小径を行く 

時代の移ろいを見つめた事柄をエッセイ風に書き続けております。現代社会について考えるきっかけになれば幸いです。(筆者=石井克則・遊歩)

2904 正直だったチャーチルとケネディ 政治家にも求められる誠実さ

オシロイバナの群生(これは紫色)

 私は人と付き合うに当たって、一番大事にするのは「誠実さ」だ。いろいろ辞書を見る。「言動にうそ・偽りやごまかしが無く、常に良心の命ずるままに行動する様子」(『新明解国語辞典』三省堂)と「私利私欲をまじえず、真心をもって人や物事に対すること。また、そのさま」(『デジタル大辞泉』小学館)の2つが丁寧に書かれている。これを政治家に当てはめると、現代日本の政治家は誠実な言動をとっているのかと思う。自民党に日本維新の会が協力した高市早苗内閣が誕生した。高市氏は誠実さを貫けるのだろうか。

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 イギリスのチャーチル元首相(1874—1965。第61代、63代首相)とアメリカのケネディ元大統領(1917—1963。第35代大統領)のよく知られた言葉がある。率直に国の苦境を訴え、国民に協力を求めた。それは誠実以外の何物でもない。

 チャーチル「リビアでわが軍は惨敗した。ドイツ軍の進撃は予想以上に速かった。わが装甲部隊もその猛攻に歯が立たなかった」(第2次世界大戦の北アフリカで、砂漠の狐といわれたロンメルが率いたドイツとの戦いで敗れた後の演説)

 ケネディ「私の計画で諸君に不便、困苦、あるいは犠牲を払わせなかったものは1つもない」(ソ連との核使用で一触即発状態になったキューバ危機の後の演説)

 2人の言葉に付け加える。リンカーンである。

「すべての人をしばらくの間、あるいは少数の人を常に愚弄できても、すべての人を愚弄することはできない」

「政治家に正直さがあてこそ、国民の力を引き出すことができるのに、おのれを飾ることに汲々とする。そこに本当の危機があるのではないか」。天声人語(1973・12・5)で上述の3人の政治家の言葉を紹介し、政治家と誠実さについて、深代淳郎はこのように書いた。それから52年の歳月が流れた。だが、この人は誠実だと思う政治家は一向に出てこない。政治家と誠実さは無縁なのだろうか。権謀術数が渦巻く政治の世界に、誠実さなど無用という人もいるかもしれない。私は、そんなことはないと言いたい。

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 各紙が競うように、高市首相の所信表明演説の内容をいかにも特ダネ風に書いている。政権側は書いてほしいから「これはお宅だけだよ」と言いつつ、プリントした紙を各紙の政治記者に渡したのだろう。もらった方はキャップやデスクに「特ダネ」あるいは「独自ダネ」と言って報告したに違いない。

 防衛費を国内総生産(GDP)比2%に増額する目標を25年度中に前倒しする、国家安全保障戦略など安保関連3文書も26年末までに改定を目指す、ガソリン税の撤廃など物価対策と強い経済実現のため積極財政を展開する——というのが柱だという。保守政治家、高市氏の考えを前面に打ち出している。所信表明演説に続いて衆参での代表質問を経て予算委員会での質疑になる。この場で高市氏は誠実な話ができるのだろうか。

 若い時代、キャスターを務めたというから、弁舌はさわやかなのだろう。だが弁舌のさわやかさと誠実さは異なる。言葉遣いはハラハラしても、誠実さが伝わることこそが大事なのだ。現代は、誠実さとはあまりにもかけ離れた政治家が多すぎると、私は思う。

これから紅葉に向かう公園

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