
伊東拓馬『キアポ教会前の呪術市場 フィリピン魔術と民間療法』双天至尊堂を読了。
全58ページの薄い冊子ではあるのだけれど、中身が非常に濃くて、たいそう面白く読むことができた。キアポ教会というのは、マニラの下町にある古い教会で、その教会の周辺にはキンタ・マーケットという雑然とした露店街が広がっている。本書は、そこで売られているさまざまな呪術道具を紹介したもので、単にその道具を紹介するだけではなく、具体的な使い方や効能から歴史的な成り立ち、文化的な背景まで、実にしっかりと調べて紹介しているのである。とんでもなくしっかりした内容の本なのだ。
表紙にある六芒星の中に目玉が埋め込まれている奇妙な道具は、アンティン・アンティンと呼ばれる護符で、これを身につけていると相手の攻撃を跳ね返す力があるというもの。フィリピンでは昔から、戦士が闘うときには、このアンティン・アンティンを身につける伝統があるとのこと。こういう道具やら惚れ薬やら中絶誘発薬やら、とにかくさまざまな呪術道具が次から次へと紹介されている。
自分は45年ほど前にこのキアポに3週間ほど滞在して、このあたりを連日のようにうろついていたのだけれど、こんなものが売られているとはついぞ知らなかった(当時はこういうものを売る露店はなかったのだろうか?)。知っていたら、きっと変なものを買ってしまっただろうに。
実は、実際に読むまでは、もっと薄っぺらい内容のチャラい本なのかと思っていた。実に申し訳ないかぎり。
できれば、これと同等のレベルでフィリピンの妖怪、精霊を紹介する本があればどれほど嬉しいか。フィリピン映画を観るにあたって、ときとしてそういう知識があればなあと切実に思うことも多いのだ。