18回目の結婚記念日に、奥様と二人で食事に行って来た。
我が家の外食は基本的に子供に決定権がある。大人だけじゃないと中々行けない店に行きたいと奥様のリクエストに答えるべくリサーチを開始。女性が好みそうな雰囲気のいいお店をピックアップし、奥様に提示。
『子供と一緒の時は洋食ばかりだから、和食が食べたい。』
うーむ・・・仰る通りかもしれぬ。奥様に対する配慮が足りなかった。和食ね。前から気になっていたお寿司屋さんと新鮮な魚料理のお店等を提示。今回は記念日の為、雰囲気の良さも大切だ。
奥様『私の食べたい和食は海鮮じゃ無いの。』
私 『え?』
奥様『私はそんなに海鮮を好んで食べないでしょう?一緒に海鮮丼食べた事ある?』
私 『回転寿司よく行くし、家でもマグロ丼食うとったがな。』
と脳内で反撃し、『Yes,sir!』と即答した。
まー確かについこの間、海鮮丼の美味しいお店見付けたから誘ったけど、あんまり好きじゃないって言ってたな。私の配慮不足だ。仕事そっちのけでリサーチし、完全予約制の評判の良いお店を発見。早速予約しようとするが当日は定休日。もう一軒も定休日。月曜日って定休日多いのか?
というわけで、車で一時間程の所にある雰囲気のいいお店に連れて行く事にした。前々から気になっていたお店で、実は奥様も気になっていたとの事。食後は帰り道にある喫茶店でパンケーキを頂く、完璧なデートコースだ。当日は有休を取得しランチへ出掛けた。
初めて行った店は予想より遥かに混んでいた。予約が出来なかった為ランチタイム開始前に行ったのだがギリギリ並ばずに入れた。
二人共コース料理を頂く。
最初に運ばれて来たのはサラダと温かい豆腐。私好みの甘いお醤油で頂く。
次に来たのは蕎麦。四国出身の私は蕎麦を食べる事が殆ど無い。それ位蕎麦屋が少ないんですよ。しかし久々に食べる蕎麦はコシが強めで美味しかった。饂飩みたいに蕎麦にもコシを求めてもいいのかな?誰か美味しい蕎麦の基準を教えて下さい。
続いては天婦羅と鶏ムネ肉の握り寿司。天婦羅は揚げたてでどれも美味しく、カボチャと岩塩の組み合わせは最高であった。くず花豆腐も天婦羅となっており、食べた事の無い美味しさであった。鶏ムネ肉の握り寿司はポン酢で頂く。サッパリして美味しい。タタキで半生なのに鶏独特の臭みは全く無く美味しかった。
次に鶏のタタキが来て、お吸い物と白ごはん。ごはんはお代わり自由との事。タタキはポン酢でと言われたが、私は甘い醤油で頂いた。お米はかまどで炊いているそうで、久々にお米が美味しいと感じた。私はよく食べる方なのだが、お腹いっぱいになった。
奥様も満足のご様子。デザートに柚子のシャーベットを頂いてお会計。普段のランチとしては高額だが、私一人の一回の飲み代、一回のゴルフ代にも満たぬ。これだけのお料理を頂き、奥様も満足してくれたとなると安いものだ。
店に入った時、お客は主婦の方々ばかりであった。
『旦那が汗水流して働き、カップラーメンで空腹をしのいでいる間に高級店でランチとは。ええいけしからん!何ともいいご身分ですな。非常に不愉快だ。ご主人殿に栄養を考えたお弁当を作って差し上げては如何か?』なーんて考えていたが結構な身分なのは旦那の方だ。(皆じゃないですよ。私個人の事です。)奥様のランチ代以上のお金を度々使っている。やはり人間修行が足りないな。
店を出て喫茶店へ。珈琲とパンケーキを頂く。こちらも大層美味であった。あまり奥様を対面にして話す事が無い為、取り止めの無い話ばかりであったが、18回目の結婚記念日を迎える事が出来た事は素直に感謝だ。娘の大学進学の費用を心配していたのだが、どうやら進学させられる目途が立つ程度のお金の準備は出来ているみたいだ。家計を問題無くやりくりし、子供の事も全て奥様に任せっ放し。歳は重ねたが、今でも綺麗で居てくれる。
『今迄やってこれたのは一重に・・・』私が言いかけた瞬間に
『アナタのお陰です。』と言って来た。まー自分でも言おうと思っていたんだけどね。
『自分のお陰だと言いたいのですか?そーですね。結構な事ですこと。』と怜悧な切り返しが来ない事に驚いた。本音かどうかは分からないけどね。
周囲の話を良く聞くが、私はいい奥様に来て貰ったと思っている。
甘美な余韻に浸りながら、その晩娘に
『今日はママとデートして来たよ。歳を重ねてもデートする、そんな素敵な夫婦になりなさい。』と言った。
娘『ママが求めているのは、豪華な食事でも豪華なプレゼントでも無いよ。パパとのデートなんて論外。ママが求めているのは自由な時間。今日はそれをパパの自己満足で奪っただけ。』
『16の小娘が何を言うか。分かって無いな。』
と思い、翌日会社のパートのおば様に話してみた。
『娘さんが正しい。奥様は不良中年さんとのデートなんて望んで無いよ。旦那の自己満足に付き合ってくれるなんて素敵な奥様ね。奥様がかわいそう・・・』
私の自己満足ですか・・・やはり人間修行が足りないと感じた結婚記念日であった。