「84ページの――によって――ではこれを朗読してもらおうか?」
そういわれたらクラス中の皆が先生から視線を逸らす。それは皆が『自分には当たるな!』――という主張である。でもメガネが微妙にズレてる覇気のない先生はそんな生徒たちの事なんて関係なく、とりあえず手元のタブレットを操作する。
すると生徒達が使ってるタブレットの一つから音が鳴った。それが鳴った生徒は観念したように立ち上がる。どうやらあの音は先生から生徒への指名の音だったらしい。そして生徒の覇気のない、ぼそぼそとした声が続く。
そんなんでいいのか? と野々野足軽は思うが、別に注意するなんてことはない。別にどうでもいいからだ。むしろ眠気がやばい。なにせ……
ガタン――
頭になったアラーム。それによって野々野足軽は盛大に椅子をひっくり返して倒れこむ。
「だ、大丈夫!?」
ザワザワとする教室の中でひときわ大きな声を出した教師が近づいてくる。まあいきなり生徒が椅子ごと後方に倒れこんだらびっくりするだろう。普通はそんなギリギリを攻めない。椅子をゆらゆらとしてる生徒は少なくないだろうが、盛大に倒れる奴はそうそういない。
じゃあなぜこんな事をやったのか?
「き、君、どこか怪我は? 頭を打ったのかい?」
生徒が怪我したとか大事である。身の保身なのか、それとも純粋に生徒の身の安全を思ってのことなのかは分からない。でも野々野足軽は申し訳なく思ってた。だって実は別に怪我なんかしてないからだ。
安全第一……それを野々野足軽はちゃんと心がけてる。でも注目を浴びるためにもワザと盛大な音を出したのだ。あんな音が出てるんだ。きっと怪我の一つや二つしてるだろう……って思って貰わないと困る。
「頭を打ったのなら救急車を……」
「それは大丈夫です。頭じゃなくて背中が痛いんで、保健室で休んでればきっと大丈夫……です」
「そうか?」
「はい。すみません、授業を中断してしまって」
とりあえず救急車は回避できた。流石に病院にいくなんて事はしたくない。一人で保健室までいってそれから事態に対処する……野々野足軽はそのつもりだ。
「先生、私が野々野君を保健室まで連れて行きます」
「平賀さんなら安心だね」
むむむ……彼氏を心配する彼女としては流石は平賀式部、完璧である。野々野足軽だって嬉しくないといえばウソだ。かいがいしく世話をしてくれるかわいい彼女とか役得すぎる。
でも、今はちょっと困る。けどここで辞退するのもね。平賀式部はとてもクラスで人気があるのだ。その人の心遣いを拒否したなんて、クラス中のヘイトがやばい。だからここは甘んじて受け入れよう。
どうせ保健室についたらそこで分かれるだろう。後はベッドにもぐりこむように見せかけて学校から抜け出すつもりの野々野足軽だ。どうやらまたどこかで新たな力が目覚めたようだ。