2025-03-01から1ヶ月間の記事一覧
開戦から二十ヶ月で、二万九千八百人の教員が諸学校から姿を消した。 召集され、教壇から引っぺがされて、戎衣を着せられ兵隊として戦地に送り込まれたのである。 むろんこの、二万九千八百人の先生は、例外なく男子であった。 彼らは長らく親しんだ白墨(チ…
ブツがあってもそいつを運ぶアシがない。 伝家の宝刀、親方日の丸「政府御用」の大旆をこれみよがしに振るってみても、今度ばかりは効果が薄い。それほどまでに国内の海上輸送能力は全力稼働しきっていたようである。 事は大正五年の話、大戦景気に湧く日本…
絢子が棚橋の家に嫁したは齢十九の折である。 夫である大作は、もう五、六年も以前から眼病に患わされており、既にほとんど全盲に近い有り様で婚儀の席に臨んだという。 第二の人生、景気が良いとは世辞にもちょっと言い難いようなスタートだ。 しかし絢子に…
ジェームズ・フレイザーの調査によると、北ローデシアの原住民族・アエンバ人の間では、もしその亭主が不義密通の現場に踏み込み得た場合、彼はそのまま姦婦・間男両名を怒りに任せてぶち殺しても、何ら罪には問われぬことになっていた。 「重ねて四つ」──江…
二十世紀前半期、インドが未だ英国の薬籠中であった頃。 当然そこには志士が居た。現状に大なる不満を抱き、変革のため手段を選ばず努力する、極めて過激な政治分子の集団が。 彼らの言辞に目をやると、実に激しい。 野獅子の血に猛ると言うか、舌鋒雷火を散…
第一次世界大戦の勃発と、それに伴う輸入の遮断、俗に所謂「舶来品」の欠乏は、日本社会のあらゆる面に深甚なる波紋を描いた。 薬価全般の高騰により、生薬の価値が見直され、代用品たるべしと持て囃され出したのも、一つの顕著な例だろう。 京都・大阪──上…
税関に勤務しているとちょくちょく妙なモノを見る。 神戸のとある貿易商から使い物にならない茶葉を、そのくせかなりの頻度で以って輸出している不思議さが、片山兵次郎の興味を惹いた。この興味こそ、一介の税関職員だった彼をして、国産カフェイン製造業者…
選挙のたびに政治家は自分が当選したならば──ひいては自党が政権を一度(ひとたび)掌握さえすれば──、もうたちどころに未来はバラ色、天使がラッパを吹き鳴らしつつ降臨(おり)て来て、「地上の楽園」創始相成る如き言辞を弄ぶ。 有権者を眩惑(くら)まし…
「こんな老人が出る幕ぢゃないといふ人もあるかも知れませんが、私は大いに異論がある、例へば料理にも甘味と辛味を旨く調和せぬといゝ料理が出来ぬやうに丁度政治もそれと同じで、老人の辛味と、若い人の甘味とを旨く調和して行くところに本当の政治が成立…
論外。 無理だ。 支払えぬ。 正気の沙汰とは思えない、冗談も休み休み言え──。 天文学的賠償金の請求を連合国から突き付けられた当時のドイツ国民は、ほとんど悩乱の態でわめいた。 孫子の代まで借金漬けにする気かと。 人の心はないのかと。 こんなことなら…
言葉の誤用に異様に厳しい人がいる。 「役不足」と「役者不足」を混用したり、「すべからく」を「ことごとく」的なニュアンスで使ったりなどした場合、何処からともなく湧いて来て、誤用者の無智を嘲り、罵り。過酷なること秋霜烈日の指弾を辞さない、厄介至…
大豆は、大豆が、大豆こそ。 満蒙富源の筆頭として、世界に鳴らした作物だ。事と次第によりけりで、「象徴」の威厳さえ有す。鮎川義介とヒトラーが顔を合わせた瞬間を、1940年3月5日、猛吹雪の日のベルリンを思い返してみるがいい。総統閣下の腹を探る意図も…
「名付け」は願いと共にある。 「斯く在るべし」との祈りを籠めて、親が子供に贈るモノ。──「こんな大人になって欲しい」という希望、絢爛たる未来を望む真情を、集めて煮詰めて純化して、結晶化した成果こそ、即ち名前に相違ない。 ただ、しかし。自分で自…
印象操作と世論誘導、これこそ朝日新聞の真骨頂といっていい。 百十年も以前から、あるいはいっそ旗揚げ当初の時点から、彼らはずっとそう(・・)だった。明治・大正の昔時から、大衆を瞞着することに全知全能を傾け続けた集団である。 以下に証拠の一つを…