最近よく思うのですが、排卵するタイミングが「客観的に」今よりも正確に推測できれば、授精のタイミングもより適切になり、受胎性アップにつながるのではないかと思い色々模索しています。
今回、文献等を参考に自分でもちょっと調べてみました。
添付の動画は、黒毛和種経産牛で、一昨日に人工し、昨日排卵確認したところ、まだ右卵巣に卵胞が残っていました。一昨日は発情自体はスタンディングはなく、粘液漏出が強くあり、子宮も収縮していたとのことです。昨日確認したところ、スタンディングは同様にないですが、子宮の収縮は少々あるものの強いとは「私は」(個人的な主観)感じなく、粘液漏出はなかったです。子宮の超音波所見では子宮内膜の浮腫はありましたが、一昨日の状態がどのくらい浮腫だったかはわからないので比べることはできなかったです。そして、本日、排卵していた、とのことです。
そこで卵巣を確認しました。
昨日の動画をご紹介します。
左の卵巣は卵巣辺縁に小卵胞(1~3㎜)がいくらか並んでいました。右の卵巣は、退行している周り卵巣実質との境が分かりにくい白めの黄体と主席卵胞、それと卵巣辺縁に小卵胞(1~3㎜)が多く並んでいました。エコーの精度にもよりますが、良いと、小卵胞が一個一個は区別できるものもあれば、精度が落ちると、区別がはっきりせず、絵の具でビッと線を書いて手を繋いでいるようにみえる場合があります。
「なぜ、このように小卵胞たちが並んでいるのか」、これが排卵にタイミングを推測するキーワードになるかもと仮説を立て、ちょっと文献を調べてみました。
すると、このような文献がありました。排卵する前には、LHサージというホルモン変化が必要です。そしてそのLHサージ後約25~28時間で排卵する、と言われていますが、そのLHサージと同時にFSH(卵胞刺激ホルモン)サージも出てくると言われています(1, 2)。文献的にも、FSHサージが出てから、26時間で排卵するという報告もありました(3)。
このFSHサージは新しい卵胞波を生み出すのに大事なホルモンで、これが強く放出されたために、卵巣表面(エコーでは辺縁)に小卵胞が増えたと思われます。
つまり、このような卵巣所見が見られたら、約24時間以内には排卵が起きる可能性が高いと推察できます。これは超音波所見なので、より客観的な指標になるのではと思っています。
ちなみに今日往診に行かれた先生は、排卵も確認されましたが、左の卵巣の方で、より小卵胞が充実していたとのことです。それは、排卵した後にでてくるもう一回のFSHサージである、periovulatory FSHサージがあり、それにより、より小卵胞がさらに活動が強くなり、完全に新しい卵巣波が出現となります。このperiovulatory FSHサージは、先ほどのFSHサージ(preovulatory)と異なり、主席卵胞が排卵したことで放出されるホルモン変化であり、主席卵胞から出ていた、エストロジェンやインヒビンが一気に低下し、FSHサージが再開されたと言われています(2)。


絶対の所見とまでは言えません、またあくまで24時間以内だけで、3時間後なのか、10時間後なのか、24時間後なのか、等、そこまで詳しくは残念ですが、自分はわかりません。
ですが、客観的な指標として使える可能性を秘めた所見であることは、文献また自分の経験からも、あり得ると期待して利用しています。今のところは、この所見が見えた時には、明日授精しましょうとはなかなか言えない、また他の所見も考慮しますが、今日中に授精しましょう、と思って実践しています。
排卵のタイミングで悩んでいる方、また、超音波をいつ使おうかと悩んでいる方がいらっしゃいましたら、ご参考になれば幸いです。
今回、最後までお読みいただきありがとうございます。
参考文献
- Baldrighi et al., Temporal relationships between minor, preovulatory, or periovulatory FSH surges and the emergence and development of2-mm follicles ofwave 1 in Bos taurus heifers, 2016, Domest. Anim. Endocrinol.,57, 80-84
- Jaiswal et al., Developmental Pattern of Small Antral Follicles in the Bovine Ovary, 2004, Biol Reprod, 71, 1244–1251
- Ginther et al., Follicular-phase concentrations of progesterone, estradiol-17beta, LH, FSH, and a PGF2alpha metabolite and daily clustering of prolactin pulses, based on hourly blood sampling and hourly detection of ovulation in heifers. Theriogenology 2013, 79, 918–28