ふきんとうだより

ふきのとう、フォーク、宮沢賢治、石川優子についてつらつら語ります

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石川優子 若い時のエッセイ「夢色気流」を読んでみた ④ 試行錯誤の価値

23歳のシンガーが紡いだ、人生のコンパス

80年代の音楽シーンを爽やかに駆け抜けたシンガーソングライター、石川優子さん。

彼女がまだ23歳という若さで書き上げたエッセイが『夢色気流』です。

この連載では、その一冊をひも解いています。

第一回は「幼い日々」、第二回は「音楽や人との出会い」、第三回は「ラジオのパーソナリティ」と、彼女の歩みを追ってきました。

そして第四回となる今回のテーマは、「試行錯誤」

若さのまっただ中で、彼女はすでに人生におけるこの重要なプロセスの必要性を感じ取っていました。

その早熟な感性に、今改めて触れてみたいと思います。

23歳で見抜いた「試行錯誤」という人生の真実

「試行錯誤」とは、ご存知の通り、
いろいろな方法を試し、失敗や成功から学び、改善を重ねていくプロセスのことです。

多くの人が人生の後半に差し掛かってその大切さを実感するこの言葉を、
優子さんは23歳の時点で、エッセイのテーマとして掲げています。

ヒットチャートを賑わせていた華やかなアイドルのイメージとは少し違う、思慮深い一面に驚かされます。

「若者が人生を語るな」という声に、彼女はどう応えたか

優子さんは、当時のある出来事をきっかけに、この「試行錯誤」と「若さ」について深く考えることになります。

ある音楽雑誌で起きた「公開添削」事件

彼女はエッセイの中で、こんなエピソードを紹介しています。

何という本だったかは忘れましたが、ある音楽雑誌に、これまたある女性作詞家の方が、人の作った曲を例にあげて、いろいろと作詞指導をするという、『作曲コーナー』と言われるようなコーナーがありました。
その号では、一人の男性シンガーソングライターが取り上げられておりまして、具体的な詩に対して、個々の部分はああだ、こうだと書いておられました。
その詩のひとつに、内容が人生論的なものがあり、それに対して、その女性作詞家の方は、「だいたい、二十数年しか生きたことのない若者が、人生をわかったような歌を歌うのは気に食わない」というようなことを書いていらっしゃいました。

優子さんは名前を伏せていますが、同じ業界の人間として、この光景は心に刺さるものがあったのでしょう。

確かに、経験豊富なベテランから見れば、若者の語る人生論は拙く、浅く見えるかもしれません。
しかし、公の場で他人の作品をこのように批評することは、今考えても少し乱暴な気もします。

若者だからこそ、人生を語る権利がある

この作詞家の意見に対し、優子さんはただ頷くだけではありませんでした。
彼女の中に芽生えたのは、強い共感と、そして静かな反論でした。

なるほど、それもそうだと思いながら、でももう一方では、若者誰でも人生論のひとつやふたつ、大声で張りあげたっていいんじゃないかしらと思ったのです。・・・人はそれぞれ人生というものを考え始めた時から、経験を土台にして、十五歳なら十五歳なりの、二十歳なら二十歳なりの人生観なり、教訓を持つものではないかしら。

これこそが、彼女の洞察の核心です。

人生を語るのに、年齢は関係ない。

15歳には15年分の、20歳には20年分の経験と葛藤があり、そこから生まれる哲学は、誰にも否定されるべきではない、と。

未熟かもしれないけれど、その時その瞬間にしか感じられない切実な思いを、歌にして何が悪いのか。優子さんは、そう問いかけているのです。

試行錯誤の道のりこそが、人生のかけがえのない財産

彼女の考えはさらに深まります。
若者が背伸びをして人生を語り、時に失敗し、壁にぶつかる。
その浮き沈みや悪戦苦闘のプロセス、つまり「試行錯誤」そのものが、人生にとってかけがえのない経験になるのだと続けています。

完成された言葉でなくてもいい。
むしろ、不完全で、発展途上だからこそ生まれる輝きがある。

23歳でこの境地に至っていたとは、本当に驚くばかりです。

年を重ねると語れなくなる? 若さの輝きを形に残すこと

ここからは、この記事を書いている僕自身の話になります。

優子さんのこの言葉を読んで、僕は若い頃の自分を振り返り、少し後悔の念に駆られました。
若い頃は、たくさんの本を読み、夢中で音楽を聴き、世界が無限に広がっているように感じていました。

でも、その時感じた熱量や、拙くても確かにあったはずの自分なりの哲学を、何かの形で残しておくことを怠ってしまったのです。

不思議なもので、人生経験を重ねた今の方が、かえって「人生とは何か」なんて大それたことは語れなくなっています。
知れば知るほど、物事の複雑さや多面性が見えてきて、簡単に言葉にできなくなってしまうのかもしれません。

その点、石川優子さんは、あのキラキラとした、そして少し切ない若き日の感性を、「シンデレラ サマー」「ふたりの愛ランド」といった音楽として、永遠に記録しました。
これは、表現者として、本当にうらやましく、尊いことだと感じます。

 

まとめ:あなたの「今」を、言葉にしてみませんか?

今回は、石川優子さんのエッセイ『夢色気流』から「試行錯誤」というテーマを掘り下げてみました。

若さゆえの青さや未熟さを恐れる必要はない。
むしろ、その時々の全力の「試行錯誤」こそが、その人だけの人生を形作っていくのだと、彼女は教えてくれます。

この記事を読んでくださったあなたがもし、何かを表現したいけれど自信が持てずにいるのなら、ぜひ石川優子さんの言葉を思い出してください。

15歳には15歳の、20歳には20歳の、そして50歳には50歳の「人生論」があります。

あなたの「今」感じていることを、不格好でもいいから言葉にしてみる。
それこそが、未来のあなたにとって、かけがえのない宝物になるはずです。