
ネタバレします。
第2章「シッタータ」
シャカ族の太子シッタータは出家を決意する。
妻子を残し「国を見捨てるのか」と咎めるウッダカの剣は太子を止めることはできなかった。
気づくとシッタータは八寒地獄かと思える極寒の場所にいた。ここは忉利天だと告げられる。かつて至楽の地だった場所が八万年壊滅に瀕すること甚だしいという。
熱エントロピーが極めて小さくなりすでに熱量の変化は無くこの世界は冷えていくばかり。
しかもそれは忉利天だけにとどまらず六欲天すべてに変動があり破滅へと向かっている。
この宇宙は静かに終末の為の終末に向かっているのだ。
兜率天へ向かうシッタータとバラモンたちの前に奇妙なひずみが現れた。
それは阿修羅率いる軍隊の戦闘が起こすひずみだった。
バラモンたちによって見せられたその映像の中でシッタータはまだ子供のような阿修羅の姿を見た。
ついにシッタータはバラモンたちにより兜率天の首都トバツシティへ到着する。
お上りさんよろしく大都市の明るさにシッタータはめまいがする。
そして梵天王と会う。
梵天王はトバツ市の地下の摩尼宝殿に存在する弥勒を守らねばならないとシッタータに訴える。
しかしその天上界を侵略してくるのが阿修羅王なのだ。
「すべてこの破壊は阿修羅王のせい!この者こそ宇宙の悪。我らの敵、弥勒の敵」
「心せられよ」と梵天王は告げる。
「不幸に耐え弥勒を信じ悪と戦い来世のために救済の道を切り開くこと、それがあなたの命題である」
会見は終わる。
シッタータは「悪の王であるという阿修羅王に会ってみたい」と思うのだ。
これはいったいどういう展開なのだろうか。
バトルマンガにおいていきなり「まずはラスボスに会って訊ねてみたい」という筋書きはないだろう。
しかし本作での正義の味方シッタータはいきなりラスボスに会って話してみないとなんともいえない、と言い出すのだ。
そしてバラモンたちは「自分たちではなんともできない」として帝釈天に頼る。
この帝釈天は阿修羅王と四億年もの間戦いを続けてきた。がその戦いに決着はつかないまま至る。
帝釈天はシッタータの願いを聞き「あれは鬼だぞ」と問いかけるがシッタータの意志は揺るがない。
第4章「阿修羅」

このシッタータと阿修羅の会合の場面だけ見ればよい、と言っていいほど良い!
いやチャンと最後まで読んでね。
しかし良いのだ。
シッタータは自己紹介をした後単刀直入に質問する。
「なぜ戦う?!」と。
「なにを望んで天上界に攻め入ったのか。どこから来たのか」と。
阿修羅の表情が変わる。
「シッタータ。弥勒に会え」
この世の末法に現れ出でて人々を救うというが、ではいったい五十六億七千万年後に何が起こるというのだ。
末法の世が来る、末世に至るほどの出来事とはなにか。それほどの破滅とはいったいなんであるか。
阿修羅は言う「弥勒は知っている」
「ならなぜ弥勒は説明しない?どんな末世が来るものか。どんな破滅が起こるのか」
「なぜ弥勒はだまって自分の出番まで待っている?」
説明と救いの方法も説いたがいい。まこと救いの神ならば破滅の到来をこそ説くべきだ。
シッタータは「それはきっとまだ破滅が来ていないからだ」と答える。
阿修羅は笑い「これが末世だ。見るがいい」と答えた。「なにを見てきたシッタータ。忉利天、夜摩天を横切り、死の空間の地に立って」
シッタータは「それがあなた自身のせいだ。あなたとあなたの軍の戦いのせいだぞ」と言い返す。
阿修羅は「私の戦いも変化の一つにすぎない。この世界は一切を無に帰してしまう完全な熱量死へ向かっている。こんな大きな力は私にはない。これはいったい何者の仕業であろうな」と問う。「梵天王は私の警句には耳も貸さぬ。ばかりかこの荒廃は私の仕業だと言い出すしまつだ。梵天を尻目に転輪王は何を企てていることやら」
この荒廃を転輪王はなにを黙ってみているか。もしもこれが転輪王のしわざで弥勒が救いの神ならばこやつらはつるんでいるのだ」
ほんとうに弥勒は救ってくれるのか。
阿修羅は兵を挙げて帝釈天と戦い四億年となる。
私の疑いはいや増すと共にこの宇宙は荒廃していくばかり。
ここでシッタータは「なぜ梵天王はあなたの言葉を聞こうとしないのだろう」
「あれは頭が固い」
「思考コントロールを受けていると?」
「初めて意見が一致したな」
シッタータは「弥勒に会ってみたい」と言い出す。
シッタータは阿修羅の戦いが「約束事は本当なのか。ユートピアは来るのか」と問うためにあったのだとわかり自分が弥勒と会ってその疑いを解けたらと決意する。
阿修羅王はシッタータに「案内しよう」と側に立った。
ううむ。やはりこの会話こそがすべてなのだろうな。
しかし答えはもちろんわからない。