AIの急速な進化やアプリケーションの展開に追いつていけない。AIの思考の本性みたいなものを何とかして理解したい。
その一助として、ウィトゲンシュタインのことばを参照するのも意味はあるだろう。
彼は動物の思考について何を言っているかをGemini君に諮問してみた。
そう言えば、ライオンについての発言を思いだすことができたのは有用だった。
ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインは、主著『哲学探求』などのなかで、言語と心の関係を説明するために犬の特性(思考、感情、時間感覚など)を例に挙げた興味深い考察をいくつか残しています。
主な発言や論点は以下の通りです。
1. 犬は「嘘」をつけるか(欺瞞の限界)
ウィトゲンシュタインは、犬が痛みを感じているふり(偽装)ができるかという問いを立てました。
発言内容: 「なぜ犬は痛みを装うことができないのか? 彼はあまりに正直すぎるからか?」と問いかけています。
哲学的な意味: 彼はこれを、犬の性格が「正直」だからではなく、「偽装」という言語ゲーム(文脈や社会的慣習)を犬が持っていないからだと指摘しました。痛みを装うには、複雑な周囲の状況や意図が必要であり、言語を持たない犬にはそのための「文法」が欠けていると考えたのです。
2. 犬の「時間感覚」と「期待」
犬が何かを待っている状態についても、言語の有無による制限を指摘しています。
発言内容: 「犬は主人が来るのを待っているかもしれない。だが、なぜ『主人が明後日来る』のを待つことはできないのか?」と述べています。
哲学的な意味: 恐怖や期待といった感情は、言語(「明日」「来週」などの概念)に支えられて初めて、遠い未来へと拡張されます。犬は目の前の状況に対して「恐れる」ことはできても、言語なしに「特定の未来の時点」を対象にすることはできない、という特性を説きました。
3. 犬は「信じる」ことができるか
考察: 「犬は主人がドアのところにいると信じている」と言うことは不自然ではありません。しかし、その「信じる」という状態が、人間のように「思考」として成立しているかは別問題だとしました。
特性: 彼は、思考や感情といった概念は、基本的には人間に(あるいは人間に似た振る舞いをするものに)適用されるものであり、犬などの動物にはその「類似性」の範囲内でのみ適用可能であると考えていました。
4. 有名な「ライオン」の例えとの関連
犬に直接言及したものではありませんが、彼の動物観を示す有名な言葉に「もしライオンが話せたとしても、我々は彼を理解できないだろう」があります。
これは、言語が単なる音の交換ではなく、その生物の「生活様式(Form of life)」に根ざしているため、生活様式が根本的に異なる動物とは言葉が通じても意味を共有できないという主張です。犬についても、人間と生活を共にしているからこそ一部の感情を推測できるものの、根本的な特性(世界の捉え方)は言語的制約によって人間とは異なると見ていました。
まとめると、ウィトゲンシュタインは犬を「正直で嘘をつけない動物」として称賛したのではなく、「言語を持たないために、複雑な思考や偽装、遠い未来への感情を抱くための論理的枠組み(文法)を持っていない」という特性を持つ存在として描いています。
この結論は彼の後期思想をうまく表現しているだろう。
「「生活様式(Form of life)」に根ざしているため、生活様式が根本的に異なる動物とは言葉が通じても意味を共有できないという主張です」
AIという言語活動の確率モデルについても拡張できるように思う。シリコン上の記号処理という存在形態≦生活様式と見なすと、AIと人間は「意味」を共有できていない可能性が高いということになろう。
AIの知性は人間のそれとは異なる存在形態である。その糧(訓練データ)は人間の記号表現活動の一部を抜いてきて、それをもとに巧妙かつ精巧に模倣することだ。
この「模倣」というのも条件付きで使わなければならない。「模倣」とはいえ人間以上の能力や正解や正確度で応答できるからだ。また、強力な汎化能力があるので「模倣」とはいいがたくなっているわけである。
