明治・大正期の文学
島崎藤村『夜明け前』読了。 マラソンの沿道で見るようなものだろうか。宿場町の駅長として出迎え見送る人々は一瞬で通り過ぎ、目撃するのは時代の断片でしかないが、そこには自ずから時代の推移、のんびりゆっくりしていたのが次第に露骨に殺伐となってゆく…
木下尚江の小説『良人の自白』読了。 二人の対照的な人物、俊三と與三郎。幼馴染でありながら、前者はエリートのインテリで地主の跡継ぎ、後者はその地主の苛斂誅求に苦しむ小作人であり、地主とその後継者への敵意と復讐心を隠そうともしない。俊三自身が幼…
姦通の女に石を投げるよりも難しいのは、そういう自分は無罪なのかと胸に手を当てて自省することであり、社会の不正や不平等を糾弾するよりも難しいのは、そのように批判する自分自身こそ驕り高ぶっていると自覚して、自己批判をすることではないだろうか。 …
徳富蘆花『不如帰』読了。同じ時期に喀血した正岡子規が、血を吐いて啼くと言われるホトトギスにちなんで俳号をつけたように、本書のヒロインもまた肺結核によって苦しむ。「帰るに如かず」の当て字からは、不幸ばかりに見舞われたこの世を離れて、早く森に…