2026年を迎えるいま、多くの企業が直面している課題は、ERPが依然として業務変化のスピードに追随できず、制度改定や事業再編のたびに改修負荷が発生する点にある。とりわけ人手不足と複雑なガバナンス要件の中で、既存ERPの「記録中心」の設計が限界に達しつつある。こうした課題に対し、ここ1年のAIの進展は、単なる効率化ではなく「プロセスを動的に最適化するERP」への転換点を提供している。
2025〜26年にかけては、ERPベンダーのAI統合が一段と加速した。例えばInforは2025年のイベントで、生成AIが受注から承認、購買、在庫、支払までを自律的にオーケストレーションする「industry contextualized AI agents」を発表し、ERPを実行主体へ進化させる方向性を示した。
研究分野でも、米ニューヨークを拠点とする非営利団体であるAI4Finance-Foundationが、金融業務を自律処理するAIエージェント「FinRobot」の成果を公表し、レポート作成や支払処理までを、AIが意図理解とワークフロー生成で実行できることが示された。つまりERPは、固定的なプロセスの集合体から、状況に応じて業務手順を組み替える「柔構造」へと性質を変え始めている。
こうした動きの背景には、クラウドERPの普及拡大がある。ミック経済研究所によれば 、2024年の国内ERP市場はクラウド移行とAI機能拡張を主因として成長し、2025年以降もAIネイティブERPが主要な成長ドライバーになるとされる。AIによる予測補正、異常検知、自動仕訳といった機能がコア化したことで、企業は業務量の削減だけでなく、経営判断の迅速化と説明責任の確保を同時に実現できるようになりつつある。
一方で、AI統合型ERPにはデータ品質、モデル監査、判断プロセスの透明性といった新たな課題もある。特に旧来型ERPからの移行では、データ構造の再設計や業務標準化が不可避であり、単なるアップグレードでは済まなくなる。システムインテグレーション市場では、従来のアドオン開発よりも、データガバナンス設計やAI運用基盤の整備が中心業務になりつつある。
総じて言えば、2026年のERPは「記録と統制のシステム」から「判断と実行の基盤」へと本質的に変貌し始めている。AIを前提として企業運営を再設計できるかどうかが、これからの競争力を左右する決定的な要素となりそうだ。
