函館在住の書家で昨年の毎日書道展(近代詩文)で最高賞の「毎日賞」を受けた中川蘆月さんが、2年前に続いて個展を開いています。3会場巡回というのも意欲的なら、2年ぶりというのも道内の書壇では非常に珍しいです。すでに1カ所目の函館は終了しており、3カ所目の東京は来年3月の予定です。
計43点で、とにかく非常にバラエティーに富んだ作風に驚かされました。師匠は日本を代表する書家の中野北溟(102)さん=札幌在住=。前回個展の副題に附された「師中野北溟先生100歳のお祝いと感謝の意を込めて」という字句こそありませんが、季刊の書道雑誌『墨』197号に載った中野北溟書展「津軽/TSUGARU」の批評文*1を138×490センチという大きな紙に書き写した作品もあり、また北溟氏独特の、筆の上のほうを持ってひらたい文字を書いた作もあり、師匠の影響は明らかです。「中野北溟の言葉『好きな書』」という大作もあります。しかし、それにとどまらず、とても1人の書家の手になるとは思えない多彩さなのです。
『平家物語』の名高い「祇園精舎の鐘の声」に始まる冒頭部分を書いた作品は、どの文字も非常に直線的で、極力曲線を排した運筆です。一方で「ふる里」という少字数書は「ふる」と「里」の間の余白の広さに驚かされます。河野進詩「あいさつ」は、縦にまっすぐ書くのが一般的な詩行の文字列を左右に揺らして書いているのがユニークです。
「時間を感じさせる空間」という作品は文字の大半を右側に寄せて、間隔を詰めて書いており、墨のにじみの中に文字が溶融して塊になっているように見えます。
この作品からもわかるように中川さんは可読性にそれほど意を用いていないように見受けられます。詩文書にとって可読性は永遠の課題ではないかと思うし、詩文書でも読みにくい作があってもよいのでしょうが、「愛でる」には思わずふきだてしまいました。「め」とルビがふってあるのです。可読性の細かい議論を吹き飛ばすおもしろさがあります。
ほかにも、床置きの作があるなど、作者がノッていることがうかがえる個展でした。
2025年12月24日(水)~28日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
12月4日(木)~7日(日)=函館市芸術ホールギャラリー
2026年3月13日(金)~17日(火)=東京芸術劇場ギャラリー1
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■第56回北海道書道展 (2015、画像なし)
・地下鉄東西線「バスセンター前駅」10番出入り口から約200メートル、徒歩3分 ※筆者はいつも9番出入り口を利用しています
・ジェイアール北海道バス「1 新札幌駅行き」などに乗って「サッポロファクトリー前」で降車、約520メートル、徒歩7分
・中央バス「豊平橋」から約820メートル、徒歩11分
※周辺にコインパーキング多数あります。中心部から歩いて行ける距離です
*1:評者は堀久夫氏。目録の字釈には全文は載っていません