2025-11-01から1ヶ月間の記事一覧
カロル著、芥川龍之介・菊池寛共訳「アリス物語」 五 芋虫の忠告 六 豚と胡椒 七 気違ひの茶話会 八 女王の球打場 五 芋虫の忠告 芋虫とアリスは、暫くの間黙り込んで見合つてゐました。しかしとうとう芋虫が口から水煙管をとつて、だるいねむさうな声で、ア…
夏目漱石「こころ」は445枚 原稿用紙換算は古いと言われる。事実そうかもしれない。いやしかしどうだろう。改行や平仮名・漢字の差を無視したおおまかな基準とは言え、文量を感覚的に把握できるメリットはあるはずで、それによる諸作品の比較は、小説を見る…
二十 ツルゲニエフ以上の芸術家として、有力なる方面の尊敬を新たにしつつあるドストイエフスキーには、人の知る如く、子供の時分から癲癇の発作があつた。われ等日本人は癲癇と聞くと、ただ白い泡を聯想するに過ぎないが、西洋では古くこれを神聖なる疾と称…
熊の殺処分への抗議が多いと聞く。私はそれ以上に抗議への批判を多く見かける。よかろう、それぞれの主張は分った。私は殺処分はやむを得ぬことと思うし、そう言ってきた。そもそもやむを得ないも何も、街中に熊があれば撃つ他あるまい。で、現在、事態は殺…
カロル著、芥川龍之介・菊池寛共訳「アリス物語」 一 兎の穴に落ちて 二 涙の池 三 コーカスレースと長い話 四 兎が蜥蜴(とかげ)のビルを送出す アリス物語は、英国のルウヰス・カロルと云ふ数学者の書いた有名な童話です。英国のヴヰクトリヤ女王がお読み…
国内 芥川龍之介「『私』小説論私見」 芥川龍之介「僕の瑞威から」よりレーニン 梶井基次郎「筧の話」 梶井基次郎「瀬戸内海の夜」 梶井基次郎「蒼穹」 梶井基次郎「鼠」 岩上順一「秋声とその流れ」 金史良「蛇」 高見順「文芸的雑談」より二篇 夏目漱石「…
哲学序説カント著、桑木厳翼・天野貞祐訳「哲学序説」 序説の一般的問題の解答 ——如何にして学としての形而上学は可能なるか 理性の素質としての形而上学が存在して居ることは事実であるが、それは其自身に於ても(我々が第三の主要問題の分析的解答に於て証…
哲学序説カント著、桑木厳翼・天野貞祐訳「哲学序説」 結語 純粋理性の限界決定に就いて 五十七 上述の分明なる証明にも拘らず尚お我々が或る対象に関して、其対象の可能的経験に属するもの以上を認識しようと望み、或は我々が可能的経験の対象ならざること…
瀬戸内海の夜(断片) 船は岬から岬へ、島から島へと麗しい航路を進んでゐた。瀬戸内海の日没——艫の一条の泡が白い路となつて消えゆく西には太陽の栄光はもう大方は濃い青に染んでしまつた雲の縁を彩つてゐたが、船の進んでゆく東の方はもう全く暮れてしまつ…
梶井基次郎「筧の話」 私は散歩に出るのに二つの路を持つてゐた。一つは渓に沿つた街道で、もう一つは街道の傍から渓に懸かつた吊橋を渡つて入つてゆく山径だつた。街道は展望を持つてゐたがそんな道の性質として気が散り易かつた。それに比べて山径の方は陰…
森鷗外「高瀬舟」 高瀬舟は京都の高瀬川を上下する小舟である。徳川時代に京都の罪人が遠島を申し渡されると、本人の親類が牢屋敷へ呼び出されて、そこで暇乞をすることを許された。それから罪人は高瀬舟に載せられて、大阪へ廻されることであつた。それを護…
流行語大賞候補中、ふさわしく見えるのは「教皇選挙」「古古古米」と高市発言くらいのものだろう。「エッホエッホ」も流行ったことには流行ったが、その程度のミームは毎年いくつも生れる。クマ被害を表わすいい語があればよかったのだが、「緊急銃猟」では…
梶井基次郎「蒼穹」 ある晩春の午後、私は村の街道に沿つた土堤の上で日を浴びてゐた。空にはながらく動かないでゐる巨きな雲があつた。その雲はその地球に面した側に藤紫色をした陰翳を持つてゐた。そしてその尨大な容積やその藤紫色をした陰翳はなにかしら…
室生犀星「亡霊は生きてゐる」 芥川龍之介の自殺の真相なんかはせんさくしなくともいい、小穴(注:小穴隆一)の解るのは小穴の考へた芥川であつて、芥川の頭のなかでごちやごちやして芥川自身だつてよく解らないものが、小穴にわからう筈がない、小穴のわか…
カント著、桑木厳翼・天野貞祐訳「哲学序説」 先験的主要問題 第三編 如何にして形而上学一般は可能なるか(下) 五十 二 宇宙論的理念 純粋理性がその超験的適用に於て作り出した宇宙論的理念という此産物は純粋理性の最も著しい現象である。それは又就中哲…