息子のお誕生日会

 

私は結構モテる(つもり)。

 

そんな私は過日、息子のお誕生日会を開催してきた。

場所は息子の好きなイタリアンのお店。随分前からリクエストされていたので、予約を入れて行って来た。因みに先日、薫さんと一緒に行ったお店である。

 

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当日、私は息子へのプレゼントを用意すべく家電屋さんへ赴く。関西以外はどうなのか知らないが、家電屋さんには玩具コーナーがある。それが結構な規模なのだ。ゲーム関係から幼児玩具、鉄道模型まで揃う。息子が欲しいのはゲームソフト。間違えない様にする為、事前に奥様から写真を送って貰っている。ゲームコーナーで暫しさがし見付けたソフトを購入する。¥4,000弱と意外に安かった。

 

帰宅後、昼食を頂く。

メニューは不良中年作、スジ肉を圧力鍋で調理したビーフシチューだ(残り物)。我ながら会心の出来である。美味い。ウチの近所にお肉屋さんがあり、黒毛和牛のスジ肉が安く売っているのだ。

昨晩は忘年会でしこたま飲み、料理が美味しいお店だった為に食べ過ぎた様だ。消化に追い付かなかったのか、身体が熱くて夜中に目が覚めて眠れなかった。昼食後は一気に眠気が来た為に少しお昼寝。お昼寝は認知症の予防にもなるそうだ。30分程度寝て用事を色々と済ませる。あまりダラダラと昼寝をすると罪悪感に苛まれる。

息子は早くお店に行きたい様だ。

「パパ、僕もう待ち切れない。」

と言いながらYouTubeを見ている。そんなに楽しみにしてくれているなら私も嬉しい。

予約時間が近付いて来た為、準備をして出掛ける。上の娘はいつもの事ながら付いて来ない。「美味しい物食べに行くよ」と言っても効果無し。寂しいものよ。

 

お店に到着。夕方早目の時間にも関わらず、既にマダム達が飲食を楽しんでおられる。どうやらランチタイムからゆっくりと寛いでいる方達の様だ。

席に案内されて早速オーダーを入れる。今日は息子が主役の為、好きな物を選ばせる。とは言っても小学校低学年の男の子。大好きなピザがメインとなるが、お気に入りの生ハムの盛り合わせも忘れずに頼む。料理のオーダーが終わったところで私は一旦席を立つ。御手洗いでは無い。先程買った誕生日プレゼントを店員さんに渡しに行く為である。息子にサプライズをする為に事前に頼んでおいたのだが、Happy Birthdayを流しながらデザートとプレゼントを席まで持って来て貰うのだ。タイミングを含め最終打合せ。

 

席に戻ると息子は既にジュースを飲んでいる。おのれ!父上を待たずに勝手に飲み始めるとは。けしからん。やっと私のお酒が来たところで息子と奥様と乾杯。息子は生ハムの盛り合わせをペロリと食べ終わる。

「パパ。ハムのお代わり頼んでもい~い?」

(息子よ。その生ハム盛り合わせの値段知ってるかい?パパは一口も食べてないけどさ)

お誕生会なので心の声は吐露せずに追加オーダー。焼き立てのピザも食べて満足そうだ。私と奥様もリゾットやアラカルトを頼んで食事を楽しむ。昨日の忘年会でしこたま飲み、今日もしこたま飲む。

この日、奥様と私のお気に入りになったのは仔羊の串焼き。炭火で焼かれている為、肉の香ばしさとハーブの香りが食欲を一層刺激する。シンプルに塩だけの味付けだからこそ、仔羊の肉そのものの濃厚な旨味や脂身の甘味がダイレクトに感じられる。美味しくてワインも進む。何度かお代わりをしてしまった。

そして息子は再び

「パパ。ハムのお代わり頼んでもい~い?」

と聞いてくる。

(息子よ。その生ハム盛り合わせの値段知ってるかい?パパは一口も食べてないけどさ)

心の声を封印して追加オーダー。男の子がガツガツと食べてくれるのは正直嬉しくもある。息子はお腹いっぱいになり満足したのか、早くもアイスを食べている。私はもう少しワインを楽しみたいのだが・・・

満腹になったのならそろそろ頃合いかと考えお誕生日のデザートプレートを作戦通りオーダーする。暫くすると店内のBGMが止まり、一瞬静かになったあと、HappyBirthdayの曲が流れる。

 

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息子は「え?!」という顔をしてビックリしている。店員さんがデザートプレートとプレゼントを持って来てくれた。

「不良中年ジュニア君、お誕生日おめでとうございま~す!!」

写真を撮って貰ってプレゼントを開ける息子。

「え?凄い!これ現実?パパ、お店にハッピーバースデイ予約してたの?」

と聞いてくる。以前このお店に連れて来た時、他の席で一連の様子を見ていた息子は自分の誕生日にもやってもらいたいと思っていた様だ。店に向かう車の中で

「パパ、今日HappyBirthdayのやつやってよ。」

と言ってきたので、

「え?今日いきなり行っても無理だよ。予約してないし・・・」

と返しておいたのだ。内緒にして驚かしたかったから。高いデザートプレートには興味を示さず、目をキラキラさせてプレゼントを見つめている。

作戦大成功。喜んでくれたなら私も嬉しい。

 

お店の人にサプライズに協力してくれたお礼を伝えて家に帰る。家に帰ると上の娘がケーキを作ってくれていた。店のデザートプレートを食べなかった息子はお姉ちゃんの作ってくれたケーキを美味しそうに食べていた。一緒に出掛ける事が無くなった娘だが、こんな事をしてくれるとは。いい誕生日になった。

 

しかし・・・

 

数日後にはクリスマスが控えていた。息子の誕生日とクリスマスは3日しか変わらないのだ。クリスマスに息子がサンタさんに欲しいと頼んでいるプレゼントは¥60,000円。

 

・・・

 

上の娘のプレゼントと奥様のプレゼント、今日の食事代とクリスマスの食事代、今月はふるさと納税分も請求に乗る。カードの支払いで破産しそうだ。

まー支払いよりも頭を悩ませたのは息子のクリスマスプレゼントだ。サンタさんに貰うという建前ではあるのだが、果たして小学校2年生の子供にそんな高価な物を与えてもいいのか?正直言って高いけど、買えない事は無い。与える事が間違っていないかで悩むのだ。

 

このblogで何度か書いているが、私の実家は貧乏とまでは言わないが、決して裕福な方ではなかった。小学校4年生の頃だったと思うが、私は誕生日のプレゼントにラジコンをねだった。

「買える買えないの問題ではない。小学生の子供にそんな高価な物は与える事は出来ない。それがウチの考え方。」

と言って母親は買ってくれなかった。父親となった今なら理解出来る。しかし私も子供だった為、何度もねだった。丁度ラジコンブームでテレビでも『田宮RCカーグランプリ』を放送していた頃だ。いつもテレビを見ていた事は母親も知ってはいたのだろう。誕生日当日、当時独立起業したばかりの親父の事務所でラジコンを買う買わないの話をしていた。母親は大反対とは言わないが、やはり『与える』事に抵抗があった様だ。ところが、

 

「ナンボするんぞ?買っちゃれや。」

 

の親父の一言と、同時に財布から数枚の壱万円札を母親に渡して決着となった。母親も親父が言うならと納得してくれたみたいだ。当然私は大喜びだった訳だが、同時に親父も嬉しそうな顔をしていた事をハッキリ覚えている。あの時の親父の正確な気持ちは分からない。単純に子供の喜ぶ顔を見て嬉しかったのか、独立して子供が欲しがる物を与える事が出来る経済力を得た事を誇りに思えたのか。多分親父の性格からして前者に間違い無いと思うのだが。

 

遠い昔の事を思い出した私、もといサンタさんは奥様に¥60,000円のプレゼントを渡す事を伝えた。大人のプレゼントと考えても結構な金額。息子が高校生だったとしても高価な事は変わらない。それに息子が欲しいのは『今』だ。若い頃に欲しくて欲しくてたまらなかったシルビアやツアラーVを、この歳で手に入れても仕方ない。(ホントは嬉しいけど)

あの時、あの年齢だったからこそ輝いたのだ。

だから私の心の中で美しいまま思い出として輝いているのだ。

 

クリスマスの朝、

娘は部屋の前に。(部屋に入ると怒られるから)

奥様はダイニングの奥様の席に。

息子は枕元に。

 

それぞれプレゼントを置いた。

 

息子は大喜びでサンタさんにお礼を言っている。

「買ったのは私だ!父親とは報われないものよ。」

なんて事、今は思わない。

 

20年後、息子が父親となって、息子も子供に同じ事をしてあげられる様になり、その時に私の事を少しでも思い出してくれたら、それが最高だ。

 

私はこうしてモテて行く。

 

 

勲章 過去の影、未来の輝き あとがき

 

私は結構モテる(つもり)。

 

そんな私の前回の長々とした記事を読んで頂いた方、誠にありがとうございます。

実はこの話はかなり前から下書きとしてほぼ完成しており、公開するかどうか凄く迷った。迷ったというか、公開するのは駄目だと思っていた。だって中年男の古臭い恋愛話。誰も興味無いし迷惑だろう。でも色んな事が重なって公開する事にした。

公開に至った理由は3つ。

 

文章の中に、ある漫画の一文を使わせて貰った。書くかどうか迷った内容だったのだが、その一文を引用しようと書斎の本棚から記憶を頼りにその漫画の12巻を出した。するとP212にその一文はあった。冗談抜きで一発で見付けたのだ。単純だが、何かを感じたのが一つ目の理由。

 

悪い女だったのかもしれないが、自分の中でプラスの出来事だったと考える事が出来る様になった事。何年掛かってるんだよって話だが・・・

勿論歳上の悪い女に弄ばれた感は否めないが、一度は本気で好きになった女を心底憎む事は悲しい事だ。自分の心の中で勝手にイイ女に美化させただけかもしれないが、自分もそんな風に考える事が出来る様になったんだと、遅過ぎるけど成長は出来たんだと解釈した事が二つ目の理由。

 

はてなブログのお陰。

購読させて頂いている方のブログに影響を受けた。

その方は既婚者で、私より10歳程上の男性。過去の女性の事を、何というか美しい文章にしているのだ。都合良く美化している訳では無いし、過去の女性との事を自慢気に書いている訳でもない。下ネタ染みた事も一切書かない。ただ当時の恋人との関係を美しい文章にしているのだ。残念ながら一緒になる事は叶わなかった恋人の事が本気で好きじゃないと、あんな文章は書けないと思う。別れた男女のルールを守り、奥さんの事を大事にしている事は、旅行に行った話や普段の生活の記事の中から感じ取れる。一部引用させて頂くと、

 

 

精神的二股をしている訳じゃない。

奥さんと一緒に歳を取って生きて行く。その事に対しての迷いは微塵も無い。

 

沙知絵姉さんに本気だった過去は、友人のゴリも哲も全て知っている。仮に思い出話として話せるのは彼ら二人だけだ。きっと二人なら聞いてくれる筈だが、大昔の恋愛の事を話されても迷惑なだけだろう。しかも彼らが散々忠告した女だ。

誰にも話す事が出来ないって辛い事だ。ブログに書く事も憚られたのだが、その人のブログを読んで「ああ、ブログってこういう事を書いてもいいんだ。」と影響を受けて公開させて貰う事になった。

「私のブログなんだから、私の好きに書かせろよ」

なんて乱暴な事を言うつもりは無い。言葉を間違わなければそういう事を書いても良いんだって話だ。

 

「私の事は忘れて。」って言われた事もある。こんなに好きになった女をどうやって忘れるんだよって当時は思った。今なら分かる。存在を忘れるんじゃなくて好きだった気持ちを忘れればいい。これも何年掛かってるんだよって話だが。

私も一応既婚者。過去の女なんて全て忘れろよって人も当然いるだろう。でも私の考えは少し違う。過去、別の女性との恋愛で育てて貰ったからこそ今の恋人、奥さんを大切にする事が出来るんじゃないのか。過去の女性に優しく出来なかった後悔、自分勝手だった後悔、言葉が足りなかった後悔。そんな後悔を忘れずにって事は悪い事じゃないと思うのだ。

 

今や誰にも話す事の無い過去の事を書けて良かった。

読んでくれた方々に感謝します。

影響を与えてくれたブログの主さんに感謝します。

 

私はこうしてモテて行く。

勲章  過去の影、未来の輝き

 

私は結構モテる(つもり)。

 

今回はそんな私の昔話を。

 

以前、女の涙について書いた。

女の涙は8割が作戦と教えてくれた沙知絵姉さんの事を書く。

 

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沙知絵姉さんと初めて出会ったのは18の時だ。もう30年近くも前の事になる。

その頃の私は高校を卒業後に入社した会社を辞め、翌年に短大を受験予定のフリーターであった。フリーターと言う言葉が出来たばかりの頃だった。ほんの数年前までは、いわゆる【プ~】。しかし本人としては遊んではいなかったので【プ~太郎】とは思っていなかった。ある日のバイトの帰り道、同じバイト先の結衣ちゃんから電話が掛かる。電話に出ると、今、私の家の前に居るという。

 

ん?

何故結衣ちゃんは私の家を知ってるんだ?

 

自宅に帰ると見知らぬ車が一台。訳が分からないまま、その車に近寄る。助手席に結衣ちゃんが乗っていた。後部座席には何故か高校の時の同級生の久米田君が、その隣には別の女性が乗っていたと思う。つまりは何度か遊びに来ていた、同級生の久米田君が私の家を知っていたのだ。久米田君と結衣ちゃんがどんな関係で知り合ったのかは思い出せない。大体なんで私の家に連れて来たのだろう?運転席の初対面の女性から色々話し掛けられる。どんな話だったか詳しくは覚えていないが、初対面にも関わらずお互い毒を吐きながら話した事を覚えている。好き勝手上から目線で言ってくるその女性に対し、「何偉そうに言ってやがる。お前がそれ程の女か!」とかいった具合だ。

その女性は帰り際に自分の携帯を取り出し、

「携帯は?番号聞いといてあげるよ。」なんて偉そうな事を言ってきたのだが、私も無意識のうちに番号を教えていた。

 

その女性が沙知絵姉さんだった。

 

何日かして、沙知絵姉さんから連絡が来た。

「今ドコに居るの?ドライブに行かない?」

そろそろベッドで横になろうかと思っていた時間だったが、明日は休みだし、まあいいか。そんな軽いノリで家を出た。沙知絵姉さんは家の近く迄迎えに来てくれた。改めて見ると結構綺麗な人だな、なんて思いながら出発したのだが、暫く走ると車に異変が・・・降りて確認すると案の定、

 

パンクしとるがな。

 

えらく慌てる沙知絵姉さん。半泣き状態。

姉さん「え?え?どうしたらいい?」

私  「ココじゃ暗くて見えにくいから、近くの明るい所へ移動しよう。」

姉さん「え?え?怖い。怖いから運転して欲しい。」

私が運転して明るい所へ移動。ジャッキを掛けてスペアタイヤに交換。車好きからすれば何ともない作業だ。ところが・・・

姉さん「凄いじゃーん。カッコいい!てゆーか手、真っ黒じゃん。」

そう言ってハンカチを出してくれた。

私  「スペアタイヤだし、今日はもう帰ろうか。」

姉さん「え?もう少し不良青年君の運転でどっか行きたい」

私  「ふーん。」

市内の方へ戻り適当に走る。話をしているうちに沙知絵姉さんが年上である事が判明した。私より2つ年上。

「え~?結衣ちゃんから私が年上って聞いてなかったの?」

何にも聞いてない。

結構会話が弾んで、私は楽しかった。

 

沙知絵姉さんは私が来年受験しようと思っている短大に通っており、同じ学校の有野君が好きらしい。有野君は私の中学の同級生。家も近い。沙知絵姉さんからは有野君の話ばかりだ。付き合ってる訳でもない無いのに、よっぽど好きなんだな。

そろそろいい時間だったので帰る事を提案したのだが、

「あと一カ所だけどっか行こうか。」と沙知絵姉さんが言った。

そう言えば会社のオッチャンが車に女を乗せたらココに連れて行けって言ってた所があったな。夜景が綺麗とか言ってた。ダムの奥にある小道を入った所から上って行くんだった筈だ。沙知絵姉さんに説明して、オッチャンが教えてくれた場所へ向かう。

ところが・・・想像以上に真っ暗な山道だ。舗装はされているけどかなり狭い。ドコまで続くか分からない山道をどんどん進む。やっと頂上?みたいな開けた所まで登り切ったのだが、見事な位何も無い。夜景なんか見えないし、ただの砂利の駐車場だった。

姉さん「ココって・・・ナンパした女の子連れて来る所じゃないの?」

 

オッチャンのアフォ~!!!

 

そんな気全く無かったのに、警戒されちまったじゃねーかよ!私も全く知らなかった為、どうしようも無くゴメンとしか言えなかった。

「戻ろうか。」

私はそう言って引き返した。山から下りる間、沙知絵姉さんは殆ど喋らなかった。あんな場所に連れて行って怒ったのかもしれない。ふと気付くと沙知絵姉さんは私の腕にしがみついていた。私の腕に抱き着いていたと言った方がいいかもしれない。街灯も一切無い真っ暗な山道が怖かったのだろう。ようやく国道迄出た。そこで沙知絵姉さんが「チョット車停めて。」と言った。気分でも悪くなったのかと思い、車をチェーン脱着場に寄せる。沙知絵姉さんは黙って私の腕にしがみついたままだ。

「私ってね、駄目だって分かってる事をしてしまうの。」

暫く黙っていた沙知絵姉さんが言った。

「山の上から降りて来る時、喋らずに不良青年君にくっついてたのって、なんでだと思う?」

怖かったんじゃないのか?

本当に意味が分からなかった。

一体何言ってるんだろう?

ほんの少し助手席側を向いた、その刹那。

 

沙知絵姉さんからキスをされた。

 

当時、女性と付き合った経験もまだ無く、女性に殆ど免疫の無い私が出会って間もない年上のお姉さまと二人きりでドライブだ。そんな状態でのキス。心臓が凄い音で鳴っていた。年上といっても女性。当然細い肩だ。その細い肩を抱くのが精一杯で、そこから先はどうする事も出来なかった。

 

国道沿いと言っても、ダムのある山奥から隣の市へ抜ける山道。平日の夜中に車なんて1台も通らない。静か過ぎる車内でどれくらい時間が経ったのか分からない。

 

沙知絵姉さんがもう一度キスをしてきた。

 

会話は一切無い。ピンと張りつめた糸の様に緊張した空気が、車内を支配していた。

もし、その糸が切れたら一気に次の情況になだれ込む。

そんな情況だった。時間の流れが一切分からなかったが、周りが薄っすら明るくなって行く事で朝になったと理解した。

 

「そろそろ帰ろうか」

 

多分私から言った言葉だったと思う。

 

「うん…」

 

 

初めての経験。朝焼けが綺麗で本当に幸せな気持ちだった。

体を重ねる事は無く、細い肩を抱いたまま迎えた朝。

何もしていない、初めての朝帰り。

家の近くで、子供の頃から知っている近所のおばちゃんと登校中の妹と目が合って気まずかった。

 

そんな幸せな気分を過ごした数日後の夜。沙知絵姉さんから電話が掛かってきた。もうこの時には沙知絵姉さんの事を完全に好きになっていたと思う。他愛もない会話の中で何故か状況が一変する。

 

「でも勘違いしないでね。私は全然そんな気無いし、アナタとは遊びだから。」

 

理解が出来なかった。

 

「何それ?遊びでキスなんかするなよ!」

 

私は静かに声を荒げた。

 

理解が出来なかったんじゃない。信じられなかったのだ。

キスって遊びで出来るモノなのか?まだ純粋だった私はショックだった。一人で浮かれて馬鹿みたいだ。

 

沙知絵姉さんは途切れた会話を立て直す様に話をしてくれた。

そして私の事を好きだとも言ってくれた。でもどうしても付き合う事は出来ないし、もう会う事も出来ないと言う。

「有野君の事が好きだから?」と聞いても違うと言う。全く意味が分からない。私は沙知絵姉さんの事が好きだ。沙知絵姉さんも好きだと言ってくれた。なのに付き合う事はおろか会う事も出来ないって・・・

情けないけど私は必死で沙知絵姉さんを口説いた。初めて幸せなキスをしてくれた女性だ。女性に免疫の無いガキが冷静な判断なんて出来る訳が無い。

でも無理だった。

もう会えないという事を納得しようとしても出来ない。何故なのか理由を説明して欲しかった。

沙知絵姉さんは言った。

沙「もう気付いてるんでしょ?ホントは分かってるんでしょ?」

私「え?何を?」

沙「気付かない振りしてるだけでしょ?」

私「全く分からない」

沙「ううん。もう勘付いてる筈。自分の口で言って。」

私「???あ・・・。」

沙「自分で言って。」

 

私「結衣ちゃんは私の事が好きなのか?」

 

沙「そう。だから付き合う事は出来ない。」

 

アフォな私はやっと理解した。

自分のアフォさ加減と絶対に付き合う事が出来ない事。あの幸せな気持ちは二度と無い事、色々な感情が高ぶって涙した。

恋愛で涙するなんて初めての経験だった。

携帯の充電が残り少ない事を告げる警告音がずっと鳴り止まない。

電話の向こうで沙知絵姉さんも泣いている。ドラマみたいだ。泣きながら充電しとけって怒られる。もっと違う形で会いたかったな・・・

 

そんな会話の途中でバッテリーが切れた。

 

翌朝。

朝食も喉を通らず、一人部屋で泣いていた。結衣ちゃんは実は私の事が好きだったのか。だから久米田君と一緒に家まで来たのか。そう言えば思い当たる節もある。嬉しいけど今更結衣ちゃんと付き合うなんて事は出来ない。私は結衣ちゃんの友達である沙知絵姉さんを好きになってしまったのだ。

この時から暫く食欲も性欲も無くなり、身長175cmの私の体重が50kgを切る位まで痩せていった。私は本気だったのだが、相談すると友人ゴリは至って冷静に判断していた。

 

「駄目だと分かっている事をするのは魔性の女だ」と。

「自分の友達が好きな男に手を出すなんて、ろくな女じゃない」と。

 

恋は盲目。痘痕も靨。

 

何故かその後も何度か沙知絵姉さんから電話が掛かって来た。

どうしても諦めきれない私は、ゴリの忠告を無視して沙知絵姉さんに会って欲しいと何度も食い下がった。自分では本気で好きになった女に真剣に向き合っていると思っていたが、客観的に見ると振られた女を口説く、単なる情けないイタイ馬鹿だ。

 

ある日の事。

どうしても会いたい私は電話で「今ドコに居るの?すぐに迎えに行くから会って欲しい。」

と伝えると、沙知絵姉さんは泣きながら「分かった。」と言って場所を教えてくれた。

 

沙知絵姉さんを車に乗せて、公園の駐車場に停めた車の中で話をした。

「どんなに話をしても、不良青年君とは付き合えない。情況は何も変わらないんだよ。」

 

私は悔しかった。いや、口惜しかった。

 

一度はキスをして、自分の事を泣きながら好きと言ってくれた女性の言葉とは思えなかった。それでも私は諦める事が出来なかった。

街灯もろくに無い駐車場で、長い沈黙が続く。

 

沙知絵姉さんは黙ってキスをしてきた。

あの日と同じキスだった。

幸せな気持ちにさせてくれる。

でも何故こんな事をするんだろう。

 

何も解決しないまま、沙知絵姉さんを家まで送った。

 

その後もこれと言って進展は無かったのだが、私から誘う事は一度も無かった。正確に言うと、誘っても断られるだけだった。しかし、付き合う事は出来ないと自分から言った沙知絵姉さんから誘われて出掛ける事は何度もあった。

 

ゴリからは何度も忠告されていた。

『あの女はやめとけ』と。

哲も同意見だった。

実際にゴリを沙知絵姉さんに会せた事もあった。私に面と向かって言う事は無かったが、彼らの忠告が肯定的な応援に変わる事は無かった。

 

ある日の事。

夜、一人で市内をドライブしていると沙知絵姉さんからの着信。出ると何処にいるのか聞かれる。

私「新空港通りにいるよ。」

沙「ビンゴ~!!新空港通りの○○にいるから迎えに来てくれない?」

 

アフォな私はゴリと哲の忠告を無視し、すぐに迎えに行った。するとソコには結衣ちゃんが一緒にいた。聞けば他の男友達の車でドライブしていたところ、急用が出来たからって降ろされたらしい。そこにタイミングよくアフォな私が近くにいたから迎えに来させたワケだ。流石にムカついたが、更にムカついたのは結衣ちゃんを自宅の前で降ろした後、結衣ちゃんに向かって

「あ、どうする?このままどっかドライブに行く?」なんて言い出したのだ。

(人の車で予定も聞かず、何勝手な事言ってんだよ。)

とは思ったが、結衣ちゃんが行きたいって言うし、正直沙知絵姉さんと一緒に居たいって気持ちが強かった。

結局そのままドライブに行ったのだが、沙知絵姉さんは助手席で寝る始末。

 

それから暫く経ったクリスマス直前の夜。

バイト終わりに、沙知絵姉さんから電話が掛かって来た。ゴリも同じシフトで横に居た。

 

沙「何処にいるの?」

私「バイト先」

沙「会いたい。少し会えない?」

この女何言ってんだ?

私「は?何それ?」

沙「え?」

私「いい加減、都合の良いアシに使うなよ。」

沙「え?そんなつもりじゃ・・・」

 

私が不機嫌で電話しているのを横で聞いていたゴリと一回り歳上のコックさんが

「不良青年君、怖いな。」と言い、ゴリも「俺もそう思ったよ。」と言った。

流石にキツく言い過ぎたのか?

で、アフォな私は結局会いに行くのである。

迎えに行くと沙知絵姉さんは一人だった。

「会いたかったの。来てくれてありがと。」と言われたが、私は「うん」の一言。

 

沙「このまま少し何処かに連れて行って欲しい。」

私「このまま家迄送るよ。」

沙「え?折角会えたのに。クリスマスのイルミネーションが見たい。」

私「そこのマンションの最上階のベランダ見て。イルミネーション綺麗だよ。」

沙「・・・。」

沙知絵姉さんの家が近くなった頃。

沙「本当にドコにも連れて行ってくれないの?」

 

で、結局ドライブに連れて行くのだった。

 

こんな事が何度も続いた。情けないけど、私はそれでも沙知絵姉さんの事が好きだった。好きで好きでたまらなかった。

でもゴリと哲には

「もうあの女には会うな。」

と釘を刺されていた。

 

 

私は予定通り沙知絵姉さんの通う短大を受験。無事に合格して現役から一年遅れで短大に通う事になった。入学も近くなった頃、私の合格を知った沙知絵姉さんから久々に会いたいと連絡があった。いつも通り車の中で話をしていると、

「入学したら、もう一度初対面から始めたい。」

と言われた。つまり、知り合いじゃないって事だ。入学したら知らない他人。有野君の事が好きな沙知絵姉さんは、私との関係が学校の皆に知られては困るのだろう。

 

「分かったよ。」

心のどこかで・・・いや、まだ好きだったけど。

沙知絵姉さんが困るのなら、そうすればいいと思った。入学したら他人、いや、元から他人だ。

 

 

こうして私の短大生活が始まった。親に学費を出して貰った以上、無駄にはしたくない。私は真面目に通い、真面目に授業を受け、真面目にノートを取っていた。

 

するとなんと沙知絵姉さんが自ら参上。

「あのね、都合のいい話なんだけどね、○○の授業のノート写させて欲しいの。」

更にぶっ飛んだ事に、私から4m28cmという至近距離にいながら結衣ちゃんを介して伝えて来たのである。意味が分からなかったが、ノートは貸してあげた。

 

また別の時。

今度は電話で直接頼み事をして来た。どんな頼み事だったかは忘れたが、意味不明。

「そんな事なら有野君に頼めよ。」

と言ったら、

「うん・・・でもね、この間、有野君っていう人の人間の底を見た様な感じがしてね、あの人には頼みたく無いの。」

意味不明。

 

そしてある授業での出来事。

沙知絵姉さんに彼氏らしき人が出来た様だ。校内でいつも一緒に居るし、授業は隣同士で座って受けている。因みに有野君では無い。

意味不明。

 

それ以降は一切連絡を取り合っていない。

とんでもない悪い女だったと思う。うん、悪女だ。

 

 

 

 

 

だがしかし・・・。

 

 

 

 

 

彼女は本当に悪女だったのか?

 

 

 

 

出会った当初、私には小学校6年生の時から7年半、ずっと好きだった同級生の女の子がいた。しかしそれは他に好きになる女性がいなかっただけじゃないのか?

その事に気付かせてくれたのが沙知絵姉さんだったのかもしれない。

 

沙知絵姉さんを喜ばせたくて、色々な事を調べた。美味しいお店とか夜景が綺麗な場所とか。女性の扱い方、エスコートの仕方。ファッション。

 

沙知絵姉さんに似合う男になりたくて、自分なりに男を磨く努力を重ねた。

 

「女の涙の8割は作戦。」と教えては貰ったが、女性の色々な事も教えて貰った。

 

 

 

 

で、結局オマエの中でどうなんだ?

やっぱり悪女じゃないのか?いや、どう考えても悪女だろ。

 

 

いや・・・。

 

今回沙知絵姉さんの事を思い出して文字にすると、実はソレは違っていたのかもしれない。敢えて悪女を演じ、ワザと彼氏を見せる事で

『いつまでも私なんか見てちゃ駄目。早くいい彼女見付けな。』

と言うメッセージを送ってくれたのかもしれない。そう信じたい。

身体を重ねる事も無く、その想いは叶わなかった。

 

一度は泣く程にまで本気で好きになった女だ。

そんな女を憎むなんて悲し過ぎる。

甘いだけの考えだが。

 

名誉の傷は男の勲章

フラれた傷はモテ男の勲章

 

フラれちゃったよ~なんてニヤニヤするのは勲章ではない。フラれた事で傷付く位に、涙が出る位に真剣な事が大事。

 

沙知絵姉さん、あの時のアナタのキスに感謝します。

ありがとう。

 

私はこうしてモテて来た。

 

 

紅葉を見に行って来ました

 

私は結構モテる(つもり)。

 

そんな私は過日、奈良迄紅葉を見に行って来た。

前日の夜に思い付きで紅葉を見に行こうとなり、当日の朝に行き先を決めた。まさしく思い付き。

私はGoogleマップを徘徊するのが趣味なので、普段から行きたいなと思った場所やお店を『行ってみたい』に保存している。しかし紅葉スポットは特に保存した記憶は無い。「ま、奈良か和歌山の山の中に行けば紅葉が綺麗だろう」と単純に考え保存履歴をチェックする。その中で坊ちゃんが楽しめて、距離的に問題の無い場所を絞っていくと・・・

室生山上公園芸術の森が候補となった。保存した場所の量が多くて、大変失礼ながらすっかり忘れていた。よし。ココに決めたぞ。奥様に伝えて準備開始。お茶、お菓子、珈琲等を車に積んで出発。

絶好の行楽日和だ。京奈和自動車道に乗って奈良を目指す。途中道の駅に寄ってトイレ休憩。明日香村辺りから混み始めたので、早目の昼食休憩。渋滞を抜けて山道に入る。標高が高くなるにつれて葉っぱが色付き始める。お天気が超絶良い為、空の色と綺麗にマッチしている。

そろそろ到着かな~?と思っていた時、目の前に渋滞が・・・

車だけでは無い。バスを待つ人も渋滞。

 

うわお。

 

予想外の混雑。私の苦手な雰囲気だ。一瞬悩んだが、折角来たので気を取り直して公園の入り口を探す。チョット通り過ぎていた為、車を切り返して狭い山道に入る。ガードマンさんの誘導に従って登って行くと駐車場に到着。結構混んでいる。正直ガラガラだと思っていたのでビックリだ。だって奈良の山奥だし、奈良の紅葉スポットとしてはネットに出ていなかったから。

入り口で入場料を払う。JAFの割引が効いて大人310円だったかな?子供は無料。良心的なお値段でした。入り口の建物を出てゆっくりと進む。坊ちゃんは速攻でダッシュ開始。

坊ちゃん命名 腐ったサンドイッチ

坊ちゃん命名の腐ったサンドイッチに向かって行く。何とも失礼極まりないネーミングである。息子に代わってお詫び致します。大変申し訳ございません。

走って行った坊ちゃんは腐ったサンドイッチの中に消えて行った。ここからでは分からないが、地下に下りる階段があり、写真奥の竹林につながっている。地下トンネルから地上へは、竹林の中の螺旋状のスロープを上がっていく様になっている。子供が好きそうである。

 

 

 

知らない女性が入った写真しか無かった・・・

続いて渦巻き水路。奥にある木に向かって水が流れている。笹船で競争したら楽しそうなのだが、写真の撮影待ちの人達げ結構いたので遠慮いておいた。流石モラリストの私である。

こちらのネーミングは・・・

次はコレ。上に登れるし、中にも入れる。ネーミングは・・・まあいいでしょう。

ウェディングフォトを撮影している人達も

紅葉を真下から

島の真ん中で演奏する人達 素敵だ

来て良かった。坊ちゃんは走り回って満足。私も奥様も良いお天気と好きな気温、綺麗な景色、素敵な演奏と大満足であった。そして芸術の森と言うだけあって、民度の低い方は皆無であった。皆マナー良く休日の公園を楽しんでおられる。海外からのお客さんもいたが、自分勝手な国の民族の方は見掛けなかった。

 

ところが・・・

 

奥様と坊ちゃんと綺麗な落ち葉を探していた時である。

「コラァ~!!!」とおよそ休日の公園で聞こえる事の無い怒号が・・・

私も奥様の一瞬何が起こったのか分からず、「あれ?気のせいか?」と思ったのだが、近くで子供が泣いている。その子供の母親らしき人から、

「お父さんとお母さんですか?」と聞かれる。

ん?

「この子達が投げた石が、この子に当たったんです。」

 

良く見ると土手の上に男の子が二人。兄弟の様だ。その子達がふざけて投げた石が、自分の子供に当たったのである。先程の怒号は被害者の子供の父親だったのである。当たり所が悪ければ失明の可能性もある。

私がその立場であれば、怒号だけで済ませられたかどうか。子供相手であろうと一切関係無し。

 

被害者ママは兄弟の兄の方に「お父さんかお母さん呼んできてくれる?」と言って加害者ママの所へ行かせた。人に向かって石を投げるクソガキである。親を呼んで来る筈は無い。土手を下りた所に母親らしき女性がいたが、クソガキ兄は何も言わずに走り去って行った。

(土手の上段に居る被害者ママと、下段に居る加害者ママとの間には結構距離があり、木の枝等があってお互い見えない状態だった。その真ん中に不良中年家が居た。)

暫く様子を見ていたが、クソガキ兄は知らんぷりで演奏している人達のいる島で遊んでいる。

 

気に入らねぇ・・・

 

他人様へ岩石を投げてケガをさせただけでなく、弟を置き去りにして知らんぷり。母親に何も伝えずこちらを気にする素振りも無い。ガキのくせに中身は立派な卑怯者だ。

やはり私だったら怒号だけで済ませる事は出来ない。私の場合は以下である。

 

 

なんちゃって北町奉行所 不良中年

『クソガキ兄、その方は土手の最上段より岩石を投げて全く非の無い子供に当ててケガをさせた事、既に吟味の結果明白であるが左様相違無いか。』

 

クソガキ兄

『何かの御間違いでございましょう。名奉行と名高い不良中年様とも思えませぬな。』

 

なんちゃって北町奉行所 不良中年

『成程。その方はなんちゃって北町奉行所の吟味の結果が嘘八百と申すか。』

 

クソガキ兄

『不良中年様、これは全く意味の無い白洲ですな。日ノ本の未就学児である身供をここに座らせるとは、御身の御立場も危ういですぞ。』

 

なんちゃって北町奉行所 不良中年

『やかましいやい!おうおうおう!黙って聞いてりゃ寝ぼけた事を言いたい放題抜かしやがって!他人様にケガさせといて知らんぷりとは。小さなナリして太てえ野郎だ!その上てめえの弟まで置き去りにして逃げるとは。未就学児でありながら既に大悪党たぁ不届千万!』

 

クソガキ兄

『ひょえええ~。申し訳ございませぬ。』

 

なんちゃって北町奉行所 不良中年

『裁きを申し渡す。クソガキ兄!その方市中引き回しの上打ち首獄門!情状酌量の余地無し!これにて一件落着!』

 

と、光の速さで一件落着にしてしまいそうだ。

私は被害者ママに「親を呼びに行った様子がありませんよ。」と伝える。

すると加害者ママが何かを察したのか、土手に上がって来た。

なんちゃって北町奉行所 不良中年奉行のオーラを感じ取ったか。

私の仕事はここまで。

だがしかし、被害者ママも加害者ママも大層立派な対応であったと感じる。

加害者ママは当然謝罪する。人間修行の足りない私の偏見で申し訳ないが、一般的に女性は感情的であると思っている。しかし被害者ママは一切感情的にならず(当然怒りを抑えていた筈だが)状況を説明して「お子様の今後の事を考えて、お母さんにこの事はお伝えした方が良いと思いまして・・・」と冷静に話をしていた。旦那さんも女性相手に恐怖を与える事になるからと思ったかどうかは知らないが、あまり前に出ずに対応していた。

 

この後、坊ちゃんには色々と説明を行い、理解させた。親の教育はどうか知らないが、クソガキ兄の様な卑怯な男になって貰っては困る。そんな男を世に出さないのは親である私の使命だ。そして私も卑怯な事をする様な男になってはならない。自らを厳しく律していかねばならない。

 

さて、日も傾いて来た。そろそろ帰るか。

 

坊ちゃんが御手洗いに行っている間、受付の建物の中で芸術の森の写真等を見る。雪景色も綺麗だ。生で見てみたい。近隣の観光スポット等の情報を見ていると、近くのお寺で紅葉をライトアップしている写真を見付けた。今日もライトアップをする様だ。時間も丁度良い。奥様に話すと「折角なので行ってみましょう。」との事。車を出してお寺近くの有料駐車場に駐車する。

ライトアップの時間迄1時間程あったので近隣を散策。よもぎの焼き餅があったので買う事にする。子供の頃によく行った、婆ちゃんの家近所の商店街を思い出させてくれる。

 

結構な行列

私も奥様も、こし餡派だが焼き餅は粒餡しか無いので仕方無く粒餡にする。

緑色が鮮やかで焼いた焦げ目が綺麗に付いている。口に入れると市販の焼き餅では感じにくいフレッシュなよもぎの香りが味に奥行きを感じさせる。坊ちゃんが意外にも美味しいと言って食べてくれた。続いては、よもぎ回転焼き。表面はカリカリ。中身はシットリと言うより半生に近い。この塩梅がとても好みで美味しい。私はこちらが好み。

そろそろいい時間なのでお寺へ。

 

 

拝観料を払って入場。短冊を渡されて、何か願い事を書いて下さいと言われる。私も煩悩と欲望にまみれた願い事を書く。仕方あるまい。それが私の正直な願いなのだ。いかなモテ男とはいえ、神仏を前にして嘘はつけぬ。

 

写真は16時半頃。まだ明るい。

秋の夕日はつるべ落とし。すぐに暗くなり、17時と同時にライトアップとなった。

番傘のアートも

 

 




凄く綺麗だ。

桜が綺麗だと感じ始めたのは25歳の頃。

紅葉が綺麗だと感じ始めたのは結婚して30手前の頃だ。

去年の同じ時期のブログにも書いてあった。

 

furyochunen.hatenablog.com

 

まさか小学生の内から紅葉に感動する児童なんていないだろうとも思っていだが、坊ちゃんは綺麗だと喜んでいる。時々若年寄かと思う位、壮年染みた感性を伝えて来る時がある。

キャンドルもいい感じ

 

 

一番奥に五重塔があるらしい。そこだけが何か雰囲気が違う。

 

 

五重塔に昇り龍。階段のキャンドルを含めて素晴らしい演出だ。

 

30歳になる少し前に紅葉が綺麗だという感性を身に付けたが、紅葉のライトアップは初めて。本当に何度お寺の中で綺麗だと感じ、綺麗だと言葉にしたか分からない。

お寺がライトアップされ始めた歴史はそれ程古い物じゃない。(と思う)

当然賛否両論あるだろう。否定派からすれば、お寺本来の静寂で厳かな雰囲気が失われるとか色々あるのだろう。

初めて行った私は賛成派。仮にライトアップのイベントが無かったとしよう。五重塔の周辺なんか真っ暗だ。当然暗い時間になんか誰も来ない。ところがライトアップされる事で紅葉の違った美しさを知る事が出来、皆その美しさに心を奪われる。ライトアップされなければ絶対に来ないであろうギャルのお姉さん達も居た。集客や観光振興、地域活性化文化財の活用等。メリットも沢山あると思う。人が来ない所は廃れていく運命なのだ。勿論お寺でのマナーや文化財に対する落書き等は許される事では無い。そういったマナーを皆で守るのであれば、メリットの方が多いと思うのだが・・・

 

紅葉を存分楽しみ帰路へ。当然坊ちゃんは即死の如く夢の中へ。

 

奥様と二人。帰りのドライブを楽しむ。私にとって車での移動時間も楽しみの一つだ。

今日あった『クソガキ投石事件』について奥様と話す。加害者にならない為にどうすべきか、被害者になった場合はどんな対応をすべきか、奥様も私とほぼ同じ考えであった。勿論それが100点満点の答えだとは思わない。だが夫婦である以上、同じでなくとも似た考えでありたい。今日一番の収穫は紅葉の美しさよりも、奥様と自分の考えを確認し合えた事だったのかもしれない。

 

私はこうしてモテて来た。

 

 

 

 








 

 

 

 

 

無駄な背伸びをする必要は無い

私は結構モテる(つもり)。

 

そんな私は過日、チョット洒落乙なイタリアン リストランテに行って来た。

家族と一緒では無い。

 

その日は仕事を調整し早目に終わらせて、待ち合わせ場所に向う。

 

今日一緒に行く人は薫さん。諸事情で薫さんと私の関係は書けないが、年齢は私と同じ40代後半。予約してあるリストランテドレスコードのある少し高級な店だ。その為か、薫さんは妙に緊張していた。私も久々に薫さんと食事をするので多少は緊張しているが、何度か行った事のある店なのでその点は気楽だ。

 

店に到着。薫さんの上着を脱がせて店員さんに預かって貰う。嫌味のない上品な香水の香りがほのかに漂う。私は香水を一切使用しないのだが、選択と使い方を間違わなければ男が香水を使うのも有りなのかな?と感じる。

 

予約しておいた席に案内され、薫さんと向かい合って座る。薫さんの緊張はまだ抜けていない。ま、お酒が入るとリラックスしてくるだろうと特に気にしなかった。

 

まずはシャンパンで乾杯。

(正確にはスパークリングワイン)

 

夢見心地のイタリアンNightの始まりだ。

 

洗練された雰囲気のイタリアンリストランテで、キラキラと輝くシャンパンの泡が、まるで久々に会う二人の会話を彩るようにグラスの中で踊る。

一口含むと、爽やかな酸味と仄かな甘みが繊細な風味と共に口いっぱいに広がり、高揚感を一層高め、最初のアミューズがそれを更に高める。今日のように特別な夜には、フルボトルのシャンパンを用意してくれるのだが、そうするとシャンパンだけで酔ってしまう。ボトルは断っておいた。

シャンパンは食事のスタートを華やかに飾り、食欲を増進させるだけでなく、この店の様々な料理との相性も抜群だ。

 

 前菜は新鮮な魚介のカルパッチョに旬のフルーツを和えてある。いかにも女性ウケしそうだ。おそらくカルパッチョの魚に塩を振って水気を抜いてあるのだろう。旨味が凝縮され、身がプリッとした食感になり、ねっとりとした濃厚な旨味が引き出されている。シャンパンとの組み合わせは格別だった。シャンパンの適度な酸味は、料理のコクを引き立て、口の中をリフレッシュさせてくれる。 

 

セカンドはイチヂクと生ハムのサラダ仕立て

イチジクの濃厚な甘みと生ハムの旨味、そして塩気が口の中で広がり、後を引く美味しさだ。 ドレッシングはバルサミコ酢を使った甘酸っぱいドレッシング。砕いたクルミが食感にアクセントを与え、風味に深みがある。

乾杯の時のシャンパンをもう一杯頂く。

 

自分も家で作ってみた

 

 

スープ

見た目がビールみたいなスープが提供される。

成程、上層がムース状のジャガイモのポタージュ、その下はコンソメベースのスープになっていたのか。

美味しい。

きっと普通のポタージュだと沈殿して上下逆、つまり生ビールみたいな見た目にならないからムース状にしてるのかな?

 

ポワソンの前に薫さんが言ってきた。

「不良中年さんって、よく白ワイン飲んでますよね?良かったら今日のポワソンに合わせた白ワインを選んで貰えませんか?」

薫さん、今日は結構攻めてくるな・・・

本日のポワソンは鯛の塩焼きとの事。

モテる(つもりの)私はそれ位の攻撃では動じない。普段の勉強と経験に頼るだけだ。

店員さんを呼ぶ。

 

「この後のポワソンに合わせた白を、グラスで2つお願い出来ますか。」

 

薫さんは私の拙い文章力では表現出来ない表情を見せた。驚いた顔である事は間違い無いのだが、

「あ、成程、私の攻撃をこういう形でかわしたのか。」

と言った表情と言えば分かって頂けるだろうか。

 

鯛の塩焼きは純粋な和の塩焼きとは又違った味だ。イタリアンらしく、オリーブオイルとハーブの香りが口の中で広がる。和の塩焼きの香ばしい香りとは違う、爽やかな香り。鱗をあえて少し残し、表面を仕上げに炙ってあるのか、皮だけのパリパリ感だけではない、楽しい食感だ。頼んだ白ワインがどんどん進む。

 

白ワインは薫さんの口にも合った様だ。いつもより飲むペースが早く感じる。少し開いたシャツの胸元まで肌がいい感じに赤くなっている。ワインのお陰で少し緊張は抜けたように見えるが、それでも一緒に居酒屋で飲む時とは違ってあまりリラックス出来ていない様に見える。折角の食事で疲れさせてしまっては申し訳ない。薫さんに思い切って聞いてみた。

 

「食事もワインも口に合ったみたいですが、お疲れですか?」

薫さんは答えてくれた。

「あ、すいません。実はずっと緊張しちゃってて。不良中年さんはこんなお店に来て緊張しないの?」

 

私はうっかりしていたのかもしれない。自分の好きな店に連れて来ただけなのだが、高級店の割りに若い女性客が殆どなのである。勿論カップルもいるが、皆若い。高級店と言っても随分洒落乙な店だ。その為だろう。

薫さんは申し訳なさそうに言った。

「私達みたいな年齢のお客さんは他にいないですよね。綺麗に着飾った若い女性達に囲まれて食事をしていると、何か申し訳なくて。すいません。折角なのに気分悪くさせてしまって。」

 

私は薫さんに言った。

「何でそんな無駄な背伸びをするんですか?」

薫さんは「え?」と返す。

「あの向こうのカップル見えますか?どう見ても20代前半ですよね。彼女の誕生日か記念日か知らないけど、普通に考えたらこんな高級店に来る事は難しい。靴を見れば大体分かるんですけど・・・失礼ながら彼は背伸びをして彼女をこの店に連れて来たかったのだと思います。これは素敵な背伸びです。私だってそうです。好きな女性の為に背伸びしてるんです。私の勝手な持論ですけど、好きな女性の為に背伸びして頑張るなんて最高にカッコいい。」

 

薫さん

「私のどんな所が無駄な背伸びになるんですか?」

 

「薫さんは私と同じ40代後半なのに、背伸びして還暦過ぎの人になろうとしているからです。髪も肌も丁寧に手入れされているし、年齢に甘えて、だらしない身体をしている訳でもない。例えばさっき、白ワインを選んで欲しいって私に言いましたよね。私は無駄な背伸びをせずにお店の人に頼んだ。」

 

私は確かにワインが好きだが、それを偉そうに公言出来る程の知識なんて無いし、勉強も出来ていない。家で飲むのも適当に選んだ安物のワインだ。牡蠣か刺身か帆立か、何を食べながらの時か忘れたが、白ワインを飲むと妙に生臭く感じた時があった。他の酒に変えると生臭さは感じない。調べてみると、魚と合うのは白ワインという単純なモノではなく、白ワインと魚介類でも相性があるという事を知った。そしてワインは高ければ美味しいというモノでも無いのだ。

生兵法は大怪我の基。知ったかぶりで高い白ワインを選んでも、合わない可能性は大だ。それが正に無駄な背伸び。素直にプロに任せた方が賢い。

 

そして若い女性達に対する気負い。確かに彼女達は煌びやかな容姿をしている。

でも、それがどうした。

トシちゃん(田原俊彦氏)が還暦になった時だったと思う。

「実年齢の八掛けで考えない?」

って言っていた。

『足を頭の上まで上げるようなキレッキレのダンスが難しくなれば、大人の色気を醸し出せる動きを追求する方法もある。できなくなったことを嘆くんじゃなくて、「違う方法にトライしてみよう」と考えたほうが、きっと楽しい。

僕は、まだまだいい服を着たいし、いい靴を履きたいし、いいクルマに乗って、いい女を落としたい。これは田原俊彦という男のサガ(笑)。』

そんなトシちゃんが目茶苦茶カッコいい。トシちゃん世代では無い私が思う位だ。

若い頃のダンスを見ると三浦大知にだって負けてない。勿論三浦大知だってトシちゃんに負けて無い。

 

薫さんは私と同じ40代後半だが、髪も肌も綺麗に手入れされている。年齢に甘えて、だらしない身体をしている訳でもない。

煌びやかな若い女性に対する背伸びなんて無駄。

自分を必要以上に大人に見せる為の背伸びなんて無駄。

無理に年寄り気取る必要なんて無い。

ただ、己を磨いていればいい。

でも男はアフォで最高に素晴らしい生き物だから、好きな女に対しては無駄とも言える背伸びをする。私だってそうだ。

 

そんな内容をざっと簡潔に話した。

薫さんは真剣に話す私の顔を見ながら、真剣に話を聞いてくれた。

 

薫さん「ありがと。安心したら、何だかお酒が足りなくなったかも。」

私  「それじゃ、口直しのソルベをキャンセルして代わりに白のサングリアでもう一度乾杯しましょうか。」

薫さん「白のサングリア、珍しいですね。初めてです。」

この店のサングリアは少し甘めでブランデーを加えており、サッパリしているけど深みのある味で私のお気に入りなのだ。

ところが・・・

店員さんが持って来てくれたのは赤のサングリア。

あれ?

店員さんがサングリア=赤と勘違いしたみたいだ。

店員さん「申し訳ございません。すぐに取り替えます」

私   「いいですよ。赤と白と迷ってたんです。このまま頂きます。」

薫さん 「これの次に白を頂きましょうか。」

 

私は飲食業のバイト経験が長く、こう言った勘違いの場合はそのまま頂く事にしている。もしかしたら私のオーダーの仕方が悪く勘違いさせたのかもしれない。誰にだって勘違いはある。

 

 

そして今回のblogの公開前に内容を確認していると、とんでもない勘違いミスを発見した。

自分でどう読み返しても、書いた自分が勘違いしてしまう文章になっているが、薫さんは男だ。

 

客の大半が若い煌びやかな女性の店で、40代の男が二人で飲食を共にする。

全くの平常心で。

 

 

私はこうしてモテて来た。

 

京都 任天堂ミュージアムへ行って来ました?

 

私は結構モテる(つもり)。

 

そんな私は過日、任天堂ミュージアムを訪問すべく再び京都へと赴いた。

 

もう忘れる程に以前の事。

奥様が喜んで報告に来た。

 

奥様 「不良中年さん、坊っちゃんの行きたがっていた、任天堂ミュージアムの抽選に当たりました。運動会の振替休日の月曜日です。」

私  「それは良かったね。何とか休める様に仕事を調整するよ。」

奥様 「そうですね。抽選で申込んだのは2名なので、坊っちゃんとお二人で行って来て下さい。」

私  「ん?君は?」

奥様 「私は正直ゲームの事があまり分かりませんので。」

 

そういう事であればそうしよう。仕事を調整し、月曜日は休日としておいた。

ところが…

 

奥様 「不良中年さん、事件です。私の名前で申し込んでいたのですが、申込者本人でないと入館出来ないそうです。夫婦でのチェンジも例外無く…」

私  「なんだと!如何な世界的企業とはいえ何たる殿様商売。けしからん。この私が成敗、もとい交渉をしてくれるわ!」

 

『あ~もしもし?私は○月●日に入館予約をしている不良中年と申します。赫赫云々、とどのつまりは妻と私の入館を変更したい。権利の転売等では無い。もうすぐ結婚19年の正真正銘の夫婦だ。何なら戸籍謄本、住民票、マイナンバーカード、保険証、運転免許証、パスポート、全て持参しよう。何も問題はあるまい?』

 

担当者

「大変申し訳ございません。変更は出来ない事となっております。」

 

『左様か。では追加で私の健康診断結果票、ストレスチェック個人結果、LOX-index(脳梗塞心筋梗塞発症リスク検査報告書)、アレルギー検査報告書も持参しよう。文句はあるまい?』

 

担当者

「大変申し訳ございません。変更は出来ない事となっております。」

 

『左様か。では直近のアメックス センチュリオンカードの明細も持参しよう。これで良いな?』

 

担当者

「大変申し訳ございません。変更は出来ない事となっております。」

 

 

 

どーーーーーーーーん!ライデイン

 

 

 

『なんだと?黙って聞いていれば・・・さっきから出来の悪いAIの如く事務処理的な回答をしおって!けしからん!私が今日迄貴社の売り上げににどれだけ貢献してきたか!

貴社初のカラーテレビゲームから始まりファミリーコンピュータスーパーファミコンディスクシステムNINTENDO64ニンテンドーゲームキューブWiiWii UNintendo Switch迄全て購入し、Switch2は予約済。それだけでは無い。我が不良中年家では明治22年の貴社創業当初の花札から購入し、代々お付き合いをさせて頂いておるのだ!苦情係では話にならん。社長を出せ!社長を!』

 

と、叫んだ。

 

無論脳内で。

 

上記の様な事を実際に要求すれば、最寄りの京都府宇治警察署に通報され即尿検査となるからだ。

決まりなら仕方無いな。今回は奥様と坊ちゃんで行って貰い、改めて私の名前で予約するか。抽選中々当たらないらしいけど。

タイトルで『行って来ました?』としてあるのはこういう事なのだ。

 

で、当日。

私は運転手として京都部宇治まで赴く事となった。奥様は運転達者なのだが、やはり不安だと言う。電車で行っても良いのだが、坊ちゃんは全力で遊ぶ事が予想される為、帰りは必ず寝るだろう。電車で寝られると乗換の時に大変だし、何より奥様の負担を考えると私が車で送るのがベストだ。月曜日は予定通り仕事を調整して有休に。そして無事に京都へ到着。

しかし平日朝の近畿道は疲れるね。車は多いし暴走トラックもいるし。

 

 


少し早いので、近くのコンビニで珈琲とアメリカンドッグを頂く。時間になったので奥様と坊ちゃんは任天堂ミュージアムへ。暫しのお別れ。

 

さて。

私はどうしよう。まだ11時前で平日の京都。

どこか観光でも行くか?高校生の時に修学旅行で行った平等院鳳凰堂が近い筈。嵐山、新京極もいいかも。

 

しかし、実は予定は既に決めてある。

 

漫画喫茶に行くのだ!人生初の快活CLUB!

 

任天堂ミュージアムから10分程度の場所にあるから、何かあってもすぐに対応出来る。自宅の近所にもあるのだが、行った事は無い。私は漫画と御飯とベッドがあれば何日でも生きていける自信がある。それ位に漫画が好きだ。

 

チェックインで若干戸惑ったが、半個室のブースに入る。ドリンクバーも付いて静かなBGMも心地よい快適空間である。早速漫画を物色し読み漁る。そしてソフトクリームも食べる。(食べ放題)最近のこってりソフトクリームではなく超絶サッパリ系のソフトクリーム。私はこのタイプが好きだ。

ソフトクリームのお代わりし過ぎで寒くなって来た。しかし心配無い。ドリンクバーには味噌汁とコーンポタージュもあるのだ。この味噌汁が超絶沁みるぜ。

 

そうこうする内にお昼となる。何と!ランチが注文出来て持ってきてくれるのである。しかも安い。

昼食後、ブランケットを借りて軽いお昼寝。目が覚めると再び漫画三昧。ソフトクリーム三昧。最高の時間はあっという間に過ぎ、奥様から迎えに来て下さいとの連絡が・・・

 

結論。私住めます。

 

 

お会計を済ませて再び任天堂ミュージアムへ。因みにお会計は約5時間居て唐揚げ定食食べて弐千円とチョット。良心的でした。又行かせて頂きます。

 

迎えに行くと奥様も坊ちゃんも大興奮で戻って来た。

特に坊ちゃん。

じゅげむ

傘立てがゲームボーイ

ロッカー?はゲームボーイのソフト




はてなバーガー

 

撮影は出来なかったが、昔のゲーム機やソフト、百人一首等も展示されていたそうだ。ゲームの体験も出来て、大きなコントローラーを使ってゲームをしたり、昔のゲームもプレイ出来るとの事。次回は是非私も行行きたいと感じた。

車に乗せると坊ちゃんは即死の如く夢の中へ。いつもの事だが、遊び疲れて眠っている子供を乗せての帰り道は何とも幸せだ。何度経験しても変わる事は無い。自分の親父もこんな風に運転してくれていたのかなと思うと、色々と感じる物がある。

 

展示品の中には、きっと昔のファミコンもあったのだろう。その事で子供の頃の出来事を思い出した。

以前書いた通り、私が小学生低学年の頃、実家はかなりの貧乏だった。両親のお陰で貧乏と感じた事は一度も無かったが。

 

furyochunen.hatenablog.com

 

日々の生活で貧乏と感じた事は無かったが、やはり経済的には苦しかったのだろう。私はファミコンを持っていなかった。スーパーマリオが流行った、ファミコン全盛期の頃である。

私はファミコンが欲しくて欲しくて仕方が無かった。だが買って貰えなかった。

 

そんな小学校1年生のある冬の日。

朝起きると母親が、

「あれな~んだ?」と言って指差した。

振り返ると、指差したソファーの上にはファミコンの箱が置かれてあった。

 

「あ!ファミコン!」

 

親父が無理して買ってくれたのだろう。大興奮で箱を開けて中身を見る。ソフトは無かったが、嬉しくて嬉しくて大はしゃぎ。

 

「お母さん、ファミコンとテレビを繋げる為にこんな部品が要るんだよ!知ってる?」

 

なんて母親に話し掛け、興奮がいつまでも冷めなかった記憶がある。その日は学校から帰ると、ファミコンの箱を開けてずっと眺めていた。その後、初めて買って貰ったカセットは勿論スーパーマリオブラザーズ。毎日毎日、30分という決められた時間内だったけど夢中でプレイしていた。親父もハマって一緒に遊んでいたな。

木乃伊取りが木乃伊になるとは正にこの事だ。

 

しかし気になる事が一つあった。

私のファミコンは何故か箱が綺麗ではなく所々擦れており、内箱の発泡スチロールも所々欠けていた。コントローラーにも傷が結構あった。その時は特に気にならなかったのだが、やっぱり友達の家のファミコンは自分のファミコンよりも綺麗だった。

 

どんな話の流れだったかは忘れたが、ある時、親父が話してくれた。

 

「あのファミコンはね、大阪から来た人に安く売って貰ったんだよ。」

そう言った親父は少し申し訳無さそうな、悲しげな顔をしていた様な気がする。

私は何も気にならなかったのだが・・・

 

私が小学校1年生だった1980年代中盤~後半、まだ地元にカメレオンクラブ等の中古カセット等を扱う店は無かった。全国的にも中古ゲームという市場は確立されていなかったと思う。子供だった私には、そもそも中古という概念すら無かった。そんな中、親父はどういうルートかは知らないが、大阪から来た人に安くファミコンを売って貰ったのだ。

飲み屋街の怪しげな露店商かもしれない。

怪しげな訪問販売だったのかもしれない。

たまたま仕事で知り合った取引業者かもしれない。

あるいは質屋にでもあったのか?

 

だがそんな事はどうでもよろしい。

 

親父は息子がファミコンを欲しがっていた事を、ちゃんと知ってくれていた。

だけど経済的に与える事は難しい。そんな時に手の届く範囲のファミコンに偶然出会った。

クリスマスでも誕生日でも無い、何でも無い平日の朝にファミコンがあったのは恐らくそういう事だと思う。きっと親父は息子の喜ぶ顔を想い浮かべながら買ってくれたのだろう。私が寝た後で帰って来たわけだから、寒い中、夜遅くに自宅に着いた親父は車の後部座席からファミコンを取り出し玄関の鍵を開ける。満面の笑みで誇らしげに母親にファミコンを見せ、

親父「もう寝たのか。起こしてファミコンを見せてやろう。」

母親「興奮して寝なくなるから、明日にしてよ。」

なんてやり取りをしたのかもしれない。

 

当時はファミコンを買ってくれた事に対する感謝しか出来なかった。子供だから当然かもしれないが・・・

 

でも今なら分かる。

親父は一生懸命にファミコンを与えてくれた。自分の小遣いも無い位なのに。

母親は『ファミコンを持っていない子は、友達の家で皆でファミコンで遊ばせて貰えない』と聴いていたらしい。どこで聴いたんだそんな事。でもそれを信じて、私が辛い思いをしない様に家計をやり繰りしてファミコンを与えてくれた。

 

『子を持って知る親の恩』とはよく言った物だ。親がどれだけ深い愛情を注いでくれたのか。そんな愛情は私も引き継いで、子供達に注ぎ伝えなければならない。そんな私と奥様の愛情を理解してくれるのは何十年も先の事だろうが、何十年先でも理解してくれるのなら嬉しい事だ。

 

親にも子にも感謝が出来る。

 

ファミコンが与えてくれたのは、単なる娯楽だけでは無い。私にとっては親の愛情そのものだったのかもしれない。

 

任天堂という企業に感謝し、自分の仕事も、こんな形で誰かに感動を与えたい。

いや、感動を与えられる仕事をしよう。

 

私はこうしてモテて行く。

 

万博スタンプラリー 京都に行って来ました

私は結構モテる(つもり)。

 

そんな私は奥様と二人で京都に行って来た。

目的は二つ。

一つは北野天満宮へ合格祈願のお参り。不良中年娘は高校三年生。受験生なのだ。

もう一つは万博スタンプラリーで京都駅にあるスタンプを押す事。

不良中年息子の万博スタンプ帳を満たす為である。

 

どちらも子供の為だが、私は車の運転が好きだから何も問題無い。

 

ド平日である水曜日、有休消化で私は休みであった。当然休日である事は奥様には秘密と言うか、前もって言う事は無い。何故かって私が休みと分かると色々面倒だからである。私が何をしようと奥様は何も言わないが、私が精神的ストレスを感じるのだ。『奥様に申し訳無い』と。実はコレが奥様の作戦なのかもしれない。

 

当初、奥様はご友人の車で京都に行くつもりだったのだが、ご友人の急用でキャンセルになってしまったとの事。京都へは電車で行くと言っている。

 

ここで私は迷っていた。

 

電車で行くのは何かと大変だろう。京都駅から北野天満宮迄はバスしか無い。大した荷物は無いだろうが、飲物や天候の急変の為傘や羽織る物も必要だろう。普段運動不足の奥様だ。何かと体力を使って疲れるだろう。

「私が車で連れて行くよ。」と言いたかったのだが、若干の抵抗があった。

 

娘と会社のおばちゃんの人の言葉を思い出すのである。

 

furyochunen.hatenablog.com

 

「奥様は不良中年さんとのデートなんて求めてない」

 

「ママが欲しいのは自由な時間。パパとのデートなんて論外」

 

 

私が一緒に行く事がかえって奥様の迷惑になるのではないか?

そう察したのである。

娘やおばちゃんの人、要は第三者の言葉であればまだしも、奥様本人から

「私はお友達と京都に行きたかったのです。その約束がキャンセルになったからと言って、何故私と不良中年さんが一緒に京都まで行く事になるのですか?私の事はお気になさらずに、いつも通りお一人の時間を楽しんで下さい。」

なんて怜悧に返されると生きていけない。そんな言葉を奥様から直接聞くには残りの人生が長過ぎる。

 

モテる(つもりの)私であっても奥様は手強い。奥様の独り言からも

「着いて来ないで下さい。」

的なオーラを感じる。

が、

奥様 「どちらにするのですか?ハッキリして下さい。」

私  「行こうか。」

 

こうして思い付きに近い状態で京都行きが決定した。

但し、奥様からある条件が言い渡される。

「不良中年さん、アナタは運転中に遅い車が前を走っていたりすると、瞬時に怒髪が天を衝きます。娘から何度も言われていますよね?アナタの怒髪が天を衝くと車内の空気が悪くなるのです。京都までの道中、運転が苦手な方にお会いする事もあるでしょう。その時、お怒りになるのはご遠慮頂けますか?」

 

答えは「はい」のみである。

因みに「はい」は一回。

 

よし、アンガーコントロールを徹底して意識し、京都まで行くか。

阪和道に乗ると早速遭遇。遅い車。

アンガーアンガーアンガーコントロール

吹田を超えると結構な渋滞。

アンガーアンガーアンガーコントロール

 

京都市内に着いた。市内も結構な渋滞である。この頃にはアンガーコントロールに疲れ果て、アンガーエネルギーも尽きていた。

穏やかとも疲れ切ったとも言える心で北野天満宮に無事到着。お参りを済ませて御守りと御札を購入。娘の事を宜しくお願いします。

懐かしい公衆電話 見なくなったな






学問の神様だけに、修学旅行生が結構多かったな。初めて来たけど綺麗で素晴らしい所であった。周りもお土産屋さんやお豆腐屋さんがあり、ゆっくり歩いてみたかったのだが、夕方迄には帰らないといけないし、もう一つのミッションである京都駅でのスタンプもゲットしなければならない。チョット惜しいが京都駅に向かう。京都駅近くの東本願寺の大きさにビックリしながら駐車場を探し、適当に駐車する。安い駐車場を探す時間も惜しい。300円位しか変わらないし、その分駅から遠くなるから駅からすぐの駐車場へ車を入れる。

 

お昼時である。奥様はお腹が空いたと言っている。

早速美味しそうなお店を発見。夜はお酒を出すお店がやっているランチだ。そんなお店が沢山ある。折角だから京都駅の方も見てゆくっりお店を決めるか。スタンプのミッションを優先させる。



初めて来たけど、京都駅って大きいね。(当たり前か)

私の地元、四国に鉄道はあるにはある。馬鹿にしてもらっては困る。しかし電車を利用するという文化が都会に比べて希薄なのだ。結果、駅ビルという物は県庁所在地であってもビックリする位ショボい。京都駅は大きいし、何か上品な雰囲気だ。

それにしても外国人が多いな。石を投げたら外国人に当たるって言うのも大袈裟な表現ではない。少し前は外国人を見ると言っても中華人民共和国大韓民国の人達が殆どだった様な気がする。今は中東系の人やヨーロッパ系の人達も多い。京都は余計にそう感じるのかな?

 

大きな駅の中で、万博スタンプはあっさりと見付かる。息子のスタンプ張と現地で貰える台紙にスタンプを押す。

その台紙だが、「おひとり様一枚」となっている。私の前に並んでいるお婆ちゃんがグダグダとゴネている。

 

「一枚しか貰われへんの?人にも頼まれてるのに。遠くからきたんやで。ホント京都の人やわ。融通効かへん。私、万博何遍も行ってスタンプ集めてるんやで。京都もしょっちゅう来てるんやで。ホントにもう気分悪いわ~」

 

スタッフの人も特別扱いする訳にもいかず、丁寧に謝っていた。

 

情けない・・・

見た感じ、年齢は70代後半か?気持ちわ分からんでもないが、ゴネている間はスタンプの行列も前に進まぬ。しかし私の貴重な残り寿命はどんどん進む。アンタの寿命もですよ、お婆ちゃん。80年近く生きて来てコレか、と正直思ってしまった。あんな爺にはなりたくない。素敵な反面教師に出会ったとポジティブに考えるか。

だから私はモテる(つもり)。

 

スタンプのミッションも完了。

奥様と御飯を食べに行くか。駅ビルの近くでお店を探す。美味しそうなお店は沢山あるのだが、よく見るとチェーン店ばかりだな。チェーン店自体は好きなのだが、わざわざ京都にまで来て行く必要はない。かと言って京料理が食べたいとも思わない。

おっと、私の好きなバイキングのお店を発見・・・高過ぎる。ド平日のランチに夫婦で弐萬円は出せない。

それならとスイーツビュッフェのお店の値段を見る。スイーツでお腹を満たそうという作戦だ。中々経験出来ない事なので面白そうだ・・・高過ぎる。二人で壱萬弐千円。

 

私はお金持ちではないが、貧乏では無いとも思ってはいる。が、身の丈と言う物がある。記念日でもないド平日のランチに、一人何千円も払う事は出来ない。他のお店を探す。で、すぐ近くに洒落乙なお店を発見。京マダム達が昼からワインを飲んでおられる。

ここにするか。奥様も納得し店に入る。

おっと。結構可愛い店員さんだな。一番奥の窓際の席に案内される。奥様を壁際のソファー席に座らせて、私は椅子の席に座る。いつだって私は奥様ファーストだ。奥様は店内を見渡せる席で、私は奥様だけを見つめる席である。

 

最初に席に案内してくれた店員さんが我々のテーブルの担当になるシステムの様だ。若いのに丁寧な接客で好感が持てる。エアコンの真下の席だった為、奥様が寒そうにしていると

「お席を移動しましょうか?それとも少しエアコンを緩めましょうか?」と言ってくれた。良く気付いてくれたな。学生のアルバイトではなく、社員さんかな?

 

奥様は

「大丈夫ですよ。ホット珈琲が美味しく飲めますから。」と言って席はそのままにして貰った。席を変わるのには店員さんの手を煩わせるし、他のお客さんが暑いと感じたら迷惑だ。

 

さて、私はこの時点である違和感を感じていたのである。その違和感とは、かつて何度も感じた事のある違和感である。

 

メニューを決めてオーダーする。オーダーを取りに来てくれたのは我々のテーブルの担当女性。最初に席に案内してくれた女性だ。A子さんとしておこう。何しろ彼女の本名を知らないのだ。仮名となる。奥様は週替わりの牡蠣のパスタランチ、私はハンバーガーのランチをA子さんにオーダーする。

 

その後、「遅くなりました。

と言ってB子さんがお水を席に置いてあったコップに提供してくれた。同時におしぼりも。おしぼりは上質な和紙の物。安物と違って食事中も乾く事が無い。

 

次に「お待たせしました。お先にスープとサラダになります。」

と言って、先ずはサラダとスープが提供される。持ってきてくれたのはC子さん。40代後半としては極めて健康な私ではあるが、血糖値の急上昇を抑える為にサラダから頂く。上品な甘みのドレッシングだ。慣れない道の長距離運転と、人ごみの中を歩いて少し疲れた体に抵抗無く入って行く。

続いてのスープはミネストローネだ。先程のサラダの甘いドレッシングがトマトの酸味をやわらげてくれる。具となっているそれぞれの野菜から溶け出した香りや甘味が一体となり、複雑で奥行きのある味だ。口に入れた後、味が段階的に変わって行くと言った表現が分かりやすいだろうか?シェフがじっくりと煮込んで作ってくれた様子が見える。先程少し寒いと感じたエアコンが、熱々のミネストローネを更に引き立ててくれる。

 

美味しい。

 

「おまたせしました。こちら牡蠣と水菜のオイルパスタでございます。」

持って来てくれたのはD子さん。奥様の前に置いて貰う。

「こちらはハンバーガーランチでございます。」

 

美味しそうだ。

「いただきます。」

私はどんな時であっても食事の前に「いただきます。」と言う。

食材に対し、「アナタの命を頂きます。」という感謝の気持ちと、作ってくれた人に対する感謝の気持ちだ。

 

どちらの料理も美味しかった。

特に奥様のパスタ。家では中々再現出来ない味だ。

お店には大変失礼なのだが、二人同時に牡蠣を食すと「あたった」場合に困るので私は麺とスープを一口だけ頂いた。

ぷりっぷりの大ぶりの牡蠣から出た濃厚な海のミルクの風味がパスタに絡んで、磯の香りが口の中に広がる。ソースをバゲットに付けて頂く。すると牡蠣から染み出たエキスが上質なオリーブオイルと混ざり合い、ソース全体に深みを与えている事が良く分かる。水菜は彩りと牡蠣の濃厚さに爽やかなアクセントを加えてくれる。

飲む事は出来なかったが、きっと白ワインが合うのだろう。

辛口の白ワインがオイルのコクをスッキリさせてくれると思う。

柑橘系、レモンやグレープフルーツの香りがある白ワインは、その酸味で口の中のオイル感を流し、食欲を更に増進させてくれると思う。軽めのロゼなんかも合いそうだ。

 

あ~~ ワイン飲みて~!

私の後ろの席で、京マダム達がワインを飲んでいるのだ。ワインクーラーには白ワインが冷やされている。

 

自分のハンバーガーをあっという間に食べてしまったので、奥様のパスタの味が一層鮮烈に残ってしまった。バゲットのお代わりをお願いする。

 

「おまたせしました。バゲットになります。」

今度はシェフ?らしきイケメン男性が持ってきてくれた。パスタのソースを付けて頂く。

 

美味しい。

 

更にワインが飲みたくなる。が、ここは絶対に我慢だ。飲酒運転で自分が死ぬのは勝手だが、他の人を巻き込む様な事故を起こしてはならない。普通に運転して事故の可能性はあるのだから、可能な限り事故のリスクは減らさなければならない。

食後のホット珈琲で我慢しよう。

ま、我慢といっても私は食後の珈琲が大好きなのだ。煙草は吸わないので分からないが、食後の煙草が一番美味しいらしい。それと似ているのかな?

 

「おまたせしました。ホット珈琲になります。」

E子さんが持ってきてくれた。一番美人だったと思う。

 

少し寒いと感じていたエアコンだったが、美味しい食事がそれを忘れさせてくれていた。今はホット珈琲を引き立ててくれている。

店に入ってから感じていた違和感は、この時には確信に変わっていた。

 

奥様に

「何かデザート食べる?」と聞いたのだが、既にお腹いっぱいとの事。

美味しくて満足してくれたみたいだ。

 

それにしても本当に外国人が多い。この店はイタリアンバルだった為、外国人は少なかったが、窓の外は本当に日本人より外国人の方が多かった。

 

珈琲を飲み終わり、店を出る事にする。美味しかったし店員さんの接客も良かった。

支払いは勿論私。

 

店を出て駐車場へ向かって歩く。大きくて綺麗なホテルを見て

「今度は泊まりで来てみたいね~。」

なんて言いながら駐車場へ到着。

仕事の日は昼食後に20分程度昼寝をする事にしている。午後の仕事の伸びが全然違うし、眠くなる事が無い。車でいつもと同じ様に暫し昼寝。奥様には少し待って貰う。

 

昼寝も終わり、帰路につく。帰りは第二京阪から。こっちの方が道幅広いし走りやすい。時間も随分短縮だ。近畿道に入り自宅の一つ前のインターで降りる。奥様お気に入りのパン屋さんに寄る為だ。

 

一般道を走っている時、奥様に謝罪する。

 

私 「ごめんな、僕、やっぱりモテるわ・・・。」

奥様「そうですか。どんな事がありましたか?」

 

先程お昼を食べたお店での出来事だ。

 

店に入って一番奥の席に案内されて店内を歩いている時、

「あら、素敵なご夫婦。」

といった眼差しの京マダムからの視線を感じていた。この時感じていたのが違和感。

違和感の原因は恐らくこうだ

店員さん達のやりとりである。

 

A子さん「さっき来た夫婦。素敵やない?旦那さん、結構カッコよかったで」

B子さん「え?どこ?」

A子さん「奥奥。8番テーブル。」

B子さん「あ!ほんまやな~。奥さん綺麗やわ。でも旦那さん見えへんやん。」

 

奥様は奥側のソファー席で店内が見渡せる席。私は奥様だけを見つめていた。

 

A子さん「ほなB子ちゃん、お水とおしぼり持って行って~や。」

B子さん「うん。分かった。」

 

B子さんは

「遅くなりました。

と言ってお水とおしぼりを持ってきてくれた。太字で書いてある「た。」のタイミングで私の事をチェックしたのである。(推測)

 

B子さん「ほんまや~。結構イケメンやわ~。」

C子さん「え?何?何?」

B子さん「あのな、8番テーブルのお客さんやねんけど・・・」

C子さん「あ!ほんまやな~。奥さん綺麗やわ。でも旦那さん見えへんやん。」

B子さん「ほなC子ちゃん、スープとサラダ持って行って~や。」

C子さん「うん。分かった。」

 

C子さんは

「お待たせしました。お先にスープとサラダになります。」

と言ってスープとサラダを持ってきてくれた。太字で書いてある「た。」のタイミングで私の事をチェックしたのである。(推測)

 

C子さん「ほんまや~。歳40超えてはるとは思うけど、結構イケメンやわ~。」

D子さん「え?何?何?」

C子さん「あのな、8番テーブルのお客さんやねんけど・・・」

D子さん「あ!ほんまやな~。奥さん綺麗やわ。でも旦那さん見えへんやん。」

C子さん「ほなD子ちゃん、料理出来たら持って行って~や。」

D子さん「うん。分かった。」

 

D子さんは

「おまたせしました。こちら牡蠣と水菜のオイルパスタでございます。」

と言って料理を持ってきてくれた。太字で書いてある「た。」のタイミングで私の事をチェックしたのである。(推測)

 

D子さん「ほんまや~。結構イケメンやわ~。優しそうやし~。」

シェフ 「え?何?何?」

D子さん「あ、シェフ。8番テーブルのお客さんなんですけど・・・」

シェフ 「あ!ほんまやな~。奥さん綺麗やわ。でも旦那さん見えへんやん。」

D子さん「ほなシェフ、バゲットのお代わり、持って行って貰えますか?」

シェフ 「うん。分かった。」

 

シェフらしきイケメン男性は

「おまたせしました。バゲットになります。」

と言ってバゲットのお代わりを持ってきてくれた。太字で書いてある「た。」のタイミングで私の事をチェックしたのである。(推測)

 

シェフ 「ほんまや~。結構イケメンやわ~。オレも結構自信あるのに負けたかも・・・」

E子さん「え?何?何?なんですか?」

シェフ 「あのな、8番テーブルのお客さんやねんけど・・・」

E子さん「あ!ほんまですね~。奥さん綺麗やわ。でも旦那さん見えないですね。」

シェフ 「ほなE子ちゃん、アフターの珈琲持って行って~や。」

E子さん「はい。分かりました。」

 

一番美人のE子さんは

「おまたせしました。ホット珈琲になります。」

と言って珈琲を持ってきてくれた。太字で書いてある「た。」のタイミングで私の事をチェックしたのである。(確信)

 

E子さん「ほんまや~。イケメンやわ~。てゆーか目合ってしもた。奥さんに悪い事したな~」

 

A子さん

B子さん

C子さん

D子さん

「え~?E子ちゃんだけズルいわ~。」

E子さん「あんたら、一回顔見ただけやろ?私は二回見てん。旦那さん、奥さん居てるのに、私にまんざらでも無かったで。」

B子さん「またまた~。E子ちゃん得意やな~」

 

 

という一連の流れを、私は奥様に説明した。

 

奥様「そうですか。それは大変でしたね。おモテになり、本日もお疲れでしょう。」

私 「確かに疲れた。でも君程じゃないよ。」

奥様「私は大丈夫ですよ。」

私 「お店の若い娘達に妬いているんだろう。余計な心労を掛けてすまない。でも安心してくれ。僕は君だけのアイドルを選ぶよ。」

 

奥様「不良中年さん、アナタはきっと長生きします。おそらく150歳位迄。」

私 「老後2,000万円じゃ足りないね。」

奥様「そうですね。で、150歳迄生きるのと、150秒以内に私に息の根を止められるのと・・・どちらをお望みですか?」

私 「安楽死でお願いします。」

 

私はそれ以上喋らず、奥様お気に入りのパン屋さんへ車を走らせた。

全力で。

パン屋さんの支払いは勿論私。過去最高額であった¥5,000。およそパン屋さんで使う金額ではない。

 

冷蔵庫に鶏ムネ肉があったな。今晩は奥様の好きな鶏天丼に茄子の天婦羅も乗せるか。

 

秋ナスを揚げたての天婦羅で奥様に食べさせてあげる。

奥様を大切にする。

 

私はこうしてモテて来た。