旅と味 / 戸塚文子 著、赤穴桂子 装画 / 東京創元社 / 1957年初版 / 18.5x13.2cm / 207ページ / ハードカバー
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JTBの雑誌『旅』の女性初の編集長だった戸塚文子が、日本全国さまざまな土地の「味」を旅する随筆集。カバー画は、前衛抽象画家の赤穴桂子。おいしく楽しく食べた記憶は人それぞれってところ、大賛成。
「あとがき全文」です。
食べ物の随筆だけ集めて、本を出したいと、かねて思っておりました。こんどようやく
一冊分になりました。私は「食通」ではございません。食べ物、ことにお料理については、むつかしいことは何も分かりません。ただ、「幸福」とも呼べるほど、とてもおいしく楽しく食べた幾つもの記憶を持っています。また、旅先でめずらしい食べ物に出会う機会も多いのです。それでつい書きたくなるというわけです。
こうして一つにまとめて、あらためて読みなおしてみると、食べ物を語っているようでいて、あんがい自分自身を語っていることに気がつきました。「何ってつまらないものを、うまがっているんだろう」と、けいべつなさるかたもあるでしょう。「もっとうまい、上等なものがいくらもあるのに⋯⋯」と。それはまた、それで、そのかたご自身を、知らず知らず語る言葉かもしれません。ちょうど着物でも、晴れ着の似合うかたと、ふだん着の似合う人があるように。そしてたぶん私の味覚は、「ふだん着党」なのでしょう。



