雪の降る神戸、そして小樽。一通の届くはずのない手紙から始まった、故人の痕跡を巡る旅は、単なるセンチメンタルな恋愛譚として消費されることを拒絶する。この物語の核心にあるのは、愛する者の死という不可避な喪失を起点とした、「自己の倫理的清算」という極めて厳密な作業である。ちょうど逝去から約1年となる故中山美穂が演じた渡辺博子と藤井樹、二人の女性は、一人の故人である藤井樹(男)の記憶の断片を交換し合うことで、自身のアイデンティティを再構築せざるを得ない。これは、愛の物語である以前に、喪失が突きつけた他者の痕跡を通じた自己の定義という、根源的な生存競争の倫理を問う、冷徹な哲学的論考の試みである。本批評で…