◯多言語学習からの英語学習
私が自分の経験から得たところでは、難しい外国語、自分が慣れていない外国語について、ですが、その生活圏でコミュニケーションを取ろうと努力した後に、英語のように少しを親しんでいる外国語の使われる国に入ると、格段にその語学理解力が上がることでした。
簡単な例でいうと、フランスからユーロスターでイギリスに入ると、英語の看板の文字が全て目に入ってくるのです。これは、フランスでフランス語のなかに英語に似た単語を探そうと目を凝らしていた延長上に感覚があるからだと自分なりに納得しました。
それは、言語学習だけでなく、歌唱などについても使えると思いました。
<日本語が母語であり英語やスペイン語等の習得経験のある参加者に対し、新たにカザフ語を自然習得を模した形で習得させながら、文法的負荷の高い文法課題を解く際の脳内過程について、MRI装置を用いて調べました。その結果、左下前頭回の背側部の活動が高まるのは、「どのような参加者が(誰が)」、「試行のどの段階で(何時)」、「どの文型を(何を)」習得した時なのかを突き止めることに成功しました。
第1・第2言語においてこの脳領域が「文法中枢」として機能するが、同じ文法中枢が第3・第4言語の習得でも重要な役割を果たすことを示すという本成果は、多言語の習得効果が累積することで、より深い獲得を可能にするという仮説「言語獲得の累積増進モデル」と一貫しています。この仮説は、酒井邦嘉と共著者であるフリン教授が、言語習得の行動実験をもとに提唱しいてきたものです。
多言語の文章を自然な音声で繰り返し聞くというメソッドに基づいて、言語交流研究所・ヒッポファミリークラブは、長年の多言語活動を実践して来ました。その協力で行われました。
日本人の英語力は毎年、下降を続けています。この傾向は特に18~20歳の若年層で顕著であり、英語のスコアは、数年で「標準的 → 低い → 非常に低い」と顕著に低下しています。
(「EF EPI英語能力指数」イー・エフ・エデュケーション・ファースト・ジャパン株式会社https://www.efjapan.co.jp/epi/regions/asia/japan/)
多言語の音声に触れることで、日本人でも新たな言語を柔軟に習得できる、という本研究の成果は、多言語を同時に習得することの相乗効果を明確に示唆しています。
これは、言語の「自然習得」という考え方と合致しており、語学教育全般に一石を投じるものです。酒井著『勉強しないで身につく英語』(PHP研究所、2022年)を参照。
ヴィルヘルム・フォン・フンボルトは、「言語を本当の意味で教えるということは出来ないことであり、出来ることは、言語がそれ独自の方法で心の内で自発的に発展できるような条件を与えることだけである。(中略)各個人にとって学習とは大部分が再生・再創造の問題、つまり心の内にある生得的なものを引き出すという問題である」(Chomsky,1965;福井・辻子訳,2017)と1836年に結論づけています。
これはアメリカの言語学者ノーム・チョムスキーが提唱する「言語生得説」の基礎となる考え方であり、あらゆる自然言語の背後にある普遍性を裏付けるものです。この仮説の脳科学的な根拠については、酒井著『チョムスキーと言語脳科学』(インターナショナル新書、2019年)を参照。1/19>