唐揚げ1個の給食、SNSで「寂しい」相次ぐ 市「2個分あるので」(朝日新聞) - Yahoo!ニュース
福岡市内の小学校で提供された「唐揚げ一個の給食」がネットで話題になった。この福岡市学校給食の件は民間委託やコストダウンが原因ではない。なぜなら、福岡市学校給食において民間委託業者が請け負っている業務は調理業務であり、騒動の発端となった給食内容に直結する献立作成、食材発注納品は公益財団法人福岡市学校給食公社の業務だからだ。公益財団法人 福岡市学校給食公社
今回の事態は、給食の予算(食材予算)に原因がある。学校給食に係る食材費では一食当たりの単価が決められ、予想年間総食数を乗じた額が年間予算になる。この予算額は年度途中に変更されない。物価高騰や社会情勢の変化に対応できない。例えば昨今の米価格のように価格が倍になっても決められた食単価の枠内で「なんとかする」しかない。なぜなら給食の年間予算は自治体で決められているからだ(増額しようにもどの自治体も予算に余裕がないため通らない)。たとえ予算に余裕があっても議会の手続きが必要なため、リアルタイムの対応は不可能。こうして、福岡市の場合は289.47円の枠内で給食提供しなければならなくなる(この金額が十分なものかどうかは要検討)。これが前提。
次にSNSで話題になった「唐揚げ一個給食」のしょぼさの要因ついて。献立の原価はメニューによって異なる。コストがかかるものもあれば、かからないものもある。平均値で献立作成をすることになる。福岡市の場合毎回きっちり約289円ではない。また、年間で予算を立てているため年度末の予算不足を恐れて年度初めは食材費を抑えた献立になる傾向がある。これはどこの学校給食でも同じだ。さらに食材の高騰。献立作成時点より食材発注時点で食材価格が上がっていたと思われる。
たとえば唐揚げ原料の鶏モモ肉の価格は、全国食鳥新聞社が公開している「2025年東京市場生肉相場平均」によれば今年3月の鶏もも肉相場は安値692円加重平均739円高値851円。4月は安値721円加重平均799円高値942円。5月769円加重平均842円高値1006円。滅茶苦茶上がってる。九州でも同様の価格上昇傾向と思われる。食材全体が値上がり傾向にある。つまり献立を作成した時点より価格が高騰して原価計算が狂った可能性がある。唐揚げのサイズが変わった可能性があるかもね。
また、献立によっては見た目がしょぼくなりがちなものがある。例えば「鶏の唐揚げ」や「魚の切り身」は、個数やサイズが明確でごまかしができず、しょぼく見えがちだ。「麻婆豆腐」や「シチュー」などはボリューム感を誤魔化しやすい(カサマシできる)。給食の内容しょぼい騒動が起きるときの献立内容はだいたい見た目がしょぼく見えがちな献立である。唐揚げや魚の切り身などは個数やサイズが見た目のしょぼさに直結する献立は、普通は付け合わせを多めにするなどしてカバーするけどね…。
今回の問題は、まず給食食材予算が食材高騰に対応できていないことが根本にある(予算不足もあるかもしれない)。それに加えて、年間で予算設定をしているため年度初めはコストを抑え気味の献立原価にする傾向があること、唐揚げという個数とサイズ感が際立つメニューであったこと、それらの要因が悪い方向に出てしまった事案と思われる。なお、公社のホームページを確認すると他の日の内容はなかなか頑張っているので、大騒ぎする前に見てほしい。献立表 | 公益財団法人 福岡市学校給食公社
ここまでは皆が想像するとおりの原因だ。だが、僕は給食の営業マンとして学校給食に関わった経験から学校給食特有の要因があると考えている。福岡市だけではない。学校給食の全体的な傾向だ。ひとことでいえば、学校給食は良い食材を求めすぎ。学校給食のコンペでは、基本的に国産の食材が求められる。子供たちに国産の良質な食材を食べさせたいという気持ちは分かるが、それゆえに高コスト体質になっている。良質な外国産でより安価なものはなぜダメなのか、そして、国産にこだわるあまりに給食の内容が貧相になっては本末転倒だと思うがいかがだろう。
さらに、国産だけでなく地元産へのこだわりの強さを見せる自治体がある。もちろん高コストになる。食材費の上限が決まっているのに、国産や地元産の比較的高い食材を使えば、個数が減ったり、サイズが小さくなったりして、見た目は貧相になる。特に福岡市は国産や地元へのこだわりが非常に強いと感じた。福岡市教育委員会が令和2年1月21日に出しているドキュメントがある。https://www.city.fukuoka.lg.jp/kyoiku-iinkai/kenko/child/kyushoku/documents/20200121QandA.pdf
ここに「学校給食に使用する食材は、地産地消の観点から、市内産、県内産、九州産を優先的に使用しています」と明記され、地元産使用の工夫についても記載されている。地元産にこだわれば高コスト体質になる。外国産の唐揚げなら三つ付けられるのに地元産の鶏を使った唐揚げだとひとつになることだってあるかもしれない。

(例)こだわりの国産高級鶏使用の唐揚げを出す給食クマさんと、安い唐揚げを使ってボリューム重視のこだわりのない給食クマさんの図。
福岡市に限らず、学校給食は予算に対して高コスト体質なのだ。国産地元産を使うなら予算を増やす、予算が不足しているなら安い食材に切り替える、そういう柔軟性が欠如している。また、学校給食は地元の納品業者や生産者との繋がりが強いため、適正な競争が行われているのかも疑問だ。これは学校給食全体に言える。例えば皆さんの地元に、長年学校給食に卸している謎の地元牛乳会社とかないだろうか。
まとめると、学校給食予算の柔軟性の無さが根本にあり(予算額の不足もある)、国産食材へのこだわりが高コスト体質を生み、そこに食材高騰と鶏の唐揚げという見た目の貧相さが目立つメニューと年度初めの献立原価抑制があって、「唐揚げ一個給食」という奇跡が爆誕したのだ。
「300円で山盛りの定食が提供される学生食堂」「100円で朝食が食べられる学生寮」という事例があるが、学校給食とは事情が異なる。なぜならここでの300円や100円という金額は利用者負担額であって食材費ではないからだ。利用者が負担する300円(100円)に加えて、大学や父兄会から補助が出ていると思われる。いまどき食材費100円ぽっきりで満足な朝食が食べられるはずがない。また、学校給食においても内容が豪華なものは必ずお金が出ている。企業努力で唐揚げの数は増えない。給食は社会を反映する鏡であってそこに魔法はないのである。(所要時間32分)