読書録「火星に住むつもりかい?」3
著者 伊坂幸太郎
出版 光文社
p491より引用
“「どうすることもできないよ。振り子の揺
れを真ん中で止めることはできないから。
大事なのは、行ったり来たりのバランスだ
よ。偏ってきたら、別方向に戻さなくてはい
けない。正しさなんてもとは、どこにもな
い。スピードが出過ぎたらブレーキをかけ
る、少し緩めてやる。その程度だ」”
警察組織が力を持ち、中世の魔女狩りのよ
うな行為が行われる世の中を描いた、長編サ
スペンスミステリ。同社刊行作文庫版。
会社におけるリストラ業務に携わっていた
男が、突然警察に身柄を勾留された。一度は
容疑を認めた男だったが、釈放後に主張を反
転させ…。
上記の引用は、作中のとある重要人物の、
世の中に対する考えを述べた台詞。
何事も極端に動きすぎず、程々のところを気
をつけてうろうろするように、失敗したとき
の被害が少なくなるように、生きていられた
らいいですね。
まあ、刺激の少ない人生になりそうな気はし
ますが。
疑わしきは罰し、推定有罪で人を取り締ま
る。正直恐ろしい世の中ですが、そういうや
り方をしているであろう国は、あまり上手く
いっていないように思われます。
大勢の人が犠牲になる、あまりハッピーで
はない話の流れと、終わり方をする作品。
しかし最後には、より良くなって行きそうな
まとまり方をしているのは、作者の世の中に
対する期待と希望なのかなと思わせられま
す。
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読書録「グラスホッパー」4
著者 伊坂幸太郎
出版 角川文庫
p66より引用
“台詞は少ないがそれでも、彼が世の中で
もっとも軽蔑しているのが、新聞屋の店主で
あることは歴然としていた。青年を扱き使う
だけで、労働にいそしむことなく、怠惰に生
活している、肥満の店主だ。”
妻の復讐を誓った男やその他の、常人が関
わってはいけない人達が生きる様を描いた、
長編群像劇。同社刊行作加筆修正文庫版。
夜になっても明るく騒がしい街を眺めて、
学生の頃を思い出す一人の男。虫と人間の類
似性についての思い出と共に、頭に浮かんで
きたのは、亡くなった妻の発した言葉だっ
た…。
上記の引用は、フランス人青年の人生を描
いた映画についての一節。
人を使ったり、利用することばかりで利益を
得ようとする人間は、現実にも大勢いるよう
です。人材という言葉を使って誤魔化されて
はいますが、人を売り物のように扱うのは、
良い結果を生む事は無かったのではないで
しょうか。
視点と時系列が、あちこちへ入れ換わるの
で、しっかりと読んでいないと見失いそうに
なる作品。誰の視点で描かれているのかを、
節ごとに書いてくれているので、そこをしっ
かりと見ていればいいのですが、速く読み流
すと見落とすかも知れません。
なんだかあまり、スッキリとしない作品。
終わり方も、はっきりとしておらず、好みが
分かれそうな終わり方です。
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