2025-09-01から1ヶ月間の記事一覧
桃野 雑派 の「星くずの殺人」を読んだ。 宇宙で人がひとりずつ殺されていく――それだけでもじゅうぶんひきがあるが、「星くずの殺人」はその舞台設定に甘えず、しっかりと“論理”で読ませるミステリである。 無重力、閉鎖空間、抽選で当たった乗客たちという…
藤本 靖 の「OSO18を追え “怪物ヒグマ”との闘い560日」を読んだ。 凶暴なヒグマとして知られる「OSO18」の名を耳にしたことがある人は多いだろう。 だが、その正体がこれほどまでに複雑で、人間との関係性に満ちていたとは、本書を読むまで想像すらしていな…
久坂部羊 の「絵馬と脅迫状」を読んだ。 冒頭から率直に言うと、面白かった。面白かったのだが、短編集ゆえの物足りなさもあった。 つまり「もっと読みたい」という欲が、肩透かしのような読後感に繋がってしまったというだけで、内容自体はどれも印象的だ。…
中島京子の「うらはぐさ風土記」を読んだ。 一見、なんてことのない生活小説のようでいて、読後に心の奥がじんわりとあたたまるような一冊だった。「うらはぐさ風土記」は、日々の暮らしの機微を丁寧にすくい取る、まさに生活密着型小説である。 主人公の女…
ニシダの「不器用で」を読んだ。 お笑いコンビ「ラランド」のニシダによる小説。 知ってるみたいに書いたが、知らなかったので先ほど調べたのだ。 大学のサークルで結成された男女二人組のアマチュア(!)コンビながら、M-1準決勝まで進んだという異色の経…
どうやら映画化されるという噂を聴いて村上春樹の「神の子どもたちはみな踊る」を読んだ。 これがその映画。カエルくんのビジュアルがなかなかかっこいい。 www.bitters.co.jp 「神の子どもたちはみな踊る」は、震災を直接描くのではなく、神戸大震災後の人…
多和田 葉子 の「太陽諸島」を読んだ。 三部作の完結編と聞けば、当然ながら読者は“たどり着く”ことを期待する。 「探していたhirukoの故郷、日本にようやく帰還!」みたいな、大団円のクライマックスを。しかし「太陽諸島」は、そうした予定調和をことごと…
佐川恭一の「学歴狂の詩」を読んだ。 これは「青春記」ではある。 が、甘酸っぱさも共感も、ほとんど期待しない方がいい。むしろ、その真逆。テストの点数と偏差値と志望校。 「東大・京大以外は猿」とまで言われるような、過酷すぎる学歴至上主義のなかで生…
多和田 葉子 の「星に仄めかされて」を読んだ。 いきなり余談から始めたいのだけれど、どうやらこの小説、三部作の真ん中の作品だったらしい。 しかも、私はうっかりその2作目「星に仄めかされて」から読み始めてしまった。敗北感・・・ 正しい順番は『地球…
村田 沙耶香 の「信仰」を読んだ。 なんだかこわい本。しばらく読んであの「コンビニ人間」の人と気づいて通りでともおもう。狂気と日常が同居している感じがとても恐ろしい。 興味深いのは、小説と見せかけて突然挿し込まれるエッセイのような文章たち。ジ…
石田夏穂の「冷ややかな悪魔」を読んだ。 初読みの作家さんだが、めちゃくちゃ面白かった。このレーベル(U-NEXT)間違いないな。 37歳160センチ58キロ体脂肪35%のユカリは 生活習慣病予備軍ということで、海外出張を禁じられ、窮屈な日本での生活を余儀なくさ…
澤村伊智の「怪談小説という名の小説怪談」を読んだ。 ホラー作家が「怖さとは何か」を問い続けて書いた短編集、「怪談小説という名の小説怪談」には、もはやエンタメをこえて学究の魂まで感じる。 特に印象に残ったのは、ラストを飾る「怪談怪談」。 この作…
永井みみの「ミシンと金魚」を読んだ。 語りは、認知症のカケイおばあちゃんによる独白。 それはもう、圧倒的な話量である。 ひとたび語りだすと、あっちへ行き、こっちへ行き、思い出と妄想が入り混じる。その奔流に、聴き手は抗えず巻き込まれていく。 こ…
佐伯つばさの「ようこそ瑕疵ある世界へ」を読んだ。 “瑕疵”——この一文字でピンとくる人は、たぶん怪談好きだろう。そう、事故物件などでおなじみの「心理的瑕疵物件」の“瑕疵”である。 タイトルからして、ただのミステリーではなさそうな雰囲気がぷんぷん漂…
本屋さんでこんなチラシをいただいて、京極夏彦の「筑前化物絵巻」を読んだ。 いや正確には、読んだというより“眺めた”が正しいかもしれない。というのも、本作で京極夏彦が手がけているのは序文のみで、メインは江戸時代の旧家に伝わる絵巻の写本である。 …
奥田 英朗 の「イン・ザ・プール」を読んだ。 爽快感ある、エンタメ小説。 心に何らかの問題を抱えて「伊良部病院」の神経科を訪れた患者たちは、そのぶっ飛んだ医者のために図らずも解き放たれ回復してゆく。 彼らを迎えるのは、白衣を着たぽっちゃり中年男…
王谷晶の「ババヤガの夜」を読んだ。 ダガー賞を獲得し、日本より先に海外で話題になった本。 話題の中にチラホラとシスターフットという単語が目につく。 なんだろ?と思って調べてみる。 シスターフッドは「性愛を伴わない、セクシュアリティ抜きで成立す…
今日は福岡空港にある唯一の書店をご紹介。 旅立ち前の1冊にちょうどいい本がたくさん。 この本屋が面白いのは有料待合所のようになっているところ。 フリードリンクで1時間いくらと言う形で本を持ち込んでいいみたいなんだけど、新しいシステムに恐れをなし…
ぱらりの「いつか死ぬなら絵を売ってから」 竹屋まり子の「あくたの死に際」を読んだ。 どちらもクリエイティブの世界でしか生きられない若者たちの苦しみを描いた作品。 全然関係ないのに、まるで呼応するようなタイトルなのは面白い。 「いつか死ぬなら〜…
カズヤイシグロの日の名残を読んだ。 今では、絶滅危惧種となった執事が、自動車旅行をしながら反省を振り返る物語。 1日のうちで夕方が最も素晴らしい、と通りすがりの男に教えられる。 何もかも遅すぎるのだ! ミスとミセスの使い分けとか、 心を尽くして…
先日、とある私立高校(とぼかす必要があるのかは謎だが)の図書館に入るチャンスを得た。 べつに忍び込んだ訳ではなく、文化祭で広く市民にも開かれていたのだ。 めったに行けるものでもないので、しっかりパトロールしたところを報告します。 入口の看板。…
ひきた よしあき の「博報堂スピーチライターが教える 5日間で言葉が「思いつかない」「まとまらない」「伝わらない」がなくなる本」を読んだ。 この本は読んで終わりではなく、やって初めて意味がある本である。つまり、ワークをこなさないと血肉にならない…
最東対地 の「耳なし芳一のカセットテープ」を読んだ。 物語の主人公は、怪談師の馬代(ましろ)。 彼はとある有名な怪談を追っている。それは「深夜のラジオから、突然『耳なし芳一』の琵琶語りが流れてくる。その音声を録音したカセットテープを聴くと、聴…
米澤 穂信 の「本と鍵の季節」を読んだ。 高校の図書室には、静けさと紙の匂いだけじゃなく、ときに“謎”も転がっている——そんな空気を見事にすくい上げたのが「本と鍵の季節」だ。 本作は、図書委員の高校生コンビが謎を解いていく連作短編集。軽妙な会話劇…
カレー沢薫(著)、本郷和人(監修)の「東大脱力講義 ゆるい日本史 ~鎌倉・室町・戦国時代」を読んだ。 本当に“ゆるい”日本史本だった。だが、ゆるいからといって侮ってはいけない。歴史の入り口として、こんなにちょうどいい本も珍しい。 なんで高校の歴…
「恐ろしいほどお金の神様に好かれる方法」を読んだ。 お金が好きだと言いながら、心の奥底では「お金持ちはずるいことをしているに違いない」とか「お金=イヤなやつ」というイメージを抱いている人は多い。確かに漫画やアニメでも、お金持ちキャラはだいた…
【広瀬すず主演で映画化! カンヌ国際映画祭でも話題沸騰の映画化原作 9月5日(金)全国ロードショー】のカズオ・イシグロの「遠い山なみの光」を読んだ。 「え、これで終わり?」と、思わず声が出た。全てが解き明かされるわけではない、むしろ多くはぼんやり…
新庄耕の「狭小邸宅」を読んだ。 誰が住むんだと思うような細長い鉛筆型の家をたまに見かける。 それを狭小邸宅、ペンシルハウスとよんだりする。 ちょっと中を覗いてみたい。というか間取りがめちゃ気になる。 工夫の宝庫で中からは意外と広く感じたりする…
東川 篤哉の「朝比奈さんと秘密の相棒 」を読んだ。 あら、また鯉が窪学園の話なのね。という既視感があるのだが前作とは別のキャラクターのようだ。 今作の主人公・朝比奈麗華さんは、高飛車で傲慢、まさに「お嬢様」のテンプレートのような人物だが、なぜ…
恩田陸の「珈琲怪談」を読んだ。 前作を読んでいなかったことを、少し惜しく思った。やはり多聞の過去が気になってしまう。シリーズものは続けて読みたいA型の私。 しくじったわ。 本作に集まるのは、喫茶店で怪談をするためだけに顔を合わせる、働き盛りの…