
近年、韓国でのビジネス展開やデータ取引が増える中、「PIPA(韓国の個人情報保護法)」への対応は避けて通れない課題です。日本の個人情報保護法やGDPRと共通点も多い一方で、重要な相違点もあるPIPAを理解していないと、思わぬリスクや制裁を招くおそれがあります。
本記事では、PIPAの概要や日本法との違い、実務での注意点をわかりやすく解説します。
目次
PIPA(韓国の個人情報保護法)とは
韓国の個人情報保護法である、PIPA(Personal Information Protection Act)は、韓国内での個人データの扱いに関する包括的なルールを定めた法律です。一定の条件では国外事業者にも適用が及ぶ場合があります。個人情報を守りながら、データ活用を促進することが目的です。
まずは、PIPAの制定目的や改正の経緯、保護対象となる「個人情報」の範囲について解説します。
制定の目的
PIPAは、個人の権利と自由を保護し、個人情報の安全な処理を確保することを目的に制定されました。インターネットやスマートフォンの普及により、個人データが大量に収集・利用されるようになった背景があります。こうした状況の中で、データの不正利用や漏えいを防ぐため、国家レベルで統一的なルールを整備する必要がありました。
また、PIPAは個人のプライバシーを守るだけでなく、データを適正に活用する社会基盤を整える狙いもあります。保護と活用の両立を重視している点が、他国の制度と比べたときの特徴といえるでしょう。
施行時期と法改正の経緯
PIPAは2011年9月に施行されました。当初は公的機関と民間企業を横断する包括的な法律として注目されましたが、その後も時代の変化にあわせて複数回の改正が行われています。
2020年の大幅改正では、データの活用を促進しつつ、個人保護をより強化する方向に見直されました。特に、仮名化されたデータ(仮名情報)を条件付きで活用できる仕組みが導入され、AIやビッグデータ分野での応用が広がりました。
さらに、監督機関である「個人情報保護委員会(PIPC)」は、2020年改正で国務総理所属の中央行政機関として権限が一元化・強化されました。
PIPAが保護する「個人情報」とは
PIPAにおける「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であり、氏名・生年月日・住所など、特定の個人を識別できるもののことです。また、他の情報と照合することで個人を識別できる可能性があるデータも含まれます。
個人情報の定義には、映像・音声データやオンライン識別子(クッキー情報やIPアドレス)なども該当する場合があります。近年はデジタル技術の発展により、識別可能な情報の範囲が広がっており、PIPAでもその点を重視するようになりました。
なお、個人を直接特定できないように加工された「仮名情報」は、研究や統計などの目的で利用できると定められています。これにより、プライバシーを守りながらデータ利活用を進める仕組みが整備されました。
PIPAが注目されている背景
PIPAは施行から10年以上が経ち、韓国国内にとどまらず国際的にも注目を集める存在になりました。デジタル化の加速や越境データの増加、さらには過去の大規模な情報漏えい事件をきっかけにした社会的な危機意識が、注目の背景にあります。加えて、韓国政府が進めるデータ活用政策にも密接に結びついており、法律の重要性は年々高まっています。
環境変化を理解すると、PIPAがなぜ今大きな存在感を持つのかがより明確になるでしょう。注目を押し上げた要因を整理しておくことは、国際的なデータ保護の流れを読み解くうえでも役立ちます。
デジタル化・越境データ流通の進展
インターネットやスマートデバイスの普及により、企業や行政機関が扱う個人情報の量は飛躍的に増えました。ECサイトやSNS、クラウドサービスなど、日常生活のあらゆる場面でデータが生成されています。こうしたデジタル化の進展により、個人情報の保護と利活用のバランスを取ることが重要な課題となりました。
さらに、データの流通は国境を越えて行われる時代に変わっています。韓国企業が海外ユーザーのデータを扱うケースや、国外企業が韓国でサービスを提供するケースも増加しています。このような環境下では、国際的なデータ保護ルールとの整合性を保つことが不可欠です。PIPAが注目されるのは、こうしたグローバルなデータ流通に対応するための制度設計を進めているためといえるでしょう。
大規模情報漏えい事件と社会的関心の高まり
韓国では、過去に大規模な個人情報漏えい事件が相次ぎました。金融機関や通信会社などから数千万件規模の情報が流出し、社会全体に強い衝撃を与えたのです。度重なる事件をきっかけに、企業の情報管理体制や政府の監督体制に対する批判が高まりました。
PIPAの実効性を強化するための法改正も進められました。特に、違反に対する罰則の引き上げや、監督機関の権限強化などが実施されています。個人情報保護に対する国民の意識も高まり、企業や公共機関に求められる責任がより重くなったといえるでしょう。
韓国政府のデータ活用政策との関係
韓国政府は、データを新たな経済資源と位置づけ、「データ経済」を推進しています。AIやビッグデータを活用した行政・産業の高度化を目指し、官民一体での取り組みが進められてきました。PIPAはその基盤を支える法律として、保護と活用の両面から政策を支えています。
特に2020年の改正では、追加情報と分離するなどにより直接識別ができない状態に加工した「仮名情報」の利活用が認められ、研究・統計・産業分野でのデータ活用が促進されました。これにより、韓国はアジアの中でもデータガバナンスの整備が進んだ国の1つと評価されています。データを守るだけでなく、社会や経済の発展に生かす方向性を示した点で、PIPAは重要な位置づけにあるといえるでしょう。
PIPAの主な規制内容
「個人情報取扱者」が主な対象となります。一方で、家庭内や個人目的での利用など、一部のケースは適用除外として扱われることがあります。
こうした前提を押さえておくと、PIPAが求めるルールの全体像が理解しやすいです。どの義務がどの場面で適用されるのかを知ることは、実務での判断にも直結します。次は、主な規制内容を項目ごとに整理して紹介します。
個人情報の定義と対象範囲
PIPAにおける「個人情報」とは、生存する個人を識別できる情報、または他の情報と照合することで特定の個人を識別できる情報のことです。具体的には、氏名、住民登録番号、電話番号、顔写真、音声データ、オンライン識別子(IPアドレスなど)などが該当します。
また、PIPAでは「仮名情報(pseudonymized information)」が明確に定義されています。仮名情報は研究・統計・公共目的などで条件付き利用が可能です。なお、個人を識別できない「匿名化情報」はPIPA上の個人情報に当たらないと解されますが、再識別の防止や不可逆性の確保が前提であり、無制限の活用を許容する趣旨ではありません。
こうした分類により、保護と活用の両立を図る制度設計となっています。
収集・利用に関する原則と同意要件
PIPAでは、個人情報の収集・利用にあたって「目的の明確化」「最小限の収集」「本人の同意取得」を基本原則としています。事業者は、利用目的を明示したうえで、業務遂行に必要な範囲に限定して情報を収集しなければなりません。
特に、同意の取得はPIPAの中でも重要な要件です。本人に対して収集目的、利用範囲、第三者提供の有無などを明確に説明し、自由意思による同意を得ることが必要です。未成年者の情報やセンシティブデータを扱う場合は、より厳格な手続きが求められます。
なお、法令遵守や契約履行など正当な理由がある場合には、例外的に同意を得ずに利用できるケースもありますが、その場合も最小限の範囲に限定されます。
第三者提供と委託に関するルール
個人情報を第三者に提供する場合、PIPAでは原則として本人の事前同意が必要です。提供先の名称や目的、提供される情報の種類などを本人に通知し、同意を得なければなりません。
一方で、業務委託として第三者に情報を預ける場合も規定があります。委託先を選定する際は、情報保護に十分な管理体制を持っているかを確認する義務があります。委託後も、委託先の管理状況を監督する責任が残る点が特徴です。
さらに、委託契約には情報保護措置や再委託の制限など、法に定められた内容を明記することが求められます。企業間のデータ共有が進む現代では、この規定が実務上の重要な指針となっています。
越境データ移転の規制と条件
韓国国内で収集された個人情報を海外に移転する場合、PIPAでは厳格なルールが設けられています。原則として、移転先や利用目的などを本人に明示し、同意を得ることが必要です。
ただし、移転先の国が十分なデータ保護水準を有している場合や、契約などにより適切な保護措置が確保されている場合には、例外的に同意を省略できることもあります。こうした規制の目的は、EUのGDPRと同様に「越境データの安全性」を確保することです。
韓国は国際的なデータ流通の促進を掲げ、EUとは2021年に十分性認定が成立しています。一方で、日本との間にGDPRにおける「十分性認定」のような相互スキームは存在しません。日本向け移転では、同意取得や契約上の保護措置など、PIPAの要件を個別に満たす必要があります。
企業はこれらの動向を注視しながら、移転時の法的リスクを回避する体制を整える必要があります。
個人の権利(開示・訂正・削除・処理停止など)
PIPAでは、個人が自身の情報に対して強い権利を持つことを明確にしています。本人は、自分の情報がどのように収集・利用されているかを確認するために「開示請求」が可能です。また、誤った情報がある場合には「訂正」や「削除」を求めることが可能です。
さらに、情報の利用や提供を一時的に停止させる「処理停止請求」も認められています。これにより、本人は自分のデータを主体的に管理できる仕組みが整えられています。
事業者は、こうした請求に迅速かつ誠実に対応しなければなりません。対応を怠った場合、行政処分や罰金の対象となる可能性があるため、社内の手続きや体制を明確に整備しておくことが求められます。
日本の個人情報保護法との違い
PIPAと日本の個人情報保護法(APPI)は、いずれも個人のプライバシー保護が目的です。しかし、両者には定義の範囲や監督体制、企業への義務づけなどに明確な違いがあります。結果として、実務上どのような違いが生じるのか、主な3つの観点から整理していきます。
個人情報の範囲・定義の差異
日本の個人情報保護法では、「生存する個人に関する情報で、特定の個人を識別できるもの」と定義されています。PIPAも同様の考え方を採用していますが、保護対象の広さを単純に優劣で比較することはできず、定義や運用の置き方に違いがあるというイメージです。
たとえば、IPアドレスや位置情報、音声データなど、他の情報と組み合わせることで個人を特定できるデータも「個人情報」に含める点が特徴です。さらに、PIPAは「仮名情報」を制度化しています。日本法も「仮名加工情報」を設けており、概念自体は独自ではありません。
一方、日本では2022年改正で「仮名加工情報」「匿名加工情報」を整備しました。PIPAは仮名情報の利用目的を統計・研究等に限定する一方、日本法は社内分析などでの活用を広く認める側面があります。
監督機関や法執行体制の違い
日本では、個人情報保護委員会(PPC)が独立機関として法の執行や監督を担っています。これに対し、韓国では「個人情報保護委員会(PIPC)」が同様の役割を果たしていますが、PIPA改正後は権限と独立性がさらに強化されました。
以前の韓国では、通信や行政などの分野ごとに監督機関が分かれていました。そのため、対応の一貫性や実効性に課題があったのです。しかし2020年の改正でPIPCが統合的な権限を持つようになり、国内の個人情報保護行政が一本化されました。
結果として、違反対応の一元化が進みました。両国とも近年は監督体制を強化しており、PIPAはPIPCへの権限集約、日本は漏えい報告の義務化など、強化の方向が異なります。
企業に課される義務・手続きの違い
PIPAでは、企業に対してより詳細かつ積極的な対応を求めています。たとえば、個人情報の収集時には「利用目的」「提供先」「保存期間」などを明確に示し、本人の同意を得なければなりません。さらに、委託先への管理監督責任や、データ移転時の安全措置も義務として定められています。
日本法でも同様の手続きが必要ですが、韓国では違反時の罰則が重く、実務上のプレッシャーが大きい点が異なります。漏えい時の報告義務がある点は両国共通です。PIPAは速やかな当局・本人通知と課徴金の枠組みを持ち、日本法も一定要件でPPC・本人通知を義務づけています。
また、韓国では個人情報保護責任者(CPO/PIPO)の選任が法定義務です。日本法にDPOの法定義務はなく、組織の任意運用となります。総じて、PIPAのほうが企業に求める対応水準が高く、より厳格な管理体制を求める制度といえるでしょう。
GDPR(EU一般データ保護規則)との違い
PIPAとGDPR(EU一般データ保護規則)はいずれも国際的に高いレベルの個人情報保護法として知られています。いずれも高いレベルの保護を求める点では共通していますが、適用範囲や権利の考え方、制裁内容には違いがあります。具体的に何が違うのか、主な相違点を3つの観点から整理していきましょう。
適用範囲と対象データの違い
GDPRは、EU域内に所在する個人のデータを扱うすべての企業・組織を対象としています。EUに拠点がなくても、EU居住者を相手に商品・サービスを提供している場合や、行動をモニタリングしている場合には適用されます。つまり「域外適用」が広く設定されている点が特徴です。
一方、PIPAは主に韓国内で個人情報を扱う企業や機関を対象としています。ただし、韓国に拠点がなくても、韓国の利用者を対象にサービスを提供している企業には適用される可能性があります。つまり、PIPAも一定の域外適用を認めていますが、GDPRほど広範ではありません。
また、GDPRは「個人データ」という幅広い概念を採用しており、特定の個人を識別できる情報に限らず、オンライン識別子や位置情報なども対象としています。PIPAも同様の考え方を持っていますが、GDPRのほうが国際的な枠組みとしてより包括的な定義を採用しているといえるでしょう。
データ主体の権利と同意取得の考え方
GDPRでは、個人(データ主体)の権利を非常に強く保障しています。アクセス権(開示請求)、訂正権、削除権(忘れられる権利)、処理制限権、データポータビリティ権など、利用者が自分のデータを自由に管理できる権利が明記されています。これにより、企業は利用者の請求に迅速に対応しなければなりません。
PIPAでも同様に、開示や訂正、削除、処理停止などの権利が認められています。ただし、GDPRに比べるとデータポータビリティ(他サービスへのデータ移転)の明確な規定はまだ限定的です。韓国でもデジタル経済の拡大に伴い、今後この点が整備される可能性があります。
同意取得の方法についても両法で異なります。GDPRは「明確かつ積極的な意思表示」に基づく同意を求め、チェックボックスの事前選択(オプトアウト)を禁止。PIPAも原則として本人同意を求めていますが、法令に基づく場合や業務遂行上必要な場合など、例外がやや広く設定されています。つまり、PIPAのほうが実務に柔軟な運用が可能といえるでしょう。
罰則・制裁金の水準と適用範囲
GDPRの最大の特徴は、制裁金の厳しさです。違反が認められた場合、企業は全世界売上高の最大4%または2,000万ユーロのいずれか高い方が課される可能性があります。実際、過去には大手IT企業に数百億円規模の罰金が科された事例もあります。
PIPAでも罰則規定は強化されていますが、GDPRほどの高額制裁ではありません。違反の内容によっては、関連売上高を基礎とする最大3%の課徴金や刑事罰が科される場合があります。また、行政機関による業務停止命令や公表措置など、社会的影響が大きい処分も行われます。
両法を比較すると、GDPRは「抑止力」を重視し、国際的な遵守を促す仕組みです。一方のPIPAは、保護と同時にデータ活用の推進も意識したバランス型の制度だといえるでしょう。
PIPA違反のリスクと罰則
PIPAは個人の権利保護を重視しているため、違反に対しては厳しい制裁が科されます。違反行為の内容に応じて、行政処分、課徴金、刑事罰など複数の措置が取られる場合があります。
どの行為が違反とみなされ、実際にどのような処分が下されているのかを理解しておくことは、実務におけるリスク管理で重要です。具体例を把握しておくほど、現場での判断がぶれにくくなります。ここでは、主な違反類型とその処分内容を紹介します。
企業が違反と見なされるケース
PIPAで違反とされる行為は多岐にわたります。代表的なのは、本人の同意を得ずに個人情報を収集・利用・提供するケースです。たとえば、目的外のデータ活用や、契約書やアプリ規約に曖昧な同意条項を設ける行為は違反と見なされる可能性があります。
また、収集した情報の管理が不十分な場合も問題になります。具体的には暗号化の欠如、アクセス制御の不備、外部委託先の監督不足などのケースです。特に、委託先が情報を漏えいさせた場合でも、委託元企業が管理責任を問われるケースがあります。
さらに、情報漏えいが発生した際に報告義務を怠ったり、被害者への通知を遅らせたりした場合も、追加的な行政処分の対象となります。PIPAでは、単なる管理ミスよりも「隠ぺい」や「不誠実な対応」が重く評価される点に注意が必要です。
課される罰金・行政処分の内容
PIPA違反に対しては、行政罰と刑事罰の両方が適用される可能性があります。行政罰としては、業務改善命令や業務停止命令、違反内容の公表などが行われます。社会的信用を失うリスクが大きく、特に上場企業や公共事業者にとっては深刻な打撃となるでしょう。
さらに、重大な違反が確認された場合には課徴金が科されます。算定は総売上高を基礎に最大3%(ただし違反と無関係な売上は除外可能)とされ、企業規模によっては多額の制裁となりかねません。刑事罰としては、個人情報を不正に収集・提供した責任者に懲役刑や罰金刑が課される場合もあります。
また、データ漏えい防止の安全管理措置違反は、主として課徴金や是正命令などの行政制裁の対象です。一定の類型では刑事罰が除外され、行政罰に置き換えられています。企業は単に技術的な対策を導入するだけでなく、教育や監査を含めた運用体制全体を整えることが求められます。
過去の違反事例と学ぶべきポイント
韓国ではこれまでに、複数の大手企業がPIPA違反で処分を受けています。特に金融機関や通信会社で発生した大規模な個人情報漏えい事件は、社会に大きな衝撃を与えました。数千万件単位のデータ流出が発覚し、企業は巨額の課徴金等の行政制裁に加え、ブランドイメージの大幅な低下という痛手を負いました。
また、Eコマース事業者がマーケティング目的で顧客データを不正利用したケースや、クラウド事業者が委託先管理を怠ったケースでも行政処分が下されています。これらの事例からは、「委託先管理の徹底」「同意取得の透明化」「漏えい時の迅速な対応」の3点が特に重要だとわかります。
違反の原因は技術的な脆弱性だけではありません。社内ルールの形骸化や、経営層の認識不足といった組織的な問題が背景にあることも多いです。PIPA対応を実効的なものにするためには、経営レベルでデータ保護を経営課題として位置づける姿勢が欠かせないでしょう。
実務で求められるPIPA対応
PIPAは法律上の義務として定められていますが、単に法文を理解するだけでは十分とはいえません。実際の業務運用に落とし込み、組織全体で一貫した対応ができてこそ、情報保護の効果が発揮されます。
実務では、現場でどのような体制や手順が必要になるのかを具体的に把握することが大切です。運用の質がそのままコンプライアンスの実効性につながるため、実務視点での整理が欠かせません。企業がPIPAに適切に対応するために求められる主要なポイントを紹介します。
社内のデータ管理体制の整備
まず重要なのは、社内全体でデータ管理の責任体制を明確にすることです。PIPAでは、個人情報保護責任者(CPO/PIPO)の選任が法定義務です。担当者が中心となり、情報の収集から削除までの流れを統制しなければなりません。
また、データの取り扱いプロセスを文書化し、誰がどの情報にアクセスできるのかを可視化することが大切です。アクセス制御や暗号化などの技術的対策に加え、従業員教育や内部監査といった運用面の整備も欠かせません。特に、多くの企業では「ルールを定めただけで運用が形骸化している」ことが問題になります。実際に機能する体制を構築することが求められるでしょう。
委託先・提携先へのコンプライアンス対応
個人情報を外部の委託先や提携企業に共有する場合、PIPAでは厳格な管理が義務づけられています。まず、委託先を選定する際には、情報保護に関する方針や実績を確認し、十分な安全管理措置を取っているかを評価する必要があります。
契約書には、個人情報の利用目的、再委託の制限、漏えい時の報告義務などを明記しなければなりません。また、契約後も定期的に監査やヒアリングを実施し、実際の運用状況を確認することが望ましいです。特にグローバル展開している企業では、海外の委託先がPIPAと同等の保護基準を満たしているかを慎重に見極める必要があります。
委託先でのトラブルは、最終的に委託元企業の責任に問われることがあります。そのため、委託管理を「契約書面上の形式」ではなく「実効性のある監督」として運用することが重要です。
プライバシーポリシー・同意書の見直し
PIPA対応において、プライバシーポリシーと同意書の整備は欠かせません。特に、データの収集・利用目的を明確にし、利用者が理解しやすい言葉で説明することが重要です。難解な法律用語を多用すると、形式上は同意を得ていても「実質的な説明義務を果たしていない」と判断される場合があります。
また、サービスの内容やデータの利用範囲が変わった際には、速やかなポリシーの更新が必要です。定期的な見直しを怠ると、法改正や運用実態とのずれが生じ、コンプライアンスリスクが高まります。
さらに、オンラインサービスでは「明示的な同意」を得る仕組みが重要です。チェックボックスの事前選択や包括的な同意文言は避け、ユーザーが自ら選択できる形式にすることが望ましいでしょう。
国際的なデータ保護戦略への組み込み
韓国企業や韓国市場と取引を行う日本企業にとって、PIPAは国内法だけでなく国際ビジネスにも関係する問題です。特に、EUのGDPRや日本の個人情報保護法と整合性を取ることが求められます。各国の法制度を横断的に理解し、自社のデータ保護ポリシーを統一的に設計することが必要です。
たとえば、グローバルで事業を展開している企業は、越境データ移転のルールに加え、データ漏えい等の事故時における監督機関への報告義務を整理しておくべきです。社内に「国際データ保護チーム」や「リーガル・プライバシー担当部署」を設置し、各国の法改正情報を継続的にモニタリングする体制を構築するとよいでしょう。
データ保護は、単なる法令遵守ではなく企業価値を高める要素でもあります。PIPAをグローバルなデータ戦略の一部として位置づけることで、リスクを抑えつつ信頼性の高い事業運営が可能になるでしょう。
まとめ:PIPAを理解し、韓国ビジネスでのリスクを回避する
PIPAは、韓国で事業を展開する企業にとって避けて通れない重要な法律です。単に罰則を回避するためだけでなく、個人情報を適切に扱うことで、企業の信頼性やブランド価値を高めることにもつながります。
韓国ではデジタル化が進み、データを活用したサービスやビジネスが急速に拡大しました。その一方で、情報漏えいへの社会的関心が高まり、企業にはより厳格な対応が求められています。PIPAの内容を正しく理解し、自社のデータ管理体制を見直すことが、今後のリスク回避と持続的な成長の鍵になるでしょう。
もし韓国との取引や事業展開を検討している場合は、まずプライバシーポリシーや委託契約の内容を確認し、現地法に沿った形へアップデートすることをおすすめします。早めの対応が、トラブルを防ぎ、信頼を築く第一歩となるはずです。
また、「これからデータ利活用の取り組みを始めたいけれど、何から実施していいかわからない」「データ分析の専門家の知見を取り入れたい」という方は、データ分析の実績豊富な弊社、データビズラボにお気軽にご相談ください。
貴社の課題や状況に合わせて、データ分析の取り組みをご提案させていただきます。





