かつては知的な活動ができるの動物は人間だけと、特に西欧社会では宗教的背景もあって、確信されていました。今は、動物にもあんなことができるこんなことができると、動物の賢さを示す実験・観察が目白押しになっています。道具を使う、チンパンジーが石を使ってヤシの実を割っている。道具を作る、チンパンジーが細い枝の葉をすべてむしってシロアリ釣りに使う。群の仲間を識別し、状況に応じたシグナル、鳴き声、動作などによりコミュニケーションする、チンパンジーもそうだし、イルカなども。数を数える、チンパンジーのほか、有名なヨウムのアレックス君もそう。鏡を見て自分だとわかる。キリがないのでこれくらい。こうなってくると人類に特有の知的能力は何かという質問に答えるのが難しくなるほどです。
とは言っても、抽象的概念を表現できる言語、世界の動きを説明するモデル*1を使い因果関係を説明する、推論に基づいて将来を予見する能力などは今も人類特有と考えられています。そう言った能力を基盤に技術文明が発達したと思われます。
さて、技術文明につながる高度な認知能力は一度しか進化しなかったのか。最近の研究ではネアンデルタール人もいいところに行っていたと見られています。しかし、ネアンデルタール人は人類で、現代人(ホモ・サピエンス)との共通祖先が高度な認知能力を持っていたか、ホモ・サピエンスに影響されて能力が発達した可能性があるから、これは「一度」に入ります。別の問い方をすると、過去に人類以外の技術文明があったとしたらそれを見つけることができるか考えます。どのくらいの技術がどのくらい前にあったかにより話は異なります。
核分裂原子炉を実現する技術があったのなら、まず確実にその痕跡を地質学者が見つけられます。核分裂をすると高レベル廃棄物が出ます。いずれ地層に埋設処理するでしょう。その跡地を百万年後に掘ると、テクネチウム99が検出されます*2。テクネチウムは自然に存在しない放射性元素なので、「人」工的産物であることが明らかです。一億年後になるとテクネチウムは全て崩壊してありません。しかし、「跡形」は残ります。ルテニウム99が、ジルコニウム90、バリウム137*3とセットで出てきたら、核分裂生成物の成れの果て確定です。このように原子力を使える文明の痕跡は大昔でも確実に検出できるでしょう。その証拠が見つかっていないので、地球では現在が最初の原子力文明といえます。
一方石器は当てになりません。チンパンジーもヤシの実わりのために石を加工しますから、加工された石器らしきものが出土してもそれだけで技術文明の証拠にはなりません。
では、金属器はどうでしょう。金や白金の器物はどれだけ時間が経っても残るでしょう。問題は自然物ではないと判定できる特徴を見つけられるかです。まあ、注意深く調べればわかるんじゃないでしょうか*4。鉄製品は錆びるからせいぜい数千年の寿命ではないでしょうか。銀や銅は硫化水素などと反応はしますが、結構持つでしょう。金属製錬ができる技術文明も人類以前にはなかったと言って良いでしょう。そして、金属の精錬・加工には高度な技術が必要なことを合わせれば、人類以外の技術文明はなかったと言えます。
まとめると、技術文明につながる高度な認知能力の進化はこれまで一回だけ。しかし、賢い動物が色々いることを合わせると、ハードルの高さは二つ星⭐︎⭐︎でしょうか。