す人はまずいないだろう。
スプレー製品も使い切ってから捨てるのがルールだが,殺虫剤を最後まで使い切るのに何年かかるかなどを考えると,薬を使い残したまま捨てたくなる気持ちも理解できる。さすがに,カセットコンロのボンベは最後まで使い切るだろうが,それでも缶に穴を明けるか開けないかは自治体によっても指示が異なるし,個人によっても扱いが変わる可能性がある。
危険物ではないが,プラスチックゴミの分別も実は厄介である。自治体やスーパーで提供している分別ボックスで,透明プラスチックと発泡スチロールはリサイクル可能としている。しかし,透明であっても色付きの透明プラスチックは混在させてはならないし,紙ラベルが付いていてもダメである。ところが,発泡スチロールであれば,別に白いものでなくても,色付きの発泡スチロールはリサイクルできる。紙ラベルは外す必要があるのは当然なのだが,きちんとすべてはがす必要がある。表面だけめくれて紙が残っているのはダメなのである。そこまで気を使って分別する人がいるかどうかという問題と,それだけ分別しても果たしてきちんとリサイクルされているのかどうかもわからない。
プラスチックのリサイクルは本当に可能なのだろうか。残念ながら,サーマルリサイクル,つまり燃やして熱エネルギーに変えるしか,方法はない。現代のすべてのリサイクルは,無駄な努力であるように思えてきている。
そして,かつて際限なく量産を続けて公害を生み出した日本が歩みを止めたように,太陽電池も鉄も電池も際限なく作り続けている中国の動きを止めなければならない。そして,電力もプラスチックも,そしてAIも宇宙進出もすべて一度止めた方がいいのではないだろうか。
AIが人類の英知を越えるのは,かつては2045年とされていたが,これが何と2028年にシンギュラリティを迎えるという予測に変わっているという。人類は一度立ち止まって,正気を取り戻す必要があるのではないか。
そしてモバイルバッテリーに関しては,家電量販店だけでなく,現在,レンタルモバイルバッテリーを設置している鉄道駅にも回収箱を設置してはどうだろうか。ただし,普通の回収箱ではなく,ショックを与えないことと,温度管理ができるような箱が必要である。そして,回収したすべてのモバイルバッテリーを適切に分解して安全に処理する方法を世界に示す必要がある。
しかもこれはモバイルバッテリーだけではない。世界で暴走するEV(電気自動車)用のリチウムイオンバッテリーのリサイクルにも関わってくる。その指針を日本が世界に対して示すべきなのである。