「愛とは何だろう?」
この問いは、シンプルなようでいて、誰にとっても深く、難しいものです。
特に、「自分を愛せない」と感じているとき、その答えはさらに見えづらくなるかもしれません。
でも、そんなときこそ、立ち止まって考えてみてほしいのです。
“愛する”という行為は、与えられるものではなく、「学ぶもの」だということを。
これは、ドイツの社会心理学者であり哲学者でもあるエーリヒ・フロムが、名著『愛するということ』の中で繰り返し語った考え方です。
■ 愛は「感情」ではなく「技術」――だから、学ぶことができる
私たちは、愛を「感情」や「運命」のようにとらえがちです。
ある日、突然芽生えたり、誰かが与えてくれたりするもの――
そんなふうに思い込んでしまうのです。
でも、フロムはこう言います。
「愛とは、技術である。そして、どんな技術も学ぶことができる。」
つまり、愛は“スキル”であり、
時間をかけて身につけていくものだというのです。
これを聞いたとき、私はとてもホッとしました。
なぜなら、「自分を愛せない」という状態もまた、“愛の技術”をこれから学んでいける途中なのだと気づけたからです。
■ 自分を愛するって、どういうこと?
では、自分を愛するとは、いったいどういうことでしょうか。
それは、自分を甘やかすことでも、すべてを肯定することでもありません。
むしろ、自分自身と“きちんと向き合う”ことに近い感覚です。
失敗したときに、責めるのではなく、
「どうしてつらかったのか?」と自分に問いかけてみる。
何もできなかった日があっても、
「そんな日もあるよ」とそっと肩を抱いてあげるような、やわらかいまなざしを向けてみる。
愛とは、相手の存在をそのまま受け入れ、育もうとする姿勢。
それは、自分に対しても同じです。
自分の中にいる弱い部分、過去に傷ついた記憶、変わりたいと思う気持ち――
それらすべてを理解しようとすること。
そこに、真の“自己愛”が宿ります。
■ 他人を愛するためには、自分を愛せなければならない?
フロムの言葉で、もうひとつ印象的なものがあります。
「自己を本当に愛することができない者は、他人をも本当に愛することはできない。」
これは、自分を大切にしなければ、
他人を思いやる余裕も生まれないということ。
でも裏を返せば、「自分を大切にすること」は、他人との関係を育てる土台でもあるということです。
あなたがいま、「自分を愛せない」と思っているのなら、
それは他人のためにも、人生のためにも、必要な“学びの始まり”かもしれません。
■ 小さな実践から、“愛する”ことを学んでみよう
愛は、読んで理解しただけで身につくものではありません。
フロムも、「愛は実践を必要とする」と語っています。
だから、今日からほんの少しでいい。
自分に小さなやさしさを向けてみてください。
・眠れなかった自分に、あたたかいお茶をいれてあげる
・失敗した自分に、「がんばったよね」と声をかけてあげる
・誰かの言葉に傷ついたとき、自分の気持ちに「よく気づいたね」と言ってあげる
それは、小さな“愛の訓練”です。
繰り返すことで、少しずつ“自分とともに生きる力”が育っていきます。
■ おわりに:愛することは、人生を豊かにする力
「愛とはなにか?」
この問いに、正解はありません。
でも、自分自身と向き合い、理解し、育てようとするその姿勢は、
まぎれもなく“愛”の本質に近づく道です。
あなたは、まだ自分を愛せないかもしれません。
それでも大丈夫。
愛は、これから学んでいけるものだから。
ほんの少しずつ、焦らずに。
自分の内側に、小さな光を灯していくように。
あなたの人生に、やさしい愛が育ちますように。