この記事は NTT docomo Business Advent Calendar 2025 3 日目の記事です。
みなさんこんにちは、イノベーションセンターの @Mahito です。 普段は社内のエンジニアが働きやすくなることを目標に、コーポレートエンジニアのような活動やエンジニア向けイベントの企画・運営をしています。
今回は、上でも述べているように、 社内のエンジニアが働きやすくすることを目標に活動をしているイノベーションセンターの取り組み Engineer Empowerment プロジェクトについて紹介します。
NTTドコモビジネスの中で、エンジニアが働きやすくなるためにどのような活動をしているのか、興味がある方に読んでいただければと思います。
- Engineer Empowerment プロジェクトとは
- Engineer Empowerment プロジェクト設立の背景
- これまでの活動内容
- これまでの活動からの学びと伝えたいこと
- 現在・今後の活動
- まとめ
Engineer Empowerment プロジェクトとは
Engineer Empowerment プロジェクトのミッションは、 NTTドコモビジネスや NTT グループのエンジニアが働きやすい環境・成長できる場を構築することです。
これらを実現するために、以下の 3 つの取り組みを行っています。
- エンジニアからの課題を収集・集約したうえで、エンジニア有志と協働した解決策の検討・実施
- 働きやすい環境やルールの整備・見直しに関する関連部署との調整
- エンジニアの成長やプレゼンス向上実現の場の用意やそうした企業文化の醸成
1 つめに「エンジニア有志と協働」と書いてありますが、じつはこのプロジェクトは私の 1 人プロジェクトです。 しかしながら、上記の取り組みをする際には、社内や NTT グループのエンジニア有志が協力してくれています。 そのおかげで、2021 年の 12 月から活動をしていますが、この 4 年の間にいくつかの成果を出すことができています。
Engineer Empowerment プロジェクト設立の背景
私はこのプロジェクトを立ち上げる前は、R&D のエンジニアとして、OpenStack のコミュニティ対応や、 Docker、Kubernetes、Spinnaker などの OSS の調査や社内導入のための検証などをしていました。
その傍ら、NTT Tech Conference という NTT グループのエンジニアが発表をするイベントや、NTT グループ内限定のイベントの企画・運営もしていました。
こうしたイベントの中で、社内やグループのエンジニアの働く環境への課題を感じそれをなんとかしたいという思いがあり、 その一環として、以前記事にもした エンジニアがエンジニアのために開発・検証用 PC を整備した話 に取り組みました。
この取り組みを通じて、情報システム部や情報セキュリティ部では手が回らない エンジニアの働く課題をエンジニアが解決できるということを感じ、これ以外の問題にも取り組むようになりました。
こうした自分の本来業務のミッションとは違った活動を当時の上司からは理解してもらったうえで実施していました。 ただ、価値のある活動だと認められている一方、チームのミッションとは違う活動を続けることに対して、自分の中で葛藤がありました。
その折、NTTドコモビジネスで技術顧問をしている吉羽(@ryuzee)さんと 1on1 をした際、 上記の悩みを相談したところ、それなら自分でプロジェクトを立ち上げてみたらという話をされました。
自分自身でもそれは頭の片隅にあったのですが、吉羽さんと話をする中でそういうプロジェクトがあってもいいかという納得が生まれ、 Engineer Empowerment プロジェクトを立ち上げました。
ちなみに、Engineer Empowerment (エンジニアに力を与える)は当時の上司から名付けてもらいました。
これまでの活動内容
Engineer Empowerment プロジェクト立ち上げ当時は上記の開発・検証用 PC の整備を半年で決着をつけてプロジェクトを畳む予定でした。 しかし、その計画が社内の調整などで遅延する中でそれ以外のエンジニアの働く課題も見つかり、 開発・検証用 PC の整備が完了した後も、それらの課題に 1 つずつ取り組んでいるうちに現在 5 年目を迎えています。
これまでに取り組んだ課題の例としては、以下のようなものがあります。
- パスワードマネージャーの全社導入(トライアル中)
- 開発・検証用 PC から社内システムに接続するための VDI(Virtual Desktop Infrastructure) の提供(情シスへノウハウを引き継ぎ終了)
- GitHub Enterprise の全社化とその運用
- Miro の全社化とその運用
- 各種 NTT グループ内部向けイベントの開催
- NTT Tech Conference の企画・運営
- 当エンジニアブログのリニューアルとその運用
- 技術系 SNS 運用に関する取りまとめ
- etc
これらの活動の多くは、エンジニアからの「こういうことに困っている」や「こういうことがしたい」という話から始まっています。
ここでは一例として、パスワードマネージャーの全社導入と、NTTグループ向けイベントの開催について紹介します。
パスワードマネージャーの全社導入
パスワードマネージャーはとあるエンジニアの「管理する機器やサービスが多すぎてパスワード管理が辛い」という話から始まっています。
一般的に、ID/Pass はそのログイン先ごとに異なるものを利用することが推奨されています。
しかしながら、人間の記憶には限界があるため、結果的に覚えやすいパスワードを使いまわしたり、 あるいは規則性のあるパスワードを利用するなど、どこかのサービスで ID/Pass が漏洩した際にリスクが高まります。
こうした問題を解決するために、パスワードマネージャーを使うことで、 機器やサービスごとの異なる ID/Pass を人間が覚えずとも安全に使えるようにしたいという話がありました。 そこで、Engineer Empowerment プロジェクトでは、部内で利用したい人向けにパスワードマネージャーの提供を始めました。
1 年ほど使ったところで、パスワードマネージャーの利用を継続するか判断するために利用者アンケートをとったところ、 想定通り便利になったという声が多い中に「グループで安心して ID/Pass を共有できるようになった」という声がありました。
会社のセキュリティルールとして、原則共有 ID は禁止されているのですが、 現実問題として機器やサービスの仕様(管理者権限アカウントが 1 つしか作れないなど)で共有 ID を使わざるを得ないケースがあります。
そうした場合に従来は口伝や鍵付きの Excel で管理していたそうですが、 それをパスワードマネージャーで安全に共有できるようになり、利便性や安全性が上がったとのことでした。
私は全社でも同じような話やニーズがあるのではないかと思い、 情報セキュリティ部にこの内容を共有したうえで全社アンケートを実施したところ、 同様にパスワード管理や共有の課題を感じている人が多いとわかりました。
そこで、情報セキュリティ部と話し合ったうえで現在は情報セキュリティ部主導で全社トライアルという形で、 パスワードマネージャーの導入が進められています。
NTT グループ向けイベントの開催
2022 年の年末ぐらいに「OpenAI を使ったハッカソンがしたい」という話を社内のエンジニアからされたことをきっかけに、2023 年の夏に NTT グループ内のイベントとして NTT Group Azure OpenAI Day と NTT Generative AI Hack Day というイベントを開催しました。
当時、Azure OpenAI Service はリクエストを出して Waiting List に登録されてから利用できるまでに数週間かかっており、すぐには利用できない状態でした。 そこで、NTT Com (現在:NTTドコモビジネス)を退職してマイクロソフトで働いていた友人に相談したところ、営業を含めた打ち合わせが設けられ、気がつくと NTT を巻き込んだ一大イベントになっていました。
イベントスタッフは NTT グループのエンジニア有志で構成され、 1日目の NTT Group Azure OpenAI Day にはグループから 1,000 人を超える参加者が集まり、 2~3 日目の NTT Generative AI Hack Day には 100 人程度集まりました。
イベントについては エヌ・エフ・ラボラトリーズの方が少し書いてくれていたりします。
Azure OpenAI Serviceでマッチングアプリの返信を自動生成してみた - NFLabs. エンジニアブログ
当初は自社に閉じた小さいイベントの予定でしたが、 気がつくとグループを巻き込む大規模イベントになってしまいました。
しかし、こうしたイベントを通じて、NTT グループのエンジニア同士の交流や技術情報の共有が進んだのは良かったと思っています。
これまでの活動からの学びと伝えたいこと
これまでの活動を通じて、エンジニアの課題解決や、やりたいことを実現するために、以下のようなことの重要性を改めて感じています。
- 課題を共有する
- 実践する
- 評価・フィードバックする
課題を共有する
これはエンジニアが持つ働くうえでの課題(開発・検証端末や使えるツール、開発に関するルールなど)をまずはエンジニアの中で共有することです。 共有することで、その課題を多くの人が感じていたり、言われて初めて気づくことで、 その課題を解くことが自分たちの働きやすさにつながるとなったものについては解決に向けて働きかけることができます。
また、これはエンジニアの中だけでなく関係する部署(情報システム部、情報セキュリティ部、広報、人事など)とも共有することで、 相手が認識していない課題を認識してもらい、一緒に解決へ向けた取り組みを進めることにつながります。
今回挙げたパスワードマネージャーの話では、まさに情報セキュリティ部では見えていなかった現場の課題を共有することで、 パスワードマネージャーによる解決という話につなげることができました。
実践する
課題がわかったり、そもそもやりたいことがあった場合に、計画だけでなく失敗してもいいので実際に実施してみることが重要です。 実際にやってみることで、計画段階では見えなかった問題点が見えてきたり、 自分たちでは解決できなかった問題を他のエンジニアが協力してくれることで、解決できることがあります。
また、Azure OpenAI Service を使ったハッカソンイベントのような、 思ったより大事になることもありますが、そういったものも含めて楽しめる事が多いと思います。
そして、実践するのは「やりたいこと」にするのをお勧めします。
私はとある SaaS の管理でやりたいわけではないが会社の事情を鑑みて「やったほうがいいこと」に手を出した際に、 興味があって手伝ってくれる人がいるだろうと気軽に始めました。 しかし、実際には社内でほとんど協力が得られず、 1 人でしんどい思いをする羽目になった経験があります。(今はなんとかして解決しております)
もし、あなたが会社の中で有志たちとエンジニアの課題を解決するのであれば「やったほうがいい」や「やるべき」に惑わされず、 自分がやりたいこと、そしてまわりもやりたいこと にすることをお勧めします。
本当に、やったほうがいいことややるべきことには会社が人をつけるはずです。
評価・フィードバックする
4 年間の活動の反省でもあるのですが、自分たちのやってきた活動がどんな効果を上げたのか、 社内のエンジニアが上げてくれたリクエストがどうなったのかを定期的に評価・フィードバックすることが重要です。
私は昨年までは、Engineer Empowerment プロジェクトでの活動を大々的にアピールすることはせず、 知ってる人が知ってくれればいいかなという風に思っていました。
しかし、エンジニアが抱えている課題を自分たちで解決できることをもっと多くのエンジニアに知ってもらうことで、 今までよりも多くのエンジニアの活動に良い効果を与えていけると考えを改め、今年から積極的に情報発信をしています。 そのため、社内のエンジニアがくれたリクエストに対して、 活動内容やその結果を共有することで、より多くのエンジニアにこの取り組みを知ってもらい、 エンジニアが働きやすくなるための活動に参加してもらえるようにしていきたいと考えています。
今回の記事は、こうした取り組みを社内だけに閉じず、社外にも共有したいと思いブログという形で発信させてもらっています。
現在・今後の活動
現在は主に、コーディングエージェントを利用できるようにする取り組みを進めています。
NTT グループでは AI 利用に関してガバナンス規定類が定められており、 AI を使う上で、その利用リスクを評価した上での利用が求められます。
コーディングエージェントは利用するモデルが学習した内容やプロンプトで指示した内容次第では、 OSS のライセンスに違反するなど、第三者の知的財産を侵害する可能性があります。
こうした点に対して、エンジニアが安心してコーディングエージェントを利用するために、 コーディングエージェントの入出力に対してガードレールが設けられないかを調査・検証したり、 法務や知的財産を担当する方々とサービス規約面からの補償なども含めて安全に使えるコーディングエージェントの調査・検証を進めています。
また、それらの内容をコーディングエージェントを利用するためのガイドラインとして作成を進めており、 近い内に社内でコーディングエージェントが正式に使えるようになる予定です。
さらに、NTT グループのエンジニアにもコーディングエージェントの効果を実感してもらうために、 NTT グループのエンジニア有志と一緒に、コーディングエージェントを実際に触るワークショップを開催する準備を進めています。
今後の活動
私個人の思いとしては、この Engineer Empowerment プロジェクトは近いうちに終わらせたいと思っています。
これはネガティブな理由ではなく、このプロジェクトがなくても社内や NTT グループのエンジニアが、 自分たちでエンジニアが働くうえでの問題を解決し、自分たちで働きやすい環境を作っていけるようになるのが理想だと考えているからです。
そのためにも、今後も Engineer Empowerment プロジェクトでは、一緒に問題解決してくれる社内や NTT グループのエンジニア有志とともに、 エンジニアが働くうえでの問題を解決しながら仲間を増やしていきます。 そして、そのノウハウを共有することで、誰もがよりエンジニアとして働きやすい環境を作っていけるようになることで、このプロジェクトを終えられればと思っています。
まとめ
本記事では、社内のエンジニアの課題ややりたいことをエンジニアの立場から解決や実現に向けて働きかけるプロジェクトについて紹介させていただきました。
エンジニアの課題はエンジニアの中で共有し、実践し、評価・フィードバックすることで、改善できます。 また、関係部署ともその取組を共有することで、より良い解決策を見つけたり、会社全体にいい影響を及ぼすことができます。
この記事が、あなたの会社や組織でもエンジニアが働きやすくなるための取り組みのきっかけになれば幸いです。
明日もお楽しみに。