論文公表への道のり
Reject decision letter Accept decision letter

原著論文国際学術誌への公表の道のり
- 9 転び 10 起き -
1, はじめに
これまでは,いくつかの原著論文を国際学術誌に投稿し,多くとも二、三度の非受理(reject) を経て,最終的にはいずれかの国際学術誌に受理 (accept),公表 (publish) されてきた。
今回,小型サル コモンマーモセットの視聴覚刺激強化によるオペラント行動の学習形成に関する論文を,様々な国際学術誌に投稿した。しかし,この論文は,4 年にわたり 9 種類の学術誌に reject され続け,やっと 10 回目に,International Journal of Comparative Psychology (IJCP) 誌に受理された。まさに,「9 転び 10 起き」であった。
その経緯について,表1にまとめた。ここでは,論文を最初に投稿した Scientific Reports 誌から,10 番目に受理された IJCP誌に至る履歴を, 投稿順 (Submission Order) について降順で示した。それぞれの学術誌の出版元,著者の投稿日,編集者側からの非受理,受理の結果通知までの日数も記載した。また,受理された場合のオープンアクセス公開で,著者側が支払う費用(US $) なども示した。なお,オープンアクセス公開形式については,詳細に後述した。
原著論文の国際学術誌(IJCP)公表までの道のり
- 9転び10起き-

上記 International Journal of Comaparative Psychology 誌 受理掲載論文 url:
上記の学術誌の論文審査者 (reviewers) は,ほとんどが当該分野の一流の研究者であり,自身の貴重な研究時間の中から,審査のために,熟読した上で真剣な対応を無償でしてくれた。それだけに,極めて手厳しい,しかし適切なコメントを多くもらった。これにより,reject のたびに,論文内容は改善されることとなった。同時に,様々な学術誌の論文審査プロセスの現時点での特徴を知る機会もえた。
ところで,今回の実験内容についてであるが,iPad スクリーン画面上を9区画に分け,それぞれの区画に異なるサル類の小さな動画を無音で同時提示した。マーモセットがそのいずれかの動画をタッチすると,その動画が画面いっぱいに拡大され,さらにはサル類の鳴声が,iPad スピーカから,マーモセットに提示された。これにより,マーモセットが,サル類動画の拡大とその鳴き声を,iPad 区画タッチにより積極的に求めるかどうか,すなわち動画拡大とサル類の鳴き声の提示が,画面タッチ・オペラント行動の形成確立の強化刺激となりうるかについて検索した。
通常のオペラント学習行動では,レバー押しや iPad画面タッチにより,餌やジュースなどの強化刺激を用いて学習形成する。しかし,今回は,そうではなく,動画の拡大やサル類の鳴き声などの視聴覚刺激変化が強化刺激となりうることを,はじめて当該論文で報告した。
現代のわれわれの日常生活では,ひとびとが,スマホやタブレットに熱中している行動を普通に観察している。特に,電車などに乗れば,それを痛切に感じる。そして,そのような熱中が,時として過度になり,依存症のレベルにもなりうることが問題視されている。それゆえ,実験動物でも,このような行動モデルを確立することの意義は大きいと考えてきた。通常は,実験動物で,このような学習行動を形成確立することは困難とされている。特に,ラットやマウスなどでは,安定的にして,強固な学習行動は,餌や水などの強化刺激ではない視聴覚刺激では,ほとんど確立できないとされてきた。
今回のマーモセットを用いた視聴覚強化学習行動の確立についての内容は,国際学術誌の審査者,編集者にさえ,なかなか理解してもらえなかった。9回の論文 reject により,論文の論点が明確に整理改善されたこともあり,10回目に,International Journal of Comparative Psychology (IJCP) 誌に受理されるに至った。 IJCP 誌は,The University of California の eScholarship という出版の仕組みとのことである。これにより,論文が審査を経て受理された場合には,その全文テキストがネット上に公開される。一方,読者側は,その全文テキストを無料かつ自由に読むことができる。すなわち,IJCP誌では,オープンアクセス誌としての形式であるにもかかわらず,ありがたいことに著者側の費用負担がない。
現在の学術誌には,上記のようなオープンアクセス形式専用誌と,従来型の定期購読形式でありながら,電子版でオープンアクセス形式も選択できるものとが存在している。オープンアクセス専用誌ないしは定期購読誌において,オープンアクセス形式を選択した場合には,一般的には,論文審査受理決定後に高額なオープンアクセス掲載処理費用を,著者側が出版社側に支払わなければならない。ただし,従来型定期購読誌の場合には,著者がオープンアクセス形式を選択しなければ,その論文は,定期購読誌の紙面と電子板に掲載され,著者側には論文掲載に関する費用負担はない。一方,読者は,その論文全テキストを読みたいと思った場合には,読者が所属する大学や研究機関の図書館などをとおして,その論文を無料で読める。しかし,現在では図書館も高額な学術誌を何種類も定期購読する余裕はない。したがって,一般的には,読者がその論文テキストを読みたいと思った場合には, 1論文につき数千円を出版社に支払い,ネット上の電子版から PDF としてダウンロードする仕組みになっている。
従来型の紙媒体基本の定期購読誌の歴史のなかから,まず学術誌はネット上の電子版として発展してきた。そのような流れの中から,新しい方式としてのオープンアクセス形式のみの専用学術誌が出現してきた。著者側としては,世界中の読者に,abstract のみではなく,全文テキストを自由に読んでももらいたいという強い動機が存在する。そのためには,著者側は,論文受理後にオープンアクセス形式選択の条件として,ネット上での論文掲載処理費用として数十万円,場合によっては百万円近い費用を出版社に支払うこととなった。このことにより,読者側には,ネット上で自由に全文テキストを無料で読めるというメリットが生まれた。このような仕組みの中では,著者側としては,厳しい審査を経た自身の論文について,自費出版でもないのに,なんで高額費用を出版社に支払わなければならないのかという不満が残る。
出版社側としては,読者側と著者側の需要と供給関係に着目したすぐれたビジネスモデルとしてのオープンアクセス形式を作り上げたと考えているであろう。学術文化などの発展のためには,出版事業が経済的にも自立し,永年にわたり安定的であることが,極めて重要である。また,研究には,莫大なリソースを使用し,コストがかかることは誰でも理解している。出版社側としては,そのようなコストの中に論文処理掲載料をあらかじめ予算化しておいてくべきだと考えているかもしれない。とはいえ,現在のような高額な論文掲載処理費用を出版社側が著者側に請求する状況が,いつまでも継続してゆくのであろうか。著者側,読者側,出版社側の3者にとっての費用負担に関する最適解はどこにあるかについて,今後は調整されてゆくと考えている。特に,今回の IJCP誌の無料オープンアクセス公開モデルを体験してみて,そう感じた。
今回の IJCP 誌では,上記大学の仕組みによる出版のため,論文掲載処理費用は,オープンアクセス形式であるにもかかわらず,前述のとおり無料であった。ただし,論文の受理から公表までの期間は,数ヶ月を要し,ビジネスで成り立っている大手の学術出版社と異なり,審査結果通知,論文受理後の編集処理プロセスは,スローではあった。多分,専任のプロ級の校正の専門家を雇う余裕はなく,大学職員などが編集処理を担当しているのではないかと推測した。また,IJCP誌のネット上での論文投稿システムの完成度は,今ひとつと感じた。一方,高額な論文掲載処理費用を請求できるオープンアクセス誌だと,投稿者側にとって,わかりやすく親切なシステムが構築されており,論文受理が決まってから公表までの期間を最短にする動機づけが存在していると感じた。なぜならば,出版社側には,高額な論文掲載処理費用入金という絶大な強化刺激が存在するからである。
今回の IJCP誌の歴史は,それほど長くはなく,そこに掲載されてきた論文の平均被引用数である impact factor も高いわけではない。また,これまでに掲載されてきた論文の内容も,それほど高度なものとは感じられなかった。しかし,個別の論文が,一旦オンラインでネット上に公表されると,世界中の誰からも,検索でき,論文全文テキストを読んでもらえる。当該論文の内容の価値については,最終的には,読者によって評価されると思っている。実際,オープンアクセス誌では,論文ごとに,どれだけの読者に閲覧されているか,どれだけ引用されたかなどの客観的指標が,リアルタイムで, Metrics などの指標で逐一表示されている。これは,Impact factor などの特定学術誌としての平均的な論文引用数の指標とは別に,個別の論文の成績が知れることになる。
それゆえ,Impact factor の高い雑誌にこだわらなくても,ネット上で,誰にでも自由に検索され,全文テキストが,誰からも閲覧される仕組みの中での論文全テキスト公表は,今後もある程度は進化してゆくと考えている。今回の論文の投稿と受理の経験を通して,テレビ放送と youtube との関係についても思いを馳せた。すなわち,従来型の“権威ある”テレビ局の放送に代わって,玉石混交ではあっても, Youtube の社会的インパクトについての注目が集まっている。Youtube は,誰もが自由に無料で公開可能である。歴史と伝統と権威に守られ,巨大ビジネスとして確立している出版社に対して,今後 IJCP誌のような学術誌スタイルが対抗勢力となって進化してゆくのか極めて興味深いところである。すなわち,大手出版社が,論文受理後に著者側に請求する高額のオープンアクセス掲載処理費用に対する一つのブレークスルーが,IJCP 誌のような,大学主導の無料オープンアセス形式などにもたらされるのか注視していきたい。ただし,IJCP誌は,現在のままでは十分ではなく,もっとスピーディーな論文受理後から公表までの処理などが望まれる。
ところで,論文を9回も,reject されると,自信を無くしたり,諦めようとする気持ちが当然起こってくる。しかし,この研究に従事してもらった共同研究者に対しても,また研究をサポートしてくれた研究所に対しても,論文公表というかたちで,研究者としての最終責任を果たさなければならないという想いが強く存在した。
今回の個別的論文公表体験から,より一般的視点にたって,論文公表のプロセスや意義などについて,以下に述べてみたいと考えた。
2. 研究における論文公表の重要性
研究者が,実験により結果を出した場合には,必ず論文に仕上げねばならないと思うに至った。学会発表については,たとえ,それが国際学会の発表であったとしても,最終的には,論文にまとめ上げるためのひとつのステップにすぎないと思っている。実験的研究には,施設,人手,実験材料などの膨大なリソースがコストとして費やされている。それゆえ。そのような背景によって成し遂げられた研究には,それに見合った論文のかたちでの報告義務が,研究を主導した研究者には存在すると考えている。
企業などの研究は,段階によっては,公表できない事情はいくらでも存在するが,当然,研究内容は,企業内の研究報告書にはまとめられていると思う。また,研究所には,研究者とともに,研究を支える優秀な技術者の存在が欠かせない。技術者には論文作成とは別に,研究に必要な技術とそれを駆使した実験の適正な実施技量などが欠かせない。この立場は,研究者と同様の論文作成よりは,よりよい技術の向上の達成が求められる。しかし,出来ることならば,技術者にも技術報告書などにまとめ上げる修練は必要と思う。なお,著者が所属してきた研究所では,優れた技術者による研究のサポートや,医学的に有用な実験動物の開発業務などに,多くの技術系職員の絶大な貢献が存在していた。
国家などから研究費を支給されている場合には,その研究成果をスポンサーに対して報告することとは別に,原著論文のかたちにまとめ上げ,公表することが研究者にとって重要であると思う。ここでは,せっかくコストを掛けて実施した研究は,サイエンス世界への貢献という意味でも,国際学術誌での公表が前提となろう。なぜなら,その公表は,PubMed などに登録され,その内容は,少なくとも abstract を通して,世界中で検索されうる。オープンアクセ誌なら,そこから全文テキストが,誰にもネット上で読め,そうでない場合でも,読者側が経費を支払って,その論文の全文テキストPDF を購入し,読むことができる。このような個別の研究情報は,広大なサイエンス世界の蓄積物の一片に過ぎない場合もあるが,これらが蓄積され,検索されることにより,更なる研究発展のために役立つサイエンスの全体基盤を構築することになる。著者は,これを「知のピラミッドの構築」と呼んでいる。
研究には,他の業務などに比べて自由度が多い場合がある。そうでなければ新しい発見や発展は望めない。このような自由度のある世界では,せめて研究は必ず論文にまとめなければならないという縛りを,研究者に果たしても当然ではなかろうか。大学などでの学位取得,そこでの就職,昇進などの評価のひとつに,どれだけ意義ある研究成果をあげてきたかは,公表論文の内容によると思われる。公的研究費などを獲得するためにも,これまでの論文公表が,評価の重要な材料となっている。過度な論文至上主義や,Impact factor への極度なこだわりは的外れと思っている。しかし,研究実績を客観的に示すひとつとして,国際学術誌での原著論文公表の重要性を否定することはできないであろう。
3. 論文公表のプロセス
研究の内容を公表するには,それ以前の前提条件として,明確な研究目的を達成するための実験計画とその研究の実施が前提となる。これについては,これ以上触れないが,この前提があってこそ,論文内容の目的の明確性と論理的実施整合性に関する記述が可能となる。
まずは,論文の構成をしっかりと考えて,得られた成果をどうわかりやすく伝えてゆくかが重要である。実験データについては,生データと解析データの正確性に関する検証が重要であり,その前提には,研究データ類の記録が正確に,秩序だって整理されていることが必要である。また,生データと解析データに誤りがないことを証明するチェック実施記録の存在も必要となる。
結局,これらのことが確保されていることを,第三者にも証明できるためには,医薬品の安全性データ取得に求められている Good Laboratory Practice (GLP) 基準を参考にするのがよいと思っている。GLP 実施の3大コンセプトは,得られたデータに関する「正確性」,データや記録類がきちんと整理保存されている「保管性」,以上に基づいて実験を論理的仮想的に再現できる「再構成性」が重要とされている。これは,基礎的サイエンス実験においても求められる基本的なコンセプトと確信している。論文の改竄や不正の問題が起こるたびに,研究施設内での精神訓話のような講習会を幾度開催してみても,ほとんど効果はないと思っている。これでは,いつまでたっても,論文データの改竄や不正は跡をたたない。
医薬品安全性評価試験研究では,当たり前のように実施されている GLP 基準の習得と実践が,基礎研究施設に,もっと導入されるべきであると日頃思ってきた。面倒臭い手順をきらっていても,あとでデータの誤り,不正,改竄が見つかって,研究者人生を棒にふることを考えれば,少しくらいの手間や時間は惜しむべきではない。というか,GLP的な研究実施習慣を身につければ,これに則らないと,実験を安心して実施できない感覚が身に付いてくると思っている。
4. どの国際学術誌に公表するか
研究を論文にまとめ上げた場合に,どのような学術誌に投稿するかという課題がある。出来ることなら,研究生活のスタートから,英文で仕上げて,国際学術誌に投稿するようにした方がよい。なぜならば,研究をベースにしたサイエンス世界の共通言語は,英語だからである。
英文の国際学術誌は,無数にある。初めから,評判の高い上位の学術誌への投稿を狙うのもよいが,まずは自分の研究テーマにあった学術誌を選ぶべきであろう。それは,必然的に自分の論文で引用した journals のいずれかとなる。学術誌のレベルは,Impact factor などにより,その雑誌に掲載された論文が,平均的にどれだけ他から引用されているかの指標などで,ランクができている。最初は,あまりそれにとらわれる必要はないと考えてきた。自分の研究課題に近いテーマを扱っている学術誌をまずは選んで,そこの投稿規定に従って論文を作成し,それに投稿してきた。
出来ることなら,論文が受理された場合に,Abstract だけではなく,テキスト全文が,ネット上で,誰にでも無料で読んでもらえるオープンアクセス形式の選択がよい。ただし,この場合には,論文が受理された場合に,前述のとおり,著者側が論文掲載処理費用として,数十万円を出版社側に支払う必要がある。これは,あらかじめ研究予算の中に組み込んでおくしかない。なお,高額な掲載処理費用徴収を悪用したハゲタカ journals は,避けるべきである。
5. 投稿学術誌の具体的な選択法
作成した論文をどのような学術誌 (journals) に投稿するのが最適であるかについては,悩む場合もあると思う。論文の素案が出来上がった段階で,それをどのような学術誌に投稿するかについて,検索するシステムがネット上にいくつか存在する。
そのひとつに, Elsevier Journal Finder というのがある。下記の url をクリックされたい。
https://journalfinder.elsevier.com/

次に,その枠の中に論文の abstract 内容をコピーペーストする。今回は,例として上記の論文 “Tablet screen-touch behavior with audiovisual stimulus consequences in the common marmoset (Callithrix Jacchus)” の abstract を入れて,「Find journals」 をクリックしてみた。その結果,下図のような候補 journals が出てきた。ここには,各 journal の Impact Factor, Cite Score, Time to First Decision, Time to Acceptance, Acceptance Rate, Open Access の論文掲載処理費用などが記載されている。
すると下図が現れてくる。

Impact factor: その雑誌の1件あたりの論文(下記 Cite Score とは異なり,論文以外のニュース記事などは含まず)について,2年間で他の論文に引用される平均数。当該Elsevier社とは異なる第三者機関である Clarivate Analytics による指標である。
Cite score: Elsevier社が定めた指標である。その雑誌の1件あたりの論文ならびに記事について,4年間で他の論文に引用される平均数。この指標によると当社出版の超名門 journal “Cell" のスコアは,上記の impact factor から大幅に低下した。
Time to 1st decision:投稿された論文の受理/非受理のいずれかが,投稿者に最初に知らされる期間(日数)。
Time to acceptance: 最終的に論文が受理される期間(日数)。
Acceptance rate: 投稿された論文のうち最終的に受理される論文の割合(%)。
Open Access: WEB上に論文が掲載され,誰もが,全文を無料で閲覧できる オープンアクセス形式を著者が選択した場合,著者側が負担する論文掲載処理費用(US $)。
Subscription: 著者が当該論文について,定期購読型での出版を選択した場合には,著者側の論文公表の費用負担はゼロとなる。一方,読者は,その論文の abstract のみを PubMed 上で,自由かつ無料で読める。しかし,テキスト全文を読むためには,その学術誌を少なくとも年間購読するか,大学図書館などに,あればそこで閲覧するか,ネット上での論文全キストPDFを数千円かけてダウンロードするかの中から,選択する。
今回の Journal Finder については,巨大私企業である Elsevier社 1社が出版している 2,000種類以上の journals の中から,40 journals が,今回の論文の投稿用候補として現れた。上記記画面では,4番目以降の journals については省略してある。しかし,今回の検索では,あくまでも Elsevier社の学術誌に限られており,検索結果についても,journal の名前からして,明らかに今回の論文内容にそぐわないと考えられるものもあった。したがって,このような検索は,あくまでも参考程度のものとなろう。
また,Elsevier 社以外には,下記出版社による検索サイトが存在する。
Springer Nature社 の場合
Springer Nature Journal Suggester
ここでは,今回の論文に適合する可能性のある journals が,20件リストさた。
John Wiley社 の場合
Wiley Journal Finder (beta版)
ここでは,今回の論文の分野では,検索がヒットされず,"Sorry, we were unable to generate any results.” と出てきた。
その他にもいくつかの journal 検索法がある。上記に挙げた3社の検索法は,いずれもそれぞれの出版社が自分のところで出版している journals の中から,どれがあなたの論文の投稿先 journal としてよいのかを教えてくれるものであった。本来は,中立的な視点から候補 journals を探したいと思うであろう。そのような場合には,下記のものがある。
JournalGuide
https://www.journalguide.com/
提供元:AMERICAN JOURNAL EXPERTS
利用料:無料
結果:即時
対象:出版社を超えた横断的
わかること:「ジャーナルとの相性」「出版元」「インパクト(SNIP)」「採択から出版までの期間」「オープンアクセスへの取り組み」など多数
Journal Recommendation
提供元:AMERICAN JOURNAL EXPERTS
利用料:US $150
結果:4営業日
対象:横断的
EndNote: EndNote Match - Manuscript Matcher
提供元:Clarivate Analytics (文献引用ソフト EndNote の制作元,日本ではユサコが代理店)
利用料:無料(ただし,EndNote 購入済みが前提,また,EndNote version 9 からの機能のようである。)
対象:横断的
さらに,WEB 上には,この手の検索手段や情報は下記の通り多数ある。
"Top 7 online tools that provide journal recommendation to researchers”
また,北海道大学図書館の WEBサイトに「投稿先としてのジャーナルの調べ方」というのがあり,上記を含めた内容があり,これも参考になると思う。
そのほかに,Google 上で,「論文投稿 学術誌選択」と入力すると,下記のような WEB サイトが検出され,その url も付記した。
ジャーナル選択 (enago 研究支援サービス)
適切な論文支援先を選ぶ:ジャーナル選択のフローチャートとヒント(Think Science)
以上,論文をどのような journal に投稿するかについての検索法について記載してみた。しかし,実際にはこのようなものとは別に,自身の専門分野内で日頃読んでいる論文の掲載学術誌などに直感的にトライしてゆくものだと思っている。一応,周辺の状況を知っておくことは無意味ではないと考え,journal 選択に関する検索方について,参考程度に記載してみた。
6. 論文の投稿から最終受理までのプロセス
論文を投稿する場合には,それぞれの出版社により,個別の ネット上の論文原稿投稿方式がある。それぞれの方式に違いはあるが,流れの基本は同じである。投稿時に必要な項目を満たしていないと,論文は,Editor にまで行かずに,投稿前段階作業が完了しない。
投稿前段階作業では,編集側から個別の問題について,指摘がある。例えば,実験動物使用に関して,あるいはヒトが被験者の場合に関して,それらの倫理規定の記載が不十分であるとか,図表のフォーマットが不十分であるとかの指摘がある。これらを通過すると初めて,論文内容に関する審査が開始されるために,論文原稿が,Editor in chief に送られる。そこから,2ないし3人の reviewers に論文が回されて,その審査結果を踏まえて,Editor が,論文を非受理ないしは論文の補足,修正などを著者に求めてくる。その後,最終的な論文受理に関する可否の知らせが,Editor からくる。論文投稿から,最終的な論文受理の可否決定までの期間は,学術誌により異なる。処理スピードを売り物にしている学術誌もあるが,最長では数ヶ月となることもある。
7. 論文受理決定,公表形式選択
論文受理が決定すると,あとは編集作業となり,編集作業部門とのやり取りとなる。オープンアクセス専用誌の場合には,ネット上に論文テキスト全文が掲載され,著者側の費用負担のおかげで,だれもが,無料でそれを読むことができる。しかし,定期購読型の学術誌の場合には,オープンアクセスでの論文掲載を希望するか,あるいは紙媒体を含む定期購読型電子版の公表を希望するかの選択が求められる。オープンアクセスを選択した場合には,数十万円の ネット公表処理掲載費用が,著者側に求められる。しかし,オープンアクセスでない場合には,論文掲載料は無料となる。この場合,論文は,紙媒体の雑誌として購読するか,ネット上の電子版で,それを読むために一定額の費用負担を読者がするかとなる。ただし,読者が,その学術誌を定期購読しているか,所属大学などの図書館で定期購読していて,それを利用できる場合には,読者の費用負担はなく,その論文全テキストを読める。今回,前述した IJCP誌は,オープンアクセス専用形式であるにもかかわらず,大学運営で無料であった。
8. 公表後の論文の評価,Metrics
論文が公表された後は,その論文のWEBページに行くと,Metrics などの指標をみることができる。これにより,個別の論文がどれだけ他人から閲覧され,ダウンロードされたかが分かる。また,この論文の引用された件数も示されている。例として,オープンアクセス誌のパイオニアである PLOS ONE 誌に,著者らが 2012年に掲載した下記論文の metrics を示した(下図参照)。著者側に高額な論文処理費用を負担させる PLOS ONE などについて,当時の権威ある学術出版社は,学術誌のゴミ箱と,くそみそに述べていた。現在は,それらの出版社も,掌を返したように,率先して,オープンアクセス形式を採用している。

9, おわりに
実施した研究を論文にまとめて,それを国際学術誌に公表するまでには,長い道のりがある。日常業務に忙殺されて,論文執筆の時間などとれないと思う理由は山ほどある。途中で,諦めかける瞬間はいくらでも存在する。しかし,研究を実施したからには,必ず論文のかたちで公表するのが,いわば研究を主導した研究者の務めであると考えている。多くの人手,材料,施設,時間などのリソースが費やされたものが,陽の目を見ることなく埋もれてしまうのは,個人,所属機関,社会にとって,大きな損失といえる。企業秘密などに関連する報告書などは別として,純粋な学術研究を実施した場合には,論文により公表することがなければ,研究者の個人的経験としてしか残らない。そのような貴重な経験も,いずれ忘却のかなたへと旅立ってゆくであろう。これでは,そこで費やされたリソースを公的には無にしてしまうことと同様と考えている。著者は,研究者としてのスタートから,そのように深く考えていたわけではなく,いわば自戒の念をこめて,そう思うに至ったということである。
Google sites による WEB サイト公開

無料ホームページビルダーによる自由なWEB サイト公開
神経行動解析リンクス:https://sites.google.com/view/behavior100/ )
上記 WEBサイト(神経行動解析リンクス)は,Google サイト (Google Sites) を利用して作成した。これは,無料のホームページビルダーといわれるものの一つである。このサイトが無料だからといって,Google による広告などが入り込んでくることはない。本格的 WEBサイト作成には,HTML (Hyper Text Markup Language:文書構造構築) , CSS (Cascading Style Sheets: 見栄え補正),JAVA Script (ダナミック表現)などの言語により,プロに依頼することがあると思う。また,サイト公開には,サーバーのレンタル料をプロバイダーに毎月支払う必要がある。
しかし,Google Sites では,自力かつ無料でWEB サイトを作成し,Google 上に無料で公開できる。一切,自力でできるということは,このサイトの修正,加筆,改善がいつでも思う存分でき,いわば自分のサイトを少しずつ育て上げてゆくことができると考えている。
Google Sites がすべて無料なのは,Google による他のサービスの youtube 公開閲覧,gmail 設定利用,Google MAP 使用,key word 検索などが,すべて無料で利用できることと同じ流れにあるからである。一私企業による Goolge という巨大かつ独占的仕組みの中に取り込まれている事実は認識しつつも,その利便性を利用しない手はないと考えた。
著者は,HTMLなどの言語には知識がない。しかし,学会などで,PowerPoint や KeyNote をある程度使いこなしてきた。Google Sites の仕組みは,PowerPoint などとは異なるが,難易度という点では同じ程度と考えている。ただし,PowerPoint などほどの階層と選択肢の広がりは低く,できることの範囲は限られているようだ。このバックグラウンドでも,この程度の WEBサイト作成は可能であった。この程度のものしかできないのかとお感じの方については,著者は,まだ完全には使いこなしてはいなので,皆さんが習熟されればもっと良いものができると思う。 Google サイト紹介記事:https://www.topgate.co.jp/google-site-creationGoogle サイト紹介youtube:https://www.youtube.com/watch?v=1TXd2kB74DI
Google Sites についての全般的ことがら
a) WEB サイトの内容は,HTML などではなく,すでに用意されてある何種類かの雛形を利用して,文字入力や写真取り込みなどを PowerPoint 作成のような手軽さでできる。Google サイト紹介記事:https://support.google.com/sites/answer/6372878?hl=ja
b) WEB サイト作成と公開について費用がかからない。通常は,WEBサイトをプロに依頼すると費用がかかり,これを公開する場合には,毎月レンタルサーバー料がかかる。Google WEB サイトについては,これらが一切かからない。
c) いったん公開したサイトについては,いつでも即座に自分で修正し,再公開できるし,いつでも公開を中止することもできる。
d) 一定の枠内ではあるが,文字入力や図,写真などの貼り付けについては,十分な自由度がある。
e) パソコン上で作成したサイトが,タブレット画面とスマホ画面でも,自動的に最適化されている。現在の WEB サイト閲覧の半分近くは,スマホ利用による。パソコンのみの時代に作成された古いサイトには,これに対応していないものも見受けられる。ただし,スマホ画面には,様々なサイズがあり,全てのスマホ画面サイズに最適化されているわけではなく,文字配列がずれることはある。
Google Sites 実際に使用して気づいたことがら
a) PowerPoint のように容易に作成可能とは述べたが,サイト作成時には Google サーバーと入力時ごとに一字一句文字のやりとりをしている。そのために,いくつかの不具合に遭遇することがある。しかし,これは仕組みが分かれば,学習可能であり,回避可能でもある。
b) 上記の例として,使用するフォントの問題がある。サイトの原稿を Word などで作成したものを,そのままコピーペーストするとうまくいかないことがある。それは,Google サイトに適合したフォント(Gentium Basic, Lato, Lora など)があり,これにフォントを変えないと問題が起こることがある。逆に,適合したフォントを使用すると,パソコンでも,スマホでも,タブレットでも文字が閲覧時に最適化される。また,バックグラウンドの色を黒系に選択した場合には,自動的に文字が白に,またバックグラウンドを白系に選択した場合には,自動的に文字が黒に最適化されて読みやすくなる。Word の MSゴシックや MS明朝などのフォントをそのままコピーペーストしても,このような最適化はしてもらえない。
c) フォントの問題の続きとして,文字を同一ページ内あるいは他ページ内にコピーペーストできないことがある。その場合には,コピーする文字フォントを,一旦 Genitnum Basic になおしてから,コピーぺーストとし,その後,希望の文字フォントに変換するとうまくいくことがある。また,下図の上段右端をクリックすると下段が現れる。そこで,下段右端の T \ をクリックすると,溢れていたバッファー内容をクリアするのか,色々な問題がうまくいくことがある。また,文字には「題名,見出し,小見出」と「標準テキスト」があり,この2種類のモードを明確に認識しながら作業をすることが重要である。これをしないと希望するフォントにならなかったり,その他のトラブルに巻き込まれることがある。

d) 最近の企業,大学などの WEBサイトのトップページには,Java Script などによるダイナミックな 表現を駆使したものが多いが,本WEBサイトでは,そのようなものはできない。本サイトは,いくつかの雛形から選ぶ仕組みであり,現在のところそのようなダイナミックなものは見当たらないからである。
e) 本サイトに,画像を JPEG や PNG などの形式で直接,自由に取り込むことは可能である。しかし,動画を直接取り込むことはできない。動画は,一旦 youtube にアップしたものを挿入するしかない。さらに論文全体などの PDFファイル をサイトに挿入できない。これは,Google が,著作権の問題を考えて,制限を加えていると推測している。ただし,動画と PDF ファイルについては,これらを著者が 一旦,著者自身の Google ドライブに保存して,そこからのものを閲覧者が間接的にみることは可能なようである。しかし,閲覧者は,閲覧者自身の Gmail アドレスをいちいち入力する必要があり,これをしてまで閲覧したいと思うであろうか。
f) 本サイトに,Excel で作成した表などを画像として貼り付ける場合,JPEG 形式だと,全体が少しぼやける感がある。PDF は使用できないので,PNG にするとよいことがわかった。ただし,写真の場合には,JPEG でも画質の劣化は,それほど目立たない。本WEBサイトの利用可能容量は,15GB なので,PNG の使用容量が,JPEG より大きいことはほとんど問題とならない。ただし,その容量は, Google カウント全体の容量であること,サイトの保存容量の上限は,100MB,添付できるファイルサイズの上限は,20MB である。
g) WEB サイトを作成し,公開したつもりになっても,何ヶ月経過しても,Google 上で検索されない。この段階では,Google 上で自身のサイトの url を入力すれば,みることはできる。しかし,これでは一般に,キーワード検索してもらえない。 これは作成したサイトを Google 上のサーバーである Search Console 上に登録設定する必要があるからである。これを実施してはじめて,Google サーバー上のロボットに,作成したサイトを探し出してもらい,少しずつ順位を上げて,一般にもキーワード検索してもらえる様になる。この部分は,プロに相談して解決してもらった。しかし,この Search Console への登録の仕方については,youtube 上などに詳しい説明がある。
Google Search Console 登録紹介記事:
Google Search Console 登録紹介youtube:
h) Google Search Console登録の他に,Google Analytics に登録して,サイト閲覧状況を把握できる。Google Analytics の登録法についても,youtube などに詳しい説明がある。
Google Analytics 登録紹介記事:
i) 本WEBサイトでは,特定文章中の用語のクリックで,この WEB内の他のページに飛ぶかたちでのリンクはできる。しかし,このリンクはあくまでもページ単位であり,ページ内の特定の見出し(見出し,小見出しなど)にリンク(アンカーリンク)することはできないと思っている。と,ここまで記載したが,本WEBサイトの環境設定 「閲覧者ツール」で,アンカーリンクを ON にするという選択肢があることがわかった。しかし,この使用法については,もうひとつ理解できていない。NET上には,Google Sites では,アンカーリンクは,利用できないとの記載もある。
j) WEB サイト作成プロにとっては,Google Sites の問題点やできないことを列挙したくなるであろう。確かに,こんなに簡単に WEB サイトが,各個人に作成されてしまうことへの懸念もあると思う。それ故か,Google Sites に対して批判的な記事も存在する。また,Google Sites 以外にも,WIX, JIMDO など無料の WEB Site Builders がいくつか存在する。しかし,これらは,内容をネット上に公開する場合には,ドメインの取得が必要であり,いずれかのプロバイダーと契約して,毎月使用料を支払う必要があると思う。Google Sites では,ここも含めて,すべて無料で利用できる点で,他の無料WEB Site Buildrs とは異なると考えている。
k) したがって,Google Sites で,まずは自分で WEB サイトを立ち上げてみて,ものたりなくなれば,各種言語を用いて,あるいはそれを習得して,もっと本格的なサイトを次のステップとして,作成すればよいと考えている。
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Steve Jobs の遺産:MAC Book Airの魅力

生活・仕事に不可欠な Apple Computer
についての個人的メモランダム
上記の写真は,Steve Jobs のすぐれた遺産のひとつ MAC Book Air (画像: 2021 model, Image from Apple Inc)。2008年のオリジナルモデル発売時に,その後の WIFI 時代到来を予見して, Air と命名した。当時の一般的状況として,Operating System (OS) や Applications などのインストールは,DVD ドライブなどによっていた。それゆえ,最初に発売された MAC Book Air をみて,そのデザインはすっきりしていたものの, DVD ドライブの装着がないことに違和感を持った記憶がある。その後,直ぐに iPhone や iPad などの普及と相まって, WIFI時代が到来し,OS や Applications などのインストールは, WIFI 経由となり,DVDドライブなどの装着がないのが当たり前となった。
すっきりした質感の外観デザインは,1枚の厚いアルミ板をジェット水流で切断し,くりぬいて加工してあることによる。アルミ材質は,放熱性,軽量性,堅牢性,再生可能性においてすぐれている。 M1プロセッサー搭載の構造と機能には,当時と比べて格段の進化がみられた。
このあと,MAC Book Air M2 モデルが発売された。さらに,M3,M4, M5モデルなども加わってくる。円安と半導体供給不足などによる価格上昇はわれわれにとって痛いが,それでも海外から見ると転売の対象となる程割安である。現在では,MAC Book Air は,決してエントリーモデルではなく,本格的モデルとなった。これらのことから,2022年時には, MAC Book Air M2モデル 購入どきと判断した。著者は,これまで MAC mini (Intel 製チップ) を 2014年製のApple 純正27インチシネマディスプレーに Thunderbolt 2接続で使用していた。
従来使用していた MAC mini から,今回購入したMAC Book Air M2モデルへのソフト (Applications, データ,メール設定など)移行は,MAC に内在されている Applications のひとつ「移行アシスタント」により,WiFi 経由だと数時間程度で,極めてスムースに行われた。なお,移行元と移行先の OS は同じ Version にそろえておいたほうがよい。Office (Word, Excel, PowerPoint) も1週間くらいは,問題なく使用できた。ところが,その後 Word での入力そのものができなくなった。 Office の 40文字近くからなるライセンス番号 (デバイスID) を入力しなければならないのかと思ったが,普段MACで使用している mail アドレスとパスワードを入力するだけで問題なくOffice 全体が継続使用できる様になった。
旧型の Apple 27インチシネマディスプレーへの接続は,Appleアクセサリー (Thunderbolt 3 (USB-C) - Thunderbolt 2 変換アダプター) 購入によりスムーズに行われた。Apple 純製の旧型 27インチディスプレーには,他にLEDシネマディスプレーもあり,こちらの接続は, mini ディスプレーポートである。これには StarTech.com の USB-C - Mini DisplayPort変換アダプターの購入で接続が可能なようである。もちろん,現在発売中の Apple 純正 27 インチ 5K Retina スタジオディスプレーなら M2モデルへの接続に問題はなく,ベストであろう。しかし,ディスプレーのみの機能で ,その価格が 21万円以上もする。以前なら,27インチの ディスプレー付き iMAC コンピュータが購入できた価格である。
Apple 純正のディスプレーにこだわらなければ,Dell, LG などさまざまな選択肢があろう。その場合には,M2モデルの Thunderbolt 3 による他ディスプレーとの接続の問題をあらかじめ解決しておく必要がある。
ところで,MAC Book Air M2モデルには,性能のよい液晶画面がある。それなのに,なぜ外部ディスプレーに,わざわざつなぐ必要があるのか。これについては,著者の個人的事情による。それは,外部ディスプレーを利用しなければ,文字が鮮明には判読できないということがある。
Mac Book Air M2モデルの2個ある C型USB 端子の一つには,先のディスプレー変換アダプターを接続した。もう一つの端子には,各種周辺機器接続器(ドッキングステーション)を購入してつなげた。これにより,USB3, HDMI, VGA, LAN, SDカードなどを使用できる様になった。USB3 には,ゆったりと使用できる Apple 純正10 キー付きキーボードを接続した。さらに,Blue Tooth 経由では,Apple 純正マウスを接続した。その結果,従来通りの慣れ親しんだ快適な MAC使用が継続され,なおかつ,高性能の M2 モデルの使用を実感できることとなった。
ところで,そうなると MAC Book Air M2 モデルは,半開きの状態で使用されており,その折角の液晶画面,すぐれたバッテリー性能,キーボード,トラックパッドなどは,普段利用されることはない。もはや,M2モデルは,ノートパソコン (Laptop Computer) としての使用ではなく,メインコンピュータとしての使用となった。しかし,ノートパソコンとしての機能は,外出時などでの使用において遺憾無くその力を発揮している。この様なときには,このメインコンピュータをそのまま継続使用し続けることができる。これは,自分にとっては,今までにない大きなメリットと考えている。万一,このメインコンピュータが破損したり紛失しても,MAC に内在している Applications のひとつ Time Machine の設定利用により,すべてのデータ類は,外部 Hard Disk に逐次保存されている。したがって,この Disk から,それまでの内容は別のコンピュータで復元できると考えている。
なお,Time Machine 用データ記録媒体として,上述の Hard Diskを,新たに SSD (Solid State Drive) に交換した。Mac Book Air M2 モデル本体の媒体が,SSD である。そこで,外付け媒体も,同じSSD として,さらに本体と同じファイルフォーマット形式の APFS (Apple File System) とした。これは,データの 64 bits 処理に最適化されている。MAC のデータフォーマットは,ながらく 32 bits 処理を前提とした HFS+ (Hierarchical File System +) だったが,MAC OS 10.13 (High Sierra) から,APFS フォーマットのみとなったようである。APFS フォーマットは,iPhone iOS, iPadOS, watchOS, tvOS などの他の Apple 製品にも使用されているとのことである。
今回の MAC Book Air M2 モデルの Time Machine 設定も,最初は 上述の通り,外付け Hard Disk を HFS+ フォーマットで使用していた。しかし,いろいろと問題が生じたので,現在は,前述のとおり, APFS フォーマットの 外付け SSD を Time Machine 用に使用するに至ったという経緯があった。
MAC は,常に研究のかたわらにあった。とりわけ,論文作成時には,大きな手助けをしてもらったと感じている。Windows でもよかったかもしれないが,MAC に対する愛着が,論文作成時の苦行を和らげてくれたと思っている。
追記:
上記に,2014年製の27インチ シネマディスプレーを MAC Book Air M2 モデルに接続して使用したと述べた。しかし,2022年製の 27インチ 5K Retina スタジオディスプレーを購入して使用してみた。画面の輝度は 600ニト,色彩は10億色,6個のスピーカー装着と表記されている。このスタジオディスプレーを実際に購入使用してみると,文字の鮮明度,画像の色彩の鮮やかさなどの点で,先の旧型シネマディスプレーと比較して格段の進化を感じた。スピーカー音も youtube でのオーケストラ音が極めて分離よくダイナミックであり,単体オーディオ製品のセットでなくても,音楽が十分楽しめる。背面には,MAC 本体と繋ぐ Thunderbolt 3 端子の他に3個の USB C 端子があり,これには外付け SSDディスクやキーボードも接続できる。そのデザインは,突起物をことごとく排し,27インチの画面を埋め込んだ筺体部分の厚さは,僅か2センチのすっきりとした仕上がりとなっている。高額ではあったが,購入して全く後悔のない製品に仕上がっていた。「新しい葡萄酒には,新しい皮袋を」との Bible (ルカによる福音書)の文言が頭をよぎった。
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神経行動解析学を学んだシカゴ大学の
話題を糸口としたメモランダム
The University of Chicago: ドーパミン神経行動解析研究の基盤は,留学先のこの大学の研究室 (Department of Pharmacology & Physiological Sciences AND Department of Psychiatry at Pritzker School of Medicine in the University of Chicago) で構築させてもらった(著者撮影)。
伝統あるレンガ作りの校舎建物には,蔦(つた:ivy)が生えている。しかし,この大学は ivy league には所属していない。同 league は,米国北東部にある Brown, Columbia, Cornell, Dartmouth, Harvard, Pennsylvania, Princeton, Yale の 8 大学で構成するカレッジスポーツ連盟の名称として知られている。
しかしながら,The University of Chicago は,世界的な高等教育評価機関 QS (Quacquarelli Symonds) の優秀大学ランキングで,MIT, Cambridge, Stanford, Oxford, Harvard などと同様に,10位以内に入っていた。ちなみに,アジアでは中国やシンガポールなどの大学もどんどん力をつけてきており,これらの大学は,いずれ 10位以内に食い込んでくると思う。実際,2024年版の QS ランキングでは,National University of Shingpole が 8位となった。そのほかには,The University of California, Berkley が,あらたに 10位となり,そのために The University of Chicago は 11位となった。
上記の評価は,大学の役割について多面的側面から総合的に毎年実施している。その評価基準は,学術関係者からの評判(評価の中で占める割合:40%),雇用者からの評判(同:10%),教員1人当たりの論文被引用数(同:20%),学生1人当たりの教員比率(同:20%),外国人教員比率(同:5%)などであった。2024年版からは,新たに Sustainability (組織の持続可能性),雇用成果,国際研究ネットワークという指標が導入追加された。 QSランキングは,このように多面的基準によるため,その時々の各大学の順位は固定したものではなく,毎年激しく入れ替わっている。トップ好きの日本人は,何故か Harvard 大学が大好きである。しかし,同大学が,QS指標でトップというわけでもない。
自分が大学を選ぶときなどに,様々な基準は参考になるであろう。しかし,一般的基準の大学ランクへの極度なこだわりは,無意味と思う。大学入学の段階などでは,それぞれの大学の特徴を調べ,それらのうちのどれが,自分の能力と興味に合い,自身の可能性を伸ばせるかということこそが重要であろう。レッテルやラベルを自身に貼り付けるために利用しても,当座の自己満足はあっても,自身の将来の発展につながるとは限らない。なお,様々な価値基準は,それが世間で,認知され,重視され,権威を持ち始めた瞬間から,その基準は,仮想空間の中で一人歩きし,価値を失い始めると考えている。
わが国の大学にも眼を向けてみよう。良い大学に入学するには,合格難易度が高くなるのはどこでも同じである。しかし,入学試験偏差値ベースの難易度に焦点を置き,これを固定的かつ過剰に評価し続ける社会風土にあっては,国際的にみた優れた大学評価ランクの上昇はたやすくはないかもしれない。もっとも,このような評価は,さすがに見直されつつあり,また,そうしなければ世界から置き去りにされてしまう。また,大学に巨額な国の資金を投入するだけでも進展はみられない。そこには,教育と研究システムの改革とそれによる個人の行動変容をどれだけ実現できるかという課題が存在する。ここでの個人の行動変容は受験教育のみで培われるものではなく,自身の興味をとことん追求開発し,ゴールに向けた強い実践力によると考えている。これは,個人の本来持っている特性とそれを見出し引き出せる教育の力に依存するであろう。米国では,他人の批判をものともせず,自分の研究遂行に信念を持ち,問題を徹底的に掘り下げてゆく研究者を多数みてきた。潤沢な資金を投入した立派なお膳立てを作って,どうぞここで研究を好きなようにおやりくださいという環境を単に実現してみても,優れた研究は出てこないと思う。大学や研究機関においては,重要な研究課題を探り当て,研究の計画立案,研究の進め方,信頼性のあるデータの記録とその保管,そして最後に論文としてまとめ切る技術の徹底した教育が必要であろう。自力でそれを習得できるなら,それに越したことはない。しかし,日本人の研究者の国際誌での論文の勢いが衰えてきているという批判については,以上の各ステップについての重要性に関する再認識とその教育が必要となろう。もちろん,大学にはいくつかの役割と機能があり,研究さえよければというものでもない。教育が充実しており,多くの有用な人材を社会に輩出することも重要である。
それゆえに,大学の評価には,やはり多面的な基準が必要と思う。わが国の大学評価についての入学試験合格偏差値重視の流れは,受験者を取り込むために激しい競争をしている予備校ビジネスの戦略にリンクした構造もあると考えている。Youtube や SNS で, ”学歴厨” などで表現される学歴偏重主義を過剰に煽る多数の投稿をみていると,それを感じる。しかし,それ以前に,周囲を海に囲まれた歴史ある単一民族の日本人の心の中には,すべてを一次元の価値尺度に当てはめて,ものごとに順位をつけないと気が済まない性癖が存在しているようにも思う。そこには,現実世界の価値は多次元尺度上にあることが忘れ去られている。米国社会などでは,宗教も文化も社会的価値観もまったく異なる背景をもった人々が,英語という共通言語で辛うじてつながっており,一次元の価値尺度成立は,日本ほど有効ではないと考えている。
ただし,入学時偏差値そのものが一次元とは言っても,そこには数種類の教科に関する多面的な能力と尋常ならざる努力の成果が結実された場合がある。この場合,この値が高いことには,潜在能力としての大きな価値が存在していると思う。その能力を与えられた人材には,権威主義から解き離れた広い視野をもって,研究,教育,医療,ビジネス,行政,司法などの分野で十二分にその力を発揮し,社会的に大きな貢献をし続けてもらいたいと願っている。
よい日本酒とは,長い時間をかけてじっくりと造り上げた結果としての酒そのものの味わいと品質である。酒造りの入口の素材選定段階で,どれほど高いハードルを設け,希少性の高い高級な米を材料として選別し,使用したかについて,いつまでも強調し,誇示し続けてみてもはじまらない。もちろん,よい酒造りには,それに適した素材としてのよい米が重要なことは言を俟たない。また,なにがよい酒であるかをきっちりと識別できるひとびとの存在と,それを判定する明確な基準の存在が重要である。
ところで,日本酒は,国外にも随分と愛好者が増えてはいるが,世界規模で見るとまだまだローカル的存在と思う。その点,ウイスキーやワインなどは,歴史と伝統の中で醸成され,愛好者は世界に多数存在している。また,酒をのまなくても,楽しく充実した世界はいくらでも存在する。ここでは,世界には様々な価値観が存在し,われわれは多次元尺度の価値世界に生きていることを述べたいだけである。一方,このような価値尺度などからは,ときはなたれた世界や,そのようなものとは最初から無縁の世界も,この世には多く存在していることも事実であろう。
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神経行動解析研究

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神経行動解析
本ブログ趣旨
本ブログの内容は,神経機能ならびに身体機能の発現としての行動について,マクロ(巨視的/鳥瞰的)視点からの解析研究です。ここでは,行動という生体の統合的機能を客観的,定量的に計測し,解析する方法論の重要性を基本とします。このような研究視点の広がりが,環 (Link) となり,やがてネットワーク (Links) を形成することを願って,上記のとおり「神経行動解析リンクス」という WEB サイトをたちあげました。
上記視点において,実験動物を用いた神経精神疾患に関する基礎研究と,その応用としての前臨床医学研究を対象範囲としています。基礎的研究としては,疾患の症候発現とその測定,症候発現に至るメカニズム解明などが挙げられます。一方,前臨床医学研究においては,医薬品,細胞などの治療効果あるいは安全性について,実験動物レベルでの方法開発とそれによるデータ取得/解析が挙げられます。ここでは,ヒトの疾患に関する臨床場面をゴールとしたデータの信頼性について,法的にも担保しうる Good Laboratory Practice (GLP) 基準に基づいた,あるいはその精神を尊重した研究遂行の重要性を考えています。
神経行動解析研究
経行動解析研究の視点
人は生まれると,まずは泣き,乳を吸い,動き,眠る。やがて,そこから刺激に反応し,笑い,音声を発し,それが言葉となり,親兄弟家族と交流し,おもちゃで遊び,さらには家族から社会へと多様な行動レパートリーを広げてゆく。この流れから,行動は内部感覚刺激への反応に始まり,やがて外部感覚刺激への反応を包括してゆくことがわかる。このような反応の基盤には,生体に本来的に備わっている生理学的反射(反応)と行動学的な自発反応(行動)がある。さらには,この両者を土台として,前者は条件反射(反応)となり,後者はオペラント条件反応(行動)という学習行動が形成されてゆく。そして,これらが複雑に絡み合って統合されてゆく。いずれも,まずは外部環境内での人体の形態的身体特性に規定されており,その制約条件の中には,生理学的機能,生化学的機能,分子生物学的機能,遺伝子基盤などの生物学的要因が大きく関与している。
ここで主題とする行動的側面は,人の一生を通して最も統合的な生体機能である。また,それは,生体の多様な生理学的プロセスなどを含めた最終的アウトプットといえる。健全な行動の背後には,脳と神経系が正常に働くことが前提となる。実際には,これらが常に正常とは限らず,様々な神経精神疾患が存在している。また,疾患と診断されなくとも,われわれの脳は極めて脆弱であり,その行動が,常に高い Quality of Life (QOL) あるいは Well Being (WB) を維持し続けられるとは限らない。それゆえ,神経精神疾患の診断と治療法確立にも,また高い QOL あるいは WB 維持のためにも,ヒトの行動に関する科学的理解と自身の適切な行動制御が,われわれの人生にとって,最重要課題のひとつとなる。
以上の背景を踏まえた行動理解とその背後にある脳の神経機序解明は,神経神経科学 ( Neuroscience ) のテーマであり,そのうちのひとつに神経行動解析研究の視点が存在する。なお,経済学において,Micro Economy と Macro Economy の分類があるように,神経科学にも,ニューロンや細胞活動,分子生物学的事象,遺伝子解析などを主題とする Micro Neuroscience と,生体の統合的なシステムとしての行動を研究対象とする Macro Neuroscience の視点があると考えている。本WEBサイトでは,主として後者である Macro Neuroscience 視点での神経行動解析研究について,自由に記載してゆくこととした。
行動に始まり,行動に終わる
われわれにとっての最大の関心事は,自身の身近な行動であり,他人の行動であろう。たとえ,眼を遠い宇宙のはて,あるいは遠い過去の歴史にむけているつもりであっても,関心事は,やはり人の行動であることを否定できないと思う。さらに,社会も,経済も,政治も,宗教でさえも,そして歴史も,乗り越えがたい環境条件が存在する中での人々の行動の集積の結果でるといえよう。
神経行動解析からみた前臨床医学研究
著者は,大学では心理学を専攻した。大学院課程修了後は,薬物依存の世界的研究者であった柳田知司博士 (1930 - 2016) から,薬物依存学,薬理学,精神薬理学などのみならず,研究の進め方,論文の書き方などに関する丁寧な指導を受けた。その後も,多くのすぐれた指導者,仲間に恵まれて,神経行動解析研究と前臨床医学研究などを永年にわたり継続できた。
研究の内容としては,神経行動解析の視点に立って,神経精神疾患に関する前臨床医学研究を実施することであった。この基礎研究において,実験動物としては,マウス,ラット,コモンマーモセット,カニクイザルザル,アカゲザルを利用した。個別の研究においては,それぞれの実験動物の特性をフル活用することに心がけた。これは,個々の研究目的からみて,それぞれの実験動物の長所と短所を踏まえることであり,特定実験動物に固着して,無理に研究を継続しないようにした。今にして思えば,これは通常では容易なことではなく,実験動物開発を目的とした研究機関に在籍したために可能だった面もあると考えている。
また,実験動物を用いた基礎研究の実施については,次の二つの点を念頭においた。第一は,医療の臨床場面において,患者と医師の遭遇している現実であり,第二は,疾患治療薬開発を実施している製薬企業が遭遇している現実についてであった。それぞれについては,自分のわかる範囲内で,研究実施の重要なフィードバックとした。前臨床医学に関する基礎研究では,上記二つの視点からの厳しい眼差しを意識することなしには,研究を継続的に実施することはできないと考えてきた。
神経行動解析からみた神経精神疾患
多くの神経精神疾患の治療の場合には,まずは行動の変異としての症候に関する診断からスタートする。症候 (Syndrome) には,症状 (symptom) と徴候 (sign) が含まれる。症状は,患者が医師に訴える頭痛,吐き気などの患者自身の自覚的な訴えに基づく側面であり,自覚「症状」といわれる。一方,徴候は,症状とは別に,医師が他覚的客観的に患者を診察した結果みとめられる患者の体調や行動変異などである。いずれも,臨床場面での診断において,また神経行動解析学的研究においても,極めて重要なスタート側面ととらえてきた。
神経精神疾患の治療場面において,症候に関する診断が確定すると心理療法や投薬などの治療が開始される。そこで,患者の疾患の行動上の寛解の程度あるいは症候の軽減が治療のとりあえずのゴールとなろう。例えば,神経疾患であるパーキンソン病の場合には,患者自身あるいは家族が,その運動機能の変異とそれに基づく日常生活での不便に気付き,医師の診断をあおぎ,診断が確定すると投薬などの治療が開始される。この意味において,治療は,行動に始まり,行動がゴールとなるといえよう。
すべてが行動に始まり,行動に終わるのだろうか?
上記に,治療は,「行動に始まり,行動に終わる」例について述べたが,すべてがそうであろうか? 例えば,パーキンソン病を例にとると,症候をベースに,そう診断された場合にも,それ以前に既に,患者の大脳基底核の黒質-線条体系ドーパミン神経に変性あるいは脱落が進行しており,これは,Positron Emission Tomography (PET) や Single Photon Emission Tomography (SPECT) などの脳画像解析により,早い段階で診断がつく場合がある。また,家族性パーキンソン病の場合には,α-synuclein, parkin, LRRK2 などの遺伝子変異に基づいて発症することが知られており,遺伝子検査により発症の可能性についての予知はできるであろう。さらに,別の神経変性疾患のハンチントン病の場合には,第4染色体上に局在している遺伝子の変異が原因で発症することが知られている。すなわち,遺伝子 huntingtin がタンパク質をミスコードして,一定の年齢になると神経障害などを発症する可能性が知られている。また,これらの例を示すまでもなく,脳神経外科領域の脳血管性疾患や脳腫瘍などについては,人間ドックなどの脳画像検査により,患者の自覚症状なしに疾患がみつかる場合はいくらでもあろう。以上を踏まえると,当然ながら,神経精神疾患も,身体疾患同様に,すべてが行動に始まり行動に終わるわけではないという指摘があって当然である。
神経精神疾患の診断,治療,機序解明のためには,他の身体疾患同様に,遺伝子レベル,分子生物学的事象,細胞学的事象,生化学的事象,形態学的/生理学的/病理学的事象などに関する研究が重要であり,実際これまでもそのような流れの中で神経精神疾患に関する基礎研究は進められてきた。しかし,本WEBサイトでは,生体の統合されたシステムとしての行動そのものについて,客観的にして定量的な精密測定法を駆使する重要性についても強調したいだけである。
以上を踏まえて,実験動物を用いた in vivo レベルの前臨床医学研究においては,神経精神疾患の症候の特定側面に,まずは的確な焦点をあててみた。そこで,その焦点について客観的かつ定量的に測定するスタイルで,これまで研究を進めてきた。今にして思うと,このような研究スタイルは,大学での計量心理学と実験行動分析学(注1参照) の教育のお陰と考えている。以後は,これをベースとして,いくつかの研究機関において,少しずつ視野を広げる機会が与えられた。結果的には,そこから各種実験動物を用いた神経精神疾患の基礎研究と前臨床医学研究に専門を広げることができた。
注1)実験行動分析学 (The Experimental Analysis of Behavior) : WEBサイト オペラント行動と神経科学 参照
追記:「細胞に始まり,細胞に終わる」世界にも触れて
行動科学をベースとした研究を永年継続していると,すべては行動に始まり行動に終わるという視点に到達してしまう。しかし,一方で,そのような固定観念から解き離れたいと思い,病理学も独学で勉強した。もともとの心理学専攻者にとっては,生理学を学ぶことも重要と考えてきたが,むしろ病理学を学ぶ方が,門外漢にとって知識を吸収しやすい面があると感じた。その理由は,生理学では,ノーマルな状態を前提とした身体のシステムをひたすら学習するが,病理学では,壊れた身体のシステムを学習することによって,ノーマルなシステムも同時に学べるという2面性が存在し,これは学習しやすい要因と感じた。もちろん,生理学についても病理学についても,どのレベルの勉強をするかということがあり,著者の場合には,ごく初歩的レベルでの話となる。
以上については,著者の過去の経験として,行動科学を薬物効果との関連で学んだ行動薬理学の学習にも類似していた。薬物によって変容した行動から,薬物作用と同時に,本来の行動そのものについての2側面について同時に学ぶことができて,効率的であった。
以上から,病理学を学ぶと,すべては細胞(の異常)に始まり,細胞に終わるという視点も出てくる世界の存在を知った。ただし,それは主として身体疾患の解明されている部分についてであり,神経精神疾患のうち,とくに精神疾患,たとえば統合失調症などでは,細胞レベルでの確定がなされていないものも,いまだ存在している。このようなところには,やはり「行動に始まり,行動に終わる」という視点の入り込む余地が,少なくとも現時点では存在すると感じている。なお,大学医学部で正規の病理学を学習し,医療に携わっている医師にとっては,病理学が細胞に始まり,細胞に終わるという視点は,本末転倒と感じられるであろう。なぜなら,疾患を治療するための病理学という位置付けが教育の中で明確に存在しているであろうからである。
上記の基本的な思考の流れをベースにして,これまで著者が実施してきた研究などについて,下記目次の内容で,本WEBサイトを構成し,同様の内容をブログにも記載した。
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ヒト疾患モデル動物 ― モデル作成とテスト測定実施 についての枠組み ―
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ヒト疾患モデル動物
- モデル作成とテスト測定実施
についての枠組み -
1. 神経精神疾患モデル動物
標記テーマは,薬理学会や神経精神薬理学会などのシンポジウム課題として幾度となく取り挙げられてきた。これら学会において,実験動物を用いた研究には,臨床医療とのリンクが前提とされている。それゆえ,動物モデルを用いて産み出された測定データは,臨床視点からの妥当性と有用性についての厳しい眼差しにさらされる。
著者は,永年にわたり,マウス,ラット,マーモセット,カニクイザル,アカゲザルを利用して,様々な神経精神疾患モデルを作成し,研究を進めてきた。これらの中には,多くのリソースを費やしながらも,単なる試行錯誤的内容となり,意義の薄いものがあったのも事実である。しかし,一方で有用性が極めて高い研究も存在していたことを想い起こすことができる。すなわち,マーモセット への 神経毒,1-methyl-4-phenyl-1,2,3,6-tetrahydropyridine (MPTP) 処置 パーキンソン病モデルに関する前臨床医学研究と,もう一つはアカゲザルの薬物静脈内自己投与法による薬物依存研究は,実験動物モデルとしての妥当性と有用性が極めて高い事例として挙げることができる。この二つの例は,実験動物を用いたモデルとは何かを考える上で,とても参考になる。そこで,これらの事例も踏まえて,今後の研究発展の参考となるような動物モデルの骨格を示したいと考えた。動物モデル作成については,その内容が整理され,より妥当性が高く,有用なモデルによる研究が発展することを願っている。
なお,上記のシンポジウムなどでは,モデルの作成について強調されることがあったように記憶している。しかし,モデル作成のみならず,それを利用した適切なテスト測定法を選択/実施することも重要と考える。この2側面はワンセットであるが,それぞれ個別の問題が存在していると同時に,両側面を統合した上での問題点も明確に把握しておきたい。そこで,表1には,動物モデルの内容を3項目に分けて記載した。

表1. 神経精神疾患の動物モデルの作成とそれを用いた測定実施に関する枠組み。ここには,まずは研究の目的と範囲を明確化することの重要性,作成されたモデルの妥当性についての把握,そのモデルを利用したテスト測定実施上の基準について示した。また,いずれのモデルと測定法にも,効用と限界があり,これをきっちり把握することの重要性についても強調しておきたい。
2. 神経精神疾患・動物モデル作成
とテスト測定実施の目的と範囲
疾患モデル動物を作成する場合の研究スター時点において,まずは疾患基礎研究なのか応用研究なのかについての区分を明確にすることが重要となる。その理由は,両者のそれぞれには,研究のゴールと力点の置き方に違いがあるからである。すなわち基礎研究については,徹底的に分析力を駆使し,病態の本質を掘り下げてゆくことが重要であろう。
一方,応用研究では,薬物投与,細胞移植,遺伝子操作,外科手術などの前臨床医学レベルでの有効性効果判定がゴールとなる。ここでは,すでに妥当性などが確立した動物モデルを用いて,実験処置の効果の有無が明確になる測定法を用いることが重要となる。実験実施後の結論としては,1) 動物レベルでは効果がみられた,2) 動物レベルでは効果がみられなかった,3) 今回の実験条件では,はっきりせず,その理由はこれこれであった,のいずれかについて明確に言い切れることが重要である。
3. 疾患・動物モデルの病態に関する妥当性
次に,研究目的に照らして,どのような病態をターゲットにするかにより,利用モデルの疾患症候,疾患病理あるいは疾患病因のいずれかとの類似性が前提とされる。それを踏まえて,そのモデルの効用と限界を把握しておくことが重要となろう。
例として,神経毒 MPTP をサル類の皮下などの末梢に投与したパーキンソン病モデルを挙げてみよう。このモデルでは,持続的な各種運動機能障害などが,ヒトのパーキンソン病の症候に極めて類似している。また,この神経毒の作用部位が,黒質ドーパミン神経にあり,そこでの神経破壊を発現する点でも当該疾患に類似している。すなわち,このモデルには,疾患症候と疾患病理との類似性があるといえる。疾患病因については,ある種化学物質の長期暴露によるパーキンソン病様疾患のモデルとはなりうるかもしれない。しかし,本態性パーキンソン病の病因との類似性について, MPTP投与の場合は限定的となる。パーキンソン病の病因を探るには,家族生パーキンソン病で知られているいくつかの遺伝子をマウスあるいはマーモセットに導入したモデルの確立などが挙げられよう。
WEB サイト マーモセット・パーキンソン病モデル 参照
参考文献: 安東潔 (2018) 神経毒MPTP 投与によるコモンマーモセットのパーキンソン病モデル – 行動解析による前臨床評価を中心として –. オベリスク Vol. 23,1:14-22. https://researchmap.jp/read0179769/published_papers/19447809
パーキンソン病のような運動機能障害に関する疾患は,ヒトとサル類で多くの共通性が存在するケースであり,それ故に動物モデルには高い疾患妥当性がみられた。一方,運動機能とは別のヒト固有の高次脳機能に関わる疾患の動物モデルの作成は,極めて困難となる。たとえば,統合失調症について考えてみよう。この疾患の中核症状は,幻覚妄想とされている。これを動物モデルに再現することも,また仮に動物モデルで作成したとしても,幻覚妄想をどう検出するかについては,極めて困難な課題が存在する。ここでは,Methamphetamine などの覚醒剤反復投与による動物モデルなどが存在し,行動科学的,分子生物学的検索などが行われている。しかし,症候,病態生理の点でも,統合失調症との距離は大きいといわざるを得ない。現実には,モデルと疾患との間に類似しているほんの僅かな側面を取っ掛かりとして,研究を進めざるを得ない状況も,一応は理解はできる。
また,ヒト統合失調症患者に固有と考えらるいくつかの遺伝子を導入したマウス遺伝子改変モデルの行動特性を野生型と比較する研究もある。日夜,統合失調症の患者と向き合い,その治療に苦労されている医師も,実験動物による生物学的研究の重要性については深く理解されている。しかし,マウスなどのモデルを統合失調症モデルと呼ぶことに違和感を持たれるという精神科医のお話をうかがったことがある。さらに,統合失調症の病態や病因解明のための,マウスの遺伝子改変研究は重要かもしれない。しかし,疾患との大きな距離と限界については十分な把握が必要とされる。統合失調症に関わる可能性があるとされている遺伝子をマウスに導入しただけで,これを統合失調症モデルと呼ぶことは適切ではないと考えている。せめて,統合失調症遺伝子導入モデルと呼んで欲しい。
参照 WEB サイト
4. 疾患・動物モデルを用いた
テスト測定の基準
作成した疾患モデル動物を用いて,疾患のどのような側面を測定するかは,極めて重要なポイントとなる。せっかく妥当性の高い疾患モデル動物を作成し,利用しても,測定方法で的を外しては,よい実験結果は得られない。それゆえ,下記の測定ポイントについて,一つずつチェックしておくことが重要と考えている。
4.1. テスト測定指標データの妥当性
疾患妥当性の高いモデルを作成したのだから,測定についても,それに呼応した適切な測定法と指標の設定が必要である。作成されたモデルの表現している症候,病理,病因のいずれかを受けて,それに密接な関連を持つ測定指標の利用によって,研究目的に適った意味あるデータを得たい。
サル類のMPTP投与パーキンソン病モデルでは,症候,病理の点で,モデルの特性として,すぐれた疾患妥当性があることはすでに述べた。その上で,自発運動量 (spontaneous motor activity or locomotion) 測定や肉眼的症候観察などの行動解析により,パーキンソン病様固有の運動障害を検出できている。また,このモデル動物の脳に関しても,Positron Emission Tomography (PET) / Magnetic Resonance Imaging (MRI) などの in vivo 測定と Tyrosine hydroxilase (TH) などに関する病理組織学的検索により,ドーパミン神経変性が in vitro 測定でも明確に検出されている。
WEB サイト マーモセット脳画像解析 参照
参照 WEB サイト
4.2. テスト測定データの客観性/定量性
測定指標の客観性は,科学的観察の基本となる。MPTPによるマーモセットのパーキンソン病モデル実験においては,マーモセットの飼育ケージ内の自発運動量をセンサーで感知し,定量化した。これはパーキンソン病様症候の最も重要な一つである 無動 (immobility) の客観的定量的指標として,薬物の治療効果検出においても極めて鋭敏で有用なものとなった。ただし,この研究では,この指標の他に,実験者の肉眼によるマーモセットの症候観察も実施した。ここでは,実験者の主観ができるだけ入り込む余地のない観察項目をくみたてた。すなわち,特定観察項目の有無について,存在したか存在しなかったかのみを,1 あるいは 0 で,観察者が記録した。そこで,いくつかの項目の合計得点を得た (CIEA Dysfunction Score)。これにより,自発運動量の測定のみでは十分ではないマーモセットの症候の全体像も定量的に補完した。
4.3. テスト測定データの信頼性/再現性
測定データの信頼性については,安定したモデルにより,十分な動物数を利用して,得られたデータのばらつきが小さいことが条件となる。ばらつきは,実験で得た標本値のばらつきとしての標準偏差 (Standard Deviation: SD) を使用するのが適切と考えている。標準誤差 (Standard Error of Mean: SEM) も用いられるが,こちらは,標準偏差を使用動物数 (n) の平方根で割った値 ( SD/√n ) であり,ばらつきを少なくみせることができる。しかし,この標準誤差は,母集団における各標本の平均値のばらつきを意味している。つまり同じ条件での実験を,たとえば多くの施設で実施したとして,それぞれの施設での平均値の分布について記載している。その意味では,1施設内での1実験で得られたデータの分布のばらつきは,SEM ではなくSD で表すのが適切と考えている。様々な施設から同じ実験条件で得られた多数の平均値を集めた分布である SEMを利用するのは,少し違うのではないかと考えている。SD か SEM のどちらなのかが定義されていれば,それでよいではないかという考えもあろう。しかし,それぞれのばらつきの正負単位は分布上の確率と理論的にはリンクしいて,SD と SEM では,ばらつきの示す意味が異なると思う。著者は統計学の専門家ではないので,もし違っていればご教示願いたい。
また,再現性の方は,同じ研究者が実験を繰り返し実施しても,あるいは他の施設の研究者が同一条件で実験を実施しても,同様の実験結果が得られることを意味している。ある特殊な名人芸的な技量を持つ研究者の研究結果というのでは,再現性の証明が特に必要となろう。
4.4. テスト測定データの臨床予測性/有効性
得られたデータに,客観性/定量生,信頼性/再現性 があっても,そのデータに臨床予測性あるいは臨床上の意味(有効性)がなければ,何のための研究かということになる。MPTP処置サル類パーキンソン病モデルによる前臨床医学薬効評価については,疾患の治療薬としての予測性/有効性が極めて高い。その理由として,MPTP が,黒質線条体系ドーパミン神経を破壊することと,サル類とヒトとの間の四肢を含む運動機能に共通性が存在し,それらに変性がみられ,障害された場合には,パーキンソン病の疾患病理と症候の点で極めて類似していることが挙げられる。
もう一つの例として,アカゲザルを用いた薬物静脈内自己投与法についても述べる。この方法は,ヒトで依存を形成する薬物(依存性薬物/乱用薬物)に対する極めて鋭敏な予測性を示してきた。さらに,この方法により,ヒトで精神依存性を発現させる薬物のほとんどを,サルもレバー押し行動により自発摂取し,依存の状態にまで持っていけることが証明されている。薬物自己投与法により,薬物による精神依存の行動的側面としての薬物探索行動が実験動物にも形成されることが示された意義は極めて大きい。また,アカゲザルの薬物自己投与法は,ヒトでの新規化合物の依存性の有無を予測できるすぐれた方法ともいえる。
WEB サイト 薬物依存の概念 & 薬物依存と行動解析 参照
参照 WEB サイト
4.5. 病態に関するマクロ/ミクロ視点のバランス配慮のテスト測定実施
薬物依存における精神依存を研究する上で,実験動物の薬物自己投与行動を用いた実験が行われる。これは,薬物依存に関する薬物探索行動としての行動的症候をマクロレベルでとらえたものといえる。この時の脳内の薬物依存による機序変化は,分子生物学的レベルで詳細に解明し得るであろう。しかし,これまでみかけた研究には,依存性薬物について,実際の薬物自己投与実験とはかけ離れた薬物用量を実験動物に強制反復投与して,その脳内の詳細な分子生物学的解析結果を薬物依存と結びつけたものをみかけた。依存性薬物には,その薬物の一般薬理作用とは別に,依存を引き起こす作用が存在していると思う。両者を混ぜこぜにしたミクロレベルの解析では,マクロレベルである薬物依存の本質と解離する場合があると思う。ここでは,薬物探索行動の条件を念頭において,一般薬理作用と薬物依存作用の部分を分離したマクロとミクロの統合的解析が必要と思う。
4.6. モデル作成とテスト測定に関する実行可能性
実験動物を用いてモデルを作成する場合には,現実的に研究室で実現可能でなければならない。神経毒MPTPを用いたパーキンソン病モデルの実験では,MPTP をしっかり管理できる体制を整える必要がある。そうでなければ,実験担当者の安全を確保できない。また,薬物の精神依存性を評価するベストな方法は,アカゲザルの薬物自己投与法であるが,大型のサル類をしっかり管理する体制が施設にあることが前提となる。
現在実施されている上記の研究も,最初から全てがそろった状態でスタートしたわけではない。研究の目的とその実施についての強い動機づけに支えられて,1からスタートし,少しずつ整備していった。先の例でいうと,最初は,安全性を考えて,神経毒は MPTP ではなく,脳内投与による 6-hydroxydopamine などからスタートしても良いであろう。また,薬物自己投与実験は,アカゲザルの施設がなければ,ラットやマーモセットなどからスタートをしてもよいと思う。
結局,モデル作成とテスト測定実施の実行可能性は,これらを実施することの意義についての研究者の明確な研究課題への認識と強い動機付けと現実的状況(リソース:専門家,人材,施設,時間,研究費など)との折り合いの問題となってくる。
関連WEBサイト(神経行動解析リンクス)
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神経行動解析 リンクス
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神経行動解析 リンクス - 実験動物マーモセット
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神経行動解析 リンクス - マーモセット・パーキンソン病モデン病モデル
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神経行動解析 リンクス - マーモセット脳画像解析
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神経行動解析 リンクス - 北米神経科学会 ( SfN )
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神経行動解析 リンクス - オペラント行動と神経科学
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神経行動解析 リンクス - 薬物依存の概念
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神経行動解析 リンクス - 薬物依存と行動解析
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神経行動解析 リンクス - ヒト疾患モデル動物
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神経行動解析 リンクス - 神経行動解析論文
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神経行動解析 リンクス - 神経行動解析トピックス
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神経行動解析 リンクス - 研究の余暇
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神経行動解析 リンクス - 神経行動解析リンクス主宰者
薬物依存と行動解析

g-links's blog
本ブログは,WEBサイト 神経行動解析リンクス (Neurobehavioral Links)
の内容に基づいています。
上記 Intravenous drug self-administration (薬物自己投与)実験について:
故 柳田知司博士が,薬物依存研究遂行を主たる目的として設立した前臨床医学研究所 (1966-1996) の実験施設におけるアカゲザルとラットの薬物静脈内自己投与行動実験(著者撮影)。このような実験を実施することの正当性ならびに動物実験の倫理に関しては,オペラント行動と神経科学 のページ内「6.4. 動物実験の倫理」 および 薬物依存の概念 のページ内 「 7.7. 薬物依存症と薬物乱用社会の過酷な現実」 をご参照ください。
参照 WEB サイト
1. 薬物依存と行動解析の関連性
本WEBサイトの 薬物依存 のページにおいて,薬物依存の本質は精神依存にあり,これはヒトでは薬物に対する激しい渇望で特徴づけられると述べた。そして,この渇望は,強迫的な薬物探索行動 (drug seeking behavior) を引き起こす。一方,実験動物における薬物探索行動は,薬物自己投与法により検索できる。これは,薬物を強化刺激としたオペラント 行動として,主としてサル類と齧歯類などを用いて実施されてきた。これらの実験動物がレバー押し反応をすると,あらかじめ静脈内に植え込まれたカテーテルを通して,薬物が動物の体内に注入される。薬物が静脈内に注入されると,それは直ちに脳内に到達し,薬物効果が,速やかに発現される。このことにより,薬物の強化効果の有無は,レバー押し反応の増減によって,極めて鋭敏かつ的確に検出される。
薬物が水に溶けない場合には,媒体(溶媒)に懸濁した薬物をカテーテルを介して胃内に注入する自己投与法がある。こちらは,薬物が消化器系から吸収されて脳に到達し,そこで効果を発現するのに,静脈内投与に比べて,少し時間がかかる。しかし,ヒトでは経口的に服用された薬物にも精神依存が形成されるので,動物の薬物胃内自己投与法も有用な精神依存性に関する検索法となる。一方,アルコールは水溶性であり,ヒトにとっても身近な依存性物質である。しかし,実験動物にアルコールを口から飲ませようとしても,味覚やその刺激性のために,通常はうまくいかない。だからといって,アルコールを静脈内投与すると血管への刺激性があり,動物に自己投与行動を形成できない。そこで,アルコールの場合には,実験動物の胃内にカテーテルを留置し,ここから吸収されるアルコールの自己投与行動を観察する。以上により,実験動物を用いた薬物依存研究では,薬物の静脈内あるいは胃内による自己投与行動実験が中心課題のひとつとなる。
オペラント 行動,ラットおよびアカゲザルの薬物静脈内自己投与行動,アカゲザルを用いた喫煙自己投与行動については,本WEBサイト オペラント行動と神経科学 参照。
薬物依存研究においては,精神依存とその結果として生起する薬物探索行動が主要なテーマとなる。しかし,薬物依存の様々な側面には,種々の行動的要因が関わっている。その意味においても,薬物探索行動以外の各種行動についての理解も,薬物依存理解の重要な手がかりとなる。ここでは,そのような視点からの行動についての用語解説を試みた。これにより,薬物依存についても,また行動それ自身についても,いっそうの理解が深まることを願った。
本WEBサイト 薬物依存の概念 参照
行動についての用語解説に先立ち,下記の図には行動(反応)成立の基本構造について示した。まず,生体には生まれながらに2種類の反応が存在する。それらは,特定の外部刺激がなくても生起する自発反応 (Emitted Response) と特定の外部刺激により生起する誘発反応(反射) (Elicited Response or Reflex) である。これらの反応は,生体が環境に適応する上で,生まれながらに備わった極めて重要な反応である。その生体が,さらにその環境で存続し続けるためには,これらのみでは十分ではなく,上記反応をベースとした学習行動の成立を必要とする。そこで,上記のうち,自発反応をベースにして成立する学習は,オペラント反応(オペラント行動 :Operant Behavior) という。一方,誘発反応をベースとした学習は,レスポンデント反応(レスポンデント行動 :Respondent Behavior) という。 生体の行動の大部分は,これら 4種類の反応(自発反応ー> オペラント反応,誘発反応ー> レスポンデント反応)成分から成り立っており,反応をこのような構造として,理解することが行動に関する全体的把握の上で生産的と考えている。それゆえ,以後の行動についての用語の記載には,このような枠組みを前提としたものとなる。
本WEBサイト オペラント行動と神経科学 参照
2. 行動の種類と条件付け

一方,レスポンデント反応は,無条件刺激(ex.,食物)とそれによる無条件反応(ex., 唾液分泌)の発現を確認した上で,無条件刺激と共に、中性刺激(ex., ベル音)を組み合わせて反復提示する。これにより,中性刺激の提示のみで,唾液分泌のような条件反応の発現がみられるようになる。
本WEBサイト オペラント行動と神経科学 参照
本WEBサイト 薬物依存と行動解析 参照

3. 行動の用語解説
オペラント行動 (Operant Behavior)
実験動物による薬物探索行動は,静脈内注入された薬物を強化刺激としたレバー押しオペラント行動として形成できる。一方,実験動物が,レバー押しなどにより,餌やジュースを獲得する学習行動については,既に膨大な研究業績が存在している(本WEBサイト オペラント行動 参照)。Harvard 大学の B. F. Skinner などが,オペラント行動に関する学問と技術を体系化し,実験動物のみではなく,われわれ人間の大部分の日常行動や社会行動も,オペラント行動により成り立っていることを示した。
まず,上記に述べたとおり,ヒトおよびその他の動物には,学習以前の生得的な自発反応 (Emitted Response) の存在が前提となる。乳児がこの世に生まれて最初に示す行動の一つに,母親からのミルク摂取が挙げられる。最初は,乳首などへのおぼつかない接触反応が,だんだんと効率的かつ的確なミルク吸引摂取反応になってゆく。これが最初に確立されたオペラント行動のひとつとなる(レバー押し反応だけがオペラント行動ではない)。これをスタートとして,その後は,生存に必要な水分や食物などの摂取が,学習により形成されてゆく。このことからも明らかなように,まずは,様々な自発反応の生起があって,このうち生存に有効なものの生起頻度が高まってゆくことに,オペラント 行動の原理原則が存在する。これが安定的高頻度に生起するようになり,多様なオペラント行動の学習成立が起こる。ここには,環境刺激に対する様々な自発反応→それらの反応のうち,特定の反応と特定刺激の結びつき→その刺激が生存にとって有効であれば,この刺激獲得反応に学習成立がみられるという図式がある。これを反応の刺激随伴性 (Response Contingency) といいい,ここにオペラント行動成立の本質がある。ここでは,反応に対する刺激強化という原理が重要である。
自発反応とその学習行動であるオペラント行動とは別にもう一つの重要な行動がある。それは,刺激による誘発反応 (Elicited Response or Reflex) であり,これの学習行動としてのレスポンデント行動 (Respondent Behavior) が存在する。この誘発反応とレスポンデント行動も,生物行動の重要な側面であるが,これについては,下記レスポンデント行動の項を参照されたい。
実験動物を用いたオペラント行動の実験的研究のほとんどが,餌やジュースなどを用いたものである。しかし,一方で,動物のレバー押し反応に対して,薬物を静脈内に注入する薬物静脈内自己投与オペラント行動については,薬物依存のうち精神依存を研究する中核的な研究方法となった。すなわち,精神依存を実験動物で検索する上では,薬物自己投与法により,薬物探索行動を観察し,そのことによって薬物の精神依存についての検索が可能である(本WEBサイト オペラント行動と神経科学 ならびに 薬物依存の概念 薬物静脈内自己投与行動 参照)。
オペラント行動について理解する上で最も適切な教科書の一つとして,下記を挙げておきたい。本書は,プログラム学習により,読み進む構造となっており,一つ一つの知識と概念を確実に学習してから,次のステップに進むようになっている。通常の読書のように,理解してもしなくても,ページを読み進めてゆく場合とはわけが違う。本書を読み進める中で,この書籍の読書行動がオペラント行動原理に支えられたものであることに気付かされ,読書後には,爽やかな達成感が残る。半世紀以上前の教科書ではあるが,オペラント行動科学の基本について適切に学ぶことができる。これが遺伝子工学,分子生物学,免疫学など最新の医学/生物学の領域においては,古い教科書には歴史的意義は存在しても,正しい知識を吸収するには不十分な場合もあるかと思う。これらの領域では,研究対象をひとつひとつの要素に分解して,とことん分析/解明し続け,これまでの概念が大きくかわることがある。一方,行動科学研究も日進月歩してはいるが,行動という生体の最も高度にして統合された機能の枠組みについての考え方は,それが正しい限りにおいてではあるが,変わることがない。これが,下記の教科書が色褪せない理由と考えている。
Holland, J.G. and Skinner B.F.: The Analysia of Behavior, A Program for Self-Instruction. McGraw Hill Book Company, Inc. 1961.
また,下記は,オペラント行動に関するバイブルと呼ばれている。全編を読み切るには,少し努力が必要である。85年以上前に,若き Skinner が,Harvard 大学の学位論文として執筆した内容を含めて書籍にした。 特筆すべきは,本書の終わりに近い部分に,W.T. Heron との共同研究に関する記載がある。すなわち,ラットのレバー押しオペラント行動に対して,caffein と bezedrine (amphetamin) の反応増加効果について述べている。Amphetamine は食欲抑制効果があるにもかかわらず,餌を獲得するためのレバー押し反応の増加について特記している。ここから,おおよそ 30年後に,主として米国において,薬物とオペラント行動に関する知見を包括した行動薬理学という学問領域が開花した。
Skinner BF: The Behavior of Organisms: An Experimental Analysis. 1938, Appleton & Century, Reprinted by the B. F. Skinner Foundation in 1991 and 1999.
Skinner 学派の研究業績についての歴史的概観とその将来について,下記の論文は,和文で丁寧に記載してある。下記 URL により,PDF の閲覧可能。
佐藤方哉:オペラント行動と実験行動分析学 -その双生児の来し方行末 - 心理学評論 1975年 Vol. 18 No.3, 129-161.
本WEBサイト オペラント行動と神経科学 参照
強化効果 (Reinforcing Effect)
アカゲザルやラットの静脈内あるいは胃内にあらかじめチューブを留置しておき,動物のレバー押し反応に対して,一定単位用量の薬物を注入する。もし,この動物が,持続的かつ頻回なレバー押し反応により,この薬物を安定的に摂取し続ければ,この薬物には強化効果が存在するといえる。また,この場合のレバー押し反応は,薬物によって強化された行動と定義し,薬物探索ならびに薬物摂取に関する学習行動が成立したとする。この過程には,まずは動物のレバーへの偶然的接触,それによる薬物注入,そしてそれが,次のレバー押し行動を強化するか否かという分岐点の存在がある。結果的に,レバー押し反応頻度が増加し,これが安定すれば,ここで薬物探索行動が確立し,薬物の強化効果が示されたとみなす。
薬物自己投与行動観察において,まずは生理食塩液などの薬物媒体をレバー押しに対して注入するコントロール条件を設定する。ここでのレバー押し反応数は低レベルであることを確認しておく。薬物による強化効果の有無は,このコントロール値を上回ることが条件となる。
強化スケジュール (Schedule of Reinforcement)
アカゲザルあるいはラットを用いた薬物静脈内自己投与行動実験で,最初はこれら動物のレバー押しに対して,一定用量の薬物をレバー押し反応ごとに注入する条件とする。これが基本となる連続強化スケジュール (Continuous Reinforcement Schedule or Fixed Ratio 1 Scedule) である。
しかし,コカインなどの強化効果の強い薬物では,動物は頻回なレバー押し反応により,その薬物を過剰に摂取し,痙攣などを起こして,実験途中に死亡することがある。これでは困るので,通常は,この連続強化スケジュールからスタートし,一定のレバー押し反応の学習成立を確認した上で,次に間欠強化スケジュール (Intermittent Schedule of Reinforcement) に切り変えて,動物が薬物を過剰摂取することを避けて,動物の薬物自己投与行動を長期間にわたり観察する。
間欠強化スケジュール には,強化に必要なレバー押し回数について,一定の比率を設定する比率強化ケジュール (Ratio Schedule) がある。たとえば,10 回のレバー押しごとに一定用量の薬物を注入するのは,比率強化10 スケジュール (Fixed Ratio 10 Schedule) である。一方,一定の時間間隔を設定する定時間隔強化スケジュール (Fixed Interval Schedule) もある。たとえば,10 分経過後の最初のレバー押し反応に対して,薬物を注入するのは,定時間隔10 分スケジュール (Fixed Interval 10-min Schedule) である。
また,これらとは別に,上記のようにスケジュールの値を一定にせず,各レバー押し反応ごとにランダムな値を設定して強化するスケジュルールもある。しかし,この場合もランダム数ながらも一定の平均値を設定する。たとえば,変率 強化10 スケジュール (Random or Variable Ratio 10 Schedule) と 変時間間隔強化10 分スケジュール(Random or Variable Interval 10-min Schedule) などがある。変率強化10 スケジュールでは,ランダム回数ながらも平均は10 回ごとの強化となり,変時間間隔10分スケジュールでは,ランダム時間ながらも平均は10分ごとの強化となる。
正確性はなく,説明のための例としてのみ受け止めていただきたいが,定率強化スケジュールは,生産物の量に応じて収入を得る場合が当てはまる。また,変率強化スケジュールは,一生懸命ゲームをして,ランダムに賞金や賞品を獲得することなどに準えられる。習熟の度合いによって,変率の確立が上昇してゆく場合もある。一方,定時間隔強化スケジュールは,サラリーマンが,毎日仕事をこなして月のうち定められ日に,月給を受け取る場合が当てはまり,これは,サラリーマンスケジュールといえようか。また,変時間隔強化スケジュールは,店舗にお客さんがパラパラと訪れて買い物してくれる場合になぞらえることができようか。いずれの場合も,金銭を強化刺激として例を挙げた場合である。なお,金銭は,人間社会では最も一般的にして強力な強化刺激のひとつであり,条件般化強化刺激 (Conditioned Generalized Reinforcer) といわれる。
さらに,累進比率強化スケジュール (Progressive Ratio Schedule) というのは,たとえば最初は Fixed Ratio 10 Scheduleから初めて,これで動物のレバー押しオペラント反応が安定的に成立すれば,次に,その倍の Fixed Ratio 20 とし,さらに Fixed Ratio 40 ……… として,比率をどんどん増加させてゆく。動物が最終的にレバー押し反応を止める比率を求めて,これを強化刺激の効果の強さの指標とする。以上につき,言葉を変えれば,このスケジュールでは,各薬物の効果効果の強さを,レバー押し反応の消去抵抗の強さから捉えているといえよう(行動消去については,下記参照)。
アカゲザルを用いた薬物静脈内自己投与行動実験では,このスケジュールを用いて,コカイン,モルヒネ ,メタンフェタミン,ニコチンなどが,この順番での強化効果の強さが観察されている。これは,これら薬物のヒトでの精神依存性の強さと対応しているといえる。
累進比率スケジュールの最終比率は,その比率での反応数が,あらかじめ定めた一定時間内に次の比率に到達しない場合と定義し,これを最終比率 (Final Ratio あるいは Breaking Point) と呼ぶ。この累進比率スケジュールでは,比率の増加の仕方や最終比率条件の決め方などに十分な検討が必要である。
強化スケジュールについての古典的書物として,下記を挙げないわけにゆかない。
Ferster, C. B. and Skinner, B. F. : Schedules of reinforcement. Appleton Centurt-Crofts, 1957.
行動消去 (Behavioral Extinction)
上記の薬物自己投与行動の実験において,レバー押し反応に対して最初に生理食塩液などの薬物媒体を与える条件とする。ここでは,明らかな摂取回数がみられないことを,まず確認する。このレベルをオペラント レベルという。その上で,次にコカインなどの薬液を摂取できるようにする。一定の摂取回数が観察でき,この薬物の強化効果が確認された後に,再びレバー押し反応に対して先の生理食塩液などの媒体を与える条件に戻す。薬物から媒体に切り替えられたこの段階では,最初は burst といわれる高頻度のレバー押し反応数が観察される。しかし,やがてレバー押し反応は,最初の媒体条件と同程度のオペラント レベルになる。このように,薬物の強化効果検索後の媒体摂取時反応の低下について,レバー押し行動に消去がみられたとする。
行動に消去がなかなかみられない場合を,消去抵抗が強いという。先の薬物自己投与行動における累進比率強化スケジュールでは,各薬物の消去抵抗の強さを測定している。すなわち,なかなか消去せず,消去抵抗が強い薬物ほど,その薬物に対する探索行動の程度が強いとみなす。さらに,この消去抵抗の強さは,ヒトでいえば薬物に対する脅迫的渇望の行動的表現ととらえることができよう。それゆえ,このような累進比率強化スケジュールの利用によって,動物実験でも薬物に対する脅迫的渇望に相当する激しい薬物探索行動が観察でき,したがって,その薬物の精神依存性が高い妥当性をもって検索できると考えている。薬物依存症の問題点は,薬物探索行動の消去抵抗が強い状態にあることである。
累進比率強化スケジュール条件で薬物の強化効果の強さや程度を調べているのに対して,単なる連続強化スケジュール下での薬物自己投与行動では,薬物の強化効果の有無を調べているに過ぎないともいえよう。薬物に強化効果が存在することは,その薬物に精神依存性が存在する一つの前提条件とはなる。しかし,厳密な意味では,これのみで,薬物の精神依存性の有無は明らかではない。したがって,薬物の精神依存性について,より深く検索するには,連続強化スケジュールや間欠強化スケジュールのみではなく,累進比率スケジュール下での薬物に対する強迫的探索行動まで観察することが理屈の上では重要となろう。すなわち,薬物の強化効果の消去抵抗の強さを測定する必要があるといえる。
刺激弁別 (Stimulus Discrimination)
前述の強化スケジュールのもとでの薬物自己投与行動が安定的に維持された段階で,たとえばランプ点灯中は,反応に対して強化し,ランプ消灯中は反応があっても強化しない条件を設定する。反復訓練により,動物はランプ点灯中には薬物自己投与行動を示し,消灯中にはその行動を示さないようになる。すなわち,ランプ点灯という外部刺激の有無に対応した的確な反応を示す。これを動物の刺激弁別行動という。そして,ランプ点灯の有無が弁別刺激としての役割を担ったとする。ランプのような視覚刺激だけでなくても,聴覚刺激でも,嗅覚刺激でも,適切な実験条件を設定すれば,動物はこれらの刺激の有無を弁別する。以上により,動物の行動に弁別がみられたという側面と,その刺激が動物により弁別(感知)されたという2側面が存在する。ヒトのように言語による指示を用いることができない動物の場合でも,感覚刺激の感知や感覚刺激の閾値などが,このような弁別行動を介して詳細に測定できる。
もうひとつ別の刺激弁別の事例として,薬物弁別実験について述べる。ここでは,ランプ点灯の有無などの外部感覚刺激を手がかりとせず,投与された薬物摂取時の動物にとっての内部感覚刺激を弁別させる。ラットでもサル類でも。2個のレバー付きの実験場面において,たとえば,メタンフェタミン皮下投与後には,左のレバー押しに対して,また別の日には生理食塩液皮下投与後には右のレバー押しに対してのみ,それぞれ餌強化する。このような訓練を何日間かにわたり反復すると,メタンフェタミンと生理食塩水投与後の内部感覚の違いを,動物が左右のレバー押し反応のちがいにより弁別するようになる。この方法は,ヒトでの薬物投与後の自覚効果を検索す上での有用な動物実験法となる。薬物の自覚効果は,薬物の精神依存形成の質的側面と深く関わっている。従って,薬物弁別実験は,薬物静脈内自己投与実験と内容的にも方法論的に深い関係性があるといえる。
上記に説明した弁別行動は,生体が感覚刺激などを非常に細かく識別してゆく行動特性であった。しかし,一方では,これとは逆に,その弁別には融通性が存在する。このような行動特性が,刺激般化である。たとえば,人間の言葉は,マイクロフォンで録音して,音響学的に解析すると,人によって様々な物理的違いがあるが,言葉としてはひとつのものとして受け止められる。物理的空気振動の特性に違いがあっても,一定範囲内の類似した空気振動は,同じ言葉となる。また,別の例で,交通信号器の赤,黄色,青のそれぞれの意味は各国共通であろう。しかし,国によって,それぞれの色の物理学的波長特性は少しずつ異なっている。物理的特性が少しくらい異なっていても,一旦色覚として人間に認識されれば,同一の行動を制御する刺激としての役割をはたす。脳に備わった刺激般化と刺激弁別の仕組みのおかげで,生体は環境に的確かつ融通性を持って適応することができる。
先の薬物弁別の例について,刺激般化との関係について述べよう。メタンフェタミンを弁別した動物は,般化テスト薬物のコカインを投与されると,メタンフェタミン側のレバーを選択する。メタンフェタミンの内部刺激効果は,同じ中枢神経興奮薬のコカインの効果に般化したといえる。クロルプロマジン などの中枢神経抑制薬などをテストしても,メタンフェタミン側のレバーを選択することはない。これは,中枢神経興奮薬と同抑制薬とは弁別されており,両者に般化はみられないことを意味している。
条件付けプロセス (Conditioned Process)
これまでに述べてきた行動の大部分は,生体が環境刺激との相互作用のなかで学習したものといえる。すなわち,自発反応にしても,誘発反応にしても,これらが学習され,それぞれが,オペラント反応とレスポンデント反応として成立するプロセスが条件づけである。脳内には,それぞれに対応した神経ネットワークが形成されてゆくに違いない。その内容の全容が,神経科学 (Neuroscience) によって,明らかにされる未来は存在するであろう。また,コンピュータによる Deep Learning などで,学習プロセスが模倣あるいは解明されており,この方面からも,条件づけプロセスの内容が明らかにされることを期待したい。
条件刺激 (Conditioned Stimulus)
上記の条件づけプロセスで,環境刺激のうち,本来的には特定反応と何の関係も無いにも関わらず,ある反応に一義的に深く関わる役割を担う部分が条件刺激であり,その反応は,これにより制御される。しかしながら,条件刺激は,もともと反応の生起とは無関係な,中性的なものであり,条件付けを通して,反応が条件刺激と一義的な関係を持つ過程が成立する。この段階における条件刺激には,刺激弁別と刺激般化の両面の現象がみられる。しかし,条件刺激の提示においても,反応が強化されつづけなければ,消去が起こり,条件刺激が反応を制御することがなくなる。
正強化/ 負強化/ 罰 (Positive Reinforcement / Negative Reinforcement / Punishment)
学習あるいは条件付けに関する行動科学的分類として,まずは正強化と負強化に基づく行動が存在する。これまで,主として実験動物の餌やジュース摂取行動,薬物自己投与行動などを例にとり,正強化について述べてきた。これは,餌,ジュース,静脈内注入される薬物などを求めるオペラント反応が,高頻度かつ持続的に維持されている状況をいう。一方,負強化による反応は,電気ショックなどの刺激を逃避または回避する状況をいう。逃避反応は,ショックを受けている最中に,レバー押しなどにより,そのショックから逃避する反応をいう。一方,回避反応では,ショックを受ける前に,あらかじめブザー音などの条件刺激を警告音として提示する。反復訓練により,警告音提示の段階で,ショックを受けずに回避反応を示すようになる。
上記の場合の電気ショックなどは,学習により逃避あるいは回避が可能となるが,一方,罰というのは回避も逃避もできない状況をいう。正強化条件で,動物がレバー押し反応により,餌を獲得するオペラント行動において,レバー押し反応に同期して,あるいは同期せずに電気ショックを提示する状況が,例として挙げられる。この期間には,通常,ランプあるいはブザーなどの条件刺激を提示する。このような状況下では,動物の反応は,その提示中には抑制される。しかし,この動物に,抗不安薬のベンゾジアゼピン系誘導体であるジアゼパムなどをあらかじめ投与しておくと,電気ショックによる反応抑制がはずれ,ショックを受けるにもかかわらず反応し続け,薬物による脱抑制効果が観察される。
下表には,正強化,負強化,罰については,「オペラント行動の成立」 として示した。

強化と報酬の違い (Reinforcement or Reward)
日常的あるいは一般的に,食物やジュースは報酬といわれることがある。しかし,食物は満腹の動物には報酬とはならないし,拒食症に苦しんでいる人にも,同様であろう。行動科学としては,食物やジュースなどの刺激は,それを求める反応の有無により,強化刺激としての有無が判定される。もし個体が,食物なりジュースを求める反応があれば,このプロセスを強化と呼び,食物などを正の強化刺激と呼ぶ。もし,個体がそれらを求める反応を示さなければ,このプロセスは強化とは呼ばず,それらは強化刺激とはいわない。したがって,強化刺激とは,あくまでも個体が,置かれた環境の中で,それらを求める反応を持続的高頻度に示すかどうかによる。特定刺激がどのような条件下でも報酬であり続けるという決めつけはしない。強化はあくまでも生体と環境との関係性の中で,客観的,記述的に行動が成立するかどうかによって,相対的に決められる。しかし,日常的会話の中で,報酬という言葉を使用することには,何の問題もないと考えている。
レスポンデント行動 (Respondent Behavior)
レスポンデント行動(反応/反射)については,パブロフの条件反射が分かりやすい。まずは,無条件的な刺激である食物の提示により,イヌの唾液分泌(無条件反射/反応)を確認する。次に,中性的刺激であるブザー音が唾液分泌を示さないことを確認した後に,この中性刺激と食物をペアーで反復提示する。このような操作により,中性刺激であったブザー音が,それのみでも唾液分泌(条件反射/反応)を示すようになる。
唾液分泌などの生理学的反射以外の条件反応の事例としてプラセボ効果が挙げられる。中枢神経系に作用する医薬品の常用者が,薬効のない媒体のみを投与されても,薬がある程度効いた感覚を持つことがある。薬理学におけるプラセボ効果は,レスポンデント条件反応の別の例として挙げられよう。
レスポンデント行動では,まずは,無条件反応(反射)を誘発する無条件刺激の存在が前提となる。そこで組み合わされた中性刺激により,レスポンデント行動が条件づけられる。一方,オペラント行動では,まずは自発反応の存在が前提であり,これが特定刺激と組み合わさり,強化として条件づけられる。この点で,両者には行動の成り立ちに明確な違いが存在する。
「薬物依存と行動解析」という本課題では,レスポンデント行動を最後に解説し,それ以外は,主としてオペラント行動について述べた。その理由は,薬物依存の中核である精神依存を実験動物で検索する最も妥当な方法が,薬物(静脈内/胃内)自己投与行動という薬物探索行動であり,これがオペラント行動であるからである。レスポンデント行動の重要性を軽視する意図はない。
4. 薬物依存の成立プロセス

中枢神経作用をもつ多種類の薬物のうちのいくつかのものについて,その反復摂取により,薬物依存という状態が生体に形成される(上図)。薬物依存は,精神依存と身体依存に分類される。薬物依存の形成ならびに維持における主役は,精神依存となる。これは,薬物に対する強迫的渇望で特徴づけら,脳内神経ネットワークにそのような構造が形成確立されてしまうと考える。動物実験では,ヒトでの精神依存の状態に類似したものとして,静脈内/胃内薬物自己投与行動により,薬物探索行動が観察できる。一方,精神依存に基づいて反復摂取された結果として,身体依存という状態も,別途,生体に形成される。身体依存は,neuroadaptation とも呼ばれ,薬物の反復摂取の結果として現れる生体の適応現象の一つである。身体依存形成の有無は,薬物の反復摂取を中断したときに,退薬症候(離脱症候)の発現の有無として検出できる。これは,薬物の種類により,嘔吐,痙攣,発汗などの激しい症候がある。なお,この図では,身体依存について,精神依存の部分集合として記載した。それは,すべての依存性薬物に身体依存が形成されるわけではないからである。さらに,以上のような薬物反復摂取をとおして,依存の核心ではないが,薬物に対する感受性変化が生体に発現する場合がある。これは薬物に対する耐性や増感作用であり,薬物依存に対して,少なからぬ影響をもたらす。
一方,非依存性薬物の反復摂取によっても,身体依存に相当する生体の適応現象が生ずる場合がある。これは,非依存性薬物の退薬症候の発現としてあらわれる。たとえば,抗炎症や免疫抑制に使用されるステロイド剤(副腎皮質ホルモン)を治療のために服用していて,突然中断すると炎症の増悪や原発性副腎皮質機能低下症などの退薬症候が起こる。この様なケースについては,薬物の主たる作用が中枢神経系ではなく,また精神依存が主要な課題ではないために,図の表記中の薬物依存の枠組みからははずしてある。
本WEBサイト 薬物依存の概念 & オペラント行動と神経科学 参照
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