
この記事は、Goodpatch Advent Calender 2025 11日目の記事です。
こんにちは、グッドパッチで広報PRを担当している木村です。
私が所属するデザインカンパニーのグッドパッチでは「デザインの恩恵はあまねくすべての人が享受すべき」と考え、組織として企業や社会でのアクセシビリティ推進をさまざまな形で取り組んでいます。 本記事ではそんなグッドパッチで、エンジニアやデザイナーではなく「広報活動を担うPRで行っているアクセシビリティへの取り組み」について紹介していきます。
社内のエンジニア・デザイナーがアクセシビリティに向き合っているが、広報は何から始めればいいかわからないという広報担当者や、アクセシビリティの推進活動を全社的な動きへシフトしていきたいと考えているエンジニア・デザイナーの参考になり、ともに小さくともアクセシビリティに向き合う仲間が増えてくれると幸いです。
PRこそアクセシビリティに取り組むべき理由
2024年4月の障害者差別解消法の改正・施行以降、民間企業での「合理的配慮(reasonable adjustments)」の提供が義務化、それに伴うウェブサイト等でのアクセシビリティへの対応と言った「環境の整備」にも関心が向けられ、多くの企業ではエンジニアが中心となって取り組んでいるのでしょうか。
一方で、アクセシビリティ対応はPRも先頭に立って進めていくべきだと考えています。
PRという職業上、日頃から多くのニュースやSNSでの投稿を作成し発信していると思いますが、そんな「プレスリリースやSNSでの投稿などを適切に受け取ることができない人がいる」ということを想像したことはあるでしょうか。
例えば、日本で約164万人いると言われている視覚障害者にはプレスリリースで活用されるアイキャッチの画像が何なのか把握できなかったり、ボイスオーバー(画像読み上げ機能)を活用してブログを読んでいる時に太字や赤字で注釈されているものを適切に把握することが難しい場合があります。
PRの仕事とは、以下のように定義されています。
「パブリックリレーションズ(Public Relations)とは、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である」 (出典:公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会)
つまり、PRの仕事は一方方向ではなく、ステークホルダーと関係を作り出すことがPRの役割です。その中の活動の一つである情報発信において、情報を受け取れない人が発生している場合、PRの役割は果たせていると言えません。
もちろん障害は個人によって異なり、また同じ障害がある人でもそれぞれの人を形成しているアイデンティティは異なるため「合理的配慮」と呼ばれるような個別の違いに対応できる仕組みも必要となります。今回は、その中でも土台を整える「環境の整備」に焦点を当てて、グッドパッチのPRとして実際に取り組んでいることをまとめました。
情報発信において取り組んでいること
今回は「情報発信」をテーマにPRで仕組みを作り、実践していることを紹介します。
記事執筆・資料作成を助けるチェックリスト(アクセシビリティ編)の作成・共有
メンバー個人による発信文化のあるグッドパッチでは、「記事執筆や資料作成を助けるチェックリスト」をPRが作成し社内情報共有ツールに掲載しています。 その中で今年はアクセシビリティ編も作成をしました。ウェブアクセシビリティの国際的なガイドライン「WCAG 2.2」とデジタル庁で推奨されているウェブアクセシビリティ導入ガイドブックをもとに、上記でPRが実践しているようなアクセシビリティ担保のアクションを「基本的に対応すべき」「状況に応じて対応すべき」観点に分けて整理・共有しています。 アクセシビリティ推進チームなどにもフィードバックを受けながら作成し、随時アップデートをしています。
プレスリリースやSNSで画像を投稿する際には代替テキストを付与する
「代替テキスト」とは写真やイラストなどの画像で提供される情報と同等の役割を果たすテキストのこと。画像の代わりにその文字で置いてみても違和感がない内容を記載します。グッドパッチのPRチームでは、プレスリリースなどお知らせを入稿するWordpress、X(旧Twitter)など代替テキストを入力することができるツールにおいては代替テキストを入れるようにしています。
また入力するテキストは、代替テキスト作成で抑えるべきポイントを読み込ませたプロンプトを活用しながらドラフト作成をすることでスムーズになりました。

「詳しくはこちら」などの表現は使わずに、リンクを適切に表現する
リンク先が、前後の文脈から簡単に理解できるようにします。例えばよく使ってしまう「詳しくはこちら(URL)」といった表記、実はユーザーによっては困った読み方をされてしまう場合があります。例えば、スクリーンリーダー(読み上げ機能)を使用する場合、「リンク一覧機能」といったリンク先を一覧にして読み上げてくれる機能があります。しかし、「こちら」が複数あるとなんのリンクを表現しているのかがわからなくなってしまうのです。

これからやっていきたいこと
そのほか、チェックリストの中で基本的に達成すべきポイントとして以下の3点もまとめていますが、この辺りはできる範囲で取り組んでいるのが正直なところです。
- 赤字・太字などの表現のみで情報を伝えない
- 意味が通じる順序・構造化にする
- 動画に字幕やキャプションをつける
社内の文化として根付き全社的な取り組みへ昇華していくには、まだまだ課題はあります。 一方で、エンジニア中心のアクセシビリティ推進チームに参加することで新たな視点を得ることができたり、発信していくことで実はアクセシビリティがSEO対策にもつながっていくといったマーケメンバーから教わったりと、新たな学びや改善に繋がっている動きもあります。
終わりに
改めてですが、アクセシビリティはチェックリストに沿って対応をすればそれで終わりではありません。「環境の整備」と「合理的配慮」の両輪で進める必要がありますし、当事者個人のアイデンティティにも関わるため、答えがない取り組みです。
一方で、私個人としては、アクセシビリティに取り組む上での姿勢として、キュレーター/プロデューサーである田中みゆきさんの著書「誰のためのアクセシビリティ?」の中で語られている表現に関するアクセシビリティへの捉え方を大切にしています。
わたしは、アクセシビリティのままならなさと可能性に惹かれ、活動をしてきた。一般的に、アクセシビリティは、障害のある人がない人にできるだけ近づくことを目指して考えられていることが多い。一方で、表現に関するアクセシビリティは、障害のある人がない人と同じように体験するということを超えて、さまざまな違いを持った人が自分の身体で主体的に物事を体験するとは一体どのようなことなのかを考える面白さがある。 それは、たとえば目が見えない人が「ダンスを見る」とはどのような経験なのか、「ゲームをする」という体感はどこから得られるのかといったものだ。アクセシビリティは、障害の有無に関わらず、ひとつの体験の本質を考えることと、必然的につながってくる問いなのである。 そんな時、小手先の対策だけではなく、障害のある人の生きられた経験(lived experience)から学ぶことが多くあるとわたしは思う。アクセシビリティは、ニーズを訴える人をひとりの人間として想像することから始まるのだ。 リトルモア note「『誰のためのアクセシビリティ?』 はじめに/田中みゆき」より
「一つの体験の本質を考えること」、そしてそのために「生きられた経験から学ぶこと」、これはデザインやPRの営みにも通ずるものがあると思います。
「私たちが行っているコミュニケーション(体験設計)が、状況や身体の違いによってアクセスできない/受け取れない状況ではないか?」という問いを常に持ち続けることは、大切にすべき姿勢だと考えています。
私たちが取り組んでいることもまだまだですが、アクセシビリティに向き合う上で大切なことは小さくともまず始めてみること。そこで学び得たり、ともに向き合う仲間の輪が少しでも広がると幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
すでに私たちグッドパッチが考えるウェブアクセシビリティや、組織での取り組み方については、アクセシビリティチームメンバーがまとめてくれています。ぜひご興味のある方は、以下の記事も合わせてご覧ください。