「猫」の「雪」
雪の季節に思い出すのは、フォークグループ「猫」(当時は動物や虫の名前のグループサウンズが多かった)の、1972年リリースの「雪」という歌ですね。
この曲は「猫」のオリジナル曲だとばかり思っていたのですが、何と、作詞・作曲ともに「よしだたくろう」だったと知った時はびっくりでした。
最初の歌い出し「ゆ・き・でした」という跳躍音程は、今聞いても斬新だと思います。
メインボーカルは「ザ・リガニーズ」にいた常富 喜雄(つねとみ のぶお)、ジャケット写真では左端。
オルガンはスタジオミュージシャンとしての松任谷正隆。
猫「雪」
「雪」歌詞
1)
雪でした
あなたの後を
なんとなく
ついて行きたかった
ふり向いた
あなたの瞳は
「早くおかえり ぼうや」
って言ってた
あー あの女(ひと)は
見知らぬ街の
見知らぬ人
雪国の
小さな街に
そんな私の
思い出がある
2)
夢でしょか
あの日のことは
雪を見るたびに
思い出す
雪国を
訪ねてみたい
そこは私の
小さな憧れ
あー今日もまた
窓にもたれ思う
冬の旅を
雪でした
あなたの後を
何となくついて
行きたかった
作詞・作曲:よしだたくろう
私は、よしだたくろうは大好きでしたが、どちらかと言うと「がなり系」の曲が多かったので、こんな「洗練系」の曲が作れるとは思っていませんでした。
元は「たくろう」版
「猫」は、「よしだたくろう」のバックバンドもやっていたので、その関係で曲をもらったのかな、井上陽水と、そのバックバンドをやっていた「安全地帯」みたいな関係なのかな、と思っていたのですが、今回調べてみたところ、何とこの曲を「よしだたくろう」は、1970年11月リリースの「青春の詩」というアルバムの中で、自分の曲としてすでに歌っているのでした。
よしだたくろう「雪」
このオリジナル「よしだたくろう」バージョンは今回、初めて聞きましたが、聞いてみると、たくろうさん、のっけからの「ゆ・き・でした」という難しい跳躍音程が取れていないし、声質と歌い方がこの歌には全く向いていないですね。
この曲が、このアルバムの発表時点では、全然話題にもならなかった理由が分かるような気がします。
「良いソングライター=良いシンガー」とは限らない、というのは、クラシック界でも、「良い作曲家=良い演奏家」とは限らない、のと同じですね。
「雪」制作秘話
「雪」という曲が出来た経緯について、ラジオの深夜放送で、たくろうさんが話しています。
よしだたくろう「雪」制作秘話 / オールナイトニッポン
「よしだたくろう」が「エレックレコード」にいた頃に、岩手放送から呼ばれて公開番組などをやっていた。
その番組の、年上の女性ディレクターに、収録が終わった後、雪の降る岩手の街で飲みながら、将来の夢をなど語るのを聞いてもらった。
その時の思い出を歌にしたんですね。
そして、「よしだたくろう」がエレックレコードからCBSソニーに移籍して、「オデッセイ」というレーベルのプロデューサーになった。
そこで、同じ事務所にいた「猫」を売り出す際に、自身も歌っていた「雪」のアレンジを変えて提供、彼らのレコードをプロデュースしたのでした。
小田和正とコラボして再レコーディング
後年、2022年になって、「よしだたくろう」が歌詞を追加して、「小田和正」がハモリを付けて、再レコーディングしています。
吉田拓郎・小田和正「雪さよなら」
追加した歌詞
さよならを
言い忘れてた
そんな心揺れる
夜だった
いつかまた
あなたの街へ
僕の旅が続く
夢を見る
作詞・作曲:よしだたくろう
「地下鉄にのって」にも「跳躍音程」が
こちらも「猫」の1972年12月のヒット曲で、やはり「よしだたくろう」作曲ですが、作詞は岡本おさみ。
こちらも「泥臭い系」が多かったフォークソングの中では「洗練系」のメロディーだと思います。
そして、やはり「跳躍音程」が出てきます。
猫「地下鉄にのって」
「地下鉄にのって」歌詞
1)
ねえ君
何を話してるの
だからさ
聞き取れないよ
もっと(地下鉄にのって)
大きな声で
もっと(地下鉄にのって)
大きな声で
でなけりゃ
次の駅にとまったら
走り出すまでの
あのわずかな静けさに
話そうか
今 赤坂見附を(赤坂見附を)
すぎたばかり(丸の内線で)
新宿までは
まだまだだね
2)
そう君
とってもよかったの
今日の
映画はとても
もっと(地下鉄にのって)
そばにおいで
もっと(地下鉄にのって)
そばにおいで
車輪の
悲鳴が何もかも
こなごなに
断ち切ってしまう
もうおだやかな静けさに
戻れない
今 四谷を通り(四谷の駅です)
すぎたばかり(丸の内線の)
もううんざりするほど
いやだよ
3)
ねえ君
もう降りてしまおう
だからさ
次の駅でさ
ここは(地下鉄にのって)
どこの駅かな
ここは(地下鉄にのって)
どこの駅かな
いいさ
次の駅にとまったら
何かを始めるように
そこから歩いてみよう
次でおりるよ
君も
もちろん(おりるんだろうね)
おりるんだろうね(丸の内線を)
でも君はそのまま
行ってもいいよ
作詞:岡本おさみ
作曲:吉田拓郎
左から聞こえるアコースティックギターは「よしだたくろう」の演奏です。
もしかして、この「よしだたくろう」らしからぬ「跳躍音程」のある作曲法は、1969年に公開の、ポールニューマンとロバートレッドフォード主演のアメリカ西部劇映画、「明日に向かって撃て」の主題歌、バートバカラック作曲の「雨に濡れても」の「跳躍音程」に影響されて出来た可能性も、同時代なので、ありそう?
今回のお話
今回は、「洗練感」のある「猫」のヒット曲「雪」が、よしだたくろう作詞作曲であることに今さらながら驚いて、よくよく聞いてみると、その「洗練感」は、どうやら「跳躍音程」から来ているらしいことが分かった、というお話でした。