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【書評】日本経済新聞社米州総局「私たちは、トランプを選んだ」

1 本書の概要

2024年のアメリカ大統領選挙ルポルタージュです。

現在、トランプさんの相互関税で、世界は大混乱になってます。

アメリカの株価は暴落。

日本の株価も暴落。

円高ドル安に動く。

というわけで大変な状況です。

しかし当のトランプさんはどこふく風。

アメリカにとって記念すべきすばらしい日になった自画自賛

いやあ、こういうメンタルじゃないとやってけないんでしょうね。

すごい!

すばらしいじゃなくて、あくまで「すごい」。

この政策については後でふれますが、まずは選挙戦の話から始めます。

2 バイデン対トランプ

本書は各党の代表が決まったところから始まっています。

現職のバイデンさん対トランプさんというところからです。

前回も前々回もそうだったんですが、嫌な2人のうちからどっちを選ぶかみたいな選挙戦だったそうです。

バイデンさんには2つの弱点がありました。

一つはインフレで経済が悪くなっていたこと。

もう一つは高齢で頼りなかったこと。

普通、現職が強いのが選挙です。

しかし、この2点でバイデンさんは弱い候補者でした。

とはいえ、民主党も現職を引きずり降ろすわけにもいきません。

頼りない候補を盛り立てていったのでした。

一方のトランプさん。

ご存じ歯に衣着せぬものいいで敵をつくりまくります。

熱狂的支持者はいるものの、毛嫌いする人も多い。

1期で退いたのもそういう理由でした。

まったく悩ましい選択です。

3 公開討論会

バイデンさんの負けがはっきりしたのは公開討論会でした。

トランプさんが勝ったのではなくバイデンさんが負けた。

弱々しく頼りない姿を見せてしまったのです。

アメリカのリーダーにふさわしくない。

そういう印象をもたせてしまいました。

一方のトランプさんは失言抑制に努めたようです。

可もなく不可もなく。

トランプさんから見れば、勝手にバイデンさんが倒れていったって感じでしょう。

ラッキーでした。

4 銃撃事件と奇跡の1枚

禍福はあざなえる縄のごとし。

選挙期間中にトランプさんは狙撃されました。

耳を撃ち抜かれましたが、命に別状はなし。

いや危ないところです。

頭だったらあの世行きです。

しかし、この直後、青空と星条旗を背景にこぶしを突き上げるトランプさんの姿がありました。

これをとらえた1枚の写真。

これ以上ないくらいのリーダー像です。

同情も集め、トランプさんの人気は急上昇。

ある意味、選挙戦の分岐点となりました。

5 ハリス対トランプ

とうとうバイデンさんは撤退。

後継者にはハリスさんが選ばれます。

女性で副大統領で有色人種。

とまあ、有能なマイノリティという感じですね。

ただ、民主党の多様性志向をアメリカ国民が好意的に感じるかどうかは別。

本書でも取り上げていましたが、マイノリティであるイスラム教徒は伝統的な家族構成を支持してます。

幼い子供が性的少数者として認知されることをよしとしません。

というわけで、アメリカの「意識高い系」には支持されても大衆に支持されるとは限らないのでした。

移民もそう。

ヒスパニアアメリカ人がメキシコからの移民を歓迎するかというと必ずしもそうではありません。

自分の仕事を奪うかもしれない人を歓迎できない。

現実がそう叫ばせます。

実際、トランプさんの支持者は低収入労働者が多い。

トランプなら、よく分からない金持ちたちから国を取り返してくれる。

そう思っているのです。

なので、ハリスさんの支持は思ったように伸びないのでした。

早くから選挙の準備をしていれば。

そういう「もしも」をよく聞いたそうですが、どうでしょう。

あまり変わらなかったように思います。

6 トランプを選ぶということ

結果はご存じの通り、トランプさんの圧勝です。

アメリカ国民はトランプを選びました。

トランプさんは、ころころいうことが変わる人ですが、やるといったことはやります。

まずはウクライナパレスチナの停戦。

こちらはいろいろあってうまくいってませんが、とにかく戦争を止めるようには動いてます。

そして、関税。

今、この爆弾が炸裂中です。

そもそも関税とは、自国の産業を守るためにかけるものです。

育てたい産業を優遇するために輸入品の値段を上げる。

それが関税です。

なんですが、トランプさんが全面的に、どの商品の関税も上げました。

おいおい。

鎖国経済ですね。

そして、例えば自動車ですがこれで米国内メーカーが強くなるかというと、どうでしょう。

いささか疑問ですね。

そもそも国産車の値段が下がらないのですから、単に車が買えなくなる人が出るだけって気もするんですが。

そうそう、それにインフレすごいアメリカで安い輸入品が買えなくなるってことは、インフレが加速する危険が高まるわけで。

高くて高くてものが買えない。

になるだけになるかもしれません。

経済強くするには、楽市楽座が1番なんですけどね。

共和党ってそういう政党だったはずなんですけど。

レーガンさんがそんなこと言ってたような気がします。

まあ、トランプさんは自分の支持者に有利な政策をしたいだけ。

投票してくれたみなさんに報いたいだけ。

なのかもしれません。

安い輸入品がなくなれば、アメリカが豊かになる。

なんて本気で考えているとは、思いたくはないんですけど。

メキシコとの間の壁みたいなほんとどうでもいいことは、勝手やってくれたらいいですけど。

7 総評

★★★☆☆

3つです。

新聞記事だから読みやすいし、事実もしっかり書いています。

でもそれだけ。

アメリカの現在の病理とか、アメリカ国民の希望と絶望とか、そういうのは通り一遍です。

深掘りはありません。

良質のルポルタージュは、読者の価値観を揺さぶるものです。

これにはそこまでの力はありません。

アメリカが世界で果たす役割はとてつもなく大きい。

それを体現する大統領を選ぶ基準は、身の回りの損得。

そういう矛盾をもっと鮮烈に描き出してほしいと思いました。

本の評価とは別に思ったことが1つ。

トランプさんの支持者に新美南吉の「おじいさんのランプ」を読んであげたい。

これです。

時代に取り残された人は、自分で変わるしかないんですよ。

ラストベルトの工業がかつての輝きを取り戻すことはないんです。

別の輝きを探すしかないとね。

トランプさんの任期に世界がどう変わるか。

わたしは戦々恐々しながら過ごしていきたいと思います。

よくなる要素は…今のところないんですけど。