近赤外改造カメラ(E-PL5)はどこまで見えているか(備忘録)
この改造についてはすでに太陽スペクトルの測定結果から、感光域は1300nmくらいまでありそうだと考えていました。が、それでも一抹の不安がありました。
先にM82の撮影でIR950でも銀河が撮影可能であることが確認できましたが、これは、Hα線の再結合線が1200~1300nmにあるからで、結構写りが良かったようです。
では他の銀河では、ということで、北斗七星の柄杓にあるM108で見てみましたところ、IR720では写りましたがIR950では全く撮像しませんでした。
そうなんです。Hα線の可視部にある656nmでしたっけ、これもこの銀河では出ていないようなので、つまり、赤味はないので、IR950では真っ暗でした。
このカメラ、センサー上端の一部がゴーストが出ており、その部分を外して対象を撮ります。それが結構面倒で手間暇がかかっており、今後どうしようかなと考えるこの頃です。


M82 可視~近赤外像を撮ってみた(20240510)
花粉もかなりおさまり、少し快晴の日が出てきたので、さっそく朝霧で撮影を試みました。金曜日なのにすでに先客は8台ほど。ところが夕方から雲が出て、しかも無風に近く、車内で「こりゃだめかも」と休んでいたら、意外にも7時ころから星が見えてきたので、慌てて準備を開始。
今回の目的は、初めてのM82を可視と近赤外で比較することで、最近買ったIR950という真っ黒のフィルターをテストすることでした。近赤外フィルターはいずれも中国製。以前透過スペクトルを要求したが無視されたので、本当かどうかは? 会社にもよるみたい。
さて、機材はC8NにSVBONYのフィルターホルダーを付けてカメラを接続。フィルター交換は簡単で、「これなら行ける」。
写真1はUV-IRカットフィルターを付けたPen-F(ノーマル機)で、ISO25600-30sec×4枚スタック処理したもの。今回はあくまでテストということで、比較のために撮ったものなのですが、2分でも暗黒帯や内部の粒状塊もそこそこ写っています。が、やはり短時間露光なのでスーパーウインドなる銀河の上下方向の放射はほとんど写っていません。でも本体中心部のHα領域(658nm)の赤い部分は少し見えていました。かなり拡大。

で、古い文献では、

と比較すると、中心部A,C,D,EのHα線が確認できた。やはりもっと露光を!
次にIR750を付けて、改造E-PL5で撮影したのが写真2です。

ほぼほぼ暗黒帯もなく。次に写真3はIR950を付けて同じく撮影したもの。(ISO10000-10sec×5枚スタック)

写真としてはIR750のほうがきれいなのですが、実はE-PL5の静音シャッターがだんだんショックが大きくなったようで、ISO25600の写真はほぼ全滅でした。
最後に、この狭い狭い近赤外領域(~1.3μと推定している)で何が見えているのか、についてですが、1.28μにFeと水素再結合輝線Paβがあることが分かっています。

658nmのHα線も水素再結合線というそうですが、これが星形成の指標ともなっているがダストによる減光があるのでその影響評価にPaα(1.88μ)とPaβが必要のようです。良くはわかりませんが、「より長波長光でダストの向こうを見る」、ということのようですね。つくづく、もう少し先(長波長)を見たい、と思うこの頃です。
IC417 Young Stellar Objects (YSOs)を見てみたい
IC417(別名スパイダー星雲, 10000光年)はぎょしゃ座にある散光星雲で、地球から見て我が銀河中心の反対側の端っこにあるそうですが、この星雲の中でたくさんの若い星たちが生まれているとのこと。赤っぽく見える散光星雲の中にあるようなので、近赤外で撮って画像処理をいろいろやってみたけれど、やはり無理。調べてみるとNASAの資料ではJバンドでは無理で4.5μで見てわかる (The Spitzer wavelengths of 3.6 and 4.5 microns are green and red, respectively.)とのこと。近赤外ではなく赤外、ということでやはりきちんと調べてから取り掛かるべき、と。まずは写真を。左が可視画像で右がIR850で撮影した近赤外画像。

ここでIC417中心部を拡大して論文と比較してみると、
下の画像は、L. M. Rebull, et. al., The Astronomical Journal, 166:87 (45pp), 2023 September, から引用で、元はThe Spider Nebula - NASAの画像。ここに細い矢印で示した部分で赤っぽい星が「Young Stellar Objects」。上の2枚で矢印を付けた恒星はおそらく赤色巨星で赤く写っており、近赤外ではより明確になっていますが、目的のYSO達はやはり写っていませんでした。
と、情けない結果ですが勉強になりました。あとできるとしたら、IR850やIR950を付けて撮影時間を延ばすというのがありますね。撮影波長を延ばしたほうが「地かぶり」が少なくなるので、ISOmaxで60秒×多数枚というのが最後の条件です。(D200mm-F5+UHC+フィルター+Pen-E PL5改造機、PHD2自動追尾、2024.3.14, 朝霧高原)
P12/Pons-Brooks彗星のダストテイル
日没直後であまり時間がないのですが、まずは可視vs近赤外で何か面白いことはないかな、と思い撮影をしてみました。
本当はフィルターを2枚組み合わせて「疑似ナローバンド」的な画像を撮る予定なのですが、なんせ時間がなく。UHCで一応光害はさけ、UV-IRcutで可視画像を、IR850で近赤外像(疑似Jバンド)としました。D200mm-F5, Pen-E PL5赤外改造機で撮影。
1枚目は可視、2枚目がIR850での近赤外像です。


近赤外撮影時はすでに山際ぎりぎりで背景とのコントラスト悪くISO3200としました。
さてこれだけではつまらないので、やはりダストの粒子に関心があります。
古い文献で、Mie散乱に着目したものがありました。(BELLUCCI , Earth, Moon and Planets 78: 305–311, 1997)

Hale-Bopp彗星はずいぶんいろいろと観測されていて、タイトルはずばり!「SPECTROSCOPY OF COMET HALE–BOPP IN THE VISIBLE/NEAR INFRARED: MODELING OF DUST PROPERTIES 」でした。太陽にあたる側と反対側で「赤味が違う」ということで、400nm~1000nmでのスペクトルが測定されています。解析では、ダスト粒子の種類と粒子直径(Reff)からMie散乱の式を基に散乱光強度の波長依存性が示されています。
そこで、この真似事をしてみます。
JPEG画像でもありがたいことに「マカリ」という画像処理ソフトがNAOから入手でき、おそらくたくさんの方々が利用しているものと思われます。このソフトで、

コマ中心の輝度が求められるので、ベースラインを適当にとれば一応コマ中心の強度が得られます。さらに、いくつかの恒星の輝度を求めてこれに対する比をとって、フィルターを変えた画像同士での比較が「一応可能」と考えました。
数値化した結果は、

ざっくり言って、近赤外領域のほうがコマ中心部の輝度(明るさ)が高い、と言えます、というか「と考えます」。
この結果と先の文献のグラフとの比べると、長波長のほうがコマが明るい、ということから、粒子直径は少なくとも1μ以上あると考えました。
今回は「こんなふうな解析方法はあるかな」的な試みですが、P12もより高度があがり、観測しやすくなった暁には、疑似ナローバンドで撮影してみたいです。
最後の前に、同じく「マカリ」で得た等高線図です。分布は同じようです。


左:可視像、 右:近赤外像(IR850)
最後に国立天文台の菅原さんの文献から。IR850ではイオン由来のスペクトルは見られないようです。

chiron.mtk.nao.ac.jp/COMET/comet_handbook_2004/2-4.pdf
今更ながら、Registax 6 で核基準で彗星の明合成スタックをやってみた
いろいろな方々のブログを参考にしてRegistaxを、ほぼ無自覚にスタック処理をしてきました。今年は夏ころにかなり明るくなる彗星が予測されていて、彗星核基準での合成にはやはりステラを購入する必要があるのかと、逡巡していました。が、この度、Registaxでもマニュアルで基準を設定することでなんとか複数枚のスタック処理ができることを確認しました。今更ながら! です。
データは昨年1月に撮ったZTF彗星です。ISO16000で60秒露光を14枚、そのまま自動で処理すると当然彗星のほうが時々刻々と移動してしまいますが、彗星核を拡大しマニュアルで4点設定して合成したのが1枚目です。Registaxもすごいな、と感心しました。60秒1回露光がその下で比べると、テイルも少しは映し出すことができています。
最近Orioさんの記事(M42(オリオン座大星雲)近赤外での撮影 – Orio Blog
とか)を読むにつけ、自分で使っている機材やソフトの中身を知ることの大切さを学んでいます。感謝です。


ユニコーンとオリオン
大谷選手の活躍で有名なユニコーンは、そういえば冬の星座だよね、ということで調べてみたところ、撮影には南中を過ぎているがまだ良い位置のよう。
1枚目:クリスマス星団の中のFox Fur Nebula。「狐の毛皮」に見えるらしいが、わずかに暗黒星雲のもやもやが見える程度。画面右下にはかろうじてコーン(暗黒)星雲が。
ツリー全体はHII領域だが毛皮の周囲はレイリー散乱で青っぽい反射星雲、となるとカメラはノーマルとすると、手持ちのフィルターはUHCなので力不足は否めないようだ。かなり階調をいじってみましたが限界。いずれQBPを買ってみよう。(D200mm-F5+UHC+PenF直焦点、EQ5+PHD2自動追尾。IOS25600-60sec×47枚)
2枚目:NGC2261 ハッブル変光星雲。小さい星雲なので探すのは難しいかと思っていたら以外にも試写ですぐに発見でき、コントラストがよさそう。光らせている中心星は見えないようで、変光の原因は、中心星の変光か周囲のガス構造の周期的変化かどうかはまだ未解決のようです。面白い形状なので近赤外改造機で見てみるのもよいかも。(ISO25600-60sec×24枚B/W変換)
3枚目:自分へのお年玉?ということでずいぶん価格が下がったSkymemo-Sを購入。これならソロキャンプでビール片手に星夜写真も楽しめそうだ。望遠ズームを付けて150mmと300mmで60秒×インターバル撮影してみた。結果、300mmでは10分程度までは大きなずれはなく使えそうなことが分かった。でも、自由雲台ではカメラアングルを決めるのに少し苦労してしまうことも分かった。もう少し慣れが必要かも。(2024.2.13, 田貫湖駐車場)



144P 串田彗星
2月に入り天候が優れず、8日になり「晴れ」の予報だったので144P-串田彗星を撮りにC8Nを載せていつもの湖畔に到着。しかし富士山のシルエットは頂上まできれいだったのに高層雲が晴れず、目視では2等星がやっと。とりあえず短時間露光でヒアデスの中を撮影したのが最初の写真。予想光度は10.8等、彗星上の恒星は7.1等で30秒1回露光でなんとか位置は確認できた。
ヒアデスは見ごろなのでさらに3連休初日の10日。田貫湖キャンプ場はかなりテントが見られたので朝霧アリーナへ直行した。道路わきには除雪後の雪が残っていたが、駐車場はすでに満車状態で皆さん望遠鏡を向けており、フォグランプのみにして即退場した。で、結局田貫湖に行き駐車場の端っこで準備開始。時折浮浪雲が通過したがすっきりくっきりで極軸をセットし、「さあ、パソコンをつないで、、」と思ったとたん、忘れてきた!
彗星のスタック処理は彗星核基準で行うようなのだがRegistaxしかもっていないので、高感度で10秒くらいの露光ならtotalでも数分なので自動追尾なしの恒星時駆動で行けるか、ということでそのまま撮影を開始。実は今回はSkymemo-Sの初出動もあったので、いわゆる「坊主」は避けられるだろう、と邪な考えもあり。
2枚目は144P串田彗星。アルデバランの直近で強烈な回折光が出ている。15秒露光で30枚ほど撮影した中で24枚がスタックされたが、恒星基準なので厳密ではないかも。まあ、ぼやっとした形状なのでこれで良しとしよう。
3枚目はNGC4216に発見された超新星SN2024gyのスペクトルを撮影しようと目論んでいた近赤外改造機によるもので、センサー端に回折格子を付けて撮影した144P。11等では回折像はわずかにしか映らないが、ともあれ、この方法で次回は超新星のスペクトルを撮ってみたい。
4枚目はSkymemo-Sでの初テスト結果。右上プレアデスから対角線上にヒアデス、オリオン、シリウスと1分露光×12枚スタック。12mm-F2のレンズでなぜか設定がF11となっており、つまり口径1mm!? 失敗は失敗なのだが、四隅を見てみるとなんと結構星像が伸びている。やはり12mmでは星には向かないのかも。

[D200mm-F5+AC4(実測769mm)+UHC+PenF,EQ5+PHD2自動追尾、ISO25600-30sec露光. 20240208、田貫湖)


(対象天体は左端付近に設定)
