2025年が終わろうとしている。年末年始休みに入り,どうやら政治もお休み状態のようである。経済は正月需要の追い込みで商売繁盛,と言いたいところだが,中国からの観光客の減少,円高,商品の値上げなどで苦戦している。国民の6割が,旅行も何もしない正月だという。
戦後80年で自由民主党から高市早苗氏が初の女性総理大臣となった。かつて,イギリスのサッチャー首相やメイ首相,ドイツのメルケル首相といった世界を動かした女性リーダーと比べると,世界へのプラスの影響力を発揮できる状況にないように思える。そこに日本維新の会と国民民主党がコソコソと自党の国内案件を実現するだけの理由で与党に加わろうとしている。高市政権も国内政治の調整だけで手いっぱいで,国際政治に対して何の布石もできない状況にある。
2024年には,ノーベル平和賞を日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が受けた。折しも,ウクライナ紛争が開始から4年,ガザ紛争が2年,そしてミャンマーとタイの間での紛争が進行中と,世界各地で紛争が継続している中で,「核兵器を無くせば世界は平和になる」という楽観論の団体の受賞から1年経っても何の影響力もなかったことを示してしまった。2025年のノーベル平和賞がヴェネズエラの反体制派指導者マリア・コリナ・マチャド氏に与えられたが,1991年に受賞したミャンマーのアウンサンスーチー氏が引き続き囚われの身であることなどを見ても,残念ながら西側,自由諸国側の論理以外の何物でもない。かえって非受賞国側を刺激するだけなのかもしれない。
筆者としては,この時期に世界にアピールするための女性首相として別の人物を推してきた。国際問題に明るく,風格も堂々としており,各国のリーダーと対峙しても引けを取らない人物である。かつて,外交に明るい岸田首相に期待したのも,同じ理由だったが,残念ながら暴走してしまった。高市内閣での女性大臣の起用が今ひとつ少ない中にも入ることはなかった。
高市首相が,就任直後の国会論戦において立憲民主党の執拗な質問に対して思わず答えてしまった一言によって,中国から強い批判が寄せられ,これにロシアが同調した。米中露の微妙なバランスの中にある現在の世界情勢の中で,残念ながら日本が火種になってしまう可能性が出てしまった。これまでの平和主義という名の「日和見主義」だった日本が,一気に軍事国家への道に逆戻りするような印象を与えてしまった。実際,防衛費の増額だけでなく,海外への武器輸出,自衛隊の海外対応など,外から見ればアメリカのトランプ大統領からの圧力を受けて予算を増額したとしか見えないかもしれない。
残念ながら,トランプ大統領との会談と中国の習近平代表との会談の様子は,一国の代表者のやり方ではなかった。国を背負っているようには見えなかった。
そもそもの女性首相誕生が,政党の党首としての政治実績や自治体の長としての政治実績に基づかない限り,最終的には足の引っ張り合いになることは目に見えている。そういう意味では,現在で東京都知事10年となる小池百合子氏に期待する面もないわけではないのだが,元メディア人という視点で見てしまうと看板倒れになってしまうようにも思える。
逆に,戦後の女性の選挙権獲得などの女性解放が進み,男女雇用機会均等法,そして男女の枠を越えた「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」などが制定され,LGBTなど性的マイノリティと言われる人たちの社会的立場を保護するようになった。男性と女性という2分割の世界から,多様性を認識する世界へと変わっていこうとしているのも2025年の流れだったかもしれない。
世界中も,単に西側諸国対東側諸国という単純な図式ではなく,戦後に世界2位の経済大国になった日本からモノづくり生産力を一気に奪い取った中国と,アメリカの独走に対抗できる経済圏を作り上げたEU(欧州連合)など,経済面での多極化に加え,軍事力で主張する北朝鮮,世界最大の人口を誇るインドなど,世界の動きを左右する存在の国が独自の国際戦略を取っている。その中で,日本の位置づけは最終的にはアメリカの傘の下という情けない位置にある。地球温暖化に対する技術発信をすべき立場にあると筆者は考えるのだが,まったく何の動きもない。
2025年のノーベル化学賞の北川進先生,ノーベル生理学・医学賞の坂口志文先生の受賞で,日本の基礎研究が評価されたと思う。いずれも地球温暖化や病気克服など,まさに人類の将来に貢献する技術である。しかし,その後の日本の基礎研究力は低水準となり,予算も削減されている。現在,研究現場で働いている研究者には励みになったとしても,研究の将来が保証されるわけでもなく,自分たちが生活できるのかも定かではない。さらに,現在の子供たちに「研究職」に進みなさい,と推薦できる環境がまったくない。「末は博士か大臣か」と言われて研究職が先生と持ち上げられた時代は終わった。いまや,大学院の博士課程の半数以上が海外からの留学生が占めている。
2000年を境に日本の景気が低迷し,企業の経済活動力も低下した。正規社員採用が減り,非正規就業が半数を超える時代である。安定した収入を得られる職業がなくなりつつある。高度経済成長を支えたモノづくり産業も,世界に誇った家電企業も,そして最後の牙城でもあった自動車産業も,すべて落ち目になっている。インターネット企業も,ほぼすべてがアメリカの企業で独占されている。2025年に爆発的に拡大した生成AIも,かつて人工知能研究で世界をリードしていた日本がまったく手も足も出ない状態にある。
年末のテレビを見ると,お笑い,クイズ,エンタメ,そして昭和回顧番組などしかない。もはや筆者はここ何年も見ていない紅白歌合戦だが,出演者の名前も曲もまったく分からない。年末年始休みだからといって,笑って騒ぐだけの日本人は世界からはまったく理解のできない「変な国」だと思われているのではないだろうか。いわゆる日本文化を観光資源化するとともに,エンタメ,コスプレ,ガンプラ,アニメキャラなどのコンテンツと,何でもありの食文化への驚きを求めて,世界から日本にコワイもの見たさで観光客が押し寄せる。変な国なのである。
外資を稼げるモノづくりなどの企業組織が崩壊した結果,男性が高収入を安定して得られる仕事がなくなった。戦後であれば,一生懸命勉強していい大学に入ればいい企業に就職でき,これらがブランドとなっていい結婚ができ,裕福な家庭を作り,定年まで働いてあとは年金で優雅に過ごす,というのが理想的なシナリオだった。しかし,一生懸命勉強していい大学に入っても,就職先がなく,就職できても薄給で,そのうち定年制度がなくなった。転職が当たり前のように行われるようになり,人材の育成も確保も難しい状態になった。本来ならいい仕事をする環境を与えれば社員は自ら成長していくものだが,福利厚生や給与だけを売り物にした企業も目立つ。2024年以降,ベースアップの動きが報道されているが,それは大手企業が人材確保のためにやむなく取った戦略であり,中小企業はむしろ減額の動きである。結局,社員の給与アップは製品への価格転嫁となり,国民生活を苦しめる結果になっている。
全国で数千もの子供食堂が開催されている。地域のコミュニティーを支える活動と言われているし,実際に助かっている家庭も多い。しかし本来,このような活動はなくても平和に豊かに生活できる社会が当たり前だと思わないといけない。こども食堂を利用している家族は,多くが母子家庭ではないかと思う。かつてのように男性が給料を稼ぎ,女性が家庭を守る,というステレオタイプな家庭像では,男性が外で働いて給料を家に入れてさえいれば,男性の行動への規制もない代わりに家庭はそれなりに楽しいものになっていた。しかし,男性の収入が不安定になり,家庭を持っても女性も働く共稼ぎ家族が増え,子供が放置されるようになった。この子供たちをサポートする保育園も数が足りないのに加えて,保育士の質が急激に低下し,犯罪行為まで目立つようになった。子供食堂が増えている背景に,こうして置き去りになっている家族や子供がいるという貧しい日本の現状を示している。こんなことがあるような社会であってはいけないと思うのである。
ウサギ小屋と嘲笑された日本の家も,住めば都だった。しかし,戦後80年経っても,日本の住宅事情はあまり変わらず,話題となる高級マンションは転売のための投資目的となり,ここに中国資本が大量に入っているだけで,日本全体には還元されない。
女性の社会参加の時代だ,とも言われるが,残念ながら女性がリードしている社会はごく限られている。育児休暇を男性にも強制的に取らせて,男性の視線を家庭にも向けようという動きはあるが,そもそも男の子の教育の中に「子育て」「家庭」という要素がまったくないと言っていいのに,休みを取って子供の面倒を見ることに戸惑う男性も多いだろう。結局,至らない部分を女性がサポートすることになり,かえって手間が増えるような気もする。さらに言えば,子供への手の掛け方が減ることで,健全な子供が育たなくなる家庭が増えているように感じる。これは将来への負債である。
女性の立場を尊重し,社会的マイノリティーと言われた人たちの人権を意識し,障害者もサポートする,そのような多様性を重んじる社会は,建前の上では自由主義を標榜しているが,秩序や規範,法律など,人類が大きな「社会」を維持するための知恵を適用するのが極めて難しくなる。こちらを立てればあちらが立たなくなる,ということが起きるし,少数派の意見が大きく取り上げられて不公平感が深まる可能性もあるからである。
さらに,組織としての集中力,求心力というものがなくなり,結束力がなくなる。すでに,学校という社会も崩壊しつつあるし,会社も崩壊,家庭も崩壊する。個人芸や個人の意見発信がインターネット経由でできるようになり,マスメディアの意味がなくなる。ここに生成AIが加わると,会社に出社してまともな仕事をしようという人がどんどん減っていく。エッセンシャルワークと言われる医療,介護,教育,保育,物流などへの人材が減り,さらに社会サービスを提供する公務員(地方自治体,警察,消防など)などの仕事もブラックとして敬遠されるようになる。
高市首相の失言により,日中関係が難しい状況になっている。ここで日米関係を強化すると,台湾を巡る情勢が一気に緊張を増し,自衛隊との衝突の危険性も高まる。ロシアとの交渉も滞るだろう。ここで懸念している北朝鮮のミサイルが一触即発の事態を引き起こさないとも限らない。現在の連立政権も世界情勢には何の答えも出せない。2026年がどんな年になるのか,正直まったく読めなくなっている。
筆者も2026年後半に今の出版社から退職することを決めている。特にその後をどうするかは決めていない。マスメディアの力を信じて,基本的には思った情報発信ができたことに誇りを持っているが,残念ながら力不足に終わってしまいそうである。