くさかはる@五十音のブログ

ここでは創作活動の進捗状況や日記などを綴っています。

2025-10-01から1ヶ月間の記事一覧

『みじかい小説』について

この度、長編に時間を割きたいという理由から大幅なスケジュール変更をいたしまして、それにともない平日午後に公開していた『みじかい小説』が今後不定期公開となります。 たのしみにしてくださっていた方々には申し訳ありませんが、今後ともどうぞ応援のほ…

みじかい小説 / 040 / サプライズ

「鶴は千年、亀は万年」 彰が大きな声で繰り返す。 「どれ、じいじにも見せてくれ」 俺はそう言って彰の手元をのぞきこむ。 そこには彰の手によって折られた色とりどりの折り紙が並んでいる。 「これはなに?」 「カエル」 「じゃあこっちは?」 「キツネ」 …

みじかい小説 / 039 / 二つのプリン

10月、よく晴れた日の午後のこと、いつものように園子はリビングでパソコンに向かっていた。 玄関のドアを半開きにしているので、心地よい風が足元を流れてゆく。 「だめだ進まん」 園子は思わずそう口にした。 「今日はもう休んだら?」 背後から声をかける…

みじかい小説 / 038 / 待ち受け画面

10月になった。 今月も10日が近づいている。 俺はスマホを取り出し待ち受け画面に目をやる。 そこではいつも、愛娘の葵が満面の笑みをたたえている。 葵が10歳になったとき、俺は妻と離婚した。 主に俺の仕事が忙しすぎたためのすれ違いが原因だ。 妻とは喧…

みじかい小説 / 037 / 私の音

私は耳が聞こえない。 これは生まれつきなのだけれど、生まれつきだからこそ、私は音を知らずに生きてきた。 多くの人に聞こえている「音」ってどんなだろう。 音楽に合わせて踊っている人を見ると、独特のリズムがあるのが分かる。 けれど健常者の妹による…

みじかい小説 / 036 / フルマラソン

恋人のヒナに誘われて、今日、僕は人生ではじめてジムにやってきた。 どのマシンをどのタイミングで使ったらいいのかもわからなかったので、恥をしのんでヒナに教わる。 「デスクワークばかりじゃあすぐにメタボになっちゃうよ。健太には健康的でいてほしい…

みじかい小説 / 035 / ヒナの決断

よく言われる「楽しんで取り組む」とか「自分との闘いに勝てばいい」とかどこの世界のきれいごとかと思う。 陸上競技では、競争相手に勝たないと意味が無いのだ。 順位がすべて。 だからこそ、日本一や世界一の選手は特別なのだ。 何が特別って、まず体の出…

みじかい小説 / 034 / 男やもめ

「男やもめに蛆がわき、女やもめに花が咲く」 和子が声を張り上げる。 「なんだ、大げさにことわざなんか持ち出して。嫌われるんだぞ、そういうの」 俺がそう言うと、和子は一度顔をくしゃっと寄せて「別にこの年だ、誰に嫌われようがかまわないよ」と言って…

みじかい小説 / 033 / 側溝の花

駅前のデパートに新作のコスメが並んだ。 そう噂を聞きつけ、結衣は日曜を待って意気揚々とでかけた。 天気は晴れ、十月に入って気温はぐっと下がり、長袖でちょうどよく感じられる。 自転車でもよかったのだが、あまりにも天気がいいものだから、結衣はスニ…

みじかい小説 / 032 / モーニング

「アイスコーヒーひとつ、無糖で」 今日も俺はいつもの喫茶店でアイスコーヒーを頼む。 暦は10月になったとはいえ、家から喫茶店までの道のりを歩くと、軽く汗ばむ陽気だ。 「モーニングセットはおつけいたしますか?」 「いや、いい」 朝食は家で軽く食べて…