ここ数年、システムインテグレーター(SIer)を巡る再編の動きが加速している。10月29日の住友商事によるSCSKの完全子会社化をはじめ、NECの米CSG買収、NTTによるNTTデータの 統合 、富士通によるブレインパッドへの株式公開買付け(TOB) 、2023年の伊藤忠による子会社伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の取り込みなどさまざまな動きがある。これらは単発のM&Aではなく、日本のIT産業そのものが「統合フェーズ」に入ったことを示している。
最大の要因は、企業システムのクラウドシフトやデジタル化が、単なるIT導入ではなく事業変革へと意味付けが変わったことにある。生成AI、クラウド、データ活用の高度化により、IT部門が扱うテーマは従来の保守運用から、経営戦略そのものへと拡張している。商社、通信、製造といった大企業にとって、自社のデジタル変革を外部のパートナー任せにするのはリスクであり、DXを実施するスキルを社内に囲い込むことが、競争力維持のための不可欠となった。
また、人材争奪戦の深刻化も関係している。経済産業省によると国内のIT人材不足は、2030年に45万人以上とも予測 される。即戦力のクラウドエンジニアやデータサイエンティストを市場から獲得することは難しく、企業にとっては「会社ごと買う」方が早い。今回の再編の多くは、サービスライン拡大よりも、人材ポートフォリオ強化の意味合いが強い。
システムインテグレーションの利益率と持続性の問題が絡んでいるとの指摘もある。従来型の受託開発は原価管理が難しく、安定利益を生みにくい。一方でクラウド・セキュリティ・AI・マネージドサービスなどのストック型ビジネスは、資本力のある大企業と組むことでスケールしやすい。SIer側にとっても「大資本のもとで、次の成長領域に投資できる環境」は魅力的で、買収提案を受け入れやすくなっている。
グローバル競争の激化も要因の1つだ。Accenture、Deloitte、Infosys、Tata Consultancy Services(TCS)など、世界のITサービス企業は規模とM&Aで成長を続けている。国内SIerが単独で対抗するのは難しく、日本企業同士の統合で「規模の論理」を手にする必要が高まっている。
SIerの再編は今後も続きそうだ。個々の買収劇に目を向けるだけでなく、「ITは経営そのもの」になった時代の資本戦略として読み解く視点が、いま求められている。
