師走に入ると「無事」の掛け軸をよく見かけます。 無事とは、心が平安に満たされている状態だとイメージできても、それが、どのような境地なのかを言い表わすことは困難です。そこを考えるとき、心の平安そのものを考えるよりも、むしろそれを乱すものは何かを知ること、つまり、無事の逆方向から考えるほうが、かえって近道なのではないかと思います。仏教には「貪瞋痴(とんじんち)」という言葉があります。いわゆる「心の三毒」と呼ばれるもので、人の心を濁らせ、苦しみの原因となる三つの煩悩を指します。 欲深さを表す「貪(とん)」、怒りを意味する「瞋(しん)」、そして物事の道理が見えなくなる「痴(ち)」。仏教では、この三つを…