
今日、黒毛和種農家さんで繁殖検診を実施しました。
その中で1頭、発情周期のステージ診断の難しさを痛感し、改めて論文等書籍を含め調べなおし、留めておこうと思いました。
分娩後39日、フレッシュチェック、子宮回復は良、子宮内膜浮腫なし、筋層厚さあり、貯留スコア0、左卵巣7㎜卵胞、6㎜卵胞、他小卵胞少し、右卵巣20㎜黄体、8㎜卵胞、8㎜卵胞、小卵胞少し、小卵胞の辺縁の並びなし、のような所見でした。
私はこれまで、乳牛は10㎜以上の卵胞が1つか2つ、を周期診断の一つの指標にしています(主席卵胞選抜が9.8±0.3㎜を一つの指標にしているため)が、黒毛和種経産牛と乳牛未経産牛に関しては、主席卵胞になるサイズが8㎜台なので、乳牛の10㎜以上ではなく、8㎜以上が1つか2つ、を利用して検討することにしています。
主席卵胞と次席卵胞の逸脱時(deviation)におけるサイズ(平均±SD)は、乳牛未経産で8.3±0.2㎜、7.8±0.2㎜(1)、黒毛経産牛は、8.9±1.3㎜、6.8±0.9㎜(2)と報告されています。両者は数字が似ていますので、黒毛の時は、乳未経産を参考にすることに私はしています。


今回、その基準(赤ライン)を使いました。この牛は、最大卵胞サイズが8㎜で、それが2つあり、黄体も20㎜あることから、1つは第1卵胞ウェーブのかつて主席卵胞だった卵胞が8㎜まで閉鎖してきた、もう一つが今発育中の第2卵胞ウェーブで8㎜、と考え、周期の前半よりも中盤以降と考えました。
しかしながら、この考え方では甘過ぎました。
農家さんから、この牛は発情が4日前にあったとのことを教えていただきました。
そこで、今一度、8㎜の基準を見直しました。
10㎜(青ライン)を基準にすると、周期の多くの時期で10㎜以上は1個存在することが上の図からもわかります(その卵胞が発育中か閉鎖中かはわからないですが)。さらに乳牛経産のように10㎜以上卵胞が2個以上存在する時期はあまり多くありません。
なので、8㎜卵胞が2個あった場合でも、10㎜以上が1個もない状態というのは、周期の本当に最初の方、つまり、区画➀と➁の境にいる可能性が高いことが考えられます。区画②は主席になっている状態と設定、1日1〜1.5㎜卵胞が発育することを考慮すると、明日主席卵胞になっている可能性が高い状態と考えます。
黄体が20㎜あることも悩んだ理由の一つでした。20㎜あれば5日は過ぎているかなと思い込んでしまいました。でも、よくよく黄体を超音波でみると、内部が白く高輝度になっており、おそらく血餅やフィブリンがあるものと思われ、その場合は、排卵してまだ長い時間経過していないことが多いと考えています。周期の前半戦は中盤から後半にかけてよりも、そのような黄体が見えることが結構あります。
発情周期のステージ推測に、超音波検査は非常に有用ではありますが、一つの手段に過ぎません。今回、私がお伝えしたいのは、超音波検査だけではわからないことも多々あり、農家さんと牛の状況について話し合いながら、発情周期のステージを卵胞ウェーブだけでなく、黄体、子宮、農家さんとの話し合い等、「総合的に」診断していくことが、やっぱり大事だ、ということを改めて思い知らされました。一緒に検診を実施した地元の先生と共に、本当に勉強になりました。農家さんがいらっしゃることで、このような話ができます。周期の診断力を高めるには、非常に有難い環境で繁殖検診をさせていただいています。
総合的には、区画➀の最後、21日を1サイクルと仮定すると、day3当たりかなと、思い、18日後あたりで発情がくるからそのあたりは要注意ですね、と結論になりました。
次の日になってしまいましたが、今回も最後までお読みくださりありがとうございます。
参考文献
(1)Kulick L.J., 1999, Follicular and hormonal dynamics during the first follicular wave in heifers, Theriogenology, 52, 913-21
(2)Amrosi, 2004, Dynamics and Histological Observation of First Follicular Wave in Japanese Black Cows, J. Vet. Med. Sci. 66, 47–52
(3)Ko, J. C. H, 1991, Effects of a dominant follicle on ovarian follicular dynamics during the oestrous cycle in heifers, J Reprod Fertil, 91, 511-9