第二章 海と陸のあいだで
1 港町の三類型
港湾立地の自然条件
・気象条件
・潮汐
歴史的に港湾建設の技術がまず地中海で発達したのは、1つにはそこに潮汐がないからである。
しかし大西洋の厳しい自然条件が、かえって近代的な港湾土木工学の出現を促した。
・地質や地形
港湾生活の経済的条件空間
・港の背後に広がる内陸市場または後背地
・港湾それ自体。港湾行政機関の管轄区域
フランスの港町は、大西洋沿岸の沿海岸港と河口内港、地中海の沿海岸港の三類型にわけられる。
2 海との対話
フランスは国家の海洋政策に一貫性がなく、民間の個別事業を統合する能力を欠き、航海の成果を征服と植民地建設により永続化させることができなかった。それゆえフランスの大航海事業は、基本的に民間の商人と船乗り、つまり港湾都市との主導により推進された。
潮差の大きい海岸では港は一般に「潮汐港」または「乗り上げ港」の形態を取り、船は満潮時に入港し、干潮時には水底に乗り上げる。乗り上げ港の重要な利点は、潮差を利用して大型船が入港できることにある。
沿海岸港は船舶の入港・停泊には有利だが、後背地への連絡には不利だった。海上活動の前線基地であるそれらは、 一般に河川交通路に接続せず、内陸市場に浸透しにくい位置にあるからである。
しかし 河川の利用は後背地形成のために唯一絶対の条件ではない。輸送コストの面で不利であっても、陸路はやはり重要な役割を演じる。
一般に海岸の港町は、国家に対する自立性が強い。
3 河川のふところ
18世紀に河口内港の成長を可能にしたのは、国民経済の形成とともに内陸市場が重要になり、従って広い後背地を持つ大河川流域の港が優位を獲得したのである。
フランスの主な河口内港はルーアン、ナント、ボルドー そしてバイヨンヌ。これらに共通する立地条件は
・潮汐による河川の逆流が及ぶ範囲にある
・本流と支流の合流地点に位置する
・河口をさかのぼって最初の橋のある場所に一致
水上輸送の難点
・気候の影響。渇水期には水深が不足し、増水期には橋の下を通過できず、厳寒期には河面が氷結する。
・河岸の状態。水車や堰や杭が障害
・領主による通行税徴収
ルーアンからパリ間のセーヌ川では、動力に馬が利用され、上りは12から16頭、下りは2頭で船をひいた。
ロワール川の引き船は人夫に依存するが、この川は東西に流れるので、編西風を利用してナントからオルレアンまで遡行できた。
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4 背後の山々
港の立地
・低地海岸
・沿海の小島。天然または人工の砂州で陸地に接続
・起伏のある海岸の入江。カランクと呼ばれる深い入江が天然港となる
地中海沿岸に河口内港がつくられない理由
・地中海は極めて深い 内海で、潮差は小さく、潮汐による侵食作用は見られず、河口部は広い三角口ではなく、流れの分岐した三角州になる。ローヌ川。
・高い山脈が海岸に迫る地形では、河川は急流の暴れ川になり、流路は不安定で、沖積作用も激しく、河川交通には適さない
マルセイユはローヌ河口に最も近いカランクに位置する。それゆえマルセイユはローヌ河川の交通路との連絡に有利な地点にある。
ローヌ川は流れが急なので、川船は5~6隻で船団を組み、30~40頭もの馬にひかれて遡行することが多かった。
ローヌ河川路はアヴィニョンをへて大商工都市リヨンに連絡し、そこからさらに上流のジュネーヴ、スイス方面に、また支流のソーヌ川によりブルゴーニュ穀倉地帯とセーヌ水系に、そして西方の陸路でロワール水系に接続する。とくにリヨンは重要な後背地であり、16世紀にはマルセイユがその外港の役割をはたし、18世紀にも輸入品を消費し輸出品を供給する内陸市場として不可欠な存在である。
マルセイユは、近接する後背地を欠いた代わりに、水路と陸路を併用する一種の「分離後背地」を形成する。
伝統部門と新興部門、地中海貿易と地中海貿易と大西洋貿易、イスラム市場とヨーロッパ市場は密接な相互依存関係にあり、それらの動的な均衡こそは貿易成長の原動力である。マルセイユの優越は、この複合的メカニズム全体を統括する条件をそなえたことにあり、港湾立地や分離後背地の役割もその文脈で理解されるべきであろう。