Der Lezte Tanz

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大河ドラマ「べらぼう」:書を以て世を耕した男

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江戸時代の出版業界を盛り上げた蔦屋重三郎を描いた大河ドラマ「べらぼう」。初回から最終回まで、1年間しっかりと見届けました!

 

私自身が、出版業界にほんのつま先ほどかかわっていることもあって、今回の大河ドラマに興味を持ったんですが、お恥ずかしながら視聴前は正直「蔦屋重三郎って誰?」状態。このドラマを通して『蔦重』こと蔦屋重三郎の人生を追い、江戸の文化や出版業界、そして数多くの戯作者や絵師たちを知ることができました。今の時代にさまざまな小説やエンターテイメントがあふれているのも、その土台には蔦重が築いたものがあるのかもしれないと思うと、「書を以て世を耕した」彼の偉業を、現代に生きる今も感じることができた気がします。

 

今のエンタメの礎はこの時代からあったのだと実感するエピソードも多く、江戸時代と令和の今が地続きになっていることを強く感じる1年でした。お茶屋さんの看板娘の淹れたお茶が高く売れたり、歌舞伎役者の絵が現代のブロマイドのような存在だったことなど、江戸時代にもすでに「推し活」があったんだろうなと思うと、人間って変わらないんだなぁ…とも思ったり。笑

 

終盤にかけて、物語が急に謎解きミステリードラマのような様相になって驚きました。が、その仕掛けも「もし蔦重が現代にいたら考えつきそうだな」と思える内容で、妙に説得力を感じました。

 

登場人物が非常に多く、かなり昔の出来事を後半に伏線として回収していく構成は、記憶力に自信のない視聴者(=私)としては「?」となる場面もありましたが、1話ごとの完成度の高さと、最終的にきれいに収束していく脚本は「さすが森下先生!」でした。最終回の、思わずくすっと笑ってしまう蔦重の最期も印象的で、物語が終わってしまう寂しさに泣き、でも蔦重らしいコミカルな終わり方に笑いながら見届けました。

 

蔦屋重三郎を演じた横浜流星さん。

2023年に舞台「巌流島」で拝見した際、その素晴らしい身体能力の高さから「大河に出るなら戦国時代が似合いそう!かっこいい侍を演じてほしい!」と思っていたため、今回のような文化系大河ドラマ主演として発表されたときは少し意外でしたし、正直「もったいないなぁ」とも感じていました。

 

でも蔦重を演じる横浜さんを見ていると、彼の魅力は身体能力だけではないことを感じました。陽気で溌剌として見える蔦重を演じながら、どこか一歩引いた芝居をされていて、主演でありながら「自分が自分が」と前に出過ぎない。その佇まいが、共演者の魅力を自然と引き出していたように思います。ベテランから若手まで、舞台を中心に活躍する役者さんからお笑い芸人さんまで、どんな役者さんも生き生きとして見えたのは、横浜さんの存在も大きかったのではと思います。今年は映画「国宝」でも素晴らしい力を発揮していて、本当に飛躍の年だったのでは…。これからの活躍もとっても楽しみな役者さんです。

 

1番意外な役どころだったのは、瀬川役の小芝風花さん。バラエティ番組やCMで見せる底抜けに明るいチャーミングな笑顔が印象的な役者さんで、実はドラマや映画ではあまり拝見したことがありませんでした。かっこよくて色っぽくて、時には等身大の女の子のような顔を覗かせる花魁・瀬川が本当にハマっていて、「こんなに素晴らしい役者さんだったのか」と嬉しい驚きがありました。小芝さんも今後のご活躍が非常に楽しみです…!

 

そして北尾政演/山東京伝を演じた、我が推しの古川雄大さん。

実は……NHKドラマ「大奥」の脚本家とスタッフ陣が「べらぼう」を手掛ける、と聞き「それなら古川さんも出演するのでは!?」という不純な予想をしておりました。笑

 

私の予想は見事的中し、初回放送から間もなく古川さんの出演が発表されました。が、山東京伝役として出演が発表されても山東京伝を全く知らなかった私は「まぁ出ても2、3回くらいだろうな…」と勝手に思っていたため、あれよあれよという間に最終回まで登場されていたことにびっくりしました。笑

 

正直ここまで長く登場するとは思っていませんでしたが、3月末の13話から最終回まで、蔦重に育てられた戯作者の一人として活躍する姿を毎週楽しみにしていました。ご本人が持つイメージとは真逆とも言える、太陽のように明るい役柄でしたが、最後まで底抜けに明るくて愛らしく、また一人、古川さんが演じた中でも大好きなキャラクターが増えました!

 

さらにミュージカル好きとしては、なぜか「エリザベート関係者が多数キャスティングされていたことも含め、そういう意味でもとても楽しい1年でした。古川さんと井上芳雄さんの共演を大河ドラマで見るなんて、誰が予想できただろうか…。

 

蔦屋重三郎という“日の本一のべらぼう男”の物語。いつかまた最初から見返したいと思える、忘れがたい大河ドラマになりました。来年の「豊臣兄弟」も、久々のがっつり戦国時代なので楽しみです!