胃を切っても太れる? ― 私の“珍しい身体”の話

ふつう「胃を切除した」と聞けば、多くの人は同じイメージを抱くはずだ。
――痩せてしまう、食欲が落ちる、体力がなくなる。
実際、私の周囲にも胃を手術した人が何人かいるが、例外なくやせ細り、食事の量も大幅に減ってしまった。医師から「食べすぎないように」「少量を回数分けて」と指導され、食欲とのせめぎ合いに苦労している人も多い。
ところが、私はというと――まるで逆なのだ。
胃の大半を切り取られたはずなのに、なぜか食欲は旺盛。いや、むしろ手術前より強いくらいで、結果として体重は増えてしまった。いまやお腹まわりが立派になり、ズボンのボタンが悲鳴をあげている。
どうしてそうなるのか?
医学的には「珍しいケース」と言われる。
多くの人は胃が小さくなることで「ためておける量」が減り、早く満腹になり、痩せやすくなる。だが、私の身体はどうやら違ったらしい。
小腸がものすごく頑張って、胃の役目を肩代わりしているのだという。食べ物をしっかり吸収し、エネルギーに変える力が強い。しかも、食欲をコントロールするホルモンのバランスも人によって違い、私は「食べたい」という欲求が衰えなかったらしい。
要するに、私の身体は「痩せるどころか太れる」方向へと適応してしまったのだ。
当事者の実感
もちろんありがたい面もある。手術後も食事を楽しめるのは幸せだ。
だが一方で、「なぜ自分だけ太るんだ?」という戸惑いもある。周囲からは「胃を切ったのに、なんでそんなに食べられるの?」と不思議がられ、説明に困ることもしばしば。
おそらく医学的には「腸の適応力」「ホルモンの個人差」「体質」などの複合的な理由なのだろう。けれど本人からすれば、「ただ食欲が落ちないまま、太っていく」という実感しかない。
まとめ
胃を切除すると痩せる――これは“常識”かもしれない。
けれど、世の中には常識をひっくり返す身体を持つ人間もいる。私のように「胃を失っても太れる」タイプだ。
医学的にはレアケースだが、私にとっては日常そのもの。
ありがたさと困惑の入り混じった、少し変わった身体の物語である。