
2010年度の本屋大賞受賞作です。
私にとって本って、ストーリーも大事ですが、自分の知らないことを教えて
くれるということもとても大きなポイントなんです。
そういう意味で、この『天地明察』は、知らないことだらけで、史実を知る
ということだけでも興味津々読み進みました。
そもそも『暦』というものが、過去、今風に言えば『利権』であり、その
『暦』を作ることがかくも大きな国家事業であったなど、驚きでした。
平安時代から800年以上、中国で作られた『暦』を使っていたものを、
初めて国産の『和暦』を作り上げたのが、江戸幕府お抱えの囲碁家元四家の
内のひとつ 安井家の二世 算哲ということにさらにびっくり。
なぜ囲碁棋士が『暦』を作ったのか?
そこに登場するのが関孝和。日本史の教科書で和算(日本の数学)の創始者と
習ったことを思い出しました。
関孝和との出会いで、囲碁以上に天文学に興味のあった算哲は、囲碁の道を
捨て、日本独自の暦の考案に取り組むことを決意。
名も渋川春海と改名。
春海が改暦を実現するまでに、彼には多くのサポーターがいました。
水戸光圀、そして保科正行。会津松平家初代藩主ですね。
「民の生活向上」
「飢餓は君主の名折れ」
という当時としては画期的な方針を掲げ、ついには
「会津に飢人なし」
とまで言われるほどに会津藩の経済を確立し『会津家訓十五箇条』を定めた
名君。経営者としても大いに学ぶべき姿勢です。
そういうこともまったく知らず、ただ、徳川三代将軍家光の異母弟という
やや三面記事的なことしか知りませんでした。
渋川春海という改革を成し遂げようとする多才な主人公と、それを物質面
だけじゃなく、精神的にも支えるきらめくような大物スポンサーや師たち、
そして春海の妻 えん。
小説のスタートの舞台となった東京・渋谷宮益坂の金王八幡神社。
ここには今でも当時の算額絵馬が展示してあるそうなので、一度参拝して、
春海と関の数学勝負の空気を感じたいな。