教師の学びを学校の真ん中に置くという挑戦
軽井沢風越学園の「スイゴゴ」から見えてきたこと
「学校がよりよくなっていく」ということは、「実践がよりよくなっていく」ということと、まっすぐにつながっている——そんな確信を、わたしは日々強めています。
そして、実践をよりよくしていくためには、教員自身が日常のなかで学び、学び合っていることが欠かせません。
しかし、そのためには時間と仕組みが必要です。
スタッフの学びを学校運営の核に
軽井沢風越学園では、スタッフの学びを学校の運営の中心に据えています。
毎週水曜日、子どもたちは昼食後に下校し、13時半からはスタッフだけの時間がスタートします。この90分間の研修時間は、「スイゴゴ(水曜午後)」という愛称で呼ばれ、全スタッフが集う貴重な学びの場となっています。
また、月に1日は「研修日」として、子どもたちはお休み。スタッフだけが集まり、終日研修やミーティングを行います。毎週90分、月1回終日研修できるのはまことに大きい。立ち止まれます。
こうした仕組みの構築は、わたし自身の公立学校での葛藤から生まれたアイデアでした。
学びたいのに、学べない——公立時代の原体験
かつて私は、公立小学校で研究主任を務めていました。そこで痛感したのは、「学びたいのに、時間がない」という現実です。
教員は本来、強い成長欲求をもっていると信じています。学ぶことに喜びを感じ、仲間と対話を重ねながら、よりよい実践を探究したい。
けれど、日常業務の忙しさに追われ、その機会が極端に乏しいのです。とにかく時間的余白がない。研修したくても「次取れるのは半年後かな」みたいな現実。
だからこそ、風越をつくるとき、「物理的に学べる仕組み」を制度として組み込むことに強くこだわりました。
「みんなが研修担当」に
開校から6年。スイゴゴのあり方にも、大きな変化が起きています。
かつての校内研修は、研究主任が一手に担うのが一般的でした。私自身も、孤独な戦いを経験してきました。
今年度の風越では、「みんなが研修担当」という姿に変わりつつあります。
研修コーディネーターが年間計画を描き、実際の週ごとの研修は、各「ブランチ(いわゆる校務分掌)」が、企画から実践まで担当します。
たとえば:
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テーマプロジェクトに関する研修は「テーマプロジェクトブランチ」
- マイプロジェクトに関する研修は「マイプロブランチ」
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異年齢コミュニティ「ホーム」に関する研修は「ホームブランチ」
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保護者との関係づくりは「保護者コミュニティブランチ」 などなど
このように、研修の企画・設計・実践をリレーのように引き継ぎながら行っているのです。つまり、スタッフ全員が「学びをつくる側」になっているとも言えます。
現場のニーズにあった研修がタイムリーに打てるようになってきました。
失敗もあった。それでも育ってきた文化
当然、最初からうまくいっていたわけではありません。
開校から数年は、「忙しいんだから、それぞれの時間にしてほしい」といった声や、研修中に内職をしてしまうスタッフもいました。
けれどここ数年、とくに昨年度後半から今年にかけて、明らかな変化を感じています。
研修を「自分たちの学びと成長の場」と捉える雰囲気が、スタッフの間に根づいてきたようにみえています。
研修を“自分ごと”にするということ
今日のスイゴゴは、「記録・評価ブランチ」が担当する研修。
幼稚園から中学部までのスタッフが、それぞれの実践をエピソードとして記録し、共有し合う時間です。しかも、研修の冒頭のインストラクションでは、大学を卒業したばかりの新任スタッフが、今日の保育のエピソードを生き生きと語りました。胸熱。

そのあとは、幼稚園スタッフから中学のスタッフまで、みんなが「個のエピソード記録を書いてみる」チャレンジ。お互い書いたものは読み合いつつ、風越での12年間つながる記録と評価について考える時間です。
誰もが場に立ち、学び合う文化が育ちつつあること。自走し学び合う組織。
そのプロセスを、今、頼もしさと誇らしさをもって見つめています。
学び続ける学校であるために
もちろん、研修の質はまだまだブラッシュアップの余地があります。
けれどその改善に、「みんなが関わっている」ということが、何より未来への希望だと思うのです。
教師の学びを、学校の仕組みの真ん中に置く。
軽井沢風越学園では、そんなチャレンジをしてみています。